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ソフト、ハード、バイオ……技術者たちが総動員!地球滅亡の危機は全エンジニアが救う
地球温暖化、環境汚染、廃棄物処理、資源枯渇、砂漠化……。これらをつくったのは、ある面、技術。そして、その改善手法も技術にゆだねられている。ビジネスと先端技術に興味がある人に、ぜひ読んでほしい。
(取材・文 総研スタッフ/高橋マサシ) 作成日:03.05.21

THANKS! ここ数年で、環境分野で活躍するエンジニアの数が増えました。その理由は、エコビジネスの急拡大と、環境技術の高度化・専門化です。エンジニアの関心が高まる「環境問題と技術」について、体系的にまとめてみました。
Part1 大手・先端企業が本腰を入れたエコビジネスの勢い

 2000年に環境庁(当時)が発表した環境ビジネスの市場予測は、2010年で約40兆円。1997年が約25兆円なので、年平均3.7%の成長である。しかも、ここには燃料電池などいくつかの関連分野は含まれておらず、70兆円弱という試算もある。市場拡大の最も大きな要因は、民間企業の本格参入。下図の企業はほんの一部だが、国内系は大手からベンチャーまでこぞって参入し、この1〜2年で外資系企業の上陸も目立ってきた。

 従来の環境対策事業を企業サイドから語れば、会社のイメージを高める効果はあっても、ビジネスとしてのうまみは少なかった。それが逆転した理由は3つ。ひとつは法規制。特に2000年から、環境規制に関する法律が続々と成立、改正されたのだ。2つ目は、この動きの背景。国際的な環境基準の具体化だ。これまでの環境対策は、「各国の努力」ですまされていた。それが、1997年の地球温暖化防止京都会議(COP3)や、昨年のヨハネスブルク環境開発サミットなどにより、CO2排出量など、国単位での数値的な拘束力が付与されたのだ。

 最後が、景気後退である。そもそも対象が何であれ、企業は成長ビジネスに対して、人、モノ、金を投資する。大型資本投下のできる大手企業や、高い技術力を持つ先端企業ほど、この傾向は顕著である。不況の続く昨今、環境ビジネスのような、年に4%近い成長産業はなかなか見つからない。


■主な環境技術分野と参入企業例

日系ITベンダーの中国進出拠点
Part2 際立つ注目3分野のビジネス&テクノロジー

新エネルギー

同じ先端技術なら、充実感とビジネスも楽しみたい
環境エネルギー政策研究所

そよ風で発電させる先端風車の技術力

 クリーンエネルギーの中で最も成長が期待される風力発電。国内発電量は1999年の8万kwから2002年には42万kwへと急増し、2010年の政府目標は300万kwだ。そんな中、昨年9月に、日本初の市民風力発電所を完成させた環境NGOがある。現在では、北海道、青森、秋田で稼働中だ。海外の事情にも詳しい、所長の飯田哲也氏に話を聞いた。
 「風車はただ回っているように見えますが、空気力学、回転制御、機械設計など、多くの技術分野で著しい進歩があります。例えば、数年前は風速5mで発電を始めて15mで出力100%だったのが、現在では風速2mで始まり12mで100%出力できます」
 飯田氏は、今後10年で伸びる新エネルギーを、風力、水力、バイオマスと挙げ、それ以降は、低コスト化が始まる太陽光発電の急進を予測する。
天風丸
今年3月に運転を開始した市民風車「天風丸」(秋田県天王町)。総事業費は3億8000万円。匿名組合契約という出資方法で一般から資金を調達した。利益分配の形で、50万円の出資が10年後に70万円になる試算(一口10万円で現在も募集中)。

ソーラーアーク
三洋電機の太陽光発電システム「ソーラーアーク」。全長13.7m、総重量3000t、年間発電量約53万kw。1年間で灯油缶7145缶分を節約できる。
会社員? いえ、私はエンジニアです

 国際的に見た日本の環境技術はどうだろうか。
「日本は環境先進国といわれますが、実は後進国。個々の技術は優れていても、総合的に社会に還元されていません。進んでいるのはやはりヨーロッパ。それと、エンジニアの意識にも差がありますね」
 日本のエンジニアは、環境問題を全体像でとらえる人が少ないと語る飯田氏。氏は、「一技術者である前に会社員であるべき」という企業風土が強いからだと推察する。
「私の知るエンジニア、特にメーカーの技術者は、技術が及ぼす環境破壊を知りつつ、見て見ぬふりをする人が多い。風力発電に限らず、環境浄化でもリサイクルでも、使われる技術はハイレベルです。ぜひ、環境技術に力を発揮してもらいたいですね」
 2010年には1兆円との予測もある新エネルギー市場。遅れた技術で、これほど市場が広がるはずもない。

飯田哲也氏 所長
飯田哲也氏

1959年生まれ。京都大学原子核工修士課程修了、東京大学先端科学技術研究センター先端学際工学専攻。神戸製鋼所、電力中央研究所などを経て現職。日本総合研究所主任研究員、京都女子大学講師を務める。

2003年4月から急拡大したクリーンエネルギー市場

 電力会社に新エネルギー(風力、太陽光、バイオマス、小水力、地熱)の利用を義務づける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」が今年4月に施行。電力会社が外部からクリーンエネルギーを購入するこのシステムにより、市場が一気に拡大した。
 風力発電は世界第1位ドイツの810万kw(2001年)に比べると現在は小規模だが、シャープや三洋電機などが開発する太陽光発電パネルは、日本が43.8%のトップシェア。廃木材、家畜糞尿、生ゴミなどをガス化してエネルギーに変換するバイオマスは、昨年12月に策定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」により、実用が本格化した。

環境汚染対策

バイオの力を駆使して自然破壊の防御と修復にかける
株式会社海洋バイオテクノロジー研究所

微生物が活躍してゼロエミッションが実現

 土壌、海洋、河川、下水などの環境汚染対策では、微生物を利用した浄化技術が進んでいる。理由のひとつが、化学処理に比べてほかの環境への影響が少ないこと。
 海洋バイオテクノロジー研究所(MBI)は、海洋汚染に限らず、環境保全技術全般に取り組んでいる。大きく防御技術と修復技術に分かれるが、渡辺一哉氏が担当するのは、前者が「メタン発酵」、後者では「バイオレメディエーション」だ。
 「メタン発酵は最近注目されている技術で、ドイツ、ベルギー、オランダなどでは非常に普及しています。生ゴミ、厨房廃棄物、落葉や木材などをメタン発酵槽に入れて、さまざまな微生物で分解して発酵させ、メタンガスを出す。それを燃やして熱にしたり、発電させて電気にするのです。このときに出る廃棄物は、加工して肥料とします。つまり、ゼロエミッションなのです」
ナホトカ岩
バイオレメディエーションの実験結果。ナホトカ号重油汚染現場の岩を用いた比較で、左がその岩、右が微生物を活性化させて浄化した岩。

コップ1杯の海水。1億匹の中にわずか10匹

 バイオレメディエーションとは、微生物を使った環境浄化。MBIでは、1997年1月に日本海で起きた、ナホトカ号事故による重油流出を契機に始まった。調査の結果わかったことは、すでに海中には汚染を浄化する微生物が存在すること。現在は、絞り込んだ2種の微生物の、活性化方法と実用化を研究している。
 「コップ1杯の海水に1億匹ほどの微生物がいますが、この2種はわずか10匹程度しかいない。だから誰も気がつかなかった。環境バイオと聞くと、特別な菌を使うと思いがちです。しかし、未知の微生物やその効用をうまく引き出し、自然浄化作用を利用することが、本当の環境バイオテクノロジーなのです」
 今後は化学プロセスをバイオプロセスに置き換える企業が増加し、エンジニアの需要も拡大すると予測されている。


渡辺一哉氏 微生物利用領域 領域長
渡辺一哉氏

1962年生まれ。東京工業大学大学院生命理工学研究修士課程卒業。東燃株式会社入社後、MBIに出向。生分解・処理メカニズムの解析と技術開発(微生物を使った環境浄化)に携わる。

技術のベクトルが多様化する環境浄化ビジネス

 環境浄化は海洋、大気、土壌など幅広いが、加熱しているのは土壌浄化だ。潜在市場が13兆円ともいわれ、建設業界を中心に鉄鋼、プラントなど200社以上が参入。鉄粉を使う、地下水に空気を吹き込む、微生物を活用するなど、その浄化技術はさまざまだ。
 大気浄化も浄化方法が多様である。微生物でCO2を分解する固定化技術、先進国では生産禁止となったフロン回収・脱フロン技術、光で汚れを分解する光触媒技術などだが、特に光触媒は2005年の市場規模が1兆円と見込まれる。環境省の2010年予測では、環境汚染防止市場は全体で約19兆円である。

衛星データ解析

宇宙からのデータを使って地球を守るエンジニア
株式会社ビジョンテック

「リモセン」で地球環境をデータ解析する

 人工衛星が撮影した画像データなどから地球の現状や変移を読み取り、環境破壊対策に活用する。地球温暖化や農地減少など、地球規模で進む環境変動に対する特効薬として、にわかに脚光を浴びている。
 ビジョンテックは世界中の人工衛星から観測データを収集、情報加工して配信するベンチャー企業。民間事業としては珍しいが、岡田周平氏も国立研究所から「転職」した、ちょっと異色のエンジニア。
 「リモートセンシングの技術をしっかり勉強して、これまでの成果を社会に生かしたかったのです」
ブラジル・ラパ州
国際協力事業団が依頼したアマゾン(ブラジル・ラパ州)の解析データ。緑色が森林でピンクが牧草地。1992年(上)と2000年(下)で緑地の大幅な減少がわかる。

 彼が手掛けたプロジェクトに、ブラジルの環境調査がある。これが森林破壊対策の基礎データとなり、植林や農地開発が行われるわけだ。一方で、衛星写真にはどうしても雲などの「ノイズ」が写るが、時系列データなどを用いてノイズを取り除き、中央・東アジアの作付け状況や水収支の解析も行った。データ量が膨大であるため、スーパーコンピュータを借りることも多いと語る。

ソフトエンジニアの需要がますます増大

 人工衛星の画像解析は先端分野ではあるが、一般化はここ数年の変化だそうだ。
 「これまではソフトもハードも値段が高く、特別な人の特別な領域でした。しかし最近はWebサイトから衛星画像がダウンロードでき、ソフトも安くなってPC上で作業できます。いわば転換期です。実はリモートセンシングは手作業が多いんです。今後は処理の自動化ソフトや、大型のシステムをつくるエンジニアが増えるでしょうね」
 地球環境という大きな問題を解決するための、絶対的なデータ量はまだまだ不十分だという岡田氏。次の仕事は「海」だそうだが、内容は企業秘密とのこと。


岡田周平氏 VTIリサーチ・インスティテュート 主任研究員
岡田周平氏

1971年生まれ。鳥取大学大学院連合農学研究科博士課程修了。専攻は砂漠化防止。鳥取大学乾燥地研究センター非常勤講師、国立環境研究所を経て現職。

数年先から本格化する地球観測プロジェクト

 宇宙開発の主役は観測衛星だ。宇宙開発事業団が昨年12月に打ち上げた「ADEOS2」は、今年4月から常用運用に入り、5つの観測装置からデータを送り続けている。2007年には「GOSAT」が打ち上げ予定。温室効果ガス濃度を観測する、世界初の人工衛星だ。水循環観測では欧米と組み、レーダー開発を担当する予定。
 一方、文部科学省では、衛星画像公開のためのアーカイブセンター構築を検討している。今後は国際的なデータの統一や一元管理が予定され、参入企業は世界的に増加しそうだ。
Part3 「環境技術」というヘンな単語はなくなるか

 地球、つまり人類に対して悪影響を与える環境破壊。それを保全、改善する技術を環境技術と呼ぶが、考えてみると妙な言葉だ。なぜなら、使われるのはソフトウェア、メカトロニクス、電気・電子、バイオ、ネットワーク……と、従来の技術と何も変わらないから。逆にいえば、「自動車技術」や「家電技術」があってよいことになる。

 正確には環境技術ではなく、「環境業界」だろう。急激に成長した、巨大な産業である。しかし、エンジニアにとっては、設計するモーターが工場のベルトコンベア用か風車の発電用か、開発するソフトが流通管理システムかCO2排出量測定システムかの違いしかない。参入企業には注力業界が既にあるから、「異業種転職」にすらならない場合も多い。
 もう少しだけ興味をもっても、よいかもしれない。少なくとも、「環境技術」が一般化して、その名がなくなるまでは。環境の語源は、ギリシャ語で「家」や「居住」を意味する「Oikos」だという。ここから「Ecology」(環境学・生態学)が生まれ、Economy(経済)も生まれた。環境とは個人の問題であり、ビジネスと無縁ではないという意味だろうか。
 地球滅亡を救えるのはエンジニアだけではないが、エンジニアがいないと地球は救えない。

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高橋マサシ(総研スタッフ)からのメッセージ
 このレポートを書くに当たって、環境について調べました。ヤバイっす! スゴイっす! ヤバイのはもちろん地球。環境破壊がここまで進んでいるとは思いませんでした。スゴイのは市場規模と技術レベル。もう、「環境革命」ですよ。
 興味のある業界やムーブメント、気になる仕事の中身などがあれば、ぜひ教えてください!

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