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ますます曖昧になる成果主義に不満爆発!不確実性時代の「エンジニアの成果」考
ここ数年、成果主義を掲げる企業が相次いだ。一方、その不完全な導入手法、運用実態にエンジニアからの不満の声も多い。決めた目標が翌日には変わることを余儀なくされる「不確実な」時代における成果主義の実態や処世術のヒントを考えてみた。
(取材・文/中村伸生 総研スタッフ/木下ミカエル)作成日:03.05.07

THANKS! 「個人的な好き嫌いが評価軸になっている」(33歳・SE)、「難易度の高い業務を任されると評価が低くなりがち」(29歳・デバイス開発) ――評価の納得性を疑問視する声が多出する中、あらためて「成果」について考えてみました。
Prologue 閉ざされたBlack Boxを探検してみる?

 最近、エンジニアの間で話題の「成果主義」。仕事で成し遂げた結果=成果だけをみて、賃金や昇進をなかば強引に決定する」そんな人事施策を採用する企業が増えてきました。
 でも、あらためて考えると「成果」って一体何でしょう? とくに最近は、エンジニアを取り巻く環境の変化が激しい。前に設定した目標が半年後には全く通用しないことだって多いくらいです。また、この一見透明なようで不透明な成果主義を前に、私たちはどうしたらいいのでしょうか?

 今回Tech総研では、見えるようでなかなか見えないBlack Box、「成果」「成果主義」を考える3つの部屋をご用意しました。


Room1:エンジニア怒りの部屋

Room2:成果主義「ごまかしの歴史」部屋

Room3:サッカー解説者 風間八宏氏の部屋

 3つの部屋では、今の時代ならではの「成果主義への不満の原因」や「多くの企業で運用に悩む背景」、そして「不確実性時代における処世術」を考える、ささやかなヒントを紹介しています。
 ひょっとしたら、これらの部屋を進むうちに、あなたの不満の矛先も変わるかも……?
 3つの部屋をのぞいたら、ぜひご意見をお聞かせください。

 では……Room1に行ってみましょう。

Room1:エンジニア怒りの部屋

不当な評価に憤慨する「ムカ ツクオ」さんのつぶやき

「なんでこんなに評価が低いんだ!?」
 ―3月某日。中堅SIerのSE、ムカ ツクオさん(32歳)は怒りが収まらない。年度末の面談で、上司のコレデ イクオさんから評価が下がった事を通告されたのだ。
 半年前、上司と向き合って決めた目標設定の3つの課題はクリアしたはずなのに、評価は下がっていた。上司に問い質すと「部門の目標が変わってしまったから」と、特に説明もなく逃げられてしまった。

現状の成果主義にエンジニアが憤慨する5つの原因

 今、実際にエンジニアの間で、ムカ ツクオさんのようなケースは増えている。特にエンジニアたちが憤慨しているのは、成果主義自体というよりは、客観的な評価による労使双方の納得を目指したはずが、実際の運用で客観性を貫けない「ねじれ現象」にあるようだ。この現象が起こる原因を以下の5つに分けてみた。

1. 相対評価 -「あいつを上げれば、オレが下げられる」

自分では目標をクリアしたので評価が上がると思っていたが、ある社員をA評価したので、今回はBで我慢してくれと言われた(プログラマ・26歳)

2. 感情軸での判断 -「上司の好き嫌いですべてが決められる」

評価に納得がいかないので食い下がったら、サラリーマンならもう少しこびを売れと言われた(30歳・SE)

3. 説明不足 -「評価の理由を説明しないのはなぜ?」

あとから目標設定以外の業務を次々と任されたため、本来の目標がクリアできずに評価が下がった(31歳・サポートエンジニア)

4. 利益のみ重視 -「スグにお金にならない基礎研究は損?」

具体的な成果を見せるまでには数年かかるので、頑張ってもここ2年の評価が一向に変わらない(34歳・材料開発)

5. 簡易評価 -「ペーパーテストで俺の1年を判断するな!」

仕事への取り組みや成果では全く評価されず、形式的なペーパーテスト(暗記問題)の点数で評価されている(32歳・機械設計)

 1〜5のように、成果に対する不満の原因は、主に評価者や評価指標にあるといわれてきました。最近、これらに加えて問題になっているのは、「市場の変化スピードの速さ」です。市場がめまぐるしく変わる昨今の不確実性時代では、掲げた目標が日々塗り替えられることもしばしば。このスピードに企業の評価が追いつかないことが、エンジニアの怒りをかっているのです。

 それにしても、なぜ企業ではうまく成果主義が機能せず、上記のような不満が噴出してしまうのでしょうか。Room2で見てみましょう。

Room2:成果主義「ごまかしの歴史」部屋

 昨今の成果主義では、運用に苦戦している企業も多いようだ。ここでは、企業と個人の関係性に詳しい2人の識者に、現在の成果主義が機能しにくい要因を解き明かしてもらった。

不景気時には目標管理制度がはやる

 組織心理学に詳しい目白大学の森田一寿教授は、日本には「目標による管理」ブームが3回もあったと語る。

 「成果主義の土台となる目標管理制度が最初に日本に登場したのは、約40年前です。当時は高度経済成長前夜。米国の経営ノウハウを次々と輸入していたころで、人間の側面を大切にした新しいマネジメントスタイルとして紹介されました。しかし日本の企業社会は個人の役割がなかなか明確化できない風土です。そこで職務主義が定着せず、成果主義への移行というプロセスが霧散しました。
 次はオイルショックのころ。急速に進む不況の中で、経営者たちは社員一人ひとりの目標をノルマに置き換えて乗り切ろうとしたのです。そして、3度目が90年代初頭から続く現在のブームです。今回になって大きな問題が持ち上がってきたのは、成果主義が雇用調整や給与を下げる道具として使われたからでしょう」。
今の成果主義が企業で失敗してしまう理由

人材マネジメント部門で今後取り組んでいく課題 TOP 5

後ろ向きの成果主義がエンジニアをなえさせる

 森田教授は人間が人間を評価すること自体が難しいとしたうえで、本来はモチベーションを上げる目的の成果主義が、不況時には経営者たちの雇用調整の道具に使われてしまうことを構造的欠陥として語ってくれた。

 企業組織論に詳しい滋賀大学の太田肇教授は、違った角度から成果主義が抱える問題点を指摘する。太田教授によれば、現在の成果主義は単純な仕事やモノづくりを行う集団の中なら、序列をつけてモチベーションを高める手段として根づく可能性が高いそうだ。ところが創造性や市場変化に対応するソフト思考こそが求められる現代の日本企業では、組織の中での序列づけや選別に重点を置いた成果主義は折り合わないという。

 「本当に創造的な成果は、企業の成果報酬の枠組みを超えた価値を持つはずです。若干の差しかつけられない現状の制度では、モチベーションも上がりません。例えば青色LEDを発明した中村修二さんの成果は、序列づけや選別に重点を置いた指標ではその価値を評価しきれません。
 一方で企業は社員の業績を閉ざされた評価枠の中に押し込もうとします。エンジニアは枠を満たすことにきゅうきゅうとなりますね。そこからは創造的な意識や、市場変化に対応するフレキシブルで柔軟な活動は生まれません」。

 企業側も、市場の変化に適応するフレキシブルな評価指標を模索しているのが現状のようだ。
 太田教授は成果の定義や測定法に疑問があり、不当に評価されていると思うならば、いっそのこと企業を飛び出して独立することも視野に入れるべきだと言う。


 この部屋では、現在の成果主義の構造的な問題点を紹介しました。
 次のRoom3では、変化を前提とした不確実性時代の処世術のヒントをサッカーから探ってみましょう。

Room3:サッカー解説者 風間八宏氏の部屋

 最後にサッカー解説者として有名な風間八宏氏に、状況によって個々のプレーヤーの役割が目まぐるしく変化するスポーツ、サッカーでの成果の残し方、そして変化する環境下での処世術のヒントを聞いてみた。

Q. 戦術変化が激しい状況の中でサッカーではどう個々のプレイヤーを目標管理しているのでしょうか?
A. 目標管理制度のような選手活用はサッカーにはなじまないと私は思います。ついつい日本のサッカー界では、ピッチ上での役割という目標を監督は与えがちであり、選手はその役割を果たすことだけを考えて動きます。一見、組織的なサッカーができるように思えますが、これでは選手個人が枠に縛られてクリエーティブな動きができません。

Q. 「ここからここまでがあなたの役割」といった枠が、創造的なプレーを阻害しているのでしょうか。
A. そうです。そんな枠だけを満たしても素晴らしいプレーは生まれません。これは指導者側に限ったことではありません。選手も枠を欲しがります。そのほうが楽だからです。日本人は自由にプレーしてもよいと言っても困った顔をします。自由が不自由なんですね。


風間八宏(かざま やひろ)氏

1961年生まれ。1980年〜1984年にわたり、日本代表のMFとして全30マッチに出場。筑波大学卒業後すぐに渡独し、5年にわたってブンデスリーガで活躍。帰国後はサンフレッチェ広島でプレー。Jリーグ日本人初ゴールを挙げる。現在は桐蔭横浜大学サッカー部監督を務め、テレビでは解説者として活躍中。
Q. 海外で活躍する中田選手や中村選手はそれができているのですか。
A. はい。高原や小野にもいえることですが、彼らは高い評価を得るために枠などをつくらずに、自分でまず動き出します。そうして自分で判断していく。そういう能力があります。常に自分自身に問いかけて、できることを見つけだしています。ピッチの上でも、外でも、彼らは常に組織ではなく自分を主語においてモノを考えています。

Q. 一般の社会人にもあてはまることなのでしょうか。
A. そう思いますよ。管理者や会社の言いなりの枠で目標管理して、その評価にぐだぐだと文句を言っているレベルでは都合よく使われるだけです。変化する状況をとらえ、自分でその都度ゴールを決める行動とアピールをしていくような精神的自立が、サッカー選手にとっても一般の人にとっても枠を超える原動力です。「私は株式会社○○の何々ではなく、こういう技術を持ったエンジニアです」という姿勢で、仕事に望んでほしいですね。エンジニアの方々も、皆さんプロなんですから。
 
Epilogue 「納得性の高い成果主義」こそエンジニアが開発する?

 3つの部屋、いかがだったでしょうか。会社に対する漠然としたムカツキ、イライラを整理するのに、ちょっとは役に立ったでしょうか?
 もちろん、「成果主義の納得性を高める」というのは、かなり難易度の高い問題です。「どうせ自分が何かしたところで、何も変わらないよ」という声も多いかもしれません。
 しかし逆にいえば、納得性の高い成果主義を発明したら、それこそノーベル賞ものです。
 ぜひ、皆さんの技術力、創造力で「エンジニアのための成果主義」を考えてみませんか?


新時代の組織で注目されるキーワード「インプロ」



 サッカー、ジャムセッション……今、これらに共通するキーワードが組織運営で注目を集めている。それは「improvisation(インプロビゼーション=即興)」、通称「インプロ」だ。
 もともとは即興劇から来た言葉で、「状況に応じ、瞬時に判断して動く能力」、つまり変化対応力を示している。
 環境変化が激しい昨今は、トップの指示待ち型=オーケストラ型(ピラミッド型に近い)組織から、メンバーが個々の意見を瞬時に出し合いながら成果を挙げていく「ジャズバンド型」組織を目指す企業も増えてきた。この組織は、個の自覚と自立に基づいているのが特徴で、上司から何か言われて動くのではなく、その都度自ら判断し、相手に提案をしながら動く、まさに「インプロ」のスキルが求められる。個人と企業が双方向で目指すべき目標と成果を確認しあい、評価もより多面的に短期レンジで更新される、そんな時代もやってくるのかもしれない。

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木下ミカエル総研スタッフの研究を終えて
「成果」について考えるうえで、最も難しいのは「評価基準」だと思います。客観的な指標って難しいですよね。数字やデータだけを信用する、というケースもあるようですが、上司や顧客の評価は完全に数値化できない部分もあり、悩ましい問題です。人が人を評価するうえでは、どこかで「主観」が「客観」にすり変わることもある。また万人への納得性は実現できるのか? 実現する必要性はどの規模まで必要なのか、納得性って何なのか……疑問は尽きません。皆さんのご意見、お待ちしています。

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