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やっぱりエンジニアはオモシロイ!
技術未来人インタビュー
エンジニアの技術力と感性が
「アーティスト立国ニッポン」を築く
経済アナリスト
森永卓郎氏
ニュースステーションのレギュラーコメンテーターとしても活躍中の森永卓郎氏。経済アナリストとして鋭い分析を行うが、語り口は至ってソフト。今回は、マクロな経済から見るとエンジニアの未来はどうなるのか 聞いてみた。
(取材・文/高橋正志 総研スタッフ/関洋子)
作成日:03.04.30
森永卓郎氏
[PROFILE]
●モリナガタクロウ
1957年生まれ。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現日本たばこ産業)入社。三井情報開発を経て、91年に三和総合研究所(現UFJ総合研究所)入社。専門はマクロ経済、計量経済、労働経済、教育計画。コメンテーターとして活躍する一方、ミニカーなど各種コレクターとしても有名。現在、おもちゃ博物館設立を計画中。
「めしが食える技術」がいちばん大きく変化した

――この10年を振り返って、日本の技術はどのように変わったとお考えですか?
森永:3つの点で大きく変化しました。ひとつは「成功確率の低下」です。これは、開発した技術が利益を生み出す事業に育つまでの確率ですが、以前はほぼ100%だったんです。なぜなら、欧米というモデルがあり、自動車でも家電でも、製品を購入して分解して研究すれば、よりよいものが作れましたから。しかし、日本がフロントランナーになると、当然失敗が増え、成功する確率は激減しました。

 次は、近年特に顕著になっている、「技術の短命化」です。自動車を開発すれば数十年は稼げていたものが、携帯電話になるとその新製品は半年で飽きられる。技術の寿命が非常に短くなりました。

 最後が「消費者の多様化」です。昔はテレビでも冷蔵庫でも、消費者は横並びで同じものを買って満足していた。それが今では個人レベルで嗜好が分かれ、作る側はより多くの種類を提供しなくてはなりません。
 総じていえば、共通パターンの成功方程式がなくなり、高付加価値型に変わったのです。


森永卓郎氏
――その中で、エンジニアに求められるものはどう変わったのでしょう。
森永:いちばん大きいのが、「めしが食える技術」です。10年前なら、何らかの技術があれば就職に困らなかった。プログラマならCOBOLを知っていれば十分。つまり、「ひとつの技術でめしが食えた」時代だったんです。ただ、それは90年代前半までの話。

 現在は、「単なる技術だけではめしが食えない」時代です。図面やパソコンの前で黙々と自分の仕事をこなす。そんなふうに一生懸命やっていれば報われた時代は、すでに終わったのです。

 一方で、確実な技術があり、かつもうひとつの能力を持つエンジニアには、この不況下でもしっかりと需要があります。つまり、「技術の上に何を乗せるか」が、エンジニアの決定的な価値になります。具体的にはマーケティングの知識、顧客折衝能力、ビジネスセンスなどでしょうが、結局は「アート」ですね。

 ヨーロッパで「Arts」というと、技術と芸術の2つの意味があります。レオナルド・ダ・ヴィンチは、人体を解剖して骨格や皮膚の構造を知ったからこそ、モナリザを描けた。科学的な分析の上に感性を乗せたから、人を魅了する作品ができたのです。フェラーリは高度な基礎技術を持ちながら、デザインやセンスが優れているから、世界中にファンがいる。そうでなければだれも買いませんよ。あんな手の掛かるクルマ(笑)。

 大切なのは感性。その感性はライフスタイルから生まれます。暗いのはダメ。無感動、無表情、無気力からアイデアは生まれません。そのためには明るくいくこと。ラテンから生まれるアイデアが、これからの日本を変えますよ。
「うそつき」「不良」社員が企業の屋台骨を支える?

森永卓郎氏
──しかし、日本人は謹厳実直、日本は独創性のない国だといわれています。
森永:とんでもない。日本人の本質はラテンですよ。江戸庶民が「宵越しの金は持たない」といっていたように、江戸時代の日本はラテンでした。その日その日を楽しく生きて、貯蓄はしない、夜這いはする、祭りなんて今でいう乱交パーティですよ。でもそんな昔のことじゃないんです。なぜなら、われわれのたった(?)5世代前は江戸時代なんですから。

 その感性が激変したのは明治中期、日清・日露戦争のころからです。戦時体制では、国民に能天気に生きられては困りますから(笑)。明治中期までの日本は、世界の憧れの国だったはず。当時の国際競争力は「文化」。つまり、ラテンの感性でありアイデアだったのです。

 ただ、本格的に今の保守的な日本人が始まったのは、高度成長期以降でしょう。戦後の「シャウプ税制」(1949年)で有名なシャウプ博士は、「この国の連中はわが国の税金で生活を援助しているのに、右から左に金を使ってしまって・・・。少しは貯金を考えろ」などと演説で言っているんです。日本人がラテンでなくなったのは、つい最近のことなんですよ。

 エンジニアには内にこもるタイプの人もいますが、強迫観念から新しいものは生まれないし、身につきません。「楽しくないことはやらなくてよい」くらいがちょうどよい。


──その「楽しい仕事」をできないエンジニアが多くいます。
森永:知り合いの化学メーカーの研究所長は、「俺の仕事はうそつきになることだ」と言います。仕事の決定権は、雲の上にいる時代遅れの人たちにある。だから、表向きは彼らにわかりやすい言葉で計画を話しますが、部下には「本当のことは黙ってろ」と口止めをして、好きなことをさせている。

 また、昔ソフトハウスにいたときの「不良社員」たちは、上に「無駄なことをするな」と言われながらも、勝手に遊んでいましたよ。COBOLと汎用機が全盛の時代に、やれデータベースだ、ネットワークだ、CGだとね。その彼らが、今では会社の屋台骨を支えています。

 制約はあるでしょうから、嫌な仕事がきたら一応それをこなして、時間をつくって、バレずに好きな仕事をやることです。自分で、あるいは仲間と組んでね。

 1982年ごろ、私は仕事で計量経済分析をしていたのですが、それと同じコンピュータを使って、日本海海戦のシミュレーションゲームを作りました。偵察機を飛ばしてレーダーで相手を見つける一方、空母の甲板に爆撃機を上げるかどうかの選択をする。上げないと攻撃できないが、上げた状態で空爆されると一気にやられてしまうというもの。当時の仲間と、シャープのPC「MZ-2000」を使って作ったんです。意外に評判がよくて、ソフトメーカーに売りにいったら、「88(NECのPC-88シリーズ)に乗せ換えてくれれば買う」と言われて製品化は断念しましたが……(笑)。

企業は雇用を守り、エンジニアは「下手な鉄砲」を数撃て!

──先ほど、今後は高付加価値型社会になるとお聞きしました。そのために企業は、どのようにしてエンジニアの能力を発揮させればよいのでしょう。
森永:大切なのは、「下手な鉄砲を数撃つ」ことです。そのためには、エンジニアが新しいことに挑戦できるシステムが必要になります。能力を生かすには、野放しにするのがいちばんですから。しかし、成功確率が低いので、失敗=リストラではだれもそんなリスクをとらない。だから、雇用を守りながらインセンティブを導入する。

 賃金は能力給などにして、当たればその分報酬をアップさせる。逆なら下げる。しかし、給与を極端に下げたとしても、雇用はきっちり保証するのです。給与が減っても飢え死にするわけではないし、テレビもエアコンもある生活はできるでしょう。

 エンジニアにしても、「ちょっとやってみようか」と思ったアイデアを形にできる。数多く撃っても全部はうまくいかないので、ダメならあきらめる。そう、女の子をラテンに口説くのと一緒です。いいなと感じたら思い切って声を掛けて、断られたらさっと身を引く。電柱の影からじっと見ているだけでは、いつまでたっても彼女はできないでしょ(笑)。


――森永さんが思う「エンジニアに託された未来」とは何でしょうか?
森永:先ほども言いましたが、私はエンジニアにアーティストでいてほしい。そうすれば、日本の将来は明るい。インドや中国が技術力を向上させている中、今後はアートの戦いになります。技術の感性でいうと中国はまだまだダサいですよ。センスでいえば昭和20年代の日本くらい。いくつもの強烈なブランドを持つイタリアには及びませんが、インドや中国が追いつく前に、もっと「遊ぶ」「ふざける」ところを伸ばさないと。

 アーティストは人に感動を与えます。しかし、自分が感動できないとそれはできません。日本人の本質である明るさと豊かな感性を生かして、技術を踏まえたアーティスト立国をつくってほしいですね。
森永卓郎氏

インタビューを終えて
森永さんのいう「大切なのは、『下手な鉄砲を数撃つ』こと」は、今の企業がいかにエンジニアに鉄砲を数多く打たせていないかの裏返しといえるのではないでしょうか? 経営者には心地よい響きとして定着した感のある「選択と集中」も、森永さんに言わせれば、「新しいことに挑戦しないシステム」といえそうです。また昔の不良社員が今、屋台骨を支えているという話からは、エンジニアに心の余裕を与えることが、将来の価値につながることを示唆しているのでは?
みなさんの職場は、「エンジニアの能力をどれぐらい野放しにしてくれますか?」(総研スタッフ/関洋子)

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