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やっぱりエンジニアはオモシロイ!
技術未来人インタビュー
エンジニアになった理由を突き詰めて考え
後悔しない人生を送ろう
株式会社イーシー・ワン
取締役副社長
最首英裕氏
EJB(コンポーネント)ビジネスでは、最先端をいく日本。その市場拡大を推進している最首英裕氏。コンポーネントの普及によって、ITエンジニアの未来は変わるのか。過去10年を振り返りながら、語ってもらった。
(総研スタッフ/関洋子)作成日:03.04.23
最首英裕氏
[PROFILE]
●サイシュエイヒロ
1961年、神奈川県生まれ。85年、早稲田大学第一文学部卒業後、エイ・エス・ティに入社。97年、米Spyglass日本代表就任。98年4月、イーシー・ワン設立、取締役副社長就任。2001年5月に創設されたEJBコンポーネントの相互利用、再利用を促進する「cBank」の普及、啓蒙活動にも積極的に取り組んでいる。
ソフトウェアエンジニアの生息圏は拡大している

最首英裕氏
――ソフトエンジニアの働く領域ついて、この十数年間でどのような変化があったと最首さんは見ていらっしゃいますか。
最首:1990年ごろというと、メインフレーム中心の時代でありましたが、オープンシステムへの移行が提唱された時代でもあり、企業は情報システムを武器に企業の競争力を増すことを考え始めた時期でした。主な導入目的はコスト削減。しかし今はコスト削減というよりも、システムを動かすことにより、どれだけ利益を生み出せるのか、会社として機動性がでるのかというところが問われてきた。つまり情報システムはよりアグレッシブなものになっているのです。

 このような基幹システムだけではなく、部門システム、モバイル、家電、自動車向けなどいろいろなところでソフトウェアが必要になっています。ソフトウェアを生産すること自体が増えている。そういう意味では、ソフトエンジニアの生息圏は拡大しています。

――働く領域の拡大につれ、役割にも変化があったとお考えですか。
最首:エンジニアの役割に関して、次の2点で変化がありました。従来のSI企業は人材の量を確保して解決することを図ってきました。しかし今ではシステムの使い手であるユーザー企業自身が蓄積した知的資産を有効活用することを求め出した。つまり人的確保ではもはや解決できないほど、システムの複雑性は上がり、エンジニアもそれにこたえられるスキルを持たなければならなくなった。これが第一の変化。

 次に技術の面での変化です。従来のソフトエンジニアはプラットフォームへの依存度が高かった。例えばメインフレーム屋、オフコン屋、UNIX屋というように同じソフトエンジニアなのにハードウェアによって制約があったのです。このように従来は単一の技術があればその中で守られてきたのですが、今ではJavaなどプラットフォームに依存しない技術を身につけなければなりません。
価値提供か労働力提供か、エンジニアも企業も2極化

最首英裕氏
──オフショア開発など、労働力はすでに海外に求める向きもあります。そうなるとますます日本のエンジニアに求められるものはより高度なところになっていくのでしょうか。
最首:最近、コンサル業界が売却や買収など再編されましたが、これも労働力提供ビジネスが行き詰まったということの証明です。労働力提供モデルではエンジニアの主体性を主張しなくてもよいという意識がありました。しかし今は、本質的な価値を提供されることによって対価を支払うという意識が加速度的に高まっている。これからはエンジニアも企業も自ら価値を提供するという主体性がなければ、相対的な価値は下がってしまうのです。付加価値の低いことしか提供できない人は、どんどん置き換わってしまう。

 今、私たちのビジネスであるコンポーネントバンクで面白いことが始まっています。コンポーネントバンクとはJavaで作った再利用可能なソフトウェアを蓄積し、それを新たな開発のときに再利用することを目的にしているのですが、そこで今、コンポーネントを蓄積しているのはユーザー企業なのです。ユーザー企業がこういうアーキテクチャー、アプリケーションを使ってシステムをつくりたいとSI企業に依頼する。しかも、SI企業には「どんなクオリティ、コスト、時間であなたはつくってくれるのですか」ということを求める。「ユーザー企業はわからないからわれわれに任せておけ」という時代は終わりつつあるのです。
 もちろんこれは一部の企業です。ユーザー企業が強い企業、弱い企業と2極化するに伴い、SI企業も2極化していくでしょう。


──ある調査によると、米国のITサービス企業はここ数年で半分に減ったといっています。日本でもそういう淘汰の時代が始まったといえるのでしょうか。
最首:米国と日本のSIはかなり違います。米国のSIは「パッケージ&カスタマイズ」が主流で、日本でいうSIではない。一方、日本企業は独自性のあるSIを好む。つまりまだまだ従来型の日本のSI企業も自分の間尺がわかっていれば、生き残ることができるのです。しかしその間尺が来年も再来年も同じでいいかというと、考えなければならない時期にきているのは確かです。それはエンジニアにとっても同じことです。


──そういう従来型のSI企業ではなかなかキャリアアップも難しいということですね。そしてその環境から抜け出せない人も多いようです。
最首:今の環境から抜け出すためにはまず、何のために今、エンジニアをやっているのか、今置かれている状況の中でできること、やりたいことを突き詰めて考えることです。面接の場で「あなたの5年後の目標は何ですか」という質問をすると、多くの技術者はプロジェクトマネジャーやコンサルタントをやりたいというステレオタイプの答えを返します。しかし「プログラマ→SE→PM→コンサルタント」というのは連続性のあるキャリアパスではないはず。キャリアはいろいろな役回りを点で埋めていき、どういう地形をつくりたいと思っているのかを考えること。それが目指すキャリアパスになるはずです。そういうことを考えるためにも意識転換は必要です。その手段として転職を考えてもいいのではないでしょうか。
10年後、業務知識は付加価値ではなくなってしまう

──このような厳しい時代を生きていくためには、技術はもちろんですが、そのほかにどのようなことに気をつけなければならないでしょうか。
最首:まずは文脈でモノを考えること。この業界は新しい技術がどんどん出てきます。しかしソフトウェアは前後の関連性のない技術が突発的に出てくることはない。このシステムはうまくいった、うまくいかなかった、この製品は売れている、売れていないというような必然性があるのです。それを考えれば、本質を見分けられると思う。例えばつまらない仕事に携わっていたとしても、その仕事には意味もあるし技術、人とのかかわりがある。それを今までやってきたことと結びつけ、そしてこれからの仕事にどう役立つかというような話の流れを組み立てて考えるのです。すると同じ技術を身につけてもその人なりの味がでる。

 次に技術のことを技術の言葉で考えないことです。スポーツや料理など別のことに置き換えてコミュニケーションするといろいろな可能性が見えてくるはずです。ソフトウェアは顧客の要望をまとめてつくり、それを確認する作業です。つまりコミュニケーションそのものといってもよい。宮本武蔵のような相手を殺す技術を身につければ勝ち続けられるというものではない。しかしエンジニアの中には例えば「新陰流」を身につければ、売れると思っている人も多い。勝敗を分けるのは技を役立つ技術に転換するために必要なコミュニケーション能力なのです。


最首英裕氏
――IT業界のエンジニアの未来は明るいとお考えですか。
最首:明るい未来にするためにも、日本のソフトエンジニアは変わっていかなければなりません。今はインドや中国は自国の中にビジネスがないので、労働力の提供に甘んじていますが、そういう形は、5年後には終わる。10年レインジで見れば、中国は飛躍的に産業が発展し、ビジネスノウハウのある人も大量に出てくる。そうなると業務のことを知っていることは付加価値ではなくなってしまう。

 ではどこに日本のソフトウェア産業の活路があるかといえば、先にも言ったとおり、日本の勝ち組企業が持つ独自ノウハウを共有化し、海外に展開していくことにあるのです。アジアはこれから伸び盛りのマーケット。アジア諸国の脅威論を考えるのではなく、各国とコラボレーションしてお互いに伸びていくことを考えるべきでしょうね。

――最後に最首さんにとって仕事とは何でしょうか。
最首:死ぬときに思い出すのはきっと仕事のことだと思うのですよ。そのときになって後悔するのは嫌じゃないですか。だから仕事を選んでいるし、絶対半端にはやらない。仕事は努力を続けている限りは必ず報われる。松下幸之助氏も「成功する秘訣は成功するまで続けることだ」と言っています。エンジニア人生を後悔しないためにも、何のためにエンジニアをやっているのかを今一度、突き詰めて考えてほしいですね。

インタビューを終えて
インタビュー中、何度か厳しい表情が垣間見えました。日本のIT産業の未来は、青空のようにスキッとさわやかに晴れ上がるまでは、やはりいかないようです。最首さんにとって仕事とは「人生」そのもの。「死ぬ前に思い出すのは、きっと仕事のことだと思うんですよ。中途半端な仕事をやっていて、死ぬときに後悔するの嫌じゃないですか」と……。仕事感と表裏一体の死生感。文中にもでてきた宮本武蔵と最首さんは、人としてのタイプは全く違いますが、自分に厳しいという点では似ていると感じたのは、私だけでしょうか。(総研スタッフ/関洋子)

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