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営業・顧客が「さすがプロ」と言う、ありがち質問への模範解答(1) 「社長ブログなら簡単にできるよね」と聞かれたら?
新しい技術が出た!となると飛びつく顧客や営業。ちょっと待って!その言葉、本当に意味、わかってます?――エンジニアならだれでも遭遇する、そんな「知ったかぶり」質問、あなたならどう切り抜ける?
(文/川畑英毅 総研スタッフ/根村かやの イラスト/岡田丈) 作成日:05.10.19
 次々に登場する新技術。腕に覚えのあるエンジニアなら、率先して仕事の中に盛り込みたいもの――自分にとってもスキルアップに通じるのだから、当然だ。
 しかしその一方で、「困ったちゃん」なのが、中身がよくわからないのに、「はやってるんだから、アレやってよ!」と言い出す顧客や営業。しかもその技術を使えば、現在の問題がたちまち解決しちゃうかのように思っているフシも……。

 使うツボを押さえなければ、せっかくの新技術もメリットどころかデメリットだらけになってしまう可能性だってある。そこはエンジニア、相手が「なるほどっ」と思わず納得の答えで切り返したい!

 というわけで、第1回は「ブログ・インターネット編」。「ありがち質問」と、それに対して、当編集部から、「例えばこんなお答えはいかが?」のヒントを組み立ててみました(監修:シックス・アパート株式会社エンジニア 関村昌義氏)。
ありがち質問1 「わが社もブログで情報発信したい!社長ブログなら簡単にできるよね」
解答のツボ
サイトの更新も簡単にできるのがブログのメリット。しかし、「ブログならやりやすいこと」「ブログではやりにくいこと」があるので、そのへんをきちんと考えるようにアドバイスしよう。
顧客の広報課長
 大流行のブログを、ぜひ情報発信に活用したい!「ホリエモンを見習って、社長ブログを立ち上げましょう」と説得中なんだけど、社長は「効果はあるのか?」といまひとつ乗り気でないんだ。
エンジニア
 ライブドア・堀江貴文社長の日記は、確かに、企業のブログ活用として注目されました。商品やサービスの販促のため、顧客とのコミュニケーションツールとして活用する例も出てきています。従来の電子掲示板とは違って、記事ごとにひとつのURLが固定されるので、外部からリンクされやすく、効果が上がるんですね。
広報課長
 それならますます導入しなきゃ。個人ブログもいっぱいあるくらいだし、すぐにできるでしょ?
エンジニア
 個人ブログの多くは、無料のブログサービスを利用していますが、今回は自社内で運営するお考えなんですよね?その場合は、まずブログシステムを購入して自社サーバーに導入、設定を行う必要があります。技術的に困難があるわけではなく、始めるだけなら簡単といってもいいでしょう。
 ただ、維持していくのはそれほど簡単ではありません。例えば、迷惑な内容が大量に投稿されるコメントスパム、トラックバックスパムが深刻化しています。コメント内に使われる言葉や発信元のIPアドレスでブロックするなどの技術的な対策が一般的ですが、新たなスパムの手法は次々出てくるので、常に新しい技術を導入していくことが必要です。ネットの最新状況をわかっているエンジニアでないと、万全の対応は難しいですね。
広報課長
 そこまでの手間をかけてブログを使うメリットがあるかだなあ。
エンジニア
 「書いた人の個性を出せる」というところにブログの大きなメリットがあるので、顧客と近い目線で商品やサービス、企業内容を紹介するページには適していますね。一方、非常に多数の商品アイテムを、多数のカテゴリーに分類しながら紹介したい、といった複雑な課題となると、ブログではやりにくくなってきます。
 また、ブログから自社ECサイトに誘導したいなど、ほかのサービスと連携させるのは、ブログシステムとは別の問題。そのあたりも含めてシステムをご提案しましょうか?
ありがち質問2 「自社サイトの管理が煩雑。CMSとかいうものを使えば、構築も更新も簡単になるって聞いたよ」
解答のツボ
企業の情報発信のスピードを速くするために大企業を中心に大掛かりなCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を導入する例が増えているが、「導入すればたちまち効率化できる魔法の技術」という勘違いは断固正すべし!
Web担当者
 ウチのサイトもコンテンツがやたらに増えてきたし、CMSに移行して効率化したいんだよね。
社内エンジニア
 CMSは、複数の人がかかわり、構造も煩雑なサイトで力を発揮するもの。極端な例だけれど、大量のコンテンツがあり、ページビューが多いサイトでも、1人で作って管理しているなら、導入する意味はあまりないんだよね。
Web担当者
 コーナーごとの担当者が管理していて、作業がダブったり、無駄が多いみたいなんだ。
社内エンジニア
 それならCMSがいいかもしれないね。レイアウト情報や機能をテンプレート化、テキストと分けて一元的に保存・管理するのがCMSだから、例えば、別のコーナーのためにほとんど同じページを再度作るといった手間はなくせそうだ。
Web担当者
 コーナーごとの体裁は、CMS化するときもそのまま残したいんだけど。ユーザーの評判も悪くないから。
社内エンジニア
 はっきり言って、「今のデザインのまま引き継いでCMS化」は、かなり大変なんだ。サイト全体の構造を整理し直し、デザインもある程度統一して全面リニューアルするのがむしろ楽という場合が多い。CMSは「ある程度標準化する」ことによって作業を効率化するところに強みがあるわけで、半面、「それほど自由ではない」ということは踏まえておいてほしいな。
Web担当者
 CMS自体は、汎用で安価なものが増えて、導入しやすくなってきてるんでしょ?
社内エンジニア
 時系列でページを自動生成してくれる以上に多くを求めないなら、ブログの管理画面を簡易CMSとして使う手もある。
 でも今回は、既存のCMSをベースにして大幅なカスタマイズをすることになるだろうね。先ほど言った「サイト全体の構造を整理し直す」のがタイヘンなので、まずは現状の構造を把握する必要がある。各コーナーの担当者を集める機会をつくってもらえたら、こちらのチームでヒアリングをしてもいいよ。
ありがち質問3 「これからは企業のメルマガをRSSって形で出すのが主流になるって?RSSってよくブログについているやつでしょ?メルマガとどういう関係が?」
解答のツボ
RSSはWebサイトの見出しや要約などのデータ(メタデータ)を構造化して記述するフォーマットのことで、いわゆるメルマガとは違うが、同じ目的で使う場合もある、と整理しよう。
販売課長
 「まだ新製品情報をメール配信しているんですか。こちらはRSSに変えましたよ」って販社から言われちゃったんだけど、ウチのサイトって遅れてる? 新しいタイプのメルマガに変えるべきってこと?
社内エンジニア
 中身を読ませるよりサイトへの誘導が目的というタイプのメルマガは、「メール」の形式から「RSS」という形式に移行しつつあります。このことを指して「これからのメルマガはRSS」と言われているんですよ。
 サイトの更新情報を自動的に抽出したファイルを、メールで送るのではなく、Webサーバー上に置いておくんです。ユーザーは、RSSリーダーというソフトを使ってメルマガのように読むこともできますし、ブラウザで表示させることもできます。
販売課長
 メルマガを作って配信する手間が省けるだけ?
社内エンジニア
 それだけでなく、ユーザーに情報が届きやすくなるメリットがあります。つまり、メールソフトは大量のスパムで溢れがち。そのため、メルマガを見落としたり、スパムと判断したりで読まずに捨ててしまうことはかなり多い。その点RSSリーダーは、ユーザーが設定したサイトの更新情報しか取り入れないので、中身が読まれる可能性が高くなるわけですね。
 ユーザー側も、スパムに煩わされることなく、たくさんのサイトの更新情報を効率的に把握できるメリットがあるんです。
 今後ますます一般化する技術なので、ウチでも効果的に使えるところはないか、ぜひ検討してみましょう!
ありがち質問4 「電話代、高いなあ。ウチも全国の支店網をネットでつないでいるんだし、内線から外線まで、全部IP電話にして経費削減できないの?」
解答のツボ
コストの低減がIP電話の“売り”だが、どこをIP化すればメリットがあるか、よく検討してもらう必要がある。
顧客の総務課長
 IP電話って、電話代かからないんでしょ?
エンジニア
 それは、従来の電話の料金が(IP化された部分で)かからないだけ。公衆電話回線(外線)をIP化するなら、既に通信事業者が提供している法人向けIP電話サービスを利用することになり、その料金がかかります。自社の拠点間をIP化するなら、自社のイントラネットを活用して、VoIP(Voice over Internet Protocol)技術を使うことになり、その導入コストやランニングコストがかかります。
 つまり、かえって高くつくこともありえます。御社の電話利用状況を把握したうえで、どの部分をIP化すれば経費節減になるのか、よく考える必要があります。
総務課長
 じゃあそれは検討しよう。ほかに何か問題は?
エンジニア
 既存の電話と比べて信頼性が若干低いという指摘については検討が必要でしょう。また、ネットがダウンすれば電話も通じなくなってしまいます。
 とはいえ、電話とPCの連携といったことまで考えれば、電話設備のIP化はいずれ必要になってきます。御社の将来の業務も視野に入れて、じっくり検討されるといいですよ。
ありがち質問5 「P2Pって、例の『Winny』とかでしょ?それって違法なんじゃないの?」
解答のツボ
日本ではすっかり「ダークサイド」の印象が定着してしまったP2Pだが、それは使い方の問題。エンジニアの観点からは、「特に配信プラットフォームとしては非常に有用性のある技術」と強調したい。
管理課長
 プロジェクトチームのコミュニケーションツールにP2Pを入れるって?それ、何か違法なんじゃないの?
社内エンジニア
 確かに「Napster」や「Winny」などが問題になっていますが、あくまでも「著作権の侵害や違法なデータの流通にP2Pを使った」点と、「そうした目的を前提にソフトが作られたのではないか」という点が問題視されているもの。P2Pという仕組み自体が違法というわけじゃないんです。
管理課長
 “よいP2P”もある?
社内エンジニア
 例えば話題の「Skype」(Skype Technologies社が開発した音声通話ソフト)のように、「あまり表には出していないけれど、実はP2Pの技術を使っている」ものもあるんですよ。広く使われているインスタントメッセンジャーなどにもありますね。サーバーに負荷をかけずに大きなファイルを配信・共有したり、処理を分散したりと、その有用性は高いと思います。
管理課長
 でも、ファイルが勝手に流通するんじゃ、情報が漏れ放題になっちゃうんじゃ?
社内エンジニア
 「Winny」などのように不特定多数がP2Pでつながる状態と、特定のメンバーがコミュニケーションツールとして使う状態とは別。アクセス管理を行って、情報共有を行う人、そうでない人をきっちり分けますから、ご心配いりませんよ。
次回予告 ありがち質問への模範解答(2)「セキュリティ編」の掲載は11月2日です。
 
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根村かやの(総研スタッフ)からのメッセージ  
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エンジニアに比べれば“素人”の私でさえ、もっとド素人な素人のトンチンカン質問につかまって目を白黒させることがあります。エンジニアのみなさんはさぞ手を焼いていることでしょう。この問答集が少しでもヒントになれば幸いです。

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