Column 01 ・・・ 搭載フリーな超小型モールド技術

 パワーウィンドウコントローラは、クルマのパワーウィンドウのオート作動を制御する装置である。

 パワーウィンドウモータは、車のドア内部に設置されるが、そのモータに小型コントローラを内蔵することにより、ドア形状を変えることなく、オート作動可能なモータが搭載できる。

 長辺30mmほどのセラミック基板に4個のパワーMOS、マイコン、制御IC、不揮発性メモリなどが搭載され、放熱対策として底部にヒートシンクが組み込まれる。それらの上半分を高耐熱モールド樹脂が覆う構造になっている。これを、デンソーでは「モールドハイブリッドIC技術」と呼んでいる。

 従来品はプリント基板に各種ICを載せるだけのものだったが、これをモールド樹脂によって覆うことでモジュール自体の耐久性が向上した。ただ、こうしたハーフモールド構造の場合、構造偏りによる応力が増大することが最大の難問。ヒートシンク部の樹脂応力を低減し、ヒートシンクとモールド樹脂との密着力を高める必要があった。

 ヒートシンクと樹脂の密着度を高めるためには、例えばヒートシンクのメッキにも気を配った。一口にいえば、メッキ表面を適度に粗くするのである。

 一度モールドで固めると、モールド内部やモールドに覆われた部品内部の解析が難しくなることも課題の一つ。そのため、デンソーではレーザー・デキャッパーによるモールド除去技術やCT-Xによる非破壊解析を新たに導入している。こうした解析技術の進歩も、モールドハイブリッドIC技術では欠かせないものである。

 従来品のようにモータ駆動にメカニカルリレーではなく、パワーMOSを使っているところも、この製品の新機軸の一つ。高効率のパワーMOSを利用することで、リレーを使うよりもモジュール全体の小型化が図れ、さらに、閉め切り時の静粛性も大きく向上する。これらはメカニカルリレーでは不可能なものだ。

 他にも不揮発性メモリは学習機能を受け持ち、ウィンドウの開閉位置を車種ごと、ドアごとに記憶する機能を受け持つ。

 こうした精密で、かつ小型化に関わる技術の場合、ノイズは最大の“天敵”だ。ノイズフィルタとしてコンデンサを使えばノイズは低減できるが、コンデンサの多用は全体の小型化という命題に反する。そのため、伝搬経路を閉ざし、配線経路を短くしてノイズ発生を抑えるなど、回路設計の見直しは必至だった。

 こうして確立した「モールドハイブリッドIC技術」は、2006年から量産化が始まった。現在はパワーウィンドウだけでなく、AT(オートマチック・トランスミッション)のコントローラなど、他のシステムへの応用も広がっている。