利便 ・・・ 最先端情報ナビゲーターをクルマに搭載する

 現在のクルマは、「走るコンピュータ」とさえ言われる。高級車なら、パワートレインから車内環境まで、100を超える電子ユニットを搭載し制御しているということも珍しくない。そして、ネットワークに繋がっていないコンピュータはよほど特別な場合を除いては考えづらいのと同様、クルマもまた、ネットワーク化の道を歩み始めている。

 クルマは、長距離を短時間で移動させてくれる便利な“アシ”。けれども、現在のクルマは、単なる移動の道具ではなく、“クルマに乗っているからこそ”のさまざまな情報をもとに人々の行動の支援をし、より高度な利便性を与えてくれる“頭脳”を備えるようになってきている。

 そんな進化の核となっているのが、ITS(高度道路交通システム)への対応だ。ITSは、IT技術を駆使し、ナビゲーションシステムの高度化、安全運転の支援、交通管理の最適化などを行うもの。たとえば渋滞や事故、工事、所要時間、駐車場・サービスエリアの空車状況などの情報を収集、送信し、個々のクルマのカーナビ・システムに反映させるVICS(道路交通情報通信システム)や、ノンストップで料金収受が行えるETCなども、このITSを構成する要素だ。これらは運転者の「便利」を実現する手段であるとともに、事故の危険性や渋滞の発生率を低め、ひいては環境への負荷を低減することにも繋がる。

 ITSは、いまや高度に電子化され、「走るコンピュータ」と呼ばれるほどになったクルマの「ネットワーク化」でもある。これもITSを構成する要素の一つだが、カーナビそれ自体の高機能化の流れも見逃せない。かつてはただクルマに電子地図を載せ、それをたどるだけだったカーナビだが、今では、前述のように通信機能は当たり前。自車の情報をフィードバックすることで、リアルタイムの交通情報を共有するシステムも実用化されている。最新の地図情報をネットワークからダウンロード、自動更新する機能も一般化しつつある。

 デジタルの地図にさまざまな属性情報を載せたデータベースをGIS(地理情報システム)、特にweb上でそれを活用するものをwebGISと呼ぶが、カーナビもまた、webGISとしての進化・深化を続けている。一方でカーナビは、ナビゲーション以外にも多くの機能を持つ「車載コンピュータ」としても使われるようにもなってきている。自動車関連業界で、通信・ネットワーク系のスキルを持つエンジニアが多く活躍するようになったのも、当然の話と言えるだろう。

制作・監修 Tech総研編集部 (執筆/川畑英毅 編集/宮みゆき)