快適 ・・・ 快適な空調・画期的なエネルギーイノベーション

 より快適な運転、より快適な走行を楽しめるように――。移動空間としてのクルマの快適性の追求は、運転の「気持ちよさ」を演出する要素であるとともに、運転者の負荷を低減し、疲労から来る一瞬の運転ミスなどを減らす、「安全性の追求」にも通じる。よりよい車内環境の実現のために、さまざまな技術が投入されている。

 子供の頃に憧れた、一昔前の名車に乗ってみる――今になってみれば古めかしいけれど、充分魅力的なライン、シートやハンドルを通じて伝わってくるエンジ ンの響き。“クルマ好き”なら、思わずニンマリしてしまうというものだ。もちろん、それは充分に魅力的なのだけれど、ふと我に返って、今の新しい車と比較 してみると、車内の静寂性や快適性が、この間に格段に進化していることに、改めて気付かされるのではないだろうか。

 室内の広さで有利なFF車が、小型車から大排気量の乗用車にまで普及したのはここ20年ほどだが、FF車になってからも、エンジンやトランスミッションの小型・高性能化、配置の工夫などもあり、同じ車格でもはるかに室内に余裕が生まれている。さらには防音・防振技術の進化、人間工学に基づくレイアウト設計、そしてもちろん、クルマを構成するさまざまな機構の制御技術の進化が、日進月歩で「快適さ」を広げているのだ。

 長時間の運転でも疲れづらく、よりくつろげる空間に。そんな「快適さ」を演出する要素の一つとして、空調システムも上げられる。現在では、よほど特殊なクルマでない限り、乗用車ならカーエアコンはほぼ標準装備。しかし一方で、カーエアコンは通常、エンジンの動力でコンプレッサーを稼動させるので、その効率がエンジンの負荷に関わってくる。また、場合によってはそれ自体が騒音や振動源となり、「快適性」を乱してしまうこともあり得ないことではない。

 車載機器であるからには、小型・計量であることは絶対の命題。優れた熱交換技術、冷熱サイクル技術が必要とされる。また、環境対策としての「フロンフリー化」も進められている。さらに、温度・湿度の設定だけでなく、花粉や道路の臭気などをシャットアウトするフィルタリングの技術も重要性が増している。エレクトロニクスだけでなく、熱力学、流体、化学分野のエンジニアも関わる、先端の技術開発の場なのだ。

制作・監修 Tech総研編集部 (執筆/川畑英毅 編集/宮みゆき)