安全 ・・・ 事故のない未来を目指したクルマつくり

 運転者の意に応え、快適な移動を約束してくれるクルマ。しかしそれは同時に、“命を預かる機械”であることも忘れてはならない。「万が一の事故の際、人の安全をどう確保するか」。さらにはそれを超えて、「事故を起こさないクルマへ」――。そんなテーマにおいても、カーエレクトロニクスは大きな力を発揮する。

 クルマは人が運転をするもの。……そんな当たり前のことを、と言われるかもしれないが、昔のクルマと、今のクルマを比べれば、その「運転」の中身はずいぶん違う。
 例えば、パワートレインがクルマの「走る」機能を担う部分とすれば、ステアリング機構はクルマを「操縦する」機能、マン・マシン・インターフェースを担う。しかし、人が自分の力で“ハンドルを切る”のは、いまや少数派。特に乗用車では、すでに電動パワーステアリング(EPS)搭載が主流となっている。現在のEPSは、ただ、人のハンドル操作をモーターの動力で補助するだけの装置ではない。各種センサーで人のハンドル操作を読み取り、そして路面からの車輪の“感覚”を運転者に返す。走行の直進回復の適切な「戻り感」のフィードバックなど、それは、「自然な運転感覚を演出する」装置にまで進化を遂げている。

 それだけではない。高速道路での安定走行、あるいは縦列駐車・車庫入れの補助など、ステアリング機構を含め、自動車の走行や安全に関する制御はますます高度化を続けている最中である。
 例えば、走行中のクルマが前方の障害物を検知、ドライバーに警告するとともに、いざとなれば自動でブレーキが掛かるシステムはすでに実用化されている。それ以外にも、悪天候下での走行時に周辺状況を検知したり、信号などの交通情報を把握したり、一方では運転者の状態もモニタリングしながら運転支援、さらに時には人の行動を先取りし、アクチュエータによってクルマが“能動的”に運転に関わってくる、より高度な安全対策の開発も進められている。単に万一の事故の際に安全な車を作るのではなく、クルマが未然に事故を“回避してくれる”技術が登場してきているのだ。

 かつて日本でも放映されたアメリカのテレビドラマ、「ナイトライダー」には、高度なAIを搭載し、自ら考え行動する“ドリーム・カー”が登場していた。そんなドラマをおとぎ話と片付けられない、クルマが単なる「道具」ではなく、よき「相棒」になる日が近付いているのかもしれない。

制作・監修 Tech総研編集部 (執筆/川畑英毅 編集/宮みゆき)