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転職に迷ったら、まずはこれで見極めたい 会社の冷たいシグナルチェック法
会社のコア事業部にいると思っていても「ある日突然、会社からの三くだり半」も珍しくないこのご時世。「自分は会社に必要とされている」という自信が幻想に変わる前に、見極めたいのが会社の本音。あなたもチェックしてみませんか?
(取材・文/入倉由理子 総研スタッフ/木下ミカエル)作成日:03.04.09

THANKS! 今いる会社へのしがらみから転職できずにいたら、意外に企業側の本音は冷たかったという実態を聞くことがあります。日ごろから、もっと冷静に、賢く会社とつき合いたい――そんな皆さんの声から今回の企画が生まれました。
Part1 || 「会社の本音」に愕然とするエンジニアたち
Part2 || ベテラン人事担当者が明かす「人材選別の舞台裏」
Part3 || 「冷たいシグナル」を見分ける5つの Check Point
Part1 「会社の本音」に愕然とするエンジニアたち

33歳・研究開発職も「突然の出張取消し」にあ然

 「今までこんなにガンバッてきたのに、何で?」
 ある日突然、社内での自分の存在価値の低さに気づいて愕然とする。最近、そんなエンジニアが増えていると耳にしたTech総研では、聞き取り調査を開始した。集まった声の一部を紹介しよう。あなたにもこんな経験はないだろうか?


大学の研究室との共同研究時、会社は部長推薦を受けていた自分を突然外し、後輩を送り込んだ(39歳・自動車・設計)
仕事のアサインが希望どおりにならなくなり、補佐的な仕事が多くなった(31歳・ソフトウェア・開発エンジニア)
長期海外出張の予定を取り消され、代わりに同僚のエンジニアが派遣されることを知り、愕然とした(33歳・メーカー・研究開発)

 こうした突然の「会社の仕打ち」は、何も会社の不採算部門や枯れた技術スキルのエンジニアを狙いうちにすることに限ったことではない。事業のコア的な存在や、将来の有望な先端技術開発やそこに携わるエンジニアも標的になっているのは見逃せない。

昇進や昇給の冷遇で終わらず、退職を迫られる場合も

 近年、かなり早い段階から社内人材をふるい分け、おのおのに対して明確に対応を分ける企業が急増している。

 「実は10年前から、外資系に限らず国内企業でもかなり早期選抜に関する話は出ていたんですよ」と語るのは日本労働研究機構の八幡成美氏だ。

 「すでに企業側は、昇進プロセスや昇給などについて水面化で対応の差別化を図っていましたが、まだその差は微々たるものでした。しかし、ここ数年、厳しい経営環境が続いて企業側に余力がなくなり、明らかに待遇差をつけるケースが増えているのです」

■幹部候補育成のための「早期選抜」は
 今後も加速する?


人材マネジメント部門で
今後取り組んでいく課題 TOP 5
人材マネジメント部門で今後取り組んでいく課題 TOP 5
これは2001年時点の調査だが、多くの企業で「次期リーダー育成」が最重視する課題になっていることは興味深い。次期リーダー育成のためには、対象となる人材を絞り込むための早期選抜が不可欠となる。

 昇進や昇給面での問題だけではない。「上司から技術系の部署は完全縮小になると、暗に転職したほうがいいことをほのめかされた」とコメントを寄せてくれたT氏(数カ月前にSI企業に転職・45歳・課長)のように、企業側が退職をほのめかすケースも増えている。

 突然企業側から三くだり半を突きつけられる前に危険なサインは出ていないか、常にアンテナを張っておくべき時代がやってきたのだ。
Part2 ベテラン人事担当者が明かす「人材選別の舞台裏」

やはり人事より手強いのは、直属の上司!?

外資系ソフトウェアメーカー 人事担当 K氏
外資系ソフトウェアメーカー
人事担当 K氏

大手ハードウェア、ソフトウェアメーカーの人事畑を渡り歩いたベテラン。企業側としてリストラに立ちあった経験も持つ。
 では、企業はどのようにして人材をふるい分けているのだろうか。自身も大手ハードウェア、ソフトウェアメーカーと渡り歩いた経験を持ち、国内外企業の人事制度にも詳しい外資系ソフトウェアメーカー、人事担当者のK氏に質問をぶつけてみた

 「……それは、現場の意見を吸い上げるしかありません。人事は現場のマネジャーとコミュニケーションをとって、個別のエンジニアの働きぶりを知るわけです」
 K氏の返事はいたってシンプル。とすると、直属の上司の評価でその人の将来が決まってしまうことになりかねないが……。

 「もちろん、そうならないようにするのが人事の役割でもあります。ただし、エンジニアの場合、自分が一生懸命仕事をしていることは、上司も周囲もみんなわかっていると誤解していて、自分の仕事の成果をアピールしない人が多い。実はそこが落とし穴になって、評価に悪影響を及ぼすことも多いんです」

必要な人材は5割?1割?

 企業側は常に「必要な人材」と「そうでない人材」をふるい分けている。

 リストラに立ち会った経験も持つK氏は、
 「早期退職募集をするときには、企業側はすでに辞めてもらうターゲットを決めていることが多い」
と語る。辞めてもらいたい人、残ってもらいたい人には必ず別々に面接するそうだ。それはもちろん、必要な人材を残すためだという。

 ちなみに、現在SI企業の課長職である前述のT氏は、
 「以前いた会社では、『必要な人材』の割合は当面は『5割』、最終的には『1割』になると噂されていた」と語ってくれた。

 また、K氏によれば、外資系の場合、社員が「必要となくなりつつある存在」になった場合は、直接社員に警告を与え、はっきり会社側の真意を伝えることが多いようだ。

■「会社に対する依存心/幻想の大きさ」と、「企業側から三行半をつきつけられた際のショック量」との関係

「会社に対する依存心/幻想の大きさ」と、「企業側から三行半をつきつけられた際のショック量」との関係
企業側が期待する以上に、会社への依存心が高くなり、大きな幻想を抱くようになると、企業側から「冷たい仕打ち」を受けた際のショック量が増大する。依存心がある一定レベルを超えると、ショックを受ける度合いもさらに高くなる。

●企業に対して抱く「依存心」や「幻想」は、成功体験ともいえる以下の項目で急増しやすいので要注意だ。

□高ポスト
□コア(花形)事業部のメンバー
□勤続年数の増加
□上司に気に入られる
□社内表彰の経験

 「弊社では、ある社員が長期にわたって期待以下の成果しか挙げられない場合、本人と面談して3カ月から半年の猶予期間を定めて、『〇カ月の間にこの課題をクリアできなければ辞めていただきます』と書面を交わし、警告をします。しかし、これは日本企業では難しいでしょうね」

 一方、今回の調査で、国内企業に勤務する中堅エンジニアからは、「最近、会社側の本音が見えづらくなってきている」(33歳・ソフトウェア・SE)といった声が多く聞かれた。
 彼らの一部には、会社側が期待する以上のコミットメントを持ち、突然の「会社からの冷たい仕打ち」にショックを受ける傾向があるようだ。特に近ごろは「がむしゃらにやっただけ、報われる」という図式が見えにくくなり、漠然と不安を抱いている人もいるらしい。

 では次に、まだ会社の本音がわかりにくい環境である日本企業側の「冷たいシグナル」をどう察知すればよいのか考えてみよう。
Part3 「冷たいシグナル」を見分ける5つの Check Point

 ここでは、集まった意見をもとに、会社の「冷たいシグナル」のチェック法をTech総研が考えてみた。……あなたは、どう判断する?

Check Point 1 「デキル」上司が他部門も兼任するようになった

 自分の部署にいた「エース的な」人材が急な異動でいなくなる、籍は置いていても他部署との兼任になり(自分の部署の)主務から外れる、という動きには要注意。事業撤退などを理由に、部署自体が丸ごと消える可能性もあるからだ。企業は、経営戦略上重視する部署に「デキル」「カリスマ的な」人材を置きたがるもの。課の人数だけを見て、「まだそこそこ人はいるから」と安心してもいられない。社内で一目置かれるキーマンの動きにはさりげなく注目した方が良さそうだ。

Check Point 2 ほかの部署では開示されている事業戦略が知らされない

 社員として開示、もしくは指示されて当然の重要事項が伝わってこない。同じ部署内での「仲間はずれ」であれば誰でも危機感を持つかもしれないが、怖いのは部署自体が社内で「仲間はずれ」にされていて全く情報が来ないとき。課長に事業の方向性を尋ねても曖昧、もしくは何も知らない様子だ、他部門の同期と世間話をしていて、「え!?コレ知らないの?」と言われたら、社内での自部門 の立ち位置を疑ってみよう。

Check Point 3 最近、「職場のお助け役」として重宝がられている

「今までサードやセカンドを守っていたのに、突然ライトに回される。担当分野の変更は、会社の本音を垣間見る瞬間」とソフトウェア・開発設計エンジニア。開発の中枢部分を担当していた人が、急にだれかのサポートに回る。「そんな場合、人が足りないから控え選手にならないが、人に充足感が出たら席がなくなる可能性もある」ともいう。仕事が次々とやってくるから安心、というのではなく、その仕事、自分の担当分野の役割が持つ意味を常に考えておく必要がありそうだ。

Check Point 4 同僚、同期が受けていた研修の案内が自分には来ない

 必要な人材にはトレーニングの機会提供も多いと考えがち。「実際には、ギリギリの人数で仕事を回す会社が多いので、与えられる仕事の量という意味では、差がないと思います」とT氏。しかし、教育研修の機会には、期待度によって差が出てくることも。「心配であれば、次のキャリアステップに進むための研修を受けたいと希望してはどうでしょうか。必要とされているかどうかはともかく、現状の会社の中での位置づけ、評価はわかるはずです」(T氏)

Check Point 5 上司が自分の目を見て話さない。挨拶の声が小さい

 イザというときの連絡手段はメールでも可能な時代。「話すよりもメールの方が気楽」という人も多いだろう。一対一のコミュニケーションはつい軽視しがちになりがちだが、ボディ・ランゲージはあなどれない。面接の際にあなたの目を見て話さなくなった、「おはよう」の声が小さくなった、日常会話が減った……。「なんとなく気まずい」裏に、会社側の本音が隠れていないともいえないのだ。


作者

白石崇 氏

筑波大学大学院教育研究科産業カウンセリングコース在籍。本業は、企業向けWebコンテンツ制作会社である株式会社ライトアップ(http://www.writeup.jp/)代表取締役。自らのHPで「心理学ショートショート」を連載中。
http://www.shinrigaku.com/
大人気のメルマガ「心理学ショートショート」の著者が語る!!
会社の本音を知りたいあなたへ

「手厚い対応」の裏には意外な本音が隠れていることも

 「会社から必要とされている」かどうかを明確に判断できる方法は、心理学的には残念ながらありません。しかし、常に上司から手厚くフォローされているから、大切にされているだろうと考えるのは、実は勘違いであるケースがあります。
 心理学上で「互恵性」という言葉があります。
 人は、自分が相手を助けたり、尽くしたりする量と、相手に自分がされる量が同じ、つまり貸し借りの量が同じでないと、心地いい関係とは思えないのです。
 自分がそれほど仕事で成果を挙げているわけではないのに、妙に褒められる、気を使われるというのは、とてもバランスの悪い関係。部下を「必要ない人材」のグループに入れなければならない後ろめたさから、上司が優しくなることもあると思います。

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木下ミカエル(総研スタッフ)の取材を終えて
 皆さんはどうやって「会社の本音」を見極めていますか?
 「愛情が幻想に変わるとき」は、なかなかつらいものです。恋人や夫婦と同じように、会社との関係も思わぬところに真実があったりします。ぜひ、あなたの場合の「会社の本音の探り方」について、総研まで情報をお寄せください。
 また、会社側の冷たい対応が原因で転職した場合、「同じような状態に陥らないためにはどうしたらよいか」というのも気になるところ。転職後、あなたが心掛けてきたことなどをぜひ総研まで教えてください。

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