社長業は迷いながらできる仕事じゃない
やりたいことがあって、夢を持っているのなら、追ってみてもいいと思うよ。ただ、ちょっと考えてみてほしいのは、日本には今、300万社くらいの会社があって、それぞれの会社に社長がいるわけだけど、日本の人口から見たらどうだろう。1億2700万分の300万人くらいしか、社長にはなっていないことになるよね。つまり、社長と言われる人間は、何かしらの特異性を持っているわけです。たとえそれが、一人だけの小さな会社であってもね。
そう考えると、無理に「社長になるんだ」と、決めつけなくても、自分が本当に社長業をやりたいのか、しっかりと見つめ直してみることも必要だよね。そこで迷いを感じるくらいだったら、やめるべきだと僕は思う。社長業というのは、迷いながらできる仕事ではありません。
迷いがあると、どうなるか。失敗するんです。会社の経営って、そんな甘いものじゃない。僕が今まで見てきたなかでも、「独立する」と断言した社員が、心の中で「俺、経営者なんて向いてないよな」って不安に思いながら、「でも、みんなの前で宣言したんだから」って、無理に独立するケースがあるんですね。でも、そういう人は、ほとんど失敗しているんですよ。
欲が強い人ほど、成功する確率は高い
僕は、著書などで「夢に日付を」と、夢を実現させる日程を決め、それに向かって日々努力するよう言っているので、意外に思われるかもしれないけど、夢を途中で変えるからって、悔しがることはないんだよ。社長になるには、たとえ両手両足を縛られても、「社長をやりたいんだ!」って、暴れるくらいに止められない気持ちがあって、初めて社長になる夢に向かっていけるんです。あとは、会社をとおして、自分のどんな思いを形にしたいのか、つまりミッションをどれだけ強く持っているかが重要になる。
しかも、事業というのは、ものすごく欲の強い人が成長させるんだよね。これは、高い志を持つべきだという僕の持論とは逆説的になってしまうけど、現実には、儲けて金持ちになりたいとか、女性にモテたいとか、たとえそういった次元であっても、強い欲を持っている人は成功する確率が高い。要は、社長って、アクが強くないとダメなんだ。じゃあ、僕はどうかというと、若いころから、納得いくまで上司にくってかかっていたね。上司にとっては、僕ほど使いづらい人間はいなかったと思うよ。
だからね、あなたのように「サポートするのが向いている」と言われるような、アクが強くなくて、人のいいタイプには、社長業って難しいと思うんだ。あなたの言うとおり、人には向き不向きがあって、別に経営者が偉いというわけではない。人生において大事なのはね、「それぞれ持って生まれてきた能力を、いかに最大限に活かすか」ということなのだから。