倒産まで待っても、失うのは数ヵ月分の給与だけ
こういう人って、ルーレットの赤と黒を迷って、ハズしちゃうタイプだよね(笑)。いつもおいしいところ取りをしようとして、悪いほうへ悪いほうへ行っちゃう。もちろん成功する人だって、常に「当たり」を選んでいるわけではなく、ハズすこともあるんです。じゃあ、どこが違うか。成功者はもしハズレを選んでしまったとしても、ガマンできる忍耐力があって、その状況を乗り越えようと頑張れる人だと思う。
もし、同じ状況に僕が置かれていたら、会社が倒産していくさまを最後まで見ようとします。みんな、ドラマだったらこういうシチュエーションを面白がって見るでしょう。それなのに、なぜ現実に「主人公」になりそうになると、その場から逃げ出そうとするんだろうか。「リスクがあるから」というかもしれない。でも、あなたは経営者じゃないでしょ。経営者だったら、自分の金が何千万、何億と失われていくんだから、当然大きなリスクを伴います。でも、雇用されている身であれば、倒産するまで待ったところで、せいぜい2、3カ月分の給与を失うくらいで済むじゃないですか。
その失った2、3カ月分の給与は、長い目で見れば、多くのことを学ばせてくれた「授業料」。「なぜ経営危機に陥ってしまうのか」「会社が危ないときにはどんなことが起こるのか」「いざというとき頼りになる人、ならない人」など、本やテレビではなく、自分の目でつぶさに見ることができる。
器用に生きようと思わないこと
この貴重な体験は、もちろん次の会社選びに役立つだろうし、面白い上司になるためのいいツールにもなると思うよ。若いヤツらは、経験談を話すとやたら面白がる。悲惨な話は特にね(笑)。「スゴイ経験をした上司」って、一目置いてくれる人も多いはずです。
何より僕が言いたいのは、「人も会社も愛さなければ愛されない」ということ。実際はどうかわからないけど、あなたの言葉から「愛社精神」を感じることができない。僕もこの会社を始めて、苦しかった時代がある。その時代に逃げ出さず、助けてくれた社員には恩を感じて、やっぱり大事にします。
今すぐ辞めて転職活動したとします。面接で「倒産しそうなので転職活動を始めました」という応募者を歓迎する会社は少ないと思うんです。僕なら、「経営危機でしたが、最後まで社長と一緒に頑張りました。給与は半年もらえなかったけど、貴重な勉強ができました」という人を評価します。器用に生きようと思わない人のほうが、最終的には得をするんじゃないかな。