かっこをつけなければラクになる
本人にとっては深い悩みなんだと思いますよ。人と目を合わせることができないのは、僕もかつてそうでした。強い近視だったから、人の顔をにらむように見てしまってね。「そんな風に人の顔を見るな」って親父から注意されて、いつも相手の顔を見ないように話してましたよ。しかも、中学2年の時にクラスの男子と女子間でもめ事があって、それから一切女の子と口をきかなくなったんです。ひどいことを言われたんで、意地になって話さなかった。男同士で「硬派の会」なんか作って(笑)。女の子から話しかけられた時だけ、敬語で答えてましたもん。
一度、女の子から告白されて交換日記をしたことがあったけど、直接は話をしなかったんです。意識しすぎるとしゃべれなくなっちゃうんですよね。そのまま卒業して高校は男子校だったから、もう最悪(笑)。女の子と話す機会もなく、稽古漬け。相撲部屋に入ってからも、飲みに行って口説いてる仲間はいたけど、僕には信じられなかった。女性に関しては非常に奥手でしたね。
そんな感じで、僕も女性の前では話せなかったんですよ。ずっと長いこと。女性に限らずとも、勝負事をしてる現役時代は、「なめられちゃいけない」って強く思ってたから、殻を作ってかたくなにしゃべらないようにしてたんですね。きっと、ものすごく生意気に見えてたんじゃないでしょうか。
ところが、相撲をやっていく中で否が応でも人前に出たり、女性とも話す機会が増えて、20代のある時に「ああ、何もかっこつけずに話してしまえば、それでいいことなんだ」って、すーっとする感覚を味わった。それから変わりました。とても気持ちがラクになったんですよ。その後、親しい者同士の集まりがあると、すぐに服を脱いじゃう友達の真似して僕も彼と同じことをやってみたら、もっとラクになっちゃった(笑)。だから、今となってはいくらでもピエロになれる。今はもう自分のことを何でも隠さずに言いますよ。かっこつける必要もないし。くだらないことだけど、そうやって、何がきっかけになるかわからないものですよね。
気の合う人とたくさん話して慣れよう
だからあなたも、まずは異性同性問わず、気の合う人としゃべっていればいいと思う。苦手な人とは自然と話さなくなりますよね。冗談も出なくなるし。「この人と話していると楽しいな」という人としゃべりながら、だんだんと自信をつけていくのがいいんじゃないかな。
もしかすると、男としゃべっていても相手の顔を見てないんじゃないかな? 僕も弟子に向かって、よく「人の顔見て大きい声で返事しろ」って言いますよ。僕らは寝食共にするから、これを言ったら嫌われるかなってことまで注意するんですね。でも、僕の立場は嫌われるくらいでいいと思ってますから。あなたは、そうやって周りでアドバイスしてくれる人はいないのかな。
もし、人の顔を見て話していないのだったら、そのことから練習してみるといいと思う。そして次に、周囲でいいと思う人のまねをしてみる。さわやかだと思う人、かっこいいと思う人、人望のある人のしぐさをまねしてみるとか。そうやって、少しずつ自然に話せる自分に変えてみたらどうでしょう。