チャレンジして世間から評価を受けてみよ
チャレンジすべきでしょう。好きな道があって、やり直したいと思っているのだから。才能がないことを障害に感じているようだけど、なぜあなたがそう思うのか。誰に判定をされたのでしょうか。もし、学生時代に成績が悪かったとしても、それは学校の先生レベルでの評価ですよね。そんなの全く当てにならない。デザイナーやクリエイターというのは「商品になってなんぼ」という世界。一度世間に出て、評価を受けてみればいいじゃありませんか。
デザイナーとしてやっていこうとするなら、学校の成績や評価のような、人のつくった価値に左右されないことです。自分の価値に自信を持って、前に押し出していこうとする積極的なメンタリティがなくてはいけません。僕のところにいるアシスタントを見てもそうですが、消極的な子は消極的とわかる絵を描いてしまう。だから「それはお金になる絵じゃない。もっと思い切って描け!」と厳しく言います。作品に対して気持ちを強く前に出していくことが大事。上手い下手ではないんです。
そういったメンタリティに加え、漫画の世界でプロになれるのは、オリジナリティを持っているタイプ。個性的なオリジナルキャラクターを描ければ、黙ってもプロになります。それとは相反するかもしれないけど、人のいい部分をいろいろと吸収しながら自分のものとして見せることができるとデビューが早い。つまり、「どこかで見たことがあるような」と思わせるオリジナルが、商品になりやすいということなんです。
求められていることと期日を守るだけでいい
僕だって、漫画家としてきちんと勉強をした訳でもなく、才能だってなかったですよ。ただ、採用されるためにはどういう漫画を描けばいいのか、人気のある作品について調べたんです。どんな絵で、どんなキャラクターで、どんな構成にしているのかとかね。コミック誌一冊にに20本漫画が掲載されていても、一人の人が読むのはせいぜい5〜6本。癖がある読みにくい漫画は飛ばされてしまう。だから、癖がなくて誰でも読みやすい漫画を描くように心がけてきたんです。デザイナーであれば、まず発注者側かどういうことを求めているのかをしっかり把握し、最大限にそれを取り入れた仕事をきちんとするということです。
雇う側の立場からアドバイスをすると、仕事の期日を守ることが重要。これができない人はけっこういるんです。デザイナーというと、あっと驚かせる斬新なデザインをするのがいいと思われがちですが、そうじゃない。期日を守ること、それにプラスして着やすい服だとか、わかりやすいデザインで見せるといった、求められた部分に答えることができれば、「あの人、きちんとやってくれるね」となって、次の依頼がくるものです。僕も必ず納期より早めに仕事を仕上げるようにしてきました。打ち合わせに遅刻をしないこともそう。時間と期日にルーズでは、信用してもらえません。
漫画とかデザインといったクリエイティブな仕事をしている人は、とかく時間や期日を重視しないタイプが多い。そこをきちんとできることを、あなたの個性にすればいいんです。それならできるでしょう。しかもあなたにはやる気がある。雇われるかを気にしているけれど、雇う側が見ているのは、才能ではなくやる気。あと、面接で見るとしたら、清潔であることかな。僕なんか、アシスタント募集をして面接に持って来る作品はほとんど見ませんよ。そういうものです。