僕は後ろ向き、60歳、人生に失敗しています
ああ、いますね。何事にも前向きでポジティブにというタイプ。そういう人は人間として構成しているものが自分とは違うように思います。でも明らかに、そういう考え方の人のほうが、人生の成功者は多いですよ。人生をすごろくに例えて60歳があがりだとすると、前向きな人はサイコロのいい目を出しながら、ちゃんとうまいこと60歳であがっていくんです。その後は20年くらい余生を楽しめるんですね。
僕は前向きとは全く逆で、後ろ向きな男ですからね。60歳になったんですが、人生に失敗してます。すごろくで全然あがれないんですよ。サイコロを振っても「何回休み」とか「振り出しに戻る」っていうのばかりが出ちゃうもんだから。人生をあがりに持っていけないと本当に大変でね。自分でもどうしたらいいかわからないくらいです。
2003年に脳梗塞を患ってからというもの、視神経が戻らずに「視野狭窄(しやきょうさく)」になって、自分の足下もよく見えないんですよ。僕がそのことで悩んでいると、周りからは「もっと大変な人もいるんだから前向きに考えな」なんて言われます。でも実際に目が見えにくいことは、自分でもどうしたらいいのかわからない。「慣れるしかないよ」と言われても、それは答えになっていない。僕はもっと具体的な情報や答えがほしいんですね。いくら前向きと言われても納得できませんわ。
「前向き」は追いつめられている人の言い訳
だからね、あなたもそういう「前向きに」とばかり言ってくる上司には「じゃあ、どういうことが前向きなことなのか、具体的に教えてください。私はこんなふうに大変なんです」と聞いてみたらどうでしょう。「前向きに」はその上司の口癖になっているのだから、「ただ前向きにばかりではわかりません」と、説明を求めてみることも大事やと思います。まあ、僕は思うんですけどね、本当にすごくツイてる人やラッキーな人って、部下に対してそんな「前向きに」としつこくは言わないですよ。追いつめられている人の言い訳ですよ。
説明を求めると、上司から「そんなの自分で考えろ」と突き放されるかもしれません。そうしたら、それ以上食い下がるのはやめて作戦変更。今度は上司の個人的な好みや趣味を探って、それに合わせてみることですよ。僕は13年間、朝のTV番組の司会をしていたんですが、上司である番組のプロデューサーの趣味や好みを把握して、「こういうことを求めているんだろうな」と、合わせるように気をつけていました。ゴルフはやっていなかったんですが、番組の制作部長に誘われてやるようになったしね。もともと、僕は自分勝手な男で、お酒の席やカラオケが大嫌いでね。付き合いはものすごく悪いんですが、仕事での目上の人にはできるだけ合わせて、嫌われないようにしていました。
もしかすると、あなたもそうやってみたら、意外と上司の機嫌がよくなって、「前向きに」なんて、うるさく言わなくなるかもしれませんよ。自分と違うタイプの人にいくらわかってもらおうと頑張ったところで、わからない人はわからない。それならそれ以上ぶつかるようなことはしないで、寄り添ってみましょうよ。