つらい経験は、“いい女”になるためのレッスン
私はとても怒られやすいタイプだから、あなたの気持ち、よくわかるわ。まだ20代の頃、舞台の稽古中、「何やってるんだ!」って、私ばかりが大物俳優さんたちの前で演出家に怒られて、よく涙を流していました。後から考えると、「愛されていたのかな」と思うんだけど、怒られているときはそう思えないのよね。そういう経験を積んで、いつも「絶対に怒られないように」と頑張ってきて、私も今年で60歳。何歳になってもずっと勉強なのよ。
不思議なもので、落ち込んだときは自分が一番不幸なんじゃないかって、悲劇のヒロインみたいな気分になっちゃうのよね。だけど、それはいい女になるための経過なの。ずっと何の苦労もなく過ごしていたら、魅力も何もない女になるわよ。できる限り、つらい経験は自分からしておいたほうがいい。あなたの悩みも絶対に、いい女になるためのレッスンなのよ。
あなたも私みたいに女優になったつもりで、そのつらい状況をひとつの物語と考えて演じてみたらどうかしら。そうすれば、そのつらい状況も楽しめると思うの。そして、どんな経験も、「いい役をもらったわ」と考えるようにしてみたらいいんじゃないかしら。
女は30歳を過ぎて、初めて“いい女”になる保育園に入るようなもの。まだ20代じゃ、その手前なのよ。私は30歳で自分の成人式をしたんです。20歳で振り袖を買ったけど、「まだ大人じゃない」と思って袖を通さなかったの。自分のことに責任を持てると感じたのは、30歳になった10年後だった。そう考えたら、あなただってまだ成人式前じゃない。
経験を積むほど、いろんなことを感じ取れる
それにね、立ち直れないって言うけど、悩んだ人たちはみんな、そのときは簡単には立ち直れなかったはずなのよ。今は平気な顔をしてるように見えても、渦中のときは、ずたずたになっていたはず。私も同じように、家族にはつらい顔を見せないようにと、ひとりで部屋で泣いたり、誰にも言えないから、祖父や父のお墓に行って相談したこともあったわ。つらいときは思いきり自分で請け負うことが大切なんだよね。
それにね、自分でミスしたのだから、自分でなんとかするしかないのよ。よく、同じ失敗は繰り返すなって言うけれど、繰り返しても私はいいと思う。その一つひとつが積み重ねだから。そうやって、たくさん経験を積めば積むほど、いろんな想い出ができて、いろんなことを感じ取ることができるのよ。それは自分の大きな財産になるんだから。