評価がゼロなら、あとは上にいくのみ
逃げることは、いつでも、誰でもできるんだよ。特に今の時代、転職できるのが当たり前といった風潮だからね。逃げることは簡単で、続けることのほうがずっと難しい。でも、続けることでしか見えてこないことって、絶対にあるんです。見切りをつけられてると感じるからこそ、そこから逃げないで仕事を続けるべきだと思うな。
あなたには、「人の倍頑張れば、なんとかなる」と思える根性がある。そして、「不器用で期待されていない」というハンディがある。だから、ここで逃げず、上司に対して「お前の言ったことを後悔させてやるぞ」くらいのハングリーな気持ちを持てば、必ず伸びます! 逆に、「君ならできる」みたいに期待されてしまうほうが、ずっと重荷になってしまうと思うよ。期待されていなければ、評価がゼロからのスタートで、あとは上にいくだけ。ところが、期待されて高い評価からのスタートだと、それ以上にいくのはすごく難しいでしょ。
私も女子プロレスで頂点に立ったことがある人間なので、ほかのことをやろうとするとき、「トップだったから、違う分野でもできるだろう」と、期待されてしまうんだよね。ところが、私も根っからの不器用で、プロレス以外、できないわけ。見かけ倒しになるのもつらいので、期待されないくらいがちょうどいいと思ってるんだ。
不器用で何もできないという人は一人もいない
プロレスだって、不器用で愚直にそれしかやらなかったからできたこと。私は中卒でプロレス界に入ったこともあって、自分は転職する所も戻る場所もないと思ってたんだよね。だからといって、最初からプロレスの資質や才能があったわけじゃなく、体が小さくて、「おまえ、あと10センチ背が高ければスターになれたかもな。残念だったな」って言われてね。「そうか、私はスターになれないんだ」って、15歳で落ち込みましたよ。
でも、自分の身長や体格を恨んでもしょうがない。それからは、期待されてないというハングリーさを抱え、どこにも逃げられないという崖っぷちにいる気持ちで、ひたすら練習の毎日。「あいつはすぐやめる」と思われてたみたいだけど、その期待をいい意味で裏切ったわけ。でも、順調じゃなかった。頂点には立ったものの、引退も繰り返していてね。スポーツ店で雑用のアルバイトをしながら食いつないで、「自分はプロレス以外、何もできないんだ」と、かなり落ち込んだときもあったんです。
だからこそ、プロレスの仕事に戻れたときは嬉しくてね。私は、たまたまプロレスが向いていたのかもしれないけど、それは、不器用でもずっと努力してきたからこそ、向くようになったのかもしれない。ひとつのことを長く続ければわかることってたくさんあるからね。人が1日でできることを、3日かかっても1週間かかってもいいじゃない。できるようになることに意義があるのだし、常に自分への挑戦なんだから。不器用だから何もできないという人は、一人もいないんだよ。