大事なのは、やりたいことを行動に移すエネルギー
あなたにとっての独立って何だろう? 僕が思うには、独立しなきゃいけないとか、社長になりたいとかじゃなく、最初に動機として自分でやりたいことがあって、それが今の会社でできないことだから、実現するための結果として、独立という形になるものなんじゃないだろうか。
僕は35歳で独立したけど、その時期が早いか遅いかという問題じゃなく、当時はどうしても自分で書いた芝居の全国ツアーを実現させたいと思ったんですよ。でも、所属していた事務所や周りの人たちの反対を説得してる時間が惜しかった。自分でやっちゃう方が早いと思って、「絶対にこの芝居をメジャーにしますから」と、たんかきって飛び出したんですよ。だから、20代で独立しようが、40代で独立しようが、関係ないんじゃないかな。大事なのは独立しどきじゃなくて、夢を行動に移すエネルギーでしょう。自分が本気でこの仕事で飯食って大きくしてやるぞ、という気持ちがわき上がってくれば、その時は自然に独立することになりますよ。
そうは言っても、僕は経理も何もわからなくて苦労したから、本当はもっとマネジメントや経営について勉強してからがよかったのかもしれない。その経験から言わせてもらうと、独立はしんどい面もあるってことです。甘くはない。プロダクションにいればギャラをもらえるけど、独立後は自分のギャラなしでも、経営に関わるいろんなことを自分で考えてやらなきゃならないからね。そういうことは誰かに任せて、クリエイティブなことに専念できたらいいのにと、いまだに思いますもん。
ワクワクしてカブトムシを捕る子供心があるか
今、僕は映画の資金集めのために、いろんな会社の社長と話をしてるけど、お金儲けが目的で独立して、うまくいってる経営者って、不思議といませんね。みんな「こうやりたい」という夢があって、しかもロマンがある。そして、一生懸命それに向かってやっているうち、気づくとお金が入ってきてて、成功していったという感じ。そう、絶対にロマンは必要なんですよ。
ロマンって、例えて言うと、子供のカブトムシ捕りに似てると思う。小学生の頃、夕方に蜂蜜や砂糖を持って山の中まで行って、カブトムシを捕るための仕掛けをするでしょ。その時は、捕ったらいくらになるなんて金儲けは考えませんよね(笑)。翌朝、カブトムシを捕まえるとものすごく嬉しい。「わーい!」って大喜びして、ラジオ体操に持って行って見せびらかしたりする。そのワクワクする無心な遊び心がロマンに通じる、大事なことだと思うんです。
大人になって「え?このカブトムシが高く売れるの?」なんて気づいて欲が出てしまうと、ロマンでなくなってしまうでしょ。そうやって、無心にやって、気づいたらお金がついてきたというのが、理想の仕事だと思うんですよ。多分あなたは違う角度からばかり独立を考えていて、そのロマンが欠けているんじゃないのかな。