大変でない仕事なんてありません
すごいバイタリティーですね。できれば、悪い手を使わずに、真っ当な方法で駆け上ってほしいです。ただ、今のあなたの考えのままだと、有名にはなれないと思います。他人に自慢したいとか、楽をして目立とうとする人が、周囲の人たちに支えてもらったり、協力してもらおうとしても難しいですよね。大勢の人から好意的に受け入れてもらえなければ、有名にはなりにくいでしょう。
例えば、有名人をつかまえて一晩過ごし、ヌード写真と一緒に、「私は彼と寝ました」と暴露でもすれば、あなたの言うように、自慢できて、華やかで、あまり大変でないのにギャラももらえて、手っ取り早く有名になれるでしょうから、あなたの希望にはぴったりかもしれない。でもそれは、一発の打ち上げ花火で終わりですから。その後の人生のリスクだって大きい。あなたが言っていることは、それくらい、極端な例えしかできないような望みです。
何事もひとつずつの積み重ねから
私は『極道の妻たち』というノンフィクションを書くとき、ヤクザ抗争のドンパチが続く、いつ銃弾が飛んできてもおかしくない状況の中、1年8カ月かけて取材を重ねました。取材費も自腹。売れる持ち物をすべて売り、なおかつ借金もして、まだセクハラという言葉がない時代の、世の中のセクハラ行為をすり抜けながら、やっとのこと、極道の世界に入れさせてもらい、信頼を積み重ねた上で取材させてもらいました。結果が出るまで、苦労の二文字では足りないくらいの苦労の連続でした。それなのに、作品が世に出ると、今度はマスコミ関係の男性たちから「女はいいね、寝れば書けるから」と、必ず言われたものです。
私の場合は作品でしたが、そうやってひとつの結果を出すには、日々の努力が必ずあります。特に経営者になりたいのであれば、誰も見ていない所で人一倍働く必要もありますし、人の上に立つ孤独感を味わったり、苦悩も伴うでしょう。今、有名になっている経営者の皆さんも、華やかに見えて、水面下では水鳥のごとく一生懸命に水かきを動かし、頑張ってこられているはずです。見えない努力を陰でされているんです。あなたのような考えでは続けられません。まずは、あなたの根性を叩き直したほうがいいと思います。大変でない仕事なんてないのです。
とはいうものの、あなたは、しっかりと割り切ることができているので、「経営者として有名になる」という目標に絞ったのであれば、その山に向かって、コツコツと一歩ずつ登って行くのもいいと思います。でも、その場合、目標に向かう過程は、今のあなたが考えているような道ではありません。何事もひとつずつの積み重ねから。その覚悟は必要です。