ステージがひとつ上がったということです
辞めないで頑張ってほしいな。あなたのように現場がいいと思ってる人は多いはず。僕だってそう思うもん。でも、マネジメントする側に回ったということは、ステージがひとつ上がったのだから仕方がない。それを自覚したうえで物事を見たり、話をしながら、自分が楽しかったと思う現場にいる人たちを育てていくことやね。いつまでも下のステージからものを見ないで、さらにもっと自分のステージを上げろ、って言いたいな。
僕は女性ばかり700人ものウォーキングインストラクターの部下がいるんよ。女性ばかりの世界に入ってしまうと、誰がいいか悪いかを僕が選択しなければならない場面が出て、不公平になる。だから、いつも一歩引いて、様子を見ながらも知らん顔をしてます。後から「お前はこうしたよな、だからすごくよかったよ」って、褒めてあげる。企業はすぐに結果が求められるから、そこまで部下に知らん顔もできないだろうけど、部下たちを見ることや、見ている自分のことも楽しめるようにできるといいな。そういった、現場とは違って人を育てる楽しさが必ずあるよ。
部下たちを味方にしてしまうと仕事も楽になる
最初のころは、僕もお客さんや弟子たちにレッスンしながら、みんなになんとか教えようと、自分のやり方や考え方を押し付けて喧嘩になっていた。でもそうじゃない。教えすぎたらあかんし、上に立つと人の欠点が見えてくるけど、欠点も突かないこと。とにかく、いいところを褒める。そうやって周囲のみんなを自分の味方にしていく。味方ができるようになると、全部一人でやらなきゃいけないと思っていた仕事も、やってくれる人が出てくるから、すごく楽になるんです。
味方にするのに一番苦労したのは、自分の嫁さんよ(笑)。お互いをよくわかってるだけにね。家族サービスくらいじゃダメで、ちゃんとコミュニケーションを取りながら、愛し合いながら、思いやっていかないと味方になってくれない。でも、一番味方にしなきゃならない奥さんを、日本のビジネスパーソンは、みんな企業戦士になって敵に回してるから、きついと思うよ。もっと奥さんを味方にしてうまく立ち回ったほうがいい。あなたも奥さんがいる年齢だと思うけど、上のステージに行けば行くほど、奥さんを敵に回したらいかんよ。
もしも今、辞めたとしたら、また一からやり直しだからね。いつまでもステージは上がらないまま、歳をとっていくんだよ。むしろ、現場が好きで現場をわかっているからこそ、いいボスになれる。だから、ボスになると決めて、いつでもどこでも精一杯にやってほしい。それを僕は「平常心のハイテンション」って言ってるんだけどね。僕の場合は、弟子たちにお金を稼がしてあげたいと思ってるの。それが弟子たちの仕事へのパワーにもなるから。スポーツ関係のインストラクターは、時給がすごく安いんだけど、僕は弟子たちの時給を徹底して安くしない。そんなふうに、あなたはあなたなりに、部下のメリットを考えてあげたらいいと思う。