それは転職じゃない。独立する覚悟が必要
やってみたいと思うなら、やってみればいいじゃないか。代わり映えのしないお堅い仕事しかしてないのだったら、若いうちにこういう経験をしてみるのもいいと思うよ。ただし、やるかどうかは自分自身で決めること。そして、勢いだけなら危険すぎるから止めたほうがいい。起業するにはちゃんと順序というものがあるんだよ。
まず最初に、その友人があなたを経営上のパートナーとして組もうとしてるのか、社員にしようとしてるのかを確認することだね。恐らく、パートナーとして考えているのだろうけど、それはイコール、あなたも独立するってことなんだよ。今まで会社の敷いた営業ルートを、組織の一員として回ってたんだろうけど、 100%違う仕事になるのは間違いない。業種の違いは関係ないんだよ。異業種に移る人はたくさんいるからね。それより、レールの敷かれてた環境から、砂漠の中にぽーんと放り投げられて、自分ですべてを判断しなきゃならなくなる、その覚悟があるかどうかが大事なんだよ。
そして、もうひとつ肝心なのが、きちんと調べておくこと。友人によく事業計画を聞きなさい。そして、自分でそれを分析するんだ。新しい事業を立ち上げるというのは、会社に雇われるのと違ってリスクは避けられないけれど、事前に予測することはできるんだ。同業で衰退してる会社が多ければ、同じやり方では難しいとわかるし、Webのデザインのニーズがどう推移してるのかとか、いろんなデータを集めて、きちんと自分で判断する必要がある。そこで納得できたら、あとはもう、勢いで行けばいいんだよ。
独立後、僕は2年も50円のパンだけ食べていた
だけどね、今までのルート営業での経験は役に立たないと思ったほうがいい。誰もが知ってる企業の看板があると、営業担当も話を聞いてもらえるけど、看板がなくなると相手にされなくなるんだ。そのしんどさは半端じゃない。仕事を休む暇もなくなるはすだよ。僕だって独立する前、取引先から「独立したら応援します」だの「買いに行きます」だのさんざん言われたけど、いざ、独立した最初の展示会には誰も来なかった。50件は取引先を見込んでたのにだよ。愕然としたね。「こんなに冷たいものなのか」って。そんなものなんだ。
それから、会社が軌道に乗るまで、自分の給料が何カ月も入ってこない可能性もあるよ。僕は独立後、お金がなくて、2年近くも毎日50円のパンに塩をかけて食べていた。栄養失調で夜になるとめまいがしてたし、生きた心地がしなかったよ。自分ひとりで会社を立ち上げたから、大きな借金でもして倒産すれば、一生ダメになってしまうって、ものすごく必死だったんだよ。常に脅迫概念でいっぱいだったんだ。
でもね、夢をあきらめずにがむしゃらになると、必ずいつかは実るものなんだよ。それは体験した者じゃなきゃわからない。ちゃんと神様は見てる。人生ってあっという間に過ぎて行ってしまうからさ、好きじゃない仕事でずるずるいくより、決心して挑戦してみるのもいい。あとは半年や1年まともに給料なくても、歯を食いしばってやるしかないんだよ。