プロ論。

なぜ、あの人はいい仕事ができるのか。 第一線で活躍する人物の「こだわりの仕事術」を紹介します。

4つの疑問を、いつも自分にぶつけること。そうすれば、危機的状況に陥ることはありません

アレックス・ロビラさん(経営コンサルタント/『Good Luck』著者)
あれっくす・ろびら●スペイン・バルセロナ生まれ。ヨーロッパの名門ビジネススクールESADEを卒業後、民間企業でマーケティングのキャリアを積む。1996年、コンサルティング会社を設立。クライアントにはヒューレット・パッカード、マイクロソフト、ソニー、モルガン・スタンレーなどが名を連ねる。世界75カ国以上で出版され、日本でも170万部を突破したベストセラー『Good Luck』の共著者であり、国際的に大成功を収めた『Letters to Me』『Seven Powers』の著者でもある。
2008年9月15日

世界75カ国で出版され、
日本でも170万部を超えるベストセラー
となった『Good Luck』。
ビジネスパーソンにも大きな支持を得た
哲学の寓話だが、
この本の共著者がロビラ氏だ。

1000人以上の人に「幸運か、不運か」聞いて回った

本国では、『Good Luck』の前に『Letters to Me』という本を出しているんです。自分の人生をどう変えるか、仕事上のキャリアをどう考えていくべきなのかをテーマにした本で、アメリカ合衆国とラテンアメリカでかなり成功を収めることができました。そして、読者から最も高く支持されていたのが、コンテンツの中に少しだけ入っていた、ショートストーリーの部分だったんです。普通の文章より、シンプルな物語や寓話のほうが人の心に響くのだ、というのをこのとき知りました。

そしてある日、私の5歳になる娘が学校から戻ってこう言いました。「私最近、不運続きで、最悪なの」と。そこで私は、子どもに運と幸運は違うことを説明したくて即興で物語を作り、話して聞かせたんです。実はこれこそが『Good Luck』の原形なんです。娘は、パパの話の中で一番素敵な話だったと言ってくれました。

ただ、本を作るまでには3年の歳月が必要でした。この間、私は1000人以上の人に出会い、「君は幸運かい、不運かい?」と聞いていきました。そして結果を分析し、幸運というもののエッセンスを凝縮していったんです。最も難しかったのは、そのエッセンスをわかりやすいシンプルなストーリーの中に組み込んでいくこと。しかし面白いもので、3年かけた下ごしらえがあると、書くのはあっという間でした。わずか8時間で書けてしまった。ウディ・アレンはよく、「一晩の成功のために40年もかかった」と言いますが、準備が完全に整えば、後はあっという間なんです。

大事なことは、人に喜びを与えようとすること

私はビジネススクールを出て、マーケティングを仕事にしていました。50人規模の会社を作り、今は第一線を離れ会社の顧問をしています。

私が強い関心を持っていたのは、「人」でした。人が何を感じ、何を考え、何を欲しているか。ここにこだわり抜いたことが、経営者として、さらには著者としての私を作り上げたと思っています。

そもそもすべては人から始まるんです。企業も人の集まりです。製品を買うのも人。市場も人があって成り立ちます。すべては人、もっといえば人の感情で動いているんです。そこに喜びや幸福を生み出そうと努力する。そうすれば、ビジネスはうまくいきます。最高のパートナーやスタッフ、取引先を手に入れられる。大事なことは人と関わり合い、人を喜ばせようとすることです。

私はそうした本質を、心理学や哲学などから学びました。最近のヨーロッパでは、サイコロジーとエコノミーをミックスさせたサイコノミーという学問が生まれ、かなり普及しています。エコノミーを作るのは、サイコロジーなんです。意欲や才能、創造、信頼、協力、絆(きずな)など、人に関わる要素が大きな富を生む。

しかし現状はどうでしょうか。プレッシャー、重圧、嫉妬、他人との比較、不満、責任の押しつけ合い…。そういうものが充満している。これでは人の可能性は減るばかりです。これからは、人の可能性を残し、より伸ばしていけるかどうかが、企業の課題になるはずです。お金では買えないものの価値が、今や大きく高まっているからです。


ロビラ氏の最新作が『幸福の迷宮』。
何もかもうまくいかなくなった33歳の主人公が、
迷宮の森で、幸福の真実を見つける物語だ。

自分の人生に自分で責任が持てるか

幸福というテーマには、ずっと関心がありました。ただ、これまで多くの書物が扱っているテーマであり、似たものは書きたくないし、説教じみたものも嫌でした。やはりファンタジックなものにしたかったんですね。子どもでも読めるような寓話で、大人の心の中に入っていける。物語の中にさまざまなヒントや意味がある。そして、人生の中で自ら問わなければいけない「4つの疑問」も組み込みたかった。「自分は何者で」、「どこから来て」、「どこへ行き」、「今何をしている」のか。

ギリシャ神話では、魂には2つのシンボルが登場します。明るくて輝いている側面が蝶。悲しみや苦しみ、痛みの側面が迷宮です。そして人生には必ず光と影がある。実は人間にとって重要なのは、影を認めることなんです。そのためには恐怖と向き合う必要がある。そこにこそ、自由と幸福の道はあるんです。

「自分って最悪だな」「役立たずの負け組だ」「今、起きていることはアイツのせいだ」と思っているうちは、迷宮から出ることはできません。まずは自分と向き合う。影を見つめる。自分の人生に自分で責任を持つということです。そして、真剣に打ち込むものを見つけるんです。

「自分と向き合ってきた」という人もいるかもしれません。しかし、往々にして起こり得るのは、危機的状況に陥ってから自分と向き合ってしまうことです。これではうまくいきません。一度も車のタイヤ交換をしたことがない人が、猛吹雪の山道でタイヤ交換をするようなもの。実は「4つの疑問」を日々自分にぶつけていれば、危機的状況に陥ることもありません。

とても残念なのは、こういうことを教えてくれる大人が極めて少ないこと。そして、効を焦る人が多すぎることです。明日すぐに結果が出るわけではない。プロフェッショナルになるには十数年の歳月が必要なように、日々の自問自答の地道な繰り返しこそが、人生の可能性を大きく広げてくれる。まずは4つの質問を自分にしてみてください。

いい仕事をするためには、いい人間になること

幸福というものは買えるような物体ではないし、たどりつかないといけない場所でもありません。幸福は個人の中に存在するんです。幸福とは、生き方そのものなんです。そのためには「そもそも人生は苦しいものだ」と認識する必要があります。ただ、その苦しみは不幸を意味するとは限りません。逆境や試練、災難と思っていたことが、後の成功のカギになるかもしれない。そう考えると、苦しみは幸運でもあるわけです。こうなると、人生は全く違って見えてきます。

意識、姿勢で、人生は大きく変わるんです。まわりが何も変わらなくても、自分が変わることで、すべてが変えられるんです。外から得られる変化は、不安定なものですしね。会社を替わるときにも、この意識を忘れてはなりません。自分が変わらないといけない。

そして、いい仕事をするためには、いい人間になることです。自分を磨き、学び、人と話し、自分に厳しくする。そうやって下ごしらえを常にしておくこと。それがチャンスを手に入れる唯一の方法です。

一番大切なことは、何が起きたか、ではありません。その状況に対して自分がどんな選択をし、どう生きていこうとしているか、ということ。それが、幸福感を左右するんです。

information
『幸福の迷宮』
アレックス・ロビラ
フランセスク・ミラージェス著

「この先ずっとこんな人生が続いていくのかしら」と考えていた主人公。会社を解雇され、絶望のどん底に落ちたとき、迷い込んだのは迷宮だった。自分と向き合うことを求められ、人生の意味を見つけていく過程で、彼女は幸福に近づく生き方の本質、「迷宮の真ん中にたどり着くためのヒント」を手に入れていく。ゴマブックス刊。

EDIT
高嶋千帆子
WRITING
上阪徹
DESIGN
マグスター
PHOTO
栗原克己

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