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「Jリーガー戦力外」から「200億円企業のオーナー」へ。元ガンバ大阪の嵜本氏が語る“自分の居場所”を作るポジショニング戦略

ブランド買取専門店「なんぼや」やブランド査定・資産管理アプリ「miney」などを手がける株式会社SOU。代表は、元ガンバ大阪のJリーガーという異色の経歴を持つ嵜本晋輔氏だ。2011年の創業からわずか7年ほどで、従業員300名以上を擁し、年商200億円を越す企業に成長させた。数多くあるブランドリユース企業の中で、頭角を現すまでに至った軌跡とは。サッカーのポジショニング戦略にも通じる、工夫のしどころについての考え方を伺った。

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嵜本晋輔(さきもと・しんすけ)

1982年、大阪府出身。関西大学第一高校卒業後、関西大学入学と同時にJリーグチーム「ガンバ大阪」へ入団。21歳の時に戦力外通告を受け22歳で引退後、家業のリサイクルショップを手伝う。2011年に独立して株式会社SOUを設立、代表取締役に就任。ブランド買取専門店「なんぼや」、予約もできる買取専門店「BRAND CONCIER」、BtoBオークション事業「STAR BUYERS AUCTION」、BtoC販売事業「ヴィンテージセレクトショップ ALLU(アリュー)」、「ブランドリセールショーZIPANG」、資産管理アプリ「miney」などを展開している。

どん底の戦力外通告。客観的に自分を見つめて決断した引退

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──21歳という希望あふれる年齢で、ガンバ大阪を退団しています。輝かしいプロサッカー選手という肩書きを、なぜそんな潔く手放せたのでしょうか?

端的にいうと、実現可能性を冷静に判断できたからだと思います。3年間プロの世界にいましたが、たまたま通用していただけだったんです。自分自身、肌感覚で分かっていました。それなのに、他のチームメイトと比べて努力の仕方も甘かったと思います。だからこそ手放す決断ができました。

 

──とはいえ夢を抱いて立った舞台であれば、一般の人の感覚で考えるとなおさらそれを認めるのは難しいのではと思います。戦力外通告された当時の心境はどんなものでしたか?

もちろん、悔しさや辛さはありました。それまでのサッカー人生の中で、初めて味わったどん底でしたね。しかし今となって思うのは、サッカーのことを考えるのが誰よりも足りていませんでしたし、目標が明確にありませんでした。つまり、プロとしてのあり方が欠けていたのだと思います。

 

──その状況からからどのようにマインドを変え、辞める決断ができたのでしょうか?

ガンバ大阪を退団後も当時JFL(アマチュアリーグ)の佐川急便大阪SCでプレーしましたが、1年間、毎日自問自答をしました。「まだプロでプレーをしたい」「通用するかもしれない」と、ほんの少しの可能性に懸けたい思いもありました。でも、一方でプライドなどが邪魔をしていて、冷静に判断できていないのでは…とも思ったんです。

プライドや見栄を取っ払い、客観的に自分の気持ちを見つめるようにすると、徐々に将来のことが見えてきました。Jリーグへ戻る道は、やはり思い描けませんでした。家業がリサイクルショップで、行く場所があったから辞められたということも大きかったと思います。

 

──サッカーを辞めたあとのことに、不安はなかったですか?

一切なかったですね。家族や相談相手もいましたし、ビジネスの世界は飛び込んでみないとわからないと前向きに考えていました。

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▲ガンバ大阪でプレーをしていた時の嵜本氏

 

未経験の職場で、自分の存在感を発揮できるポジションを探した 

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──一般的なビジネスパーソンの場合も、転職のタイミングなどの転機で、多くの方が悩むのではないかと思います。どういう瞬間が「辞めどき」だと嵜本さんは思いますか?

僕は「楽しんだ人ほど成果が出る」と考えています。成果を出している人って、やりたいことが見つかって自発的に取り組んでいますよね。だから、誰よりもそのことに時間を割くし、情報を集められるし、パフォーマンスも高いと思います。生きていれば仕事に大半の時間を使うことになりますから、心から楽しいことに出会えるかどうかは重要です。

逆に楽しいと思える時間の割合が少なくなってきたら、人間って逃げ出したくなったりするものじゃないですか。そうなってしまったなら、ほかに自分が楽しめる居場所を探してみてもいいんじゃないかなと。

もちろん誰しもが自分のやりたいことを見つけられるわけではないと思います。でも、誰かに教えてもらったことや、転職先などでたまたま出会ったことから楽しいことが見つかるケースだってあると思うんです。

 

──その「楽しい状態」とは、嵜本さんにとってどういうときでしょうか。はじめから楽しいと、どんな仕事でも感じられるわけではないように思います。

家業を手伝うまで、リユースの事業に触れたことはほぼありませんでした。でも、モノを売る人たちの思いや背景に触れたり、買い取ったものをいかに時流を読んで販売するかなど、自分なりに楽しいと思える部分を見つけにいったら、こんなに面白い仕事なんだと感じられました。

また、先に働いているスタッフがいる中で、社内で自分の存在感を発揮するためには何を身につけるべきだろうかと考え、「会社にとって必要だけど、そこを担える人が現状ではいないポジション」を探すことにしたんです。

そこで、誰もやっていなかったインターネットを活用することを始めました。すると結果につながって、自分がいることに意味が出てきたんです。それもあって、仕事がますます楽しくなっていきましたね。

 

──これまで辞めようと思ったり、楽しくないなと思ったりしたことはなかったですか?

辞めたいと思ったことは一度もないんです。はじめた頃はとにかく知らないことだらけで、毎日インプットをして新鮮でしたし、日々、もっと楽しめないかと工夫を重ねてきました。徐々に経営面へ関わるようになると、さらに夢中になっていきましたね。

大事なのは「自分で決めた意思決定を正しいと思うこと」、そしてその意思決定を正しいものにするために「工夫や努力を続けること」だと思います。それをずっと実践し続けてきました。

サッカーを辞めるときも周囲から「なんでもっと続けないのか」と言われました。でも辞める決意をしたのは自分ですから、自分の意思決定を正しいと信じ続け、努力し続けることが重要。自分が主体として、すべてを選択できているかどうかだと思います。

 

自分も仲間も楽しくて夢中になれるやりがいを生み出し続ける

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──2011年にSOUを起業し、今では年商200億円を越す企業に成長していますね。最近では新規事業サービスとして、ブランド査定・資産管理アプリ「miney」を始められたと伺っています。

弊社は主にブランド品のリユース事業を展開しています。その中でmineyというサービスは、ブランド品などのアイテムを撮影するだけで「モノの価値が分かるアプリ」です。新品のブランド品の市場規模が2兆円を超えるなか、中古ブランド品の市場規模は5000億円に満たないというデータもあります。ほとんどのブランド品は、上手く活用されないままクローゼットに眠ってしまっていると我々は考えているのですが、それって非常にもったいないですよね。購入したはいいけれど、自分がどんなブランド品を持っているかを全部把握できている人もあまりいないのではないでしょうか。

それを解消するためにも、モノの価値を視覚化する必要があるのではないか、と思って始めました。

たとえばこのアプリに自分の商品を撮影して基本情報を登録しておくと、その商品の価格の推移をグラフで見られるようになります。ブランド品は価格が常に変動していますから、株価のような感覚で「資産」として捉えられるようになるんです。

モノをただ保有しているだけだと、価値が下がってしまい、気づかないうちに自分の「資産」が減っていくということをユーザーの方々に感じていただければ、と考えています。

自分の「資産」を把握することで、適切な売りどきが判断でき、そこで得られたお金をまた次の商品購入に充てられる。mineyが浸透することが、アパレル業界の活性にもつながると思っています。

 

──このサービスを開始するにあたっての経緯を教えてください。

会社として、既存の事業に頼りすぎるのではなく、新しい事業も伸ばしていく必要があります。弊社は仕入れは一般消費者からの買取、販売はBtoBでブランド品を自社開催のオークションにて卸しているため、自前で価格推移のデータを持っているんです。その強みを持っている企業は日本でも数少ないと自負しています。その他社にない資産であるデータを活用してユーザーに価値を提供できたら、というのがこのサービスの発端ですね。

 

──そういった新しい事業を生み出し続けるパワーは、どこから来るのでしょうか?

サッカーで経験した「不要論」は事業運営に強く影響していると思います。

常に「いつ社会やユーザーから必要とされなくなるか分からない」という危機感があります。だから、この業界に身を置いて必要とされるにはどうあるべきかを考えていますし、未来に求められる何かしらの価値を常に生み出していきたい、という思いはあります。

 

──最後に、SOUの将来的なビジョンと、働き方や人生に悩んでいるビジネスパーソンへのアドバイスをお願いします。

事業運営については、僕自身が楽しむことができないとスケール(拡大)しない、と思っています。最優先でそのことを考えていないと、ライバルに真似できないものは作れません。そのためには、自分が夢中になれる状況をつくることが大事です。

仲間である社員に対しても同様です。みんなを巻き込んで共感してもらい、楽しんでもらうことができなかったら、去ってしまうかもしれません。ですから、夢中になれるようなやりがいを生み出し続けることがマストだし、事業のミッションだと思っています。

また、ビジネスパーソンに伝えたいことは、全て自分次第だということです。受け身でやる仕事はつまらないですから、自分の人生において価値が生まれません。仕事を好きになって、楽しいと思える瞬間を今よりも多く見つけることで、なりたい自分に近づいていってください。

取材・文/山岸 裕一+YOSCA 企画・編集/FIREBUG