“リスク”を過度に恐れる人に、明日はない!ーー『マネーの拳』に学ぶビジネス格言

『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。三田紀房先生の『マネーの拳』、第6回目をご紹介します。

『マネーの拳』から学ぶ!【本日の一言】

こんにちは。俣野成敏です。

ここでは、私がオススメする名作マンガの一コマを取り上げます。これによって名作の理解を深め、明日のビジネスに生かしていただくことが目的です。マンガを読むことによって気分転換をはかりながら、同時にビジネスセンスも磨くことができる。名作マンガは、まさに一石二鳥のスグレモノなのです。

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©三田紀房/コルク

【本日の一言】

「腹をくくったやつだけがチャンスをつかめる」

(『マネーの拳』第1巻 Round.7より)

地元・秋田の高校を中退した花岡拳(はなおかけん)は、友だちの木村ノブオとともに上京。花岡は、偶然始めたボクシングによって才能が開花し、世界チャンピオンにまで上り詰めます。

その後、ボクシングを引退した花岡は、タレント活動をしながら居酒屋を開業しますが、経営は思うようにいきません。そんな時に知り合ったのが、通信教育業界の成功者・塚原為之介会長でした。花岡は会長の教えを受けながら、ビジネスの世界でも頂点を目指すべく、新しいビジネスをスタートさせますが…。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

1億円を出資する条件とは「ホームレスを10人、雇用すること」

塚原会長は、花岡の新規事業に1億円を出資することを承諾します。しかし、代わりに「ホームレスを10人、雇用すること」という条件を出してきました。これを聞いた友人のノブオは大反対しますが、結局、花岡は会長の条件を受けることにします。花岡はノブオとの間に「飲食業の経営をノブオに任せること」「新規事業の経営と飲食の経営を完全に分離すること」を取り決めるのでした。

実は、花岡には新規ビジネスのアイデアはまったくありません。けれど会長との約束に従い、ホームレスを従業員にするべく募集をかけます。選考会場に詰めかけたホームレスたちを前に、花岡が用意したのは「回転式抽選器による抽選」。がらがらぽんで「赤が出れば採用」「白が出ればハズレ」「当たりが10個出た時点で終了」というルールにしました。

集まったホームレスたちは「最初からいきなり当たりは出ないだろう」「もっと後に引こう」と誰もが様子を伺う中、抽選に臨んだ3人が立て続けに当選します。ここで誰かが「中は全部赤に違いない」と気づき、抽選打ち切りを宣言する花岡。「組織には、判断できるやつが3人いれば十分だ。後の7人は自分たちで決めろ」と言うと、会場を後にするのでした。

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人は失うことに「より大きな痛みを感じる」もの

「従業員を抽選で決める」というこの話は一見、突拍子もないように聞こえるかもしれません。しかし「相手の覚悟を確かめる方法」としては、十分有効であると考えます。

職を求めて集まりながら、日和見を決め込むホームレスたちの姿には、『マネーの拳』の作者・三田先生の皮肉が込められています。事実、人間にとっては、何かを得ることよりも失うことのほうが痛みを伴います。確かに、守ることは大切です。けれど最低限の条件はクリアしつつも、より大胆に行動することも可能なのではないでしょうか。

人が何かを得たいと思ったなら、必ずリスクを冒す必要があります。それは「失敗するかもしれない」「お金を失うかもしれない」「今の地位を失うかもしれない」といったリスクです。行動しなければ何も失うことはないかもしれませんが、同時に新しいものも手にすることはできません。

多くのビジネスパーソンが独立を果たせないで終わる理由

一つ、事例をお話しましょう。私が運営しているマネースクールを受講している方の中に、独立起業を夢見ている方がいます。その人はある会社でプログラマーとして働いていますが、普段から「このままでいけば年収が頭打ちになることは目に見えている」と不安を口にしていました。

私の知り合いの中には、プログラマーのフリーランス化を支援するコンサルタントがいます。そこで、コンサルタントに「独立を希望しているプログラマーがいる」と話したところ、「フリーなら、給料は今の2、3割増しになる」ということでした。私は受講生の方に「よかったらコンサルタントを紹介します」という話をしたところ、相手は途端に「技術力に不安がある」「まだフリーとしてやっていける自信がない」などと言い出し、この話はお流れになりました。

この方はまだ20代で、失うものは何もありません。確かに今の会社を辞める必要がありますが、仮にフリーランスがうまくいかなかったとしても、その時にはまた会社員に戻ればいいだけの話です。

この方の事例は、多くの会社員が独立できずにいる現状を代弁していると言えます。会社員とは、「会社でお金をもらいながらビジネスを学べる」優れたシステムですが、雇用が安定しているがゆえに、かえって人はその安全な環境から抜け出すのが難しいのです。

何かを得たければ、リスクを取るしかない

『マネーの拳』の中で、花岡はこう述べています。「これ以上、守るものもないのに、この期に及んでまだ守ることを考えるやつはいらない」と。人は過度に防衛し過ぎれば、攻めることができなくなります。

大切なことは、恐怖と願望の両方をちゃんと見ること。リスクとリターンの片方だけを見ていては、天秤にかけることはできません。そして、「リターンのほうが大きい」と判断される時には、思いきり前のめりに行動することです。失うかもしれない恐怖だけに注意を向けていては、その先にあるチャンスをつかむことはできないのですから。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』が13刷となっている。著作累計は35万部超。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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