リクナビNEXTジャーナル

キャリア・ビジネスの情報満載【リクナビNEXTジャーナル】

どんどんアイディアを出す人は、いつ、どこで、何を「メモ」しているのか?――上阪徹の『超スピード文章術』

仕事でもプライベートでも、文章を書く機会がどんどん増えている昨今。ところが、文章をめぐって、こんな思いを持っている人がいませんか?

「文章が苦手。書いている時間が辛い。メールも企画書もできれば書きたくない」
「最初の1行を書き出すまでに、ものすごく時間がかかる」
「文章がうまく伝わらない。しゃべって伝えることはできるのに」
「書き直しを何度も命じられて、いつまで経っても書き終わらない」
「数千字のレポートは、文字が埋まらなくて苦痛だ」

こうした人にこそ、ぜひ読んでいただきたいのが、著書『10倍速く書ける 超スピード文章術』が大きな話題になっている上阪徹さんの本連載です。メール、企画書、レポート、ブログ、SNSまで、実は誰も教えてくれなかった「大人の文書」のすばやい作り方を学べる、全5回です。

f:id:k_kushida:20170929115927j:plain

ブックライター 上阪徹さん

上阪徹事務所代表。「上阪徹のブックライター塾」塾長。担当した書籍は100冊超。携わった書籍の累計売り上げは200万部を超える。23年間1度も〆切に遅れることなく、「1カ月15万字」書き続ける超速筆ライター。

1966年産まれ。89年、早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリー。これまでの取材人数は3000人超。著書に『10倍速く書ける 超スピード文章術』『書いて生きていく プロ文章論』『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』『成功者3000人の言葉』『リブセンス』『職業、ブックライター。』など。 

素材を探そう、と意識すると、脳が勝手に考えてくれる

文章を作っているのは、実は「素材」。素材さえあれば、十分に伝わる。だから、言葉を見つけたりする必要がなくなり、書くのが速くなる。そして文章を書くとき、「真の目的」と「一人ターゲット」を意識すれば、素材は浮かびやすくなる。前回、連載第2回では、こんな話をしました。

ここでひとつ、気を付けてほしいことがあります。それは、文章を書こうとするとき、その場ですべての素材を考えてはいけない、ということです。「さぁ書こう」とデスクでウンウン素材を見つけるところから始めてはいけないのです。これをやろうとすると、やっぱり書くのに時間がかかってしまいます。なぜかというと、素材を思い出さないといけないから。ひねり出さないといけないから。

では、どうすればいいのか。素材は書く前の段階でしっかり用意しておく、ということです。すべて、でなくても構いません。早い段階から、少しでも素材を用意しておくのです。

実のところ、私が書くのが速いのは、書く前にしっかり素材を揃えているからです。しかも、それは書く段になって、ウンウン考えて出てきたものではありません。書く前から、ゆっくり時間をかけて用意しているのです。メモであったり、資料であったり。

多くのケースで、書かなければいけないときには、〆切は数日先だったりするはずです。その日に急ぎで書くメールのようなものを別にすれば、第1回でご紹介した「社内報に自己紹介を書く」といったときも、提案書や企画書を書くときも、レポートを書くときも、もっといえば、大事なメールやレターを書くときも、即日その場で書かなければいけない、というケースはあまりありません。

だから大事なことは、書くことが決まった瞬間から、素材を探す準備をしておくことです。といっても、四六時中、素材について考えているわけではありません。「素材を考えないといけない」と意識しておくことです。

これは取材で聞いたことですが、人間の脳というのは本人が意識をしていなくても、ずっと働いてくれているのだそうです。しかし、それは脳に指令を出しているからこそ。だから、「今度こういう文章が必要なので、素材を考えないと」と自分にインプットしておくのです。

そうすると、脳はずっと考えておいてくれます。まずは、「素材が必要なのだ」と意識することが肝要なのです。

 

ひらめきは、何か別のことに気を取られているときにやってくる

そしてもうひとつ、極めて大事になるのが、とにかくメモを取る、ということです。脳が考えてくれて、「あれも書いておこう」「これも書いておこう」などと浮かんできているのに、それをメモしなかったらどうなるか。簡単に忘れてしまうのです。

これはよく言われることですが、アイディアなども、ふとした瞬間に浮かぶものだったりします。シャワーを浴びて頭を洗っている最中だったり、車を運転しているときだったり、週末のジョギング中だったり。

取材で、あるクリエイターの方に聞いた話ですが、実は脳は本人が油断したときに、ポロリとアイディアを出してくれたりするもの、なのだそうです。それこそ、デスクに座ってウンウンとアイディアを出そうとしても出てこない。だから、彼は言っていました。脳が油断するような状況を作り出すのだ、と。

例えば、ジムに通う。ランニングマシーンで汗をかきながら、マシーンにはメモ帳をくくりつけておくそうです。そして、ハッと浮かんで来たらメモを取るのです。

成功者や経営者は、よくジム通いをしていると言われますが、彼は言っていました。それは単に身体づくりや健康を意識してだけのことではない。何かに気を取られているとき、ひらめくことを知っているからだ、と。

しかし、ジムに行かなければ、脳がひらめかないわけではありません。電車に乗っているふとした瞬間に、あるいは街を歩いているときに、思わぬときにいろいろなことが浮かんだりするのです。だから、大事なことは、それをメモすること。文章の素材も同じです。脳はずっと考えていてくれていますから、ひらめいたら必ずメモするのです。

 

人間は、忘れてしまうようにできている。だからメモは必須

メモがいかに大事であるか。ある大学教授に取材で教わって目からウロコが落ちました。人間はそもそも、いろんなことを忘れるようにできている、というのです。なぜか。昔、人間はジャングルに動物や昆虫たちと一緒に暮らしていたから。言うまでもなく、猛獣もいれば、猛毒を持った虫もいます。少しでも油断をすれば、命を落としてしまうようなことになりかねない。

そこで、どうなったかというと、いつでも危機を察知できるように、脳を何かで占領しないようになったのです。つまり、見聞きしたことをどんどん忘れていく、ということ。忘れていくことは、人間の生存本能なのです。

だから、残しておきたければ、外部の記憶装置に委ねるしかない。その最もシンプルな方法が、メモを取ることです。いいことを思いついたな、いい素材が出てきたな、これも書いておこう、あれも書こう、とひらめいたとしても、メモをしていないと全部、忘れます。これは人間の本能。だから、必ずメモをしておかないといけないのです。

そんなことを言っても、四六時中、メモ帳を持っておくわけにもいかない、と思う人もいるでしょう。おっしゃる通りです。しかし、今はなんとも便利なものがあります。私自身も、常にこれをやっているのですが、スマホでメモを取ればいいのです。

メモ帳を肌身離さず持っている人は多くはありませんが、スマホは肌身離さず持っているのではありませんか。だから、ひらめいたとき、思い出したときに、スマホにメモすればいいのです。

私はiPhoneを使っていますが、メーラーの下書きにメモを入れています。項目にタイトルを入れておきて、思いついたこと、見聞きしたことなど、素材になりそうなものはどんどん放り込んでいく。いつでもどこでも、何か浮かんだら、すぐにメモする。忘れてしまうからです。

 

一度にすべて素材を出そうとしない

そしてメモの効能にはもうひとつ、すでにひらめいたこと、思いついたこと、思い出したことなどの素材を置いておくと、それがヒントになって、「あ、これも書いておこう」「お、これも書けるな」など、連想ゲームのように素材が浮かんでくることです。

それこそ、私はよく電車の移動中にこれをやっています。ボーッとしたり、スマホでなんとなくニュースを読んだりしているのは、時間があまりにもったいない。そういう細切れ時間こそ、素材を考えるのに絶好の時間だったりします。すでにあるメモを見ながら、いろいろ連想して、「これもあるな」「あれもあるな」と、どんどん放り込んでいくのです。

実はこの原稿の素材も、電車の中でスマホのメーラーの下書きにメモしました。1日で一気に考えるのではなく、何日にも分けて少しずつ加えていく。そうやって素材を貯めていったのです。

大事なメールやレポート、企画書なども、何日もかけて素材を用意する意識を持っておくべきだと思います。そうすれば、「あ、あれも書いておかねば」「これも書いておこう」ということが浮かんでいったりするのです。

もうひとつ、ひらめきは意外な場でやってきたりもします。人としゃべっているときです。これは、あるアーティストへの取材で聞いた話ですが、脳の奥底には実はとんでもないアイディアが眠っていたりするのだそうです。ところが、自分の力でそれを引っ張り出そうとしても出てくるものではない。そこで、アーティストが何をしているのかというと、スタッフとブレーンストーミングをする、というのです。

スタッフとあれやこれやといろんな話をしているうちに、それがトリガーとなって脳の奥底にあったものが引き出されてくる。それをすぐにメモして、アイディアにつなげていく、というわけです。

実際、誰かとしゃべっていて、急に思いつく素材があったりします。そういうときは、しっかりメモを取っておくことです。そうしないと忘れてしまう。それこそ、飲み屋で話をしているときに、急に何の前触れもなく素材がひらめいたりすることがある。放っておけば忘れてしまいますから、必ずメモを取るのです。

 

見たこと、感じたこともしっかりメモにしておく

f:id:k_kushida:20170929120833j:plain

もちろん素材は脳の中にあるものばかりではありません。例えば、出張で視察レポートを書く。そこで聞いてきたコメントやエピソード、もらった資料に出ている数字や具体的な事実は、とても重要な素材になります。だから、しっかりメモしなければいけません。これを残していないと、後で困ることになります。なぜなら、せっかくの素材だったのに、忘れてしまうからです。

私には娘がいますが、小学生だった頃、学習発表会を見に行くと、親は感想文を先生に提出しなければなりませんでした。短い文章量でしたが、実はこれにとても困っている、時間がかかるし何を書いていいかわからない、という話を“パパ友”から聞いたことがありました。文章を書く仕事をしている私は、どんなふうにしているのか、と。

私自身、感想文を書くのに5分もかかりませんでした。なぜか。学習発表会で、せっせとメモを取っていたからです。これは感想文の素材になるな、というものについて、書く前から用意をし、スマホに放り込んでいたのです。あとは戻って、それをもとに短い文章にまとめるだけ。時間がかかってしまうのは、これをやっていないからなのです。

そしてこのとき、意識をしていたのが、聞いたこと、資料に書いてあることだけを素材にしない、ということです。見たこと、感じたことも、その場で書いておくのです。

これは、出張の視察レポートなどでも大いに力を発揮することになります。見たことをメモしておくのです。それを書くことができれば、臨場感が一気に高まります。私は取材も仕事のひとつですが、見たこともせっせとメモします。これも重要な素材になるからです。

こんなふうにして、とにかくメモを貯めていくのです。そして必要とあればネット検索もし、資料とも向き合う。こうして、書く前に素材をたくさん用意しておくのです。

 

出した素材は、面倒でも整理して書き出してみる

素材が用意できたら、次はその素材を使ってどう文章を構成していくかを考えます。まずやるべきことは、面倒でも書き出した素材をもう一度しっかり見てみること。そして、それを整理してみることです。同じような素材なら、ひとまとめにしてみる。

スマホに打ち込んだものであれば、こうした整理も簡単です。私の場合は、パソコンと同期させておいて、素材の編集作業はパソコンでやることもあります。思いついた素材に加えて、他の資料やネットの情報も、そこに書き加えていったりする。束ねられるものは、束ねていく。

いずれにしても大事なことは、浮かんだ素材を一度、面倒でも全部書き出してみることです。素材を「見える化」するのです。

素材が見える化できたら、次はその素材をどう構成するかを考えるわけですが、このときに気を取られてはいけないのが、文章のセオリーです。「起承転結」のようなものは一切考えない。そんなものは、ビジネス文書にはまったく必要ありません。実際、私は書く仕事を30年近くやっていますが、起承転結で文章を考えたことなど一度もありません。

では、どうしているのか。ここでも活きてくるのが、前回ご紹介した「真の目的」と「一人ターゲット」です。目の前にターゲットとなる読者が座っているとして、真の目的を達成するためには、どういう順番で話せば一番伝わるか、考えるのです。

 

しゃべって伝えるなら、で考えれば意外にロジカルになる

文章はロジカルに、とはよく言われることですが、実は誰か特定の人を前にしたとき、人は極めてロジカルにしゃべっているのではないか、と私は思っています。例えば、「交通安全」をテーマにしゃべる。子どもに交通安全の話をするときと、高齢者に交通安全の話をするとき、人は必ず相手に合わせて、相手にわかりやすい順番で話をするはずです。それを、文章を書くときにもやればいいのです。

実は拙著『10倍速くなる スピード文章術』を書いたとき、ひとつの大きな気づきを得ました。過去に私は文章に関わる本を出していて、わかりやすく速く書くには「しゃべるように書けばいい」と書いてきたのですが、それだけではない、ということに気づいたのです。それは、「しゃべるように構成すればいい」ということでした。

それこそ、カフェで目の前に「ターゲット」がいるとしたら、どんな順番で話すか。多くの人は、とても上手にロジカルに構成すると思います。それをそのまま文章にすればいいのです。

話をするのと文章を書くのとは違う、と思われるかもしれませんが、私はそうは思いません。そんな思い込みもまた、どこかで植え付けられた勝手な呪縛です。話も文章も、実は単なるコミュニケーションツールに過ぎません。大事なことは、目的を達成するために何を伝えるか。その意味で、「しゃべるように構成」していいし、「しゃべるように書いて」いいのです。目的は、相手に伝わることだから。もっといえば、わかりやすく伝えられるから。

唯一、文章で気をつけるべき、といえば書き出し、でしょうか。詳しくは『10倍速くなる スピード文章術』をご参照いただきたいですが、端的にいえば、普通に始めないこと。逆にいえば、話すときと文章で、変えているのは、私自身、それくらいです。

そして実は、本当にしゃべりながら書いていることも少なくありません。そのほうが書きやすいからです。

と、ここまで一気に書いて約6000文字。今回はちょっと文字数が多くて、所要時間は54分でした。これも、事前にスマホで素材をメモし、構成もおおよそ考えていたからです。

 

次回、第4回は文章をワンランクアップさせ、スピードも速める2つのシンプルなマインドセット、をお届けします。

【参考図書】

 『10倍速く書ける 超スピード文章術』

f:id:k_kushida:20170914005312j:plain

著者:上阪徹

出版社:ダイヤモンド社