「反省しない」は、実は“良いこと”

コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第23回目は「反省しすぎないことは仕事にとって実は“良いこと”だった」についてです。

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突然ですが、皆さんは「営業」という仕事に対してどんなイメージを持ちますか?

「営業の仕事ってなんだか大変そう…辛そう…」

そんな風に思っている人も多いのではないでしょうか?

一体なぜそう思ってしまうのでしょう。

「お詫びしなければならないときには、お客様のところに真っ先に行って頭を下げなければならない…」

「大変な目標を達成し続けなければならない…大きなストレスがかかる仕事」

営業という仕事に対して、こんなイメージを持っている人も中にはいるのではないでしょうか。確かに、こちらがミスをしてお客様にお詫びをする必要があるとき、担当窓口である営業担当者がお客様のもとに出向くことになるでしょう。また対価に見合うパフォーマンスをするという意味でも、しっかりと上司とすりあわせた目標を達成し続けなければならないでしょう。その意味で、上記のイメージについては、必ずしも「誤り」とは言い切れない部分もあるかもしれません。

しかし、だからと言って「ただ辛い“だけ”の仕事」ではありません。むしろ私は「営業は最高の仕事」だと考えています。

なぜならば、「これほど自分を磨ける仕事は他にない」からです。もちろん、お客様に断られれば辛い気持ちにもなります。また、飛び込み営業やテレアポで怒鳴られ、心が折れそうになるときもあります。しかし、そうした経験の中で、人生でとても大事な「対人コミュニケーション技術」を手に入れることができました。

そして、営業という仕事を通じて、何よりの大きなギフトである「自信」を手に入れることができたのです。

人生で思ったことを実現していける人と、いつもあきらめて生きていく人との違いは、私は「自信を持てるかどうか」にあると思っています。その意味で、私は営業という仕事ができたことに感謝しているのです。

このあたりの話、詳しくは、私の最新作『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)をご覧いただければ幸いです。

謙遜は自虐

さて、「自信」について、もう少しお話ししたいと思います。

ここでエピソードを一つ。

会社員時代、私は何百人という新人営業担当を指導してきました。

その中で、特に印象に残っていたK君。

彼は世間話をしていても、とてもおもしろくて、基礎となるべきコミュニケーション能力はバッチリ。先輩相手にロールプレイングをさせてみると、1週間程度で営業トークもしっかり覚えてきました。その場にいた全員が、「よし、これからどんどん売るだろう!」と期待をしました。実際に最初はよく売れました。しかし、3ヶ月が経ったころ、突然全く売れなくなってしまったのです。その後も売れない状態はしばらく続き、最終的には、営業ではない別の部署へと異動になりました。

一体なぜそうなってしまったのか……。

K君の場合は、それまで順調に伸びていた営業成績が一度下がってしまったときに「自信」をなくしてしまったことが原因でした。

「自分なんて…」

K君の口からそんな言葉が多く発せられるようになりました。

たいていの営業担当であれば、売れたときにほめられれば、満面の笑顔で喜びます。

しかしK君は、「いえ、たまたまいいお客様だっただけです。ほんとに運がよかったです」と謙遜し、売れなかったときは、自分がダメだったと反省ばかり……。

元々持っている能力は高いのに、自己評価がとても低くなっていきました。

こんな状態ではポテンシャルがあっても、売れるものも売れません。

このように、本来の力を出せない人は、自分では意識はしていないのでしょうが「自虐」が好きです。

もともと持っているはずの能力を過小評価して、とても低い天井(目標)を設定してしまっていたのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

低い天井を設定していませんか?

皆さんは「ノミのサーカス」というものをご存知でしょうか?

これは、ノミがたくさん入った箱の蓋(ふた)を空けると、その中にいたすべてのノミが、不思議なほど同じ高さで跳ぶ姿を見世物にしているものです。ノミは本来、数メートル跳びます。しかし、ある一定の期間、天井を低くした箱の中で過ごすと、その箱の高さ以上は跳ばなくなってしまうのです。「これ以上は跳べない…」と学習してしまうからです。

全く同じことがK君にも当てはまります。

何度か失敗すると、痛い思いをしなくて済むように、チャレンジをやめてしまう…そうして低い天井を設定してしまうのです。

そのままでは、さらなる成長は見込めません。成長が見込めないということは、どんどんと取り残されてしまうことを意味します。何とかこの状況を変えなければなりません。

では、「自分の低い天井」を破るにはどうしたらよいのでしょうか?

8,568通り、あなたはどのタイプ?

反省しすぎるな

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その方法は意外なほどシンプルです。「反省しすぎない」ことです。

人は、「失敗したこと」をいつまでも反省ばかりしていると、どんどんとマイナスの自己暗示にかかっていってしまいます。

売れない営業はたいていの場合、マイナスの自己暗示を知らず知らずのうちにかけてしまっているものです。

「自分は何をやってもダメだ…」
「うまくいったのはたまたま。うまくいかないのは自分のせい…」

一度や二度失敗したくらいで「また失敗してしまうかもしれない」と考えてしまうのはナンセンスです。それでは次へつながりません。

失敗や挫折は誰にでもあります。

「反省ばかりする自分」を、まずはやめてみることを考えてみてはいかがでしょうか。
発想を転換し、「なぜできなかったのか」ではなく「次どうするのか」を考えるのです。

過去は振り返っても元には戻せません。

しかし、具体的な解決策を考えることで「過去を生かす」ことはできます。

自信がなくて、力を出せない人は、常に反省ばかりしています。

反省するということはつまり、自分をけなし続けていることと同じです。

自分にダメ出しをし続けて、自信を維持できるはずがないのです。

今すぐにやめましょう。

その代わり、これからは、次のような言葉を使いましょう。

「うまくいかなかった。これからはどうしたらいいだろう?」

これを心理学的には「解決志向アプローチ」と言います。

営業にかかわらず、「仕事がデキる」といわれる人は、自信を失わないよう、うまくハンドリングしています。

「反省しすぎない」「失敗を次に生かす」ことを意識的に実践しているのです。

最後に。

私は「営業は最高の仕事だ!自信を身につけることができるから」という話をさせていただきましたが、「自信」は何も営業だから身につけられるものではありません。ただ私自身は、営業という極めて結果が見えやすい仕事だからこそ、自信をつけていくことができたのだと考えています。

営業以外の仕事でも、多少結果が見えにくい仕事であったとしても、小さなところから「自信」は身につけていくことができます。そうすることで、仕事は思いがけずスムーズに動きだし始めるものなのです。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

『「売れる営業」がやっていること 「売れない営業」がやらかしていること』(大和書房)

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

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