ビジネスの心理に影響する「色」の力とは?

皆さんは、普段の仕事や生活の中で「色」をどれくらい意識していますか?

政治家などが、大衆の前で演説するときは赤のネクタイを締めて情熱的でパワフルなイメージを与える、討論会の際には青のネクタイで知的さ、冷静さを演出する…といった話は皆さんも聞いたことがあるかと思います。

こうした人間心理に影響を及ぼす色の力は、仕事のさまざまな場面でも活かせます。

そこで、企業やビジネスパーソン向けにもカラーコンサルティング、ブランディングを手がけるカラーキュレーター(R)・七江亜紀さんに、色の活用法を教えていただきました。

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「なりたい自分」につながるテーマカラーを決める

まずは、自分がどうありたいのか、人からどう見られたいのかを色に置き換えてみましょう。その色をネクタイやシャツなどのファッション、ハンカチ、名刺入れ、スマホカバー、ファイル、文具などの小物に取り入れます。

自分が見ていて元気になれる色、好きなスポーツチームのチームカラーなどを選んでもいいですが、決め手に欠ける場合は、次のような色の効能を意識してみてはいかがでしょうか。

・人に威圧感を与え、怖がられてしまう人
 →優しさを与えるピンク、和むオレンジ。心が温かくなり会話が弾む。

・内向的で人と接するのが苦手な人
 →赤。「攻めのキャラクター」を演出できる。黄色やオレンジも、人と積極的に関われる。

・一見クールで、とっつきにくい印象を持たれるが、お酒を飲めば冗談も言うような人
 →黄色。普段から明るく開放的になれる。

・仕事はデキるけれど、感情的になりがちな人
 →青。クールダウンし、冷静に対処できる。

・人と人の間に立ち、調整役を務める人
 →緑。バランサーとしての素質を引き出してくれる。

・時間にルーズだったり、身なりに無頓着だったりする人
 →白。自分を律する色で、清潔感をもたらす。

・高度な専門性で勝負したい人
 →黒。高級感があり、「本物」に見せる効果があり、プロフェッショナル感が際立つ。

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仕事のシーンに応じて、効果的な色を使い分ける

なお、テーマカラーとまでは設定しなくても、場面ごとに色の特性を活かしてみてはいかがでしょうか。シーンごとに、一例をご紹介します。

●「やる気スイッチ」を押すなら、赤ペンで書く

朝一や疲れているときの会議・商談など、エンジンがかからないとき、集中できないときは、赤い色を使って「やる気スイッチ」を押しましょう。ノートに赤ペンで字を書くのです。

ペンを赤に替えると、文字を綴るうちにだんだんエネルギーがわいてくるもの。また、新しいアイデアが浮かんだときも、赤ペンで一気に書くとエネルギーを持続させられます。

●作業環境を整え、効率を上げるなら、デスクは青色で統一

デスクが散らかっているせいで、資料などが行方不明になりがち、あるいは落ち着かない…という人は、机の上のグッズを青や紺で統一してみてください。青には「片付け」効果があります。寒色系の色は冷静沈着でクールな気分になるので、片付かないデスクをうるさく感じ、自然と「片付けよう」という気になるのです。

反対に、赤やオレンジなど暖色系のグッズが置いてあると気分的には明るくなれますが、気持ちが緩んで、散らかっていても「まぁ、いいか」となりがちです。

しかも、デスクがカラフルでにぎやかだと、周囲の人が話しかけやすい雰囲気になり、雑談を振られたり雑用を頼まれたりする回数が増えることも。

その点でも、青を用いて知的でクールな印象を演出すると、周囲の人が気安く話しかけにくくなる分、自分の仕事に集中して進められる効果が期待できます。

●早く終わらせたい仕事は黄色の付せんにメモ

「やることリスト」を付せんにメモしている人も多いことでしょう。

やることの中でも、すぐに終わらせたい仕事には、黄色いポストイットを活用するのがお勧めです。やるべき作業を黄色いポストイットに書き込んで、パソコンなどに貼っておきましょう。

黄色は子どものように無邪気な色なので、人を落ち着かない気分にさせます。そのため、早く剝がしたい一心でポストイットに書かれた行動をとるようになるのです。

●デスクトップの壁紙は、弱みを補うカラーに

デスクの上で大きな面積を占めているパソコンのデスクトップ。席にいる間、目に入っているため、心理に影響を及ぼします。そこで、壁紙やスクリーンセーバーは「自分の弱い部分を補える色」を基準に選んでみてはいかがでしょうか。

  • 「最近、落ち着きがないな」と感じているなら→青や紺のように、クールダウンさせる色
  • 周りの人とうまくコミュニケーションがとれていないなら→黄色やオレンジ
  • やる気が出ないとき→赤

●部下や後輩に注意したり叱ったりするときは黄色、ベージュ

黄色やベージュは相手に親近感を抱かせる色。部下や後輩に厳しく注意したり叱責したりしなければならないときも、これらの色が持つ「お友達感覚」を利用することで、必要以上に部下や後輩を委縮させることなく、「同じ目線に立っている」という感じを与えながら伝えることができます。相手も素直に耳を傾けられるでしょう。

なお、赤は、部下のやる気を引き出して仕事を応援するときにはふさわしい色ですが、叱るときには相手を委縮させてしまいます。黒も威圧感を与えます。

ただし、何度注意しても態度を改めない相手に対し、「本気の怒り」を見せる場合は赤・黒が効果的です。ここぞというときに使ってください。

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営業やチームワークにも効果。色で親近感や一体感を生み出す

これまでお伝えしてきたとおり、色によって自分の印象をコントロールし、対人コミュニケーションに活かすことができます。

自分のテーマカラーを決める以外に、相手に応じて色を合わせるのもいいでしょう。

例えば、取引先などの会社を訪問する際、皆さんはどのようなファッションを選びますか? 男性も女性も、派手すぎず、清潔感のあるファッションを心がけるでしょう。また、相手の業界特性に応じて、堅めのイメージにしたり、華やかさを演出したりすることもあるかもしれません。

それらも大切ですが、さらに色で相手の心を動かしましょう。

昨今、多くの企業は「コーポレートカラー」を意識するようになっています。そこで、初めて訪問する企業では、その企業のコーポレートカラーをもとに使う色を決めるのです。同系色のネクタイを締め、同系色のクリアファイルや文具を使うといったようにです。

「うちの会社のカラーと同じですね」と言ってもらえれば一気に距離が縮まります。相手が明確に意識しないまでも、相手が普段から見慣れている色を身に着けていることで、親近感や共感を抱いてもらいやすくなります。

共感を生み出すという点では、自社内でチームを編成した際に、「チームカラー」を設定するのもお勧め。

チームに仲間意識や一体感を持たせ、モチベーションアップにつなげたいときは、メンバーで話し合ってチームカラーを決めてみてはいかがでしょうか。皆で使用するファイルやペン、付せんの色などを統一してみましょう。テーマカラーにチームのロゴを入れたTシャツやバッジを作ると、さらに連帯感が強まるでしょう。

また、「戦隊シリーズ」のように、メンバーにカラーを割り当てて、その役割を意識してもらう手もあります。赤=情熱を持って引っ張る、刺激を与える 青=冷静に全体を見て意見をまとめる 緑=中立的存在として意見が分かれたときにバランスをとる 黄=空気を明るくするムードメーカー ピンクやオレンジ=温かく見守り、支える…など。

――何気ない色遣いが、意外と人の心理に影響を与えるものです。簡単に取り入れられますので、ぜひ色を戦略的に活用してみてください。

七江亜紀氏/色のひと(R)カラーキュレーター(R)

七江亜紀氏/色のひと(R)カラーキュレーター(R)

それぞれの色が持つ普遍の魅力を組み合わせ、独自の価値基準で、これからの新しい生活価値を提案する、ライフスタイル・クリエイター。企業やビジネスパーソンを対象とし、ファッション、食、インテリア等ライフスタイル全般のカラーコンサルティング、ブランディングを行う。 「色」を視覚だけに頼らず五感全てを通してイメージできるように、さまざまなものの価値向上を図る。また多くのメディアにて監修、大学や講習会でも講師業を行う。クチコミで広まったサロン「Lustre(ラスタ)」には全国から多くの女性たちが訪れている。著書に『色はビジネスの武器になる』(祥伝社)『色は無言であなたの心を動かしている。』(大和書房)『愛される色 オトナ世代の色えらび』(講談社)など。

EDIT&WRITING:青木典子

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