自分の有給休暇が何日あるか、いつ取れるか、知っていますか?

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残業、在宅勤務、プレミアムフライデーと、より良い働き方を模索する施策が話題となる昨今。そんななかで、なぜか影が薄めの年次有給休暇、いわゆる有休について解説します。

いつ、どれくらい取ることができるのか? 
どのように申請するのか?
そしてなんで取りにくいのか? 

働いていると忘れがちな有休取得と、そのしくみについて、いま一度押さえておきましょう。

意外と知らない?有給休暇のしくみ

年次有給休暇とは法律で定められた労働者の権利で、正社員、契約社員、パートタイム(※)といった雇用形態にかかわらず、働くすべての人に付与されます。労働者の立場を守るとともに、働く人に心身の疲労を回復し、英気を養ってもらって、次の仕事にしっかり備えてもらうというのが制度のコンセプト

安心して休めるように、労働が免除される期間も給料をしっかり出すことになっており、それゆえ「有給」の「休暇」という名前になっています。基本的なしくみは以下の通りです。

※パートタイムなどで短時間で勤務する場合は、正社員と比べて年休の付与日数は異なります

〈年次有給休暇の基本的なしくみ〉

(1)働き始めて6カ月で年10日間の休みが発生する。新卒者であろうが、転職組であろうが、あくまで入社のタイミングから半年で有休が発生

(2)その6カ月の期間における出勤率は8割以上を満たす必要がある

(3)働き始めて6カ月以降は1年ごとに付与され(その1年の出勤率8割以上を満たすことが条件)、勤続年数が延びるにしたがい日数が増える。最大で勤続6年6カ月の時に年20日間。なおこれは法律で定められた最低限の日数で、会社が独自の制度でそれを上回る日数を設定してよい

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(4)休みは翌年まで持ち越せる(有効期間は2年間、したがって最大保有日数は40日)

(5)休暇中の給料も支払われる

(6)有休はいつでも、希望する日数を、どのように使ってもいい

(7)ただし社員が休むことで会社の業務に支障が出る場合、会社側は社員に有休取得の時期を調整してもらうことができる

8,568通り、あなたはどのタイプ?

「1週間休みます」と口頭で伝えるだけで法的にはOK、ただし・・・

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有休をいつ何の目的で取得しようが、それは社員の自由。会社が社員の有休申請を、意味なくむやみに拒否することは違法です。(社員が休むことで業務に支障が出る場合、会社が社員に調整をお願いすることは合法)

そして有休を取得する手続きについては、特に法律の定めがありません。極端にいうと、上司に「明日から1週間休みます」と口頭で告げるだけで法的にはOKです。ただし繁忙期に、全社員から口頭で有休を申請されてもさすがに会社も管理できないので、多くの会社では就業規則で有休に独自のルールを決めています。業種や職種によって、仕事内容と休みが取りやすい時期は大きく異なるので、会社によってさまざまなルール(●日以上の有休は●日前までに申請するなど)があるでしょう。有休取得で迷ったり、不安だったりすることがあれば、先輩や上司、人事に相談してみることをオススメします。

なお「有休の取得事由を会社に報告せよ」という法律はなく、むしろ理由によって有休を認めないのは法律違反です。会社に取得目的を伝える必要はなく、会社に申請書を出す場合は「私用のため」という理由で十分。もし会社が慣例として細かな事由を求めてきて、それに戸惑うことがあれば、やはり先輩などに相談してみるとよいでしょう。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

みんなどれくらい有給休暇を取っているの?

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有休の基本的なしくみを見て「どうやら自分もその気になれば取れるようだ」と分かったところで、周りの状況を見ると、しっかり取っている人が少ないことに気付きます。

内閣府の資料によると、日本の有休取得率は2014(平成26)年時点で47.6%。ほぼ100%の一部欧州諸国と比べると5割以下の低水準です。よそはよそという意見もあるでしょうが、1993(平成5)年の日本は56.1%で、現在よりもまだ良い数字でした。1993年はバブル崩壊後で、かつ就職氷河期の始まりの年。以降、働く環境も厳しくなって、有休取得率は徐々に下がり、現在まで46〜49%の間で推移しています。

こういった状況下を立法側もただ手をこまねいているわけではなく、年5日の有休取得を義務化するなどの労働基準法一部改正案が提出されていたりします。

※出典:内閣府「男女共同参画白書 平成28年版」、データは中小企業を含んでいないので、有休取得率の実態はもっと低いことが考えられる。(取得率=「取得日数」÷「付与日数」×100)

これからの有休の取り方はどうあるべきか?

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ここまで有休の基本的なしくみと、それがあまり取得されていない現状を見てきました。50%を切る有休取得率から見える課題や今後のあり方について、本稿を監修する社会保険労務士・中村俊之先生にうかがいます。

中村俊之先生プロフィール・・・特定社会保険労務士。中村社会保険労務パートナーズ代表。中央大学法学部を卒業後、日本コロムビアを経て独立。30年にわたり人事・労務一筋に携わり、人事制度の構築、人事労務相談・研修講師に従事。著書に『最新版 やさしくわかる労働基準法』(ナツメ社)などがある。

中村先生:年次有給休暇は、弱い労働者の立場を守るための法律であると同時に、会社としては労働者に心身ともにリフレッシュしてもらい、より良い労働の提供をしてもらうためのものでもあります。私たちは機械ではありませんから、四六時中、年中、全力で仕事ができるわけではありません。繁忙期に走り回った後は身体を休めた方が良く、休むことで英気を養えば、気力十分で次の仕事に取り掛かることができます。  

休暇中に旅行に行って新しい物事に触れれば、新しいアイデアや知識を得られる場面があったりするでしょう。きちんと休むことも働くことの一部。そのように考えると「いかに上手に休みを取るか」がもっと働き方改革の議題になって良いと思います

有休取得率が低いにもかかわらず、会社はもとより働く側からそこを疑問視する声が大きくならないということは、もしかしたら、有休を取らないことが、生産性の悪さの免罪符のようなものになっているのかもしれません。

仮に年20日間休日が増えたら、残った期間内に全力を尽くし、いかに仕事を上手く進めるかを人は模索するはずです。その結果として、生産性は上がるのではないでしょうか。仕事のパフォーマンスを上げれば胸を張って休めると考えて、私たちが抱きがちな休むことへの罪悪感を減らしてはどうでしょう。  

働き方改革を推進する会社のなかには、有休を取得しやすい環境の整備に取り組む会社もあります。例えばカシオ計算機では、女性社員からの声を受けて、有休の時間単位取得を導入しています。また、職場単位の有休取得率を向上させた管理職を、評価の対象とする会社も現れています。このような取り組みは採用活動で人材を集めるアピールポイントになります。  

会社側と働く側の両方が、「休むことも大事な仕事」という意識を持って、それを実行できれば、もっと働きやすい世の中になるのではないかと思います。

監修:中村俊之 (中村社会保険労務パートナーズ )

文:本山光

編集:大山勇一(アーク・コミュニケーションズ

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