人間関係を築きたいなら、まず「雑談力」を磨こう

コミュニケーションに関するビジネス本を約20冊も出されている、 コミュニケーション総合研究所代表理事の松橋良紀さん。そんな松橋さんに「コミュニケーションの極意」についてお話しいただくこのコーナー。第2回目は「雑談力」についてです。

f:id:k_kushida:20161227111958j:plain

人間関係を築くには、「雑談力」次第です。

人とつながるのは、「雑談力」次第です。

理路整然とした話ができたら、人間関係が築けるとか、論理的な話をしっかりできたら、信頼してもらえると思っている人は多いです。

これらはすべて勘違いです。

私が初めて営業の仕事についた時、100ページくらいのマニュアルを渡されて、最初に言われたことは、「1週間で、これを丸暗記してセールストークを覚えてこい!」

ですから、私は一生懸命覚えてました。

お客様にプレゼンするようになり、覚えたことをしゃべるのが仕事と思って、がんばってしゃべりつづけました。

とても論理的に組み立てられたトークを、そのまま覚えて話すわけです。

お客様への質問も決まっていて、「はい、◯◯です」以外は言わせないわけです。雑談は一切なく、セールストークを繰り出していました。

こうして、売れない営業マンが製造されていくのです。

実は、マニュアルを覚えて、ロープレをすればするほど、売れなくなるのです。なぜなら、トークがうまくなればなるほど、人間関係を築くことをおろそかにして、営業マンが話したいことを話すなるからです。

売れなかった私の大きな欠点は、雑談が苦手だったことです。

それはコミュニケーションに関して誤解があったからです。

営業マンに限らず、人間関係が苦手な人は、雑談について大きな誤解をしています。

雑談についての大きな誤解

雑談が苦手という方は多いです。

私の著書、『何を話したらいいかわからない雑談のルール』(KADOKAWA)が、8万部近く売り上げるベストセラーになったことからわかるように、雑談で困っている人はたくさんいます。

雑談が苦手な人に聞くと、次のような悩みをおっしゃいます。

「雑談をしたら、お客様の時間を奪って申し訳ない」

つまり、要件以外の話をしたら、相手にとって迷惑だと思っているから、雑談をせず、淡々と要件を伝える論理的なコミュニケーションをしているのですね。

雑談をするのは、相手にとって迷惑だと思うこと。

この誤解が、人間関係と深めることがなく、知識や情報、理論理屈の伝達だけになってしまうのです。

実はその逆で、雑談をしないということは、「あなたとはビジネスライクな関係だけでいたいです」というメッセージを伝えているのです。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人が決断するときの決め手とは?

論理的に完璧な話をすれば納得してもらえるか?

物事はそれほど単純ではありませんね。

人が何かを決めるには、感情がベースにあります。

感情を動かさなければ、行動してもらえないです。

「この決断は正しいだろうか?間違ったらどうしよう?」

こういった躊躇を乗り越えさせるには、相手の感情を動かす必要があるのです。

感情を動かす最大の力は何か?

それが「信頼」です。

「この人は信頼できるだろうか?」

言い換えれば、「自分をだまそうとしていないだろうか?」

そのフィルターをくぐり抜けて、「この人は信頼できる。よし、この人に賭けてみよう」と決心してもらうことで、ようやく行動を促すことができます。

このように感じてもらうためには、人間性を知ってもらうことです。

人間性を伝えるには、論理的な説明ではないのです。

感情を動かす雑談力が必要です。

8,568通り、あなたはどのタイプ?

人間性を伝えるために必要なのが雑談

では、人間性を伝えるにはどうしたらいいでしょう?

これに対して、「自分の実績を、論理的にしっかりとプレゼンする」という答えを言う人がいそうです。

もちろん、自分の実績を伝えるのは大事です。

でも、言い換えれば自分の自慢ばかりされたらうんざりします。

そこで雑談の登場となります。

人は、気軽な雑談の中で、誠実さや人柄のよさを嗅ぎ取っているのです。ですから雑談はあなどれません。

雑談ひとつで、相手の価値観を把握して判断されています。

「この人の言う事なら信じてみよう」と思われるか、「こいつ、しょうもないやつだな。関わるのはやめておこう」と思われてしまうかは、何気ない会話で伝わってしまうのです。

雑談を一言もしなかった営業マン

f:id:k_kushida:20161101152613j:plain

ある営業マンが私の会社に来訪しました。

私のスタッフが、私の著書がズラリと展示されている応接室に案内しました。

少し遅れて、私が部屋に入り、一言。

「どうもお待たせしました。コミュニケーション総合研究所代表の松橋良紀です」と言いながら、名刺交換をしました。

相手から受け取った名刺を見て、「おっ、課長さんですか!30代なのに素晴らしいですね。どうぞお掛けください」とイスに座るように促します。

すると、「いえいえ、はい、ありがとうございます」と席につくなり言いました。

「ではさっそくですが、私どもの会社概要を説明させていただきます」

厚みのあるバインダーを開き、説明し始めました。

「創業20年目で、業界では何番目で、これこれの業績を挙げていて・・」と、なめらかな口調で、なんと5分以上も会社の説明が続いたでしょうか。

その頃には、アポイントを約束したのをすでに後悔し始めていました。

商品説明も、一方的です。

もう、頭がクラクラして睡魔が襲ってきてたまりません。

何か質問をされて、考えるふりをしながら寝てしまい、「社長!社長!」と連呼されるくらい。

この調子で30分近くの拷問が続きました。

「今ならサービスします!ぜひ今日、決めていただけませんか!」と勧められたとき、「あなたの話だけで決めるわけにはいかないので、今日は決めませんよ」とはっきりと断りました。

普段、断るのが苦手な私ですから、「自分がこんなに冷たくあしらうことができるんだ!」と自分で驚くくらいでした。

人間関係が築かれていないと、「無下に断るのも相手に悪いな」など、1ミリも感じる事なく断ることができるようになることを、身をもって知りました。

あれから5年経ちますが、この出来事は今でも忘れられません。

エンジンを暖めろ

その課長さんの一番の問題は、一切の雑談をしなかったことです。

その日の天気から始まって、事務所が、駅から近くて環境がよいことや、応接室に飾っている私の著書の話など、いくらでも雑談のネタはあります。

しかし彼は、「では早速ですが会社概要を」と、いきなり全速力で駆け出しました。

雑談がない商談には、得と損しか残りません。

雑談をしないで説得しようというのは、準備なしでいきなり100メートルのダッシュをするようなもの。身体を温める前に全力を出したらあちこち故障します。

寒い冬に、エンジンをかけて、すぐにアクセルを踏み込んでいたら、エンジンがすぐにダメになります。車を大事にしている方は、朝エンジンをかけてから、走り出すまで10分くらい時間をあけます。人間関係も暖機運転が必要なのですね。

松橋良紀(まつはし・よしのり)

コミュニケーション総合研究所代表理事/一般社団法人日本聴き方協会代表理事/対人関係が激変するコミュニケーション改善の専門家/コミュニケーション本を約20冊の執筆家

1964年生青森市出身、青森東高校卒。ギタリストを目指して高校卒業後に上京して営業職に就くが、3年以上も売れずに借金まみれになりクビ寸前になる。30才で心理学を学ぶと、たった1ヶ月で全国430人中1位の成績に。営業16年間で、約1万件を超える対面営業と多くの社員研修を経験する。2007年にコミュニケーション総合研究所を設立。参加者が、すぐに成果が出るという口コミが広がり出版の機会を得る。NHKで特集されたり、雑誌の取材なども多く、マスコミでも多数紹介される。

約20冊で累計30万部を超えるベストセラー作家としても活躍。「コミュニケーションで悩む人をゼロにする!」を合言葉に奮闘中。

著書

「あたりまえだけどなかなかできない聞き方のルール」(明日香出版社)

「相手がべらべらしゃべりだす!『聞き方会話術』」(ダイヤモンド社)

「人見知りのための沈黙営業術」(KADOKAWA)

「何を話したらいいのかわからない人のための雑談のルール」(KAODOKAWA)

「話し方で成功する人と失敗する人の習慣」(明日香出版社)

公式サイト http://nlp-oneness.com

PC_goodpoint_banner2

Pagetop