仕事も健康も自己管理、アマゾンの自由なワークスタイル

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ベンチャー企業のみならず、トヨタ自動車や日本航空などの大手企業でもリモートワークが導入・推奨され、多様な働き方が広く浸透しつつある昨今。
大手通販会社アマゾンはコアタイムなしのフルフレックス制度を導入しているといいます。
時代の先端を行き、革新的なサービスを生むアマゾンは、どのような思考と哲学を持ち、いかにしてフレキシブルな働き方を可能にしているのでしょうか。

そこで今回は、アマゾンジャパン合同会社のコーポレート部門で人事本部長を務める上田セシリアさんにインタビュー。
そこには常に時代の一歩二歩先を行く、新しい働き方がありました。

フルフレックスも可能!求められる自己管理能力

―上田さんは2年ほど前にアマゾンに入社されたとのことですが、企業風土で驚いた点はありましたか?

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以前私が在籍していた企業では、ほとんどが新卒採用でしたが、アマゾンジャパンは中途採用が多いという点が、大きな違いですね。ですから社員の考え方や経験のダイバーシティ(多様性)がとても豊かです。それがとても新鮮でした。
例えば、一般的には、中途入社された方が提案したアイデアに対して「それはウチの会社のやり方じゃないよ」と試すことなく否定してしまうことがあると聞きますが、アマゾンでは新しいアイデアをまずは受け入れてみようとすることが多いと思います。

―今回お伺いしたかったのは、コアタイムを設けずにいつでも働いて良いとしている「フルフレックス制度」についてです。みなさん、この制度をどのように利用して働かれているのでしょうか?

業務によってはシフト制や、9時から18時まで時間が決められている職種もあります。またフレックスタイム制度が導入されていても、国によって労働制度が異なりますので、どの国でもコアタイムなし、いつでも働くことができるフルフレックスというわけではありません。ただ基本的にアマゾンジャパンで、フレックス制度を採用している業務においては、コアタイムを設けずに自由に社員が勤務時間を決めて働いています。

例えばグローバルでの会議を設定すると、アメリカやヨーロッパは昼間でも日本は夜中ということがたびたび起こります。そうした場合でも、フルフレックス制度があることによって、夜遅い会議の翌朝は11時に出勤、あるいは午前中は「Work from Home(在宅勤務)」にすることも可能です。コアタイムを設けずフレキシブルな勤務体制にすることで、半日休暇を取らなくても、銀行や市役所の用事を済ませることができます。

―つまり勤務時間ではなく、完全に仕事の成果や結果に基づいて評価されるということですね。狙いとしては働きやすさの向上でしょうか?

そうですね。生産性の向上という点もありますが、大切にしているのは社員の健康です。夜遅くまで働いて翌朝8時に出社……なんてことが毎日続いたら、健康を損ねてしまいますし、会社に来ても仕事に集中できません。
また「自己管理」をすることで自分自身への意識を高めてもらう狙いもあります。究極的に言うと、自分の健康は自分で管理する、ということです。それを可能にするために、会社はフルフレックス制度を導入することで、社員による自己管理を手助けしています。

例えば、新たなサービスのスタートやプライムデーのようなセールの時期には、準備のために夜遅くまで働き、新サービスやセールがスタートしても、そのまま業務を続けなくてはならないことがあります。しかし、一段落したら、まとまった休みを取得したり、自分で様子を見て仕事のペースを調整したりしても良いとしています。

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8,568通り、あなたはどのタイプ?

成長のために「自分は何をしたいのか」を見つめ直すこと

―在宅勤務の制度についても聞かせてください。

これは私が管轄しているコーポレート部門の人事部の例ではありますが、以前は、自宅で仕事を行う「Work from Home」を行なう際に、「子どもの具合が悪いから」など、全員がさまざまな理由をつけた上で利用していました。しかし、私はその理由付けを廃止しました。なぜなら理由をつけると「子どもがいる人であればWork from HomeしてもOK」と、理由そのものに価値や差が存在してしまうからです。私は、周囲にWork from Homeをするということをきちんと伝えて、仕事が管理できているのなら、理由は必要ではないと思います。
私自身は、子どもの休みに合わせてWork from Homeすることが多く、また、直接人と会う必要がない日はWork from Homeにすることもありますね。会議も家から電話で参加できますから。この改革を、私は入社直後に行いました。

―良い意味で格差をつけない非常にフラットな職場環境のようですね。

とはいえ、中途採用が多く、全員が同じバックグラウンドや考え方を持っているわけではありませんから、すべてフラットとはいかない部分もあります。例えば、部下や同僚から妊娠を伝えられたとき、どう対応してよいか戸惑いを感じる人もいます。そうした場合は、その人に合わせてコーチングやトレーニングを行ない、どのような働き方がチームにとって良いのかを一緒に考えていきます。

しかしWork from Homeもフルフレックスも、会社が強制しているわけではなく、すべて社員が自分で決めて利用する制度です。ですから根底にあるのは、お互いのトラスト(信頼)と、社員一人ひとりに求めるオーナーシップですね。

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―オーナーシップ、良い言葉ですね。
しかし日本の企業で、特に若手社員では、こうした環境に身を置いている人は少ないようです。そこで環境に左右されず、自身の成長につながる働き方についてアドバイスをいただけますか?

やはり自分を持つことだと思います。つまり、自分で考えるということです。アマゾンには、迷った時にはお客様を起点に考えるという文化があります。それと同様に、原点である自分に戻って「自分が何をしたいのか」に目を向けることがとても大事だと思います。

誰もが「自分」を持っているはずなのに、社会の中では自分を抑えたり、誰かの言うことにそのまま従ったりして、自分の考えではない行動をしてしまうことも時にはあると思うのですが、それを乗り越えて欲しいですね。

自分を持っていなければ生産性の向上にもつながらないですし「言われたからやっている」という仕事では、だんだんつまらないと感じてくるでしょう。つまらないと、最低限のことしかやらなくなってしまうのです。だから本当に自分の能力を発揮したいのであれば、仕事に自分自身を持っていき、自分のこととして考えること。これは、どんな仕事でも共通することだと思います。

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<プロフィール>

上田セシリア Cecilia Ueda

アマゾンジャパン合同会社 インターナショナル・コーポレート、人事部ディレクター。 1988年日本モトローラ入社、1991年よりP&Gジャパン株式会社入社。日本とアメリカにおけるマーケティング、および人事業務を経て2014年アマゾンジャパン合同会社入社。

<WRITING・伊藤七ゑ/PHOTO・岩本良介>

編集:鈴木健介
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