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仕事で疲れた心を潤せ!週末農業のススメ

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 食の安心・安全性が重要視され、野菜直売所や道の駅といった新鮮な野菜が手に入る場所に多くの人が集まっている。生産者と消費者の距離が近づいたことによって野菜づくりを身近に感じるようになり、「エコライフ」や「アグリカルチャー」などの言葉とともに農業のイメージも変化してきた。自給自足的生活に憧れる若い世代も増えつつあり、最近では平日は会社勤めをして週末に趣味として農作業を楽しむ“週末農業”がにわかにブームとなっているという。

 

 新鮮で美味しい野菜を味わえるのはもちろん、植物や土に触れて太陽の光を浴びることはストレス解消に効果的で、疲れた心が潤い、心に余裕ができて仕事の効率もアップするとか。さらに、趣味が高じてサイドビジネスとして成功している人も!

なんだか良いことずくめの“週末農業”について、全国でレンタル農園を運営する株式会社マイファーム専務取締役の浪越隆雅さんに聞いた。

 

「週末農業」という新しいライフスタイル

 ベランダで始められるプランター栽培やレンタル農園で行う露地栽培、人手不足の農家を手伝う“援農”や、週末に田舎に滞在して農作業をする滞在型市民農園など、週末農業にはいくつかのスタイルがある。中でもポピュラーなのは、都心に近いレンタル農園を借りるスタイルだろう。そこで今回は、マイファームが運営する体験型農園「キッチンファーム新横浜」を訪問。横浜駅から市営地下鉄で3駅という好立地でありながら、晴れた日は富士山を望むこともできる絶景スポットにレンタル農園はあった。

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▲見晴らしの良い高台にある「キッチンファーム新横浜」

 「“キッチンファーム新横浜”のコンセプトは、手ぶらで来ていただける農園です。基本的な道具はこちらで用意していますので、庭に行く感覚で気軽に来ていただければと。私も普段はとてもラフな格好で農園に来ています(笑)」

 実は浪越さん自身も“週末農業”を楽しむ若きビジネスマンの一人。趣味で農業を楽しむうちに農業系の仕事に興味を持ち、転職。実際に農業の現場で農作業をしていたこともある“栽培のプロフェッショナル”だ。

 

 「キッチンファーム新横浜」の利用者層は、大きくは30〜40代のファミリー層と、60〜70代の退職後に家庭菜園を始める層の二層に分かれているという。そのほかにも、社会人サークルでお金を出し合って借りる人々や、広い面積を借り、保養所のような役割で福利厚生として活用している企業もある。

 

 「社会人サークルで利用されている方々は、“週末、何時に畑に集合”と集まって、採れたての野菜でバーベキューをしたあと、横浜あたりで二次会をして帰るといったスタイルで楽しんでいらっしゃるようです。うちの会社は8年前から貸し農園を運営しているのですが、若い世代の利用者が約10年で20%ほど増えてきています。テレビや雑誌などで農業が取り上げられるようになり、ライフスタイルのひとつとして幅広い層の方々が興味を持ってくれるようになってきたと感じています」

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▲料理によく使う唐辛子も自分で作れる

 

忙しい人もトリコにする魅力とは?

 自分で作った新鮮で美味しい野菜を食べられることのが週末農業の最大のメリットではあるが、収穫だけが目的ではない。多くの利用者は農業を通じて「気づき」を得て、多くのことを学んでいるようだ。野菜が採れなくても何かしらの「気づき」があれば、週末農業の楽しさを味わえると浪越さんは言う。

 

 「野菜という対価を得るだけではなく、知識として得るものが大きいとおっしゃる方が多いです。スーパーでの野菜選びが変化したとか、野菜の旬がわかるようになったとか、農作業で得た“気づき”を日常生活に反映できるようになっていく。あとは、黙々と土いじりや雑草取りをしていると、無心になれるので頭も心もスッキリするとか、畑で土を耕すという非日常的な作業は、気持ちを切り替えるのに役立つとおっしゃる方も多いです。それから、週末だけでも農業に携わると、天候の変化に敏感になります。普段仕事をしていると雨は嫌なものですが、農作物にとっては恵みの雨。雨が嫌いじゃなくなったという方もいました。できれば一年間くらい通じて畑に来てもらえると、季節ごとに定点観測できるので、自然のさまざまな変化に気づいていただけると思います。あと、僕の経験から言いますと、週末農業は夫婦円満の秘訣でもあります!(笑)畑作業って意外と、夫婦で会話をする良い機会になるんです。独身の方は“畑で婚活”というイベントも行っていますので、ぜひご参加いただければなと」

 

 マイファームのレンタル農園では、世代を超えて楽しめるワークショップや農業体験も定期的に開催していて、「キッチンファーム新横浜」では特に「食」にフォーカスしたイベントに力を入れている。大豆の種まきから行う味噌作りや自分たちで作った野菜で作る干し野菜やカレーを作るワークショップやイベントが、子どもと一緒に体験できるということもあり、若いファミリー層には人気があるという。

 

「10月には、植え付けを行ったさつまいもが収穫を迎えるので、芋掘り大会があります。野菜を採ってそのまま食べる機会って、日常生活ではあまりないですから、子どもたちは特に大喜びです。週末農業って、大人も子どもも垣根なく楽しめるところが最大の魅力だと思います」

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▲珍しいオクラの花

 

働き盛りの若い人にこそ体験してほしい

 確かに魅力的な週末農業だが、忙しく働いている人は「野菜づくりをするヒマなどない」と思うかもしれない。まずは農園で実施されている収穫体験などに参加し、「収穫」という農業の一番「オイシイ」ところから入ることが、気軽に始められる一番良い形だと浪越さんは言う。

 

 「若い世代の方にこそ週末農業を体験して欲しいですね。働き盛りだからこそ食は大切ですし、いずれ結婚してお子さんを持たれたときに“食の安全性”に関する予習にもなりますから。食が充実していくと生活が豊かになるという声も多くいただいています。農園に来る前に、スーパーに並んでいる野菜を注意して見てみることから始めてもいいかもしれません。野菜の色や形、旬はいつなのかなど、何かしらの気づきがあると思います」

 

 「農業なんてやったことないし…」という人でも大丈夫!マイファームのレンタル農園にはそれぞれにアドバイザーがいて、種まきや収穫の時期など、農業に関するさまざまなことをていねいに教えてくれる。経験のない初心者でも簡単に収穫の喜びを味わうことができるという。

 

 「アドバイザーの経歴は、元農家さんや農大生、家庭菜園を20年やっていた方、大学で研究をされていた方と実にさまざま。野菜の作り方はもちろん、どんな品種が美味しいか、作りやすいかなども教えてくれます。それから、畑で作業をすると人の輪も広がっていくので、出会った人たちが教えてくれることも。特に年配の方々は過去に野菜作りを経験されている方が多いので、とても親切に教えてくれますよ」

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▲アドバイザーの大橋さんと収穫間近のサツマイモ

 

ネガティブなイメージだった「農業」の未来は明るい!

 マイファームでは貸し農園のほか、社会人向けの週末農業学校「アグリイノベーション大学校」や、生産者と消費者をつなぐ八百屋「マイファーマー」など、農産業に関わる事業を多角的に運営している。創業当時からの経営理念は「自産自消ができる社会」で、世の中の変化とともに、新しいマーケットや新しい栽培方法、売り方、見せ方がきちんとできる人を育ててきた。実際にレンタル農園で週末農業を楽しむうちに農業に興味を持ち、学校に通って農家として独立した人もいるという。

 

 「多くの農業学校は、全寮制や二年制といったスタイルで、社会人の方が働きながら通うにはハードルが高かったんです。いずれ就農したいという思いがあっても、農業に向いているか向いていないかを判断する期間は必要ですから、まずは週末に通学して体験できるような学校を作りました。これまでは、就農する場合は独立するくらいしか道がありませんでしたが、今は企業形態の農業生産法人に就職して、給料をもらいながら野菜を作るスタイルも主流になってきています」

 

 企業の農業参入のほか、若手農家が直売するブランド果実や野菜、新しいスタイルの八百屋など、農業就業者の年齢層も、ここ数年で若返りを見せている。農業が変わってきたからこそ、若い世代にも興味を持たれるようになってきたのだろう。

 

 「起業して独立するのは、どんな業界でも大変です。我々としては、週末農業を楽しむ方の一人でも二人でもいいから、農家となってこれからの農業を支えてくれたら嬉しいと思っています。耕作放棄地をレンタル農園という形で活用することで減らすということも、我々の目的のひとつです。農業はしんどいとか儲からないとか、ネガティブなイメージもありますが、これからどんどん発展する明るい業界だと思っています。興味を持っていただけるように間口を広げ、就農希望者を支援していくことで、これからの農業が成り立っていくのではないかなと。販路まできちんと考えて、やり方さえ間違わなければ、農業は儲かるとまでは言い切れませんが損はしないと思います。うちの会社では、農業学校を出て就農した人々が“売り先がない”と悩んでいたので、生産した野菜をすべて買いとるための八百屋事業を始めました。コンセプトは“畑に行きたくなる八百屋”です。定期的に農家さんまわりをしたり、収穫体験のツアーを組んだりして、八百屋を情報発信の場として使っています。野菜を買って食べてくれた人が農業に興味を持ち、レンタル農園で農作業をしてくれるようになり、そして、農家としてやってみたいと思う人が増えていく。すべてがひとつの輪でつながっているんです。これからも若い方に興味を持っていただけるようにさまざまな取り組みを行っていきたいと思っていますので、ぜひ一度、だまされたと思って畑に来て欲しいですね(笑)」

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浪越隆雅(なみこし・たかまさ)

1984年香川県生まれ。2008年株式会社リクルートHRマーケティング(現 株式 会社リクルートジョブズ)にて人材募集に関する営業を経て、2010年にマイ ファームに入社。体験型農園事業、教育事業、流通事業など農業に関連する事業 に幅広く携わる。

体験農園キッチンファーム

https://kitchen-farm.jp

株式会社マイファーム

http://myfarm.co.jp

EDIT&WRITING:石本真樹   PHOTO:岩田えり