仕事上で発生する連絡事項には、「どうも言いづらいな…」というものも多々ありますよね。
例えば、相手に負担を強いるような依頼のほか、催促、お詫び、断り…など。
相手を目の前にして直接伝えるのであれば、声のトーンや表情によって感情を伝えられるので、何とかうまいことやれるような内容も、メールだと中々…。こちらは全くそんな気はないのに、妙にカドが立って相手を不快にさせてしまったり。
一体どうすればこうした「伝えづらい内容」をメールでいい感じに送れるのか?
日本ビジネスメール協会の代表理事であり、ビジネスメールやコミュニケーションに関するコンサルティング・教育を手がける(株)アイ・コミュニケーションの代表を務める平野友朗さんにお聞きしました。
▲(株)アイ・コミュニケーション代表の平野友朗さん
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目次
【前提】一つの言葉でも、自分と相手のとらえ方は異なることを意識する
前提として意識しておきたいのは、自分では誠意を持って対応しているつもりでも、文書にした場合、相手から見ると冷たく感じられてしまいがちであるということ。
また、受け取った相手の価値観や考え方、あるいはメールを読んだときの状況や心理状態などによって、自分が意図しているのとは異なるとらえ方をされることもあります。
「こういう表現をすると、相手はどうとらえるか、どう感じるか」を考えながら書きたいものです。
少し言い回しを変えるだけでも、印象はやわらかくなります。そして、面倒でも本題の前後に一言、思いやりや気配りを表すフレーズを加えることをお勧めします。
具体的なフレーズの例をご紹介しましょう。
相手に負担を強いるお願いごとをする場合の具体例
いきなり要望を切り出すのではなく、ワンクッションとなる言葉を入れましょう。
定番は「恐れ入りますが…」「お忙しいところ恐縮ですが…」などですが、難易度や緊急度などに応じてアレンジします。
「いつもお願いばかりで恐縮ですが…」
「誠に申し訳ないのですが…」
「誠に勝手なお願いで恐縮ですが…」
「無理を承知でお願い申し上げますが…」
「ご迷惑もかえりみずのお願いで大変恐縮ですが…」
要望を伝える際、「~してください」という言葉は、命令口調で冷たい印象を与えがちです。簡単な作業をお願いするならともかく、相手に負担をかけるような依頼であれば、ソフトな言い回しにしましょう。
「~していきただきますよう、よろしくお願い致します」
「~をお願いできますでしょうか」
「~していただければと存じます」
「~していただけると幸いです」
「~していただけると助かります」
約束や納期を守らない相手に催促をする場合の具体例
「催促される」というのは、誰もが不快感やプレッシャーを感じるものです。約束を守らない相手が悪いとしても、今後のお付き合いを考えると、気まずい雰囲気になるのは避けたいですよね。
「まだ~していただいていません」のようなストレートな表現だと責めているような印象になりますので、やや遠回しな表現にするのがいいでしょう。
「~の件ですが、その後いかがでしょうか」
「~について、ご確認いただけましたでしょうか」
「急かすようで申し訳ありませんが、ご回答をお待ちしております」
このほか、相手の事情への気遣いや、逃げ道を用意する一言を添える手もあります。
「いろいろとご事情がおありでしょうが、~してくださいますようお願い致します」
「何かの手違いかとも存じますが、まだ~していただいておりません」
「ご多忙のためと拝察致しますが、まだ~していただいておりません」
状況が深刻で、強く催促したい場合には、「困っている」ことを伝えるのも手です。
ただし、「困っております」ではストレートすぎるので、言い回しを変えましょう。
「大変困惑している状況です」
「当方業務に不都合をきたしております」
「これ以上遅れますと、当方の営業に支障をきたしかねません」
相手にお詫びをする場合の具体例
ミスやトラブルなどよって相手に迷惑をかけた場合など、ベストな対応は「対面してのお詫び」ではありますが、すぐに相手のところに飛んで行けないケースも多いでしょう。ミスが発生したなら、スピーディに対応することも重要。適切なメールをすばやく送ることで、関係悪化を防げるのはもちろん、むしろ好印象につながることもあります。
お詫びのメールで押さえるべきポイントは次の4つです。
1.最初にお詫びの言葉を述べる
2.ミスやトラブルに至った経緯を説明する
3.今後の対処、心構えを伝える
4.改めてお詫びを述べる
謝罪の言葉の基本は「申し訳ございませんでした」。「すみませんでした」はビジネス文書では不適切です。より深刻な事態であれば、さらに丁寧な表現を使いましょう。
「謹んでお詫び申し上げます」
「幾重にもお詫び申し上げます」
「陳謝致します」※書き言葉では最上級のお詫びの言葉。安易には使わない
<このほかのお詫びフレーズ一例>
「このような事態を引き起こししてしまい、申し開きのできないことです」
潔く非を認める。言い訳をしない姿勢がプラスの印象に
「ご不快の念をおかけ致しまして、大変申し訳ありません」
相手側と自分側と、どちらに非があるのか不明な場合にも使える
「このたびのことは、関係者一同猛省しております」
「反省」よりもさらに深刻に受け止めていることを伝える
「このような失敗を二度と起こさないよう、肝に銘じます」
失敗を教訓にするという、強い決意を伝える
なお、深刻なトラブルであれば、とりいそぎメールを送った後、対面での謝罪が必要となります。
その場合は、次のように締めくくります。
「近日中に改めてお詫びにうかがいたいと存じます。
メールにて恐縮ですが、とりいそぎお詫びを申し上げます」
この一文を忘れると「メールで簡単に済ませるつもりか」と、火に油を注ぐことになりかねませんので、
注意してください。
相手からの申し出や提案を断る場合の具体例
「断る」ということが苦手…という人は少なくないと思います。しかし、はっきりと断らずあいまいにしておくと、相手も困りますし、さらに断りづらくなります。
明確に断りの意思を示しつつ、カドが立たないフレーズを使うといいでしょう。
<基本の断り方>
「せっかくのお申し出ですが、ご遠慮申し上げます」
「せっかくのご提案ですが、ご要望には添いかねます」
「ありがたいお話なのですが、お断りせざるを得ません」
<次につなげる断り方>
「誠に残念ではございますが、今回は見送らせていただきます」
「誠に心苦しいのですが、今回はご遠慮申し上げます」
「願ってもない機会ですが、諸事情がありお引き受け致しかねます」
<印象をやわらげる+αのフレーズ>
「検討を重ねましたが…」
「急な差し支えがございまして…」
「事情をお察しいただき、ご理解いただければと存じます」
「お力になれず(ご要望に添えず)、誠に申し訳ありません」
いずれにしても、相手の立場や事情を思いやる一言を加えることで、印象がやわらぎ、受け入れてもらいやすくなります。ぜひ一手間をかけてみてください。
<プロフィール>
平野友朗さん/株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役、一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事、ビジネス実践塾 主宰
1974年生まれ。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、2003年、日本で唯一のメルマガ専門コンサルタントとして独立。2004年、アイ・コミュニケーション設立。ビジネスメール教育の専門家。得意とする分野は、メールコミュニケーション効率化や時間短縮などの業務改善、ウェブマーケティングの戦略立案やメルマガ・ウェブサイトの改善、メディア戦略を含めたブランド構築や出版プロデュースなど多岐に渡る。著書に『カリスマ講師に学ぶ!実践ビジネスメール教室』『ビジネスメールの常識・非常識』ほか。
(株)アイ・コミュニケーション http://www.sc-p.jp/
文・青木典子