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【箭内道彦氏インタビュー】 尊敬される努力をし、カッコよく、且つ愛されるリーダーであれ

超一流のクリエイティブディレクターに学ぶ仕事の進め方、マネジメント論

多くの管理職の方が常に課題に感じている「マネジメント」。そんなマネジメントに必要なスキル・ノウハウについて、現在第一線で活躍中のクリエイティブディレクターである箭内道彦さんにお話を聞いてきました。

 

多くの人を巻き込んでひとつのものを創り上げていくクリエイティブディレクターの仕事は、マネジメントに通じるところも多く、マネージャー・リーダーにとっても学びとなる部分が数多く存在していました。

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箭内道彦(やない・みちひこ)

クリエイティブディレクター・「月刊 風とロック」発行人

 

1964年生まれ、福島県郡山市出身。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。博報堂を経て「風とロック」を設立。タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」、リクルート「ゼクシィ」、資生堂「uno」お笑い芸人52人CM、東京メトロ「TOKYO HEART」など数々の話題広告キャンペーンを手がける。NHK「トップランナー」MC、ロックバンド「猪苗代湖ズ」ギタリスト、「LIVE福島」実行委員長、TOKYO FMラジオ「風とロック」パーソナリティ、映画「ブラフマン」撮影・監督など業種やジャンルを超えて活躍している。

 

不確かな現場は「決断」と「ビジョン」を求めている

「クリエイティブ」と呼ばれる領域と、ビジネスでいう「マネジメント」と呼ばれる領域は、昔から対立概念で語られることが多いですよね。互いに違おうとし合っている、というか。でもクリエイターはマネジメントの意識を持つべきだし、マネジメントもクリエイティブであるべき。そういう意味では、「ディレクション」「プロデュース」「マネジメント」の3つの要素はリーダーにとって必要不可欠なことだと思っています。 

 

博報堂の頃の先輩が言っていた言葉なんですが、リーダー、クリエイティブディレクターの仕事は「星を指さす仕事」なんです。

 

自分たちの辿り着く場所はあそこだ、って指さす存在でなければいけない。たまに「みんな考えてきて」って言って集めたものを、「これは違う、あれは違う」ってやっている人も見かけますが、それはディレクションじゃなくてセレクションしているだけ。リーダーは現場がどっちにいっていいかわからないときに、「こっちだよ」って言ってあげられる存在でなければいけないんです。6割くらいしかわからなくても、言い切る必要がある。曖昧で「本当に大丈夫なのだろうか」という中でも星を指さし続け、チームを引っ張らなければいけない。あるいは本当にわからなければ、わからないって言わなきゃいけない。時にチームのメンバーを何日も徹夜させてしまうことだってあるわけですから、クリエイティブを引っ張るリーダーの責任は重く、本当にこわいですよ。

 

だからこそリーダーは、尊敬される努力を絶対にしなくてはならないと思います。「この人と仕事をすると自分は何を得られるのか」という期待や実感がないと、特にクリエイティブのプロジェクトって前に進んでいかないと思うんですよ。

 

その「得られる何か」っていうのは、何でもいいと思います。たとえば打ち合わせが面白い、とかでも。ただ一番いいのは、自分の知らなかった自分に出会えたとか、自分が仕事で、誰かにものすごく褒められたとか、そういう明らかな成果がいいですね。

何日も徹夜してますっていうときはすごく苦しいし、二度とこの人と仕事するもんかって思うけど、出来上がったらすごく新しい世界に連れて行ってもらったとか、世の中をすごく幸せにした実感があったとか。そういう何かチームのメンバーに渡せるものをリーダーは用意しないといけないし、そのためにリーダーには努力が必要なんです。

 

 

名選手、名監督に非ず。一回結果で感動させて、信頼を勝ち取れ!

尊敬されるリーダーという意味では、当然実績のあるクリエイターがリーダーをやる方が簡単な部分はあります。長嶋茂雄さんは選手時代にあれだけ尊敬されていたわけですから、監督になればそりゃ言うこときかないわけにはいかないよね、と。

でも、仕事の世界は名選手必ずしも名監督ならずって言うじゃないですか。広告の世界でもクリエイティブディレクターになっている人って、必ずしも過去にすごい作品をつくった人じゃなくて、指示がうまい人だったり、まとめるのがうまい人だったりすることもあるんです。

 

もちろん、そういう人は長嶋監督のような選手時代の実績があるわけではないので、一回結果で感動させることをしないとなかなか難しい。すごく切れ味のいい一言を言うとか、本当にみんなが気付かなかったことに気付かせてくれたとか、絶対無理だと思ったことを鮮やかに通してくれたとか、そうやって信頼を勝ち取っていく必要がある。そういう意味で、厳しさは当然あると思います。

 

ただどんな人がリーダーであろうと、すべてがすべてうまくいくわけではないので、ダメだったときにもちゃんとそれを伝える必要はあります。リーダーに責任がある、リーダーのせいで負けたんだけど、「あの時ああいう発言ができていたら」とか「こういうアイデアが出せていたら」とか、メンバーにもそんなふうに思ってもらって、チーム全体が負けたんだっていうゴールを作ることも、時には必要だと思います。そうやって、メンバーに自分事化してもらうこと、他人事だったりお手伝い感覚だったりに留まらないようにしてもらうことっていうのはとても大切なことですね。

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相手の警戒心を解き、何かが生まれそうな空気を醸成する

僕はコミュニケーションの場、たとえば打ち合わせなどをすごく大切にしています。

 

アイデアって口から出ると思っているんですよ。みんなと喋っている中で、新しいアイデアが出るんですよね。音楽のセッションじゃないですけど、誰かから頂いた質問で自分の切り口、角度が変わってくるってあるじゃないですか。そのことはものすごく大事だと、自分には必要だと思っているんですよ。

 

短い時間で発想して形にすることは切れ味をよくするんですよね。だから会議はすごく短いですよ。1時間以上はしないです。1時間も経過すると、会議って同じことを繰り返したり、下を向いて悩み始めたりするじゃないですか。1時間たっても何も生まれなければ、一旦会議を終わらせてしまうことの方が多いですね。

 

打ち合わせの際は、何かが生まれそうな空気、クリエイティブが生まれそうな空気感をどう出すか、という部分にはかなり気を遣っているので、打ち合わせ中も、何かを演じているというか、ショーをやっているような気持ちになる時があります。誰がその会議に参加するのかを事前にしっかりと把握した上で、そのプロジェクトが楽しく充実したものになりそうだという期待感を高めることには結構な力を割いてますね。誰がその議論にあまりジョインできていないかっていうのをチェックしていたり。

 

あと、なるべく若いスタッフには声をかけるようにしています。2年目の新人みたいな子を名前呼んでからかったりとか、いじったりとかね。たとえばバンドと付き合う時も、みんなわりとボーカルに気が行きがちだけど、ベーシストやドラマー、ギタリストとも同じように話します。そうするとそこに信頼関係が生まれる。

 

そうやってコミュニケーションを取ることは、もちろんプロジェクトをうまく進めるためっていうのもあるけれど、バンドにしても仕事にしても、本当にその人たちがいないと完成しないものばかりなんですよ。基本的にはそういう気持ちを持つことが大事なんだと思うんですよね。僕らの仕事は全部誰かを幸せにするために、社会の役に立つためにやっているっていうことをみんなで共有して、そのメンバー誰一人、足りなくなっても嫌なんだっていうことを共有して、そこから始まるんです。

 

だからスタッフィングの際には、他の人ではダメな理由、あなたじゃなきゃダメなんだっていうことをしっかりと伝えるようにしていますし、逆にたとえば僕がタレントさんに指名されて、演出家とか、一部分としてどこかの現場に入る時も、一人ひとりに冗談言ったり、持ち物をいじったり、相手の警戒心をできる限り早く取り除くことはしています。そういうコミュニケーションは本当に大切にしていますね。

 

最初で最後の映画っていうので、「ブラフマン」(2015年公開)を撮ったんですけど、あれは8割がインタビューで構成されている映画。メンバー本人たちと、その周りで支えている人のインタビューで大半が作られている。そんな映画、相手の警戒心が解けていないと作れないですよ。トップランナーっていうNHKの番組でMCやっていたときもそうですけど、いかに相手が本心で話してくれる状態を作れるか。それも僕の大事なテーマのひとつですね。

 

あと、僕は無茶振りをすることが多くあって。それは決して高所恐怖症の人にバンジージャンプをしてみろっていう話ではなくて、バンジージャンプ一度してみたかったけど、する流れになっていなかった人に、今してみたら?というような振りを指しているんですけど。そういう、今はやっていないけれど、その人がやったらすごいことになるのでは、というのをそれぞれの人に対して考えている、ずっと探し続けているんです。だからうちの会社には、元コピーライターのデザイナーがいたりしますよ。もちろんそういう無茶振りをする時には、骨は拾うよ、というか、失敗したときの責任は自分が取るからというのは伝えます。一緒に心中する覚悟でやると、みんな意気に感じてやってくれる場合が多いです。

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リーダーはカッコよく、愛されろ

僕は、強いリーダーではなくて、「箭内さんは心配でほっとけない」っていう、そっち系なんですよ。ただリーダーには、カッコつけていてほしいって思いますね。かっこつけていてほしい&愛されていてほしい、という2つセットというか。どんなリーダーがカッコいいのか、そういう理想像みたいなものをリーダーがそれぞれにちゃんと持つべきなんだと思います。

 

たとえば、これを通せたらカッコいい、通せなかったらカッコ悪い、みたないことってあるじゃないですか。昔、是枝(裕和・映画監督)さんに言われたんですけど、「箭内さんと仕事したときは、箭内さんは何でも通してきてくれた」っていうわけですよ。是枝さんに変な直しは言えないなって思って、本当に必死で通してきて、傷だらけで是枝さんのところに戻ってきて、でも傷ついたことは見せずに「通しました」と。でも、いつの間にか通せなかったカッコ悪さをみんなどこかで誤魔化すようになっちゃう。すみません、あそことあそこを直してください、こういう保険も用意したいです、このバージョンとこのバージョン両方見せたいです、みたいに平気で言えちゃう。

 

腹を括っている感じというか、覚悟というか、そういうカッコよさみたいなものは薄れてきてしまっているのかもしれないと感じます。

 

一方で、腹を括り過ぎて「わからない」って言えないリーダーはすごく苦しいと思うんです。わからない時は「みんな、どうしたらいいと思う?」って言える柔軟な部分も大事。実はさ、ってぶっちゃけることができる部分も持っていた方がいいと思います。柔軟さと頑固さのバランスですかね。

ただ、リーダーは孤独なものだと思うし、カッコいいリーダーになりたいっていう強い夢や思いは、みんな持っていた方がいいと思うんです。人それぞれ違っていいし、どんなに小さくてもいいから、自分にとっての理想のリーダー像を持ち続けるというのは大切なことだと思いますね。

監修:リクナビネクストジャーナル編集部