【5分でわかるニュース解説】ギリシャって、破綻するの? ギリシャ危機はなぜここまで深刻化したのか

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日本でもニュースで頻繁に登場したギリシャ危機問題。危機的状況に立たされているのはなんとなく分かりますが、一体なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。これまでの流れをざっとおさらいしながら整理していきましょう。

■2009年、ばらまき政策による赤字隠しが発覚で「ギリシャ危機」に陥る

ギリシャ危機に陥る前からユーロ圏各国から非難され続けてきたのが、ギリシャの放漫財政体質。第二次世界大戦や内戦といった長年の政情不安定が、その後の歴代政権を「国民の歓心を得るためのばらまき行政」に走らせていると言われています。

そしてギリシャ危機に陥る決定打となったのが、2008年9月に起こったリーマンショック。世界経済が急速に悪化していくなか、どん底だった2009年10月、ギリシャ政府の「赤字隠し」が発覚します。脱税が横行していたギリシャでは税収による歳入が不十分で、国外からの資金調達が滞ればたちまち窮する状態だったのです。

ユーロの大規模な金融支援プログラムも思うように効果が出ません。ギリシャ側も国有資産を売却し、政府債務を減らそうとはしていたものの、国有資産の多くを占める国有企業には政治家の関係者も多く、利権が絡んでいたこともありなかなか売却が進みませんでした。

ギリシャ国内では、長引く不景気や5年間で25%以上に及んだGDPの下落、25%超と高い失業率などへの国民の不満が大きく膨らんでいました。それが顕著に表れたのが、今年1月に実施された総選挙です。

■借金まみれのギリシャに想定される「最悪のシナリオ」

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1月の総選挙では急進左派連合(Syriza)が圧勝しましたが、その一方で、彼らが掲げる反緊縮財政に対して先行きを案ずる声も多く上がりました。多額の対外債務を抱えた国が「財布の紐を締め続けるのはもうイヤだ」と言うんですから、当然ですね。

EUや国際通貨基金(IMF)、欧州中央銀行(ECB)からなる債権団は「年金制度の改革」や「付加価値税(VAT)の仕組みを見直し税率の大幅アップ」など、提案をしていました、日本での消費税引き上げや、年金制度改革の現状を見ていると、上記がなかなか受け入れ難い案であることは容易に想像がつきます。

EU債権団とギリシャの話し合いは平行線をたどり、「ギリシャがデフォルト→国内経済を何とか回すために独自通貨発行→EU離脱→独自通貨暴落→ギリシャ財政破綻→ギリシャ企業や国民の資産が大幅に目減りし、最貧国に」というような、最悪のシナリオがこれまで以上に現実味を帯びてきました。

■EUの改革案をほとんど受け入れたギリシャ

チプラス首相が問うた「EUの改革案を受け入れるかどうか」の国民投票の結果は、皆さんもご存知の通り、賛成39%、反対61%で反対多数となりました。EU離脱も辞さない強硬姿勢を見せると思われたギリシャでしたが、国民投票後に行われたギリシャ議会において新たな改革案が圧倒的多数で可決され、多くの人にとっては少々意外な展開となりました。しかもその改革案の内容は、EUからの提案とほとんど変わらないもの。「なんで?」と思わずツッコミを入れた方も多かったでしょう。

この謎を解くカギは「ギリシャの尊厳」にありそうです。他者から押し付けられずとも、自分達の改革案は自分達で作る。その結果がEU案とほぼ同じ内容になった、ということであれば、ギリシャの尊厳は保たれます。誰しも他人に言われたことをやらされるのはイヤなもの。だったら、他人にとやかく言われる前に自分達でさっさとやれば良かったのですが、なかなかそうはいかないようですね。

■EU離脱をまぬがれ「最悪のシナリオ」はひとまず回避された

f:id:macha310:20150803185358j:plainベルギーで開催されたユーロ圏首脳会議では、ギリシャのEU離脱もやむなし、となりかけたようです。しかし最終的には妥協点が見出され、ECBによる資金供給の再開も決まりました。

3週間ほど休止状態だった銀行は20日から営業を再開し、標準税率も従来の13%から23%に引き上げられました。どうやら、ギリシャ財政破綻という最悪のシナリオはひとまず回避されたようです。ただし、これを事態の収拾と見るのは時期尚早。問題の解決はまだまだこれからです。

■ギリシャ危機問題が日本に及ぼす影響

この一連のギリシャ危機をめぐる騒動ですが、今のところ日本国内の経済活動や株式市場には大きな影響は出ていません。ギリシャ国債の大半は既にECBなどの公的機関が保有していて、民間の金融機関やファンドでの保有はかなり少ないため、今後万一ギリシャが債務履行不能となり、ギリシャ国債がただの紙切れ同然となったとしても、直ちに危機的状況に陥ることはまずないでしょう。

ただ、ギリシャ国債のようなハイリスクとされる債券を保有しているということは、多少のリスクを取る余裕があるからなのか、はたまたハイリターンを狙わざるを得ないが故のリスクテイクなのか。金融サービスを受ける側も、しっかり見極める必要がありそうです。

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