【懐かしの放課後グッズ物語】元祖遊べる文房具「エスパークス」!小学生を熱狂させた文房具の知られざるヒミツ

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(C)2014 SAN-X CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.

 小学校の頃、休み時間に男の子たちが机の周りに集まる。その真ん中に、ある一冊のノートがひろがっていた。それが「エスパークス」。販売期間は1989年から1995年まで、マンガやゲームといった娯楽を取り入れた男子向け文房具です。ノートやカンペンケースなどのつくりが凝っていたため、「文房具ではない」と、校則で持ち込みを禁止にした学校が続出し爆発的な人気にもかかわらず、わずか6年という短い期間で幕を閉じることになってしまいました。しかし、現在もファンミーティングが開催されたり、ノートや筆箱がオークションで売買されたりするなど、その人気は衰えていません。今回は、シリーズが誕生した経緯を原作者である征矢浩志(そや ひろし)さんに伺いました。

――「エスパークス」を企画した経緯を教えていただけますか

 もともとは、たれぱんだやリラックマなどのキャラクター開発から販売までを行うサンエックスという会社にプランナーとして採用されたのです。ところが入社直前で人事異動があり、急遽デザイナーとして配属されました。そこで、ひとつ年上のプランナーさんと組み、男の子向けの新しい文房具をつくろうと始めたのが、「エスパークス」だったのです。当時はドラゴンクエストなどのRPGのゲームが流行っていたので、仲間とともに敵と戦うストーリーを盛り込んだ遊べる文房具を企画することにしました。

――企画されたあとは、どのように進めていったのですか

 学生時代はグラフィックデザインの勉強をしていました。マンガも学んでいましたし、イラストを描くことも好きでした。しかし、エスパークスはマンガではありません。ノートをとったり、それを読み返したりする文房具です。その本質的な機能を損なわずに、わかりやすくストーリーを進めることは容易ではありませんでした。ストーリーの前後を入れ替えたり、ノートの中にあるゲームでストーリーを進めたりして、なんとか物語を完成させていました。デザインが完成してからも、今のようにデータで入稿するのではなく、実際にプロトタイプをつくり、印刷業者さんに渡していたのです。当時は、職人さんもたくさんいらっしゃいました。プロトタイプを見ただけで、実現できるかできないかがわかってしまうのです。なので、職人さんにどうすればいいか聞き、失敗を重ねながら学ぶという貴重な経験をさせていただきました。

――すべて手作業だったのですね

 今のようにパソコンやイラストの素材がなかったので、雰囲気を出すために夕日には「紅茶」を使って着色してみたり、「コンクリート」を撮影した写真に何度も何度もカラーコピーをかけて像がぼやけてきたものを背景として使ったりしていました。「思い通りの発色はどうすれば、出るだろう」と試行錯誤することがとても楽しかったです。

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――子どもたちからはどのような反応が?

 ノートの最後に切り取りできるハガキを用意していました。そこに感想やイラストを描いて送ってもらう仕組みです。なので、どのようなものを子どもたちが求めているか、すぐにわかりました。内容としては、「このキャラクターを活躍させて」、「イラストを描いたから登場させて」といったものが多かったですね。とても励みになりました。また、店頭では、文房具が予約で売り切れる、ノートを立ち読みする、といった異例のことが起こっていたと聞いています。しかし、親御さんやPTAからは「文房具ではなく、玩具なのではないか?」ということ受け、「エスパークス」の持ち込みを禁止されてしまったようです。

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――「エスパークス」を読んでいたユーザーに伝えたいことはありますか?

 発売開始から今年で25年経つのですが、当時「エスパークス」を読んでいた方から「エスパークスのイベント企画や商品化について、何かお手伝いできることはありませんか?」といった連絡が会社に入るようです。本当にうれしく、作者冥利に尽きます。大人になっても、「エスパークス」を憶えていてくれてありがとうございます。

 1989年から1995年までと限られた年代の男の子に強烈な印象を与えたエスパークス。ヒットの秘訣は、試行錯誤と失敗をしても、楽しむ前向きな姿勢だったようですね。エスパークスを思い出された方は公式ホームページが開設されているので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

取材協力・画像提供元:征矢浩志 サンエックス株式会社 エスパークス

取材・文:合田ピエール陽太郎

f:id:w_yuko:20140711122829j:plain 名前にピエールとあるが、ハーフではない。だが、先々代ぐらいに外国の血が入っていると家系図に記されているらしい。その家系図を探し続けるコピーライター。2013年、第51回 宣伝会議賞CMゴールド 受賞。

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