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コーヒー1杯からディナークルーズまで!今、「体験型ソーシャルお中元」がスゴイ

上司や親戚など、日頃お世話になっている方に贈るお中元。暑い夏を涼しく過ごしてもらうための冷菓やビール、健康を気遣ってのお肉やフルーツを贈るという風習ですが、儀礼的で苦手という方も多いと思います。しかし近年ではカジュアルで新しいお中元が登場し、気軽に贈れるようになっているのです。

 

お中元に新たな動向!儀礼色は薄まり、季節イベント的に

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矢野経済研究所が2014年5月~6月にかけて行ったギフト市場における調査では、一時期若者離れが進んでいたお中元市場で新たな動向が見えています。

 

かつては儀礼的な贈答だったお中元がカジュアル化し、いまや「季節イベント」として姿を変え、再び注目されています。

  • 儀礼的な贈答から「季節限定品」へと変化
  • カタログギフトは紙からWebに進化
  • 贈られた人が喜ぶなら全てがギフトに

贈る相手も、上司や親戚だけにとどまらず、より親しい友人や、さらには自分用まで登場し、もはや気軽なギフトへとシフトしているのです。

 

お中元の新たなカタチ。ソーシャルギフトとはなにか

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変化を続けるお中元市場において、特に台頭してきているのが「ソーシャルギフト」です。

ソーシャルギフトとは、LINEやFacebookを通じて相手に贈るというもの。ギフトコードを贈り、もらった側は店舗で画面を提示することで商品を受け取ったり、サービスを受けることが可能になっています。

 

たとえば、「giftee(ギフティ)」という国内でも有数のソーシャルギフトサービスでは、

  • スターバックスのドリンクチケットをLINEで贈る
  • ローソンの「からあげクン」をFacebookで贈る

なんてことが出来てしまうのです。

 

総務省のデータによれば、国内のソーシャルギフトの利用率は米国や英国、韓国などと比べて低いものの、特にスマホ保持者など、今後利用したいという層が多いことから、人々の関心が高まっていることがわかっています。2014年に行われたソーシャルギフト市場予測でも、2020年には10倍近くにまで成長するといわれています。

 

このソーシャルギフトの波が、お中元市場にも起きており、大手百貨店の大丸松坂屋では、すでに2013年から「okurune」というサービスに着手しています。

 

Facebook経由で、友人にギフトはもちろん、大手百貨店ならではの、お中元にも最適なキッチン雑貨やインテリア雑貨などを贈ることができるソーシャルお中元を実現しています。

 

“体験型”ソーシャルお中元がおすすめなワケ

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ソーシャルギフトを活用してお中元を贈れば、たちまち人気者になれそうな今年。特におすすめしたいのが、「体験型ギフト」のお中元です。

 

あらゆるモノやサービスが蔓延する中、近年、ギフトも「モノ」から「コト」へと変化しています。「物質的な価値」ではなく、一度しか味わえないレアな体験ができる「コト価値」が喜ばれるようになってきたのです。

 

たとえば、

  • レストランでの食事
  • エステの美容サービス
  • ホテルの宿泊
  • 乗馬やダイビングなどのスポーツ体験

などの「体験型ギフト」が増えています。

もらった側は体験することによって楽しく充実した時間を得ることができるというもの。中には、ハウスクリーニングなどの家事ギフトなども登場しています。

 

ありきたりなビールやお菓子、洗剤などと比べて、かなり斬新であることから、強い印象を与えられるだけでなく、物質的価値だけでは味わえない本当に喜ばれるお中元を贈ることができます。

 

今年の夏はぜひ、この体験型ギフトをお中元に選んでみてはいかがでしょうか?

 

 

編集部おススメ!体験型ソーシャルお中元ベスト3

今年の夏、編集部がおすすめしたい体験型ソーシャルお中元をご紹介します!

おすすめ1:GiftNowの体験型ギフト

Twitter、mixi、Facebookからプレゼントを贈ることのできるGiftNowでは、体験型ギフトで知られるソウ・エクスペリメンスと提携し、体験型ソーシャルギフトに乗り出しました。カフェやバーガーチケットから、ヨガ、乗馬、茶道、スパ、ゴルフレッスンまで幅広い体験ができるお中元を贈ることができます。

 

上司にはワイン定期便、友人にはカヌーやダイビングなどのアクティビテイ体験、親戚にはフレンチディナークルーズなんていかがでしょうか?

 

>>GiftNow

 

おすすめ2:LINEギフト

もっと手軽なソーシャルギフトを近しい友人や同僚に贈りたいという場合には、「LINEギフト」がおすすめ。お中元としては生活雑貨やお酒・おつまみなどがおすすめです。コンビニ受け取りや自宅配送などさまざまな受け取り方があるので、贈る相手によって使い分けることが可能です。

 

>>LINEギフト

 

おすすめ3:伊勢丹の“体験型”お中元カタログギフト

こちらはソーシャルギフトではないですが、カタログでレストランでのディナーやランチのコースや温泉など体験型ギフトがセレクトできます。ネット上で申し込みができるので、手軽に贈ることができます。

 

お中元といえばちょっとワンランク上の贈り物を用意したいものですよね。そんなときも大手百貨店の伊勢丹のブランドは安心感があります。

 

ちょっと新しくて従来のお中元より親近感がわく体験型ソーシャルお中元。早速、今年のお中元から、変化をつけてみてはいかがでしょうか?

 

>>伊勢丹の“体験型”お中元カタログギフト

 

監修:リクナビネクストジャーナル編集部 

【知ってた?】「記念日マーケティング」驚きの効果とは?――あらゆる記念日の認定登録を行う日本記念日協会に聞いた

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 「記念日」と聞くと、何を思い浮かべるだろうか。国民の祝日に制定されているものから、身近なところでは大切な人の誕生日や結婚記念日まで、人それぞれだろう。最近では「付き合ってから○日目の記念日」を恋人同士で共有できるアプリも人気だ。私たちの日常生活に、「記念日を大切にする」という概念は深く根ざしている。

 

 ここ数年、そうした記念日への意識をマーケティングに活用する企業が急増しているという。バックアップするのは、日本中から記念日の申請を受け、認定登録する一般社団法人日本記念日協会(長野県佐久市)。同協会の取り組みは、いかにして始まったのか。代表理事の加瀬清志さんに、これまでの歩みや企業による記念日の活用事例、その意外な効果について話を聞いた。

 

 

「記念日のことなら加瀬に聞け」放送作家が作り上げた記念日データベースの力

 

 6月6日。東京・赤坂のホテルニューオータニでは、「つけまの日」制定を記念した登録証授与式が行われていた。この記念日を発案したのは、つけまつ毛などの化粧雑貨を企画・製造・販売する株式会社ディーアップ(東京都港区)。「6」を2つ並べた姿が、つけまつ毛でぱっちりメイクアップした目に見えることにちなんでいる。第1回目の「TSUKEMAクイーン」を選出するイベントも実施され、選ばれたマツコ・デラックスさんが登壇した。イベントには複数のテレビカメラが取材に入り、注目度の高さが伺えた。

 

 この壇上でマツコさんに記念日登録証を渡したのが加瀬さんだ。日本記念日協会の代表理事として、年間約150件の記念日の認定登録に関わっている。そのうち30件近くの認定イベントに足を運び、直接登録証を手渡しているという。

 

 日本記念日協会の設立は1991(平成3)年。放送作家を本業とする加瀬さんは当時、朝のワイドショーなど週に13本のレギュラー番組を抱え、多忙極まる日々を送っていた。「放送作家としての悩みの種はネタ作り。毎日の番組でどんな話題を取り上げるかに苦心していました。困ったときの話題のフックが、“記念日”だったんです」と加瀬さんは振り返る。

 

 たとえば6月10日は、日本初の時計が鐘を打った日であることから「時の記念日」とされている。この記念日をフックにし、「人気の腕時計を探る」「東京人と大阪人の、歩く速さの違いを検証する」といった企画で番組作りを行っていたそうだ。

 

 必要に迫られ蓄積していった記念日の知識は、やがてテレビ業界で有名になっていった。「記念日のことなら、加瀬に聞け」と口コミが広がり、業界関係者からさまざまな問い合わせが入るようになったという。

 

「気になる人は数多くいるのに、日本には記念日のデータベースというものが存在しなかったんですよ。『それなら自分がやろう』と。協会を作って記念日情報の管理を始めました」

 

 設立してからは、すでにある記念日の登録・管理をスタート。協会のデータベースに初めて新たな記念日を登録したのは、設立翌年の1992年だ。東京・銀座に本店を置く婦人靴店のダイアナが制定した、9月2日の「ダイアナの靴の日」だった。「忘れられない、認定第1号の記念日です」と加瀬さんは語る。

 

 

認知率90%以上!?ポッキー&プリッツの日に見る『記念日マーケティング』の常識外れの効果

 

 やがて、記念日を活用したマーケティング手法や、日本記念日協会の活動が広く世に知られるきっかけとなった記念日が誕生する。1999(平成11)年11月11日に制定された「ポッキー&プリッツの日」だ。この記念日の理由はもちろん、「1」が並ぶ様子がポッキー&プリッツを連想させるから。視覚に訴えかけたことで大きなインパクトがあったのかもしれない。

 

 16年前に生まれたこの記念日は、毎年さまざまなプロモーションイベントで活用され、年を追うごとに浸透していった。加瀬さんがリサーチ会社を通じて行った調査では、一般消費者の認知度はなんと90パーセントに上ったという。

 

 記念日の認定登録を受けると、協会の公式ホームページや月刊機関紙で名称や日付、由来、リンク先などが掲載される。オフィシャルに使用する際は「日本記念日協会認定済」と謳うことができ、マスメディアや広告媒体で実践的に使用可能。また、毎年やって来る記念日を定番化し年中行事にすることで、「ポッキー&プリッツの日」のような認知度向上も期待できる。

 

さらに記念日の制定によって、社外PRだけでなく社内活性化にも大きな効果を発揮していると加瀬さんは話す。

 

「日本人特有の謙虚さからか、自社商品を外へ自慢することは少ない。しかし記念日が制定されれば、堂々と外部へPRできる。自社商品が好きになってモチベーションが上がり、記念日に向けてさまざまなアイデアや企画が社員から出されるという変化が起きるんです」

 

 確かに普段、身内のことはことさらに謙遜しがちかもしれない。仕事でPRすることはあっても、「ウチの商品は本当にすごいんだ」と胸を張って語れるかどうか。そうしたある種の曖昧さを取りはらってくれる効果が、企業にとっての記念日効果なのかもしれない。

 

 

運営がわずか3人?たった10万円で大きな効果が狙える「記念日」の活かし方

 

 現在、協会は加瀬さんをはじめ3人で運営している。日々寄せられる登録申請を、毎週月曜日の審査会で認定。単なる登録の可否だけではなく、その記念日を活用してどのようなPRができるかを含めて議論しているという。

 

 前述の「つけまの日」のように、著名人を招いてイベントを開催することで大きなPR効果を生むケースもある。「ポッキー&プリッツの日」のように、毎年さまざまなイベントを企画して世間に浸透させていった事例もある。こうしたノウハウを提供し、「記念日を活用したマーケティングを提案することこそが協会のミッション」だと考えているのだ。

 

 申請に費用はかからない。必要なのは認定登録料として10万円のイニシャル費用のみ。成功した場合の費用対効果を考えれば、安価な投資だといえるのかもしれない。企業の広報・PRに携わる関係者からの相談が増え続けているという。

 

 「いろいろな相談が来ますよ。記念日とは関係のない、マーケティングに関わる相談も多いんです」と加瀬さんは笑いながら話す。さまざまな業界の広報・PR担当者に口コミで広がっていく状況は、協会設立前と同じなのかもしれない。ただ少し違うのは、「マーケティングのことも、加瀬に聞け」。寄せられる相談の幅は広がり続けている。

 

 

誰かを思い、何かを応援するためにこそ存在する記念日をどう捉えるか

 

 現在でも放送作家と協会の仕事を兼務し、さらには映画製作にも携わっているという加瀬さん。多忙な毎日の中で、記念日の可能性を追求し続ける原動力は何なのか。

 

世の中を明るくする記念日を増やしたいと思っています。“母の日”もそうですが、365日考えているわけじゃなくとも、その日だけはお母さんのことを思うでしょう。商品PRのためであっても、その記念日はとても前向きな気持ちで作られている。誰かのことを思ったり、何かを応援したりする日が増えていけば、その分だけ世の中が明るくなっていくと信じています」

 

 今日は、明日は、何の日だろうか。ネットで検索をすればすぐに調べられる世の中。しかしその一つひとつに、制定に動いた人たちの思いが込められている。私たちを明るく元気にしてくれるヒントが、記念日にはたくさん詰まっている。

 

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加瀬清志氏

放送作家、コラムニスト。一般社団法人日本記念日協会代表理事。1991年の協会設立以降、企業・団体・個人が制定する記念日の認定登録と広報活動を手掛ける。地域活性化や観光をテーマにした講演、著書も多数。 

一般社団法人日本記念日協会 公式サイト

http://www.kinenbi.gr.jp/ 

 

文・多田慎介

佐々木俊尚氏を顧問に、オウンドメディアも開設!家事シェアサービス「Any+Times」は、個人のスキル交換プラットフォームとなるか?

人々の新しいライフスタイルとしてシェアリング・エコノミー(共有型経済)が注目される中、2013年に誕生した「Any+Times」。

地域の生活に密着して、ご近所同士のサービス交換を目指す。高度なITテクノロジーとジャーナリストの知見をバックに、シェアサービスの市場を深掘りしていくという。

誰かのニーズと誰かのスキルを、Webとリアルで交換

仕事で毎日遅くなるので、掃除や洗濯をする時間が取れない。そんな悩みを持つビジネスパーソンも少なくないのではないだろうか。ハウスクリーニングサービスはいくつもあるが、安心して頼めて、かつ低コストのサービスはそうそうあるものではない。

「私自身が、便利屋さんを利用することが多かったのですが、プロの業者さんなので、どうしても高くつく。できることも業者によって違うので、自分で選ばないといけない。ちょっとした困り事なら、ご近所の素人さんでも手伝ってくれる人がきっといるはず。“困った”ことと“できる”ことを気軽につなげる地域密着型のサービスがあればいいなと」

株式会社エニタイムズ 代表取締役 CEO 角田千佳氏▲株式会社エニタイムズ 代表取締役 CEO 角田千佳氏

株式会社エニタイムズの代表取締CEO・角田千佳氏が、そうした自分の関心から始めたのが「Any+Times(エニタイムズ)」だ。サイトには「1K程度の部屋掃除 3,000円から」「料理代行5食分 5,000円から」などの基本メニューが並ぶ。会員登録した利用者がフォームから詳細な内容と予算を提示して依頼すると、そのサービスを請け負うサポーターズと呼ばれる会員からレスポンスがある。

「Any+Times(エニタイムズ)」のサポートメニュー例▲「Any+Times(エニタイムズ)」のサポートメニュー例

詳細はWeb上で詰めるが、契約はサービスの利用者と請負者の間の業務委託契約で、エニタイムズはあくまでもそれを仲介するプラットフォームという位置付け。案件が完了すると、成約料金の15%を手数料として、エニタイムズがサポーターズから受け取るビジネスモデルだ。

日常の家事代行、旅行中のペットの世話、家具の組み立て、短時間の語学レッスンなど、「誰かに手伝ってほしいこと」と「自分が得意なこと」が、ネットでモノを売買するのと同じ感覚でやりとりできる。エニタイムズはモノとお金ではなく、サービスとその対価をやりとりするマーケットプレイスなのだ。

役務提供と報酬という関係は相互に変化する。あるとき部屋の掃除を頼んだ人が、次には英会話レッスンを引き受けるという関係もありうる。「依頼側と請負側は対等の立場」というのが基本ポリシーで、互いを評価しあう仕組みは特徴の一つである。

野村證券、サイバーエージェントを経て、2013年に起業した角田氏。慶応大の学生時代には、途上国の自立支援に関心を持ち、インド、フィリピン、アゼルバイジャンまで足を運んだこともある。証券会社では金融の仕組み、インターネット事業会社では事業立案やPR、そしてITを学んだ。

角田千佳氏

途上国支援から目を転じて足下をみれば、日本の地域社会にも“無縁社会”化や高齢化など問題は山積み。社会的課題解決は「いま・ここ」でこそ必要と自覚し、それをビジネス化しようと必死でもがく。

幸い、2013年10月にスタートしたエニタイムズのサービスはマスメディアでも盛んに採り上げられ、順調なスタートを切った。ユーザー数は10,000人を越えた。2014年には独自の「認定サポーターズ制度」や万一の事故の場合の補償制度を導入して、サービスの安全・安心度を高めてきた。

今年3月には依頼のやりとりがリアルタイムで通知されるスマートフォンアプリをリリース。5月には、グリー、DeNAやアトミックスメテディア代表取締役CEOおよびフォーブス ジャパン編集長・高野真氏ら個人投資家を引受先とする、総額2億3000万円の第三者割当増資に成功するなど本格的な成長期を迎えようとしている。

佐々木俊尚氏が斬り込むシェアエコノミーの世界

エニタイムズは、不特定多数の人々(crowd)と業務委託(sourcing)のマッチングという意味では、クラウドソーシングサービスの一種でもある。先行するランサーズやクラウド(CROWD)などのクラウドソーシング大手は、依頼件数や作業実績数を盛んに競い合う。

Webデザイン、記事ライティング、バグ出しのためのテスティング、翻訳など特定サービスに特化した会社も誕生している。そうした競合にもまれながら、エニタイムズはメディアを通してサービスのブランディングを構築する段階だ。

これまでは角田氏が各種メディアの取材に積極的に応えることで、サービスのPRに努めていたが、最近は「オウンドメディア(自社メディア)」の必要性を痛感するようになったという。

「これまでもサイト内に家事仕事や生活の中で役に立つコツや裏技を紹介するページを用意していましたが、これを一新して、新しいメディアを始めることにしました」(角田氏)と、5月にはジャーナリスト・佐々木俊尚氏を「メディア顧問」に迎え、この夏にも新しいメディアを始める予定だ。

佐々木俊尚氏▲株式会社エニタイムズ メディア顧問 ジャーナリスト・佐々木俊尚氏

佐々木氏といえば、ネットを通して広がる新しい経済や社会の仕組み、メディアと人々のライフスタイルの変化に関心が強いことで知られるジャーナリスト。エニタイムズを、単なる家事代行サービスではなく、シェアリング・エコノミー(共有型経済)というより広いトレンドの中で捉えようとしている。

そもそも佐々木俊尚氏が角田氏と知り合ったのも昨年開かれた「SHAREカンファレンス」の懇親会。シェアサービスやシェアエコノミーへの関心は互いの共通項だったのだ。

「Airbnb、Uber、Lyftなど世界的にいまシェアサービスが広がろうとしていますが、エニタイムズは、個人と個人のスキル交換のプラットフォームを提供しようというところが新しい。世界的にもあまり例がない。ビジネスとして先行者メリットを得られる未知の市場」と佐々木俊尚氏はエニタイムズの事業を評価する。

だが、佐々木俊尚氏が可能性を感じるのはさらにその先。エニタイムズのようなシェアサービスが内包する社会的意義だ。

「部屋の掃除一つとっても実は簡単な仕事ではない。フローリングの掃除の仕方にもコツやノウハウがある。依頼者とサポーターが同等の立場でスキルを交換するとき、そこには互いのスキルへのリスペクトが生まれ、知見をやりとりするなかから新しい物語が誕生する。それをメディアで紹介することで、シェアサービスの意義をより深く知らせることができるのではないか」と、メディア顧問を引き受けた理由を語る。

佐々木俊尚氏にはシェアサービスの普及が日本の共同体概念を変えるきっかけになる、という予感もあるようだ。

佐々木俊尚氏

「例えば、子育て中の若いお母さんが、空いた時間に独居老人の買い物を手伝うというように、見知らぬ人同士の出会いがこのプラットフォームから生まれる。遠い家族に手伝ってもらうより、近くの他人に手伝ってもらったほうが気軽な場合もある。近年、家族崩壊が言われるが、こうした1対1の関係が、n対nに拡張すれば、サービス共助を通して再構築される新しい家族像、共同体像が見えてくるかもしれない」

宿泊先提供にしてもタクシーシェアにしても、一般に、シェアサービスは都市型のサービスとみられがちだが、佐々木氏は「実は、地域社会のつながりが希薄になりつつある郊外でこそ、普及するのではないか」とも言う。佐々木俊尚氏の関与を通して、エニタイムズはより奥行きの深いサービスに成長し、世界を変えていくかもしれない。

複雑なソーシャルグラフ分析が、新しいコミュニティの基盤に

こうしたサービスの発展を裏方で担うのがエンジニアだ。
「Webサービスは仮説ー実装ー実証のサイクルを繰り返して成長します。これまでの実務を通してその経験を積んだエンジニアが欲しい」と言うのは、CTOの田中悠樹氏。

田中悠樹氏▲株式会社エニタイムズ CTO 田中悠樹氏

「現状のマッチング機能はシンプルですが、成約案件が増えるにつれて、AIやビックデータを活用した、より精度の高いマッチングが求められていきます。さらに佐々木さんが指摘したような1対1のスキル交換が『n対n』のコミュニティへと広がっていくためには、膨大なソーシャルグラフをシステム的にトラックすることが不可欠。

しかも、私たちのサービスはWebだけで完結するものではなく、リアルな人間関係も含んできますから、システムはより複雑になります。そこに挑戦して、日本におけるシェアサービスの発展を自分の目で見たいという人とは、ぜひ一緒に仕事をしたいですね」と、求めるエンジニア像を語る。

田中氏は前職がゴールドマンサックス証券のエンジニア。角田千佳CEO、鍬野槙彦CFO、彌野正和COOなど統括メンバーの面々は全員、大手金融企業を一度体験している。企業ファイナンスや金融テクノロジーの知識をバックグラウンドにできることは、今後の会社の成長の上でも有益だ。

さらにいえばエニタイムズは、金融からソーシャルサービス、あるいはシェアサービスへと移りゆく、20~30代のエリートビジネスパーソンたちの、関心の流れの中で誕生した会社とも言えるのではないだろうか。

 

記事出典:CodeIQ MAGAZINE EDIT:馬場美由紀 WRITING:広重隆樹 PHOTO:平山諭

2020年東京オリンピック開催地“新国立競技場”は結局どうなるの!?

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新国立競技場・当初のデザイン案は“絵に描いた餅”!?

 いま、前回の東京オリンピックのメイン会場だった国立競技場の解体工事が進んでいます。国立競技場と言えば、まさに戦後の日本における復興の象徴の一つだったのですが、そこで気になるのはやはり、2020年東京オリンピックのメイン会場となる、新国立競技場です。2年前のIOC総会で2020年東京オリンピック開催が決まったときには、新国立競技場のデザインも大々的に報道され、その奇抜なデザインに注目が集まりました。しかし、「そのまま建築すると3000億円はかかるだろう」とされ、IOC総会からわずか2ヵ月後には、床面積などを縮小して、1800億円程度で建てると、当時の東京都知事・猪瀬直樹氏が発表したのです。

 

 そもそも、新国立競技場のデザイン案は2012年から国際的に公募し、イギリスの建築家ザハ・ハディド氏の作品をグランプリ(最優秀)として採用したものです。このザハ・ハディド氏、建築界のノーベル賞と言われるブリッカー賞を受賞するなど、まさしく現代建築界ではトップクラスの実力者。ところが、あまり嬉しくない渾名が付いています。それは“Unbuild(アンビルド)の女王”というもの。ハディド氏のデザインは奇抜なことで知られており、実際に建築することが困難なケースが多いと言われているのです。技術的には可能でも高額の建築費がかかることが多く、まさに今回の新国立競技場がそれだというわけです。東京都は、「床面積などの規模を縮小して、予算も縮小」と言っていますが、そもそものデザインが変更されるのかどうか、そのまま小さくなるのかなど、詳細は公表されていません。

 

 とはいえ、すでに解体工事は進んでいます。2020年まで5年とは言え、実はその前年の2019年に日本で開催されるラグビーW杯の会場として新国立競技場の使用が決定しています。解体工事が終わった後から建築することを考えると、巨大建築物をたった3年で作らなければならないのです。来年開催予定のリオデジャネイロオリンピックの会場建設が間に合うのかどうかという話題もありますが、2~3年後にネット上で「東京オリンピックに間に合うの?新国立競技場」「ラグビーW杯のメイン会場変更?」などという不名誉な記事が出て来ないとも限らないのです。

 

年間維持費は35億円!? どうやって維持する?

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 仮に新国立競技場が東京オリンピック、ラグビーW杯に間に合ったとしても、その先の問題もあります。10万人規模の巨大スタジアムの維持費は、年間35億円を超えるとも言われています。これが従来のスポーツイベントのスタジアム利用料だけで賄えるはずもなく、音楽イベントなどでも使用できるように全天候型の屋根を付けているのです。ところが、この屋根が建築費を大幅に引きあげているという話があります。もし、屋根を付けなければ建築費は抑えられるけれど、将来的な用途が限定され維持費が払えない可能性が出てきます。まさに板挟みの状態です。さらに、大幅な設計変更をすれば、「そもそもなぜあのデザインで許可したのか」という問題も発生してしまいます。賛否両論あるデザインですが、一旦、国際的な場で公表したものを変更するというのは大変なことなのです。

 

国立競技場の周辺はどうかわる? 一大スポーツ公園計画!

 忘れてはいけないのは、国立競技場の周辺です。都内の一等地に広大な敷地を持つ国立競技場ですが、すぐ隣には秩父宮ラグビー場、神宮球場があり、またテニスコートなども存在します。いわば都心の緑溢れるスポーツエリアというわけですが、この景観が変わってしまうことを惜しむ人も少なくありません。一方で、「いっそのこと、全部造りかえてしまおう」という計画が進んでいます。秩父宮ラグビー場も神宮球場も、施設の老朽化が目立つことから、一緒に建て替えてしまおうというわけです。計画では、まず秩父宮ラグビー場を解体し、そこに新神宮球場を建設。その後、現在の神宮球場を解体して新しいラグビー場を作るというものです。あわせて、周辺の遊歩道も整備し、渋谷区内に点在しているスポーツ施設(岸記念館、日本青年館、JSC本部など)も移設しようとしています。東京オリンピック開催中は、現秩父宮ラグビー場を駐車場として使おうという計画になっているそうです。

 

旧国立競技場はたった1年で建った! でも今回は…

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 そんな計画が進んでいても、肝心のメインスタジアムである新国立競技場がどんな建物になるのか、はっきりしていなければ全てが絵空事になります。今進んでいる解体工事も、二度も入札が不成立になり、半年も遅れて始まっているのです。公式な完成予定は2019年3月。本当にたった3年で建つのか、不安を感じても無理はありません。旧国立競技場はなんとたった1年で建設してしまったという歴史があるのですが、さすがに今回は作るモノの規模が違います。一体どういうモノができあがるのか、諦めて眺めているしかないのが現状ですが…、国際的に自慢できる競技場にして欲しいですね。

 

監修:リクナビネクストジャーナル

児童ポルノ、不正プログラム、ハッキング…Microsoftが挑むサイバー犯罪との闘いとは

サイバー犯罪の被害は年々増大し、手口も巧妙化している。

 

日本年金機構がサイバー攻撃を受け、約125万人分の年金情報が流出した事件は記憶に新しいが、政府や大手IT企業もこうしたサイバー犯罪に備えるべく、セキュリティ対策に取り組む姿勢を示している。

日本が国家レベルでサイバー犯罪に備えなくてはいけない理由の一つには、東京オリンピック・パラリンピック開催もある。過去の事例が示すとおり、これまでのオリンピックはほぼサイバーテロの標的とされてきた。

 

ペンダゴン(アメリカ国防総省)に次ぎ、世界で二番目に莫大な件数のサイバー攻撃を受けているMicrosoft。しかし、過去に一度も社内への侵入や情報漏えいが発生したことがないという。果たして、どのようにサイバー犯罪に立ち向っているのか──。
日本マイクロソフトのマイクロソフトテクノロジーセンター・センター長 澤円氏に話を聞いた。

日本マイクロソフト澤円▲日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター・センター長の澤円氏

児童ポルノ被害者写真を特定する「PhotoDNA」を無料提供

Microsoftには、デジタルクライムユニット(以下、DCU)という法務部門内に「サイバー犯罪対策専任部隊」なるチームが存在する。数多くの攻撃手法・傾向をビッグデータから分析し、弁護士資格を持つ腕利きのマイクロソフト社員が法的措置まで対応するチームだ。日本マイクロソフトでも「サイバークライムセンター」が設立され、澤氏はそのセンター長も務める。

サイバークライムセンターではサイバー攻撃に対し、「攻め」と「守り」の対策を行っている。「攻め」のターゲットとして挙げられたのは、マルウェアと呼ばれる不正プログラム、そして、ネット上弱者を狙った児童ポルノやリベンジポルノだ。

 

ネット上の弱者を狙った「児童ポルノ」犯罪件数は、我々の想像を超えるほど膨大だ。澤氏いわく、「18歳未満の女子の5人に1人が児童ポルノの被害者となり得る」と言う。インターネット上にアップロードされる児童ポルノ写真は1分間に500枚以上。1日18億万枚(一般の写真も含む)という膨大な写真がアップロードされるネット上では、通常の検索で探そうとしてもすぐに埋もれてしまう。山の中から針を探すようなものだ。そこでMicrosoftが開発したのが、「PhotoDNA」である。

PhotoDNA

写真のデータを分析してハッシュ値を取り、ネット上の写真を検索し、マッチングさせる特殊技術だ。ハッシュ値とは指紋のように個人を特定できるデジタルデータである。児童ポルノは写真の色や背景を変えるなどの画像加工を施すことが多いが、そのハッシュ値で探すため、必ずネット上から見つけ出す。

PhotoDNAでマッチング

もし写真が見つからない場合は、本人と確認できないくらい画像が加工されている状態のため、被害となる危険性はほぼないという。

 

マッチした場合には、何らかの法的な対策が取れるかどうかの議論を始めることができる。この「PhotoDNA」は、Microsoftだけではなく、FacebookやTwitter、Googleなどにも無償で提供されており、すでに58件の検挙がある。

 

澤氏は偽札防止を例に挙げ、犯罪コストを上げていくことが犯罪防止につながると語る。
「犯罪の動機をなくてしてあげるのです。例えば偽札を作るのに、100円で1万円札が作れるのであれば犯罪に手を染める人はいるかもしれないけど、1万5000円で1万円札を作る人はいない。少ないコストで大きな利益を得るから犯罪をする。そのコストをどんどん上げ、リスクを伝えていくことが大事だと思っています」(澤氏)

 

マルウェアの脅威をビッグデータで解析し、個別に法的対応

 マルウェアとは悪意のある不正なソフトウェアや悪質なコードの総称で、プログラムの一部を改ざんし増殖する「ウイルス」や、偽装して感染を試みる「トロイの木馬」などはその一種。Microsoftが特に注視しているのは、ボットネットと呼ばれる遠隔操作できる攻撃用プログラムである。DCUではこれまでに、数多くのボットネットのテイクダウン(駆除)を行ってきた。

ボットネットのテイクダウンとマルウェアの駆除

Microsoftでは、地球規模でインターネット上の感染しているデバイスを特定し、どのIPが感染しているのかがわかる解析をリアルタイムで可視化している。

IP感染の状況を解析

だが、こうしたサイバー攻撃を完全に根絶するのは、かなり困難だという。
「ボットネットなどのサイバー犯罪は刑事的な裁判にしにくいため、対応策は個別に行わなくていけません。個々のケースにどの法律であれば、対応できるのかをそれぞれ検討してサイバー犯罪撲滅に取り組んでいます」(澤氏)

Microsoftには元麻薬捜査官などのキャリアを持つ社員もいて、感染しているコンピュータはもちろんのこと、被害を事前に抑える努力も惜しまないのだそうだ。

 

堅牢なセキュリティ対策を誇るデータセンター管理

「守り」の面で澤氏が挙げたのは、堅牢なセキュリティ対策を誇るデータセンター管理だ。インターネットの接続人口は年々増えており、Microsoftのデータセンターも世界中に展開している。そのデータセンターのセキュリティ基準は、世界共通の厳しい基準によって作られ、管理されているのだそうだ。その例を3つ挙げてみよう。

1.ハードディスクは4分割され、全て別々の国に出荷されて処分

パスワード管理などについては、一切例外を認めない厳しい管理がされている。また、データセンターの人たちはハードディスクにどんなデータが入っているのか知らされていないし、知る手段がない。どんなデータが入っているかわかってしまうと、犯罪の動機を作ってしまうからだ。ハードディスクを処分する際は、暗号を解かれるリスクを作らないために4つに分割され、すべて別々の国に出荷されて処分される。

2.ケーブルはすべて天井に!常に顔が見えている状態で作業

データセンターのネットワークを通すためのケーブルは、全て天井に置かれている。常に顔が見えている状態で作業する状態を作るためだ。センサーで人の動向を追いかけて、カメラに顔が映るようになっている。

3.インサイダー取引には容赦ない損害賠償と罰則

もし、こうしたセキュリティをかいくぐってインサイダー取引などをしてしまった場合、容赦ない損害賠償が科せられる。罰則も相当に厳しいものだそうだ。

最後に澤氏は、プラットフォームをグランドに例えて、その決意を語ってくれた。
「グランドでスポーツを楽しんでもらうために、土をきれいにし、ガラスの破片を拾い、安全できれいな状態にします。Microsoftのプラットフォームもセキュアな状態で提供するために、これからも本気でサイバー犯罪に立ち向かっていきます」

取材・文・撮影 馬場美由紀 撮影 刑部友康

 

「正しい日本語」なんて存在しない。デジタル全盛時代を戦う『広辞苑』の意外な戦略

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なぜ紙の辞典はなくてはならない?『広辞苑』の中の人に聞いてみる

「日本語の規範」といわれる国語辞典の代表格『広辞苑』(岩波書店)。1955(昭和30)年5月の初版発行から60年がたち、還暦を迎えた。今や辞典は片手でさくさく使えるスマホアプリとなり、デジタル全盛の時代にその形を変えて定着しつつある。

 

そんな中、来るべき第七版の発行に向けて地道な編さん作業を続けているのが、広辞苑をつくる岩波書店辞典編集部だ。副部長の平木靖成さんに素朴な疑問をぶつけてみた。「なぜ紙の辞典はなくならないのでしょうか?」

 

その答えから見えてきたのは、気が遠くなるような編さん作業に携わる人々の思いと、広辞苑が世の中に発信する「意外なメッセージ」だった。

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平木靖成氏

株式会社岩波書店 辞典編集部副部長。1992(平成4)年入社、翌93年より辞典編集部に配属となり、以来『広辞苑』をはじめとした辞典編集・発行に携わり続けている。広辞苑の編集には1998年11月発行の第五版より参加。

 

「そもそも“デジタルと戦おう”とは思っていません」

平木さんはそう話し始めた。辞典編集部でのキャリアは22年。1998年発行の第五版から広辞苑の編さんに携わり、ネット社会へと変わっていく時代とともに広辞苑をつくってきた。

 

「この時代、確かに紙の辞典だけではなかなか採算はとれません。書籍や雑誌の多くはどうしてもデジタル媒体を同時に起ち上げるなどの試みを進めていく必要があります。そんな状況の中でも広辞苑は紙に力を入れられる、ありがたい環境だと思っています

 

新版が発行されればマスコミで話題となるその知名度から、広辞苑は紙の辞典をデジタルとともに重視している。他社が発行する国語辞典はデジタル版の利便性追求に大きく舵を切ったものもあるが、広辞苑はそうしなかった。

 

「だからといって、デジタルと競合しているわけでもありません。実名で編集責任を明確にしている“辞典”という形態であれば、デジタルも紙もコンテンツとしては同じです。これらは、膨大な情報量を集め続けるネットとは違う世界観を目指していると思います

 

基本的には情報量の制限がなく、必要に応じていくらでも説明にかかる文字数を増やしていくことができるネット。スマホ一つあれば、いつでもどこでも膨大な情報にアクセスできるが、膨大な情報量を理解しきることは難しい。

 

それに対して辞典は物理的な制約から、数十字で一つひとつの項目を説明しきるコンパクトさが要求される。そこに辞典がなければ情報をたどれないが、短い文章に要約されているからこそ素早く意味を理解できるのだ。

 

広辞苑の編さん作業は、そんな辞典ならではの価値を最大限に発揮するための工程であるという。

 

辞典づくりは「終わりのない作業」

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辞典に収められる各項目は、それぞれの対象分野に精通した専門家によって執筆される。それらの原稿がすべて集まっても、辞典の完成まではまだ半分程度の進捗なのだとか。もう半分の工程を平木さんは「縦糸と横糸を織る作業」と表現する。一つひとつの項目が無数の縦糸だとすれば、項目同士の意味合いをつなげるのが横糸だ。

 

「たとえば、“バイオリン”には“ヴァイオリン”という表記法もあります。辞典の中でヴァイオリンの項目を『バイオリンを参照』とした場合、たどり着くべきバイオリンの項目が間違いなく存在しているかを確認しなければなりません」

 

歴史上の人物を紹介する際にも、横糸を紡ぐ作業が重要になる。豊臣秀吉の項目に「織田信長を倒した明智光秀を討った」と記述する必要があるか? という確認。光秀の項目内で「信長を倒した」と説明があれば、秀吉の項目でわざわざそれを記載する必要はなくなる。

 

各項目の原稿を確認するだけでなく、項目同士のつながりも考えていくという膨大な作業。直近の第六版には約24万項目が収められているが、これを十数名の編集部員でやり遂げた。

 

しかし、横糸をすべて織り終えてもまだ辞典は完成しない。世の中に広まり始めたばかりの新語については、「日本語として定着していくか」を見極めなければならず、すぐに収録することができないからだ。改訂版が出来上がった段階で、次の版に向けた課題が積み上がっているような状態。終わりのない辞典づくりの作業を、平木さんは「歯がゆい気持ちになることもある」と打ち明ける。

 

「滑舌」も「スマホ」もなかった

新語の収録秘話には、世の中の移り変わりが色濃く反映されている。

 

2008年に発行された第六版では、「滑舌(かつぜつ)」が新録された。もともとは、アナウンサーや芸能人など話し言葉を専門とする人々の間で使われていた「業界用語」だ。第五版が出た1998年の段階でも候補として挙げられていたが、収録は見送っていたという。その後の10年間、テレビ番組や日常生活で多用されるようになり、定着した日本語として収録された。

 

その第六版に収録されていない言葉を探すと、たかだか7年前なのに時代を感じてしまう。たとえば「クールビズ」。当時はだらしなく見えるほどラフな商品も登場していた。クールビズという言葉と概念が本格的に浸透していったのは、東日本大震災を経て節電意識が高まってからだ。

 

今では日常のコミュニケーションに大きな影響を与える「ツイッター」や「スマホ」も、第六版には収録されなかった。ツイッターのサービス開始は2006年、アメリカでiPhoneが発売されたのは2007年。一部の新し物好きな人たちが飛びついていたイノベーションが、わずか数年で世界を変えた。

 

平木さんは「あくまでも現段階での個人的な考えとして」と前置きしつつ、ツイッターやスマホを第七版に収録したいと話す。他にも、ここ数年で旅行だけでなく日常的に広く使われるようになった「キャリーバッグ」や、交通機関を中心に爆発的に普及した「ICカード」「チャージ」といった項目への語義の追加を検討しているという。実際に収められるかどうかは編集部や有識者間での議論を待たなければならないが、広辞苑に収められていても違和感のない言葉ばかりだ。

 

広辞苑は「新しい表現を生み出すためのツール」

こうして世に送り出される広辞苑。書店へ卸すために営業して、新聞紙面に広告を出して……という昔ながらの販促活動に変わりはない。一方で、「紙の辞典を使う意義を広く伝えていきたい」と平木さんは話す。

 

教育という面では、効率だけを求めていてはいけないと思います。辞典を引けば、目的だった言葉の隣にある項目も知ることができる。まったく知らなかった情報をインプットでき、語彙力は確実に磨かれていきます」

 

確かに、ネットがどれだけ便利になっても、言葉を知らなければ検索を使いこなせない。大量の情報を理解するためのリテラシーだって追い付かないかもしれない。

 

辞典編集部にはしばしば、職場見学のために中高生が訪ねて来る。そんなとき平木さんは決まって「言葉の正しい意味なんてないんだよ」と語りかける。意外そうな顔をする子どもたちも多い。これは、一つひとつの言葉の意味を過去から現在までの変遷とともに紹介する、広辞苑編集者ならではのメッセージだ。

 

「時代が変われば言葉も変わるし、新語も増えて行く。辞典に切り取られた今現在の日本語をたくさん知って、新しい表現を生み出すためのツールにしてほしいですね」

 

平木さんは今後、中高生たちと直接話せるような場に出向き、辞典の価値を伝えたいと考えているそうだ。言葉の意味を柔軟にとらえることができ、語彙力の豊富な子どもたちを増やしていくための活動。そうした場に、3000ページを超す風格と存在感で寄り添ってくれることこそ、広辞苑の本当の価値なのかもしれない。

 

第七版の発行がいつになるかは未定。2010年代中に発行されるとして、さらにその次の第八版が出るのはおそらく2030年近くになる。どんな世の中になっているのか想像しきれないが……「広辞苑はなくならないでしょうね」と平木さんは結んだ。

 

文・多田慎介

 

「2カ月で結果にコミット」RIZAP急成長の理由と、今後の戦略

 パーソナルトレーニングジムの「RIZAP(ライザップ)」の快進撃が続いている。名前にピンと来なくても、体の変化をビフォー・アフターで表現した「暗い顔をした太り気味の人が、きれいに引き締まった姿にガラリと変わる」CMは知っているだろう。完全予約制で、トレーナーがマンツーマンで筋力トレーニングを指導し、毎回の食事についても指示をする。目標体重の達成のための徹底した指導により、多くの人が目標数値を達成しているという。

 2カ月間の標準的なコースで29万8000円(税別、入会金別)と高価格だが、入会希望者は引きも切らず、現在全国46店舗で約2万5000人がトレーニングを行っており、入会待ちの人も多いという状況だ。

 RIZAPは、健康食品や化粧品等を扱う健康コーポレーションが2012年2月に始めた事業(現在は子会社化)。スタートしてわずか3年で、ここまで事業を拡大できた秘密はどこにあるのだろうか?RIZAP事業の責任者であるRIZAP株式会社取締役の迎綱治さんに「RIZAPの戦略」を、元トレーナーの人事担当者、星野祐二さんに「結果にコミットするトレーニングの秘密」を聞いた。

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RIZAP株式会社
取締役 迎 綱治さん(写真左)/人事チーム 星野祐二さん(写真右)

■痩せることで人は前向きになれる。多くの人にそれを実感してもらいたくて事業化を決意

 RIZAP事業を始めるに至った発端は、「瀬戸健社長がパーソナルトレーニングで10キロ以上痩せた」こと。瀬戸社長の右腕である迎さんは、社長の体がどんどん引き締まっていくさまを、間近で見続けていた。

「もともとパワフルな人なのですが、痩せるにつれてさらにパワフルになり、自信がみなぎるようになったのです。見た目が変わることで、人は自信がついてどんどん前向きになれるんだと改めて実感しました。当社はそもそも、ダイエット食品などを展開しており、ダイエットに関する知見はありました。より多くの方に『痩せて輝く』を実感してほしいと思い、社長と二人三脚で事業化の準備を進めました」(迎さん)

 RIZAPの母体である健康コーポレーションは、健康食品や化粧品などを扱う販売会社。同社の「豆乳クッキーダイエット」の大ヒットは、記憶に新しい。

 ただ、パーソナルトレーニングジムは「サービス業」にあたる。同社は店舗を構えた経験もなく、サービス業の知見はほぼゼロだった。

 そこで迎さんは、世の中にあるいろいろなサービス業を体験して回った。例えば、痩身を謳っているエステサロンや、カウンセリングの参考になりそうな結婚相談所、フィットネスクラブも当然いくつも回った。高級ホテルに出向いておもてなしを体感しつつ、客室の稼働率を上げる方法を調べたりもした。そのうえで、実際に「痩せる」を体験した社長と意見交換を繰り返し、半年を掛けて「RIZAPならではのスタイル」を固めていったという。

「結果、『2カ月で完全に結果にコミットする』という基本方針とともに、人に喜んでもらえるサービスにしよう、そして我々は結果を出すためのサポーターであろう、という基本姿勢が固まりました。そうなると、大切なのはそれを支えるトレーナーです。コミュニケーション力が高く、一人ひとりと真摯に向き合える人材の採用と、結果にコミットできるようになるための人材教育プログラムの整備には、かなりの時間を割き、注力しましたね」(迎さん)

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RIZAP株式会社 取締役  迎 綱治さん

■トレーナーは入社後1カ月は研修期間。接客・接遇、栄養学や運動生理学も叩き込まれる

「サービス業リサーチ」をする中で迎さんが体験したフィットネスジムで、カウンセリング力とアドバイス力に感銘を受けたトレーナーがいた。腰の痛みを相談したところ、カウンセリングで原因を的確に判断し、トレーニングによって痛みを解消してくれたという。そのトレーナーをRIZAPの「統括トレーナー」としてスカウトし、2カ月で結果にコミットできるトレーニングメソッドを組んでもらったほか、1カ月でトレーナーを育てる研修プログラムも作り上げたという。

 昨年末まで、大宮東口店でトレーナーを務めていた星野さんは、丸1カ月、150時間に渡る研修プログラムのハードさに驚かされたという。

 大手アパレルチェーンの販売担当からの転身。以前は実業団のソフトボールチームに所属していたこともあるが、トレーナーとしての経験はゼロ。結果にコミットという、今までにないパーソナルジムを目指すRIZAPの方針に惹かれ、飛び込んだものの、「1カ月の研修は正直キツかった」と振り返る。

「トレーニングについてはもちろんですが、接客・接遇や、栄養学、解剖学、運動生理学など、非常に多岐にわたる内容。それを朝から晩までみっちり叩きこまれます。とにかく覚えることが多く、ついていくのに必死でしたね。そして1カ月後、トレーニングと食事アドバイスのロールプレーイングテストを受け、合格したらようやくトレーナーとしてようやく現場に出られます。…現場に出てわかったのですが、研修中、『こんなことまで覚える必要があるのだろうか?』と思ったことが、全て役に立っているんですね。もちろんそれだけはなく、現場に出ても知識を習得し続けないとゲスト(トレーニングを受ける顧客をRIZAPではこう呼ぶ)に最適なアドバイスができませんので、毎日が勉強であり、鍛錬なのですが、あの研修がトレーナーとしての重要な素地になっているのだと感じます」(星野さん)

 研修内容は、現場の声をもとにブラッシュアップし続けている。現在でも3カ月に一度は内容を見直している。また、毎月1回は全店舗を閉め、全国のトレーナーを一堂に集めたスキルアップ研修を実施して、トレーナーのスキルや意識の向上に努めているという。

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RIZAP株式会社 人事チーム 星野祐二さん

■ゲストとトレーナーの信頼関係が、トレーニングの効果を左右する

 トレーナー時代に星野さんが常に心がけていたのは、「ゲストとの信頼関係の構築」だった。

「まずは自分のパーソナルデータをできるだけ開示し、自分を知ってもらうことで、トレーニング初日から信頼を得られるように努力しました。ゲストの方には、目標とする体重やなりたい体をヒアリングしますが、中には恥ずかしがってあまりお話しいただけないケースも。その際は無理に聞き出すのではなく、雑談も交えながら質問を重ね、ゲストが求める姿を探るようにしています。このような方法で、ゲストと真摯に向き合い、早い段階で信頼関係を築ければ、それだけゲストのモチベーションも高まり、効果につながりますし、アドバイスに沿った食事も守っていただけるようになります。ゲストからは1日3食分の食事報告メールを送っていただいているのですが、食事を守っていただければそれに対する返信もスムーズになります。アルコールを摂取していたり、カロリー過多な食事メールに対しては、実践していただくことに意味があるので、返信内容を時間を取ってじっくり考え、結果を出すための食事の大切さからお伝えし、結果的に信頼関係を築いていきます」(星野さん)

 信頼関係を築くためには、コミュニケーション力やトレーニングのスキル、的確な食事のアドバイスも重要だが、「引き出しの多さ」も重要だという。担当しているゲストの事例はすべて頭に叩き込んでいるほか、全トレーナーが自身のゲストの進捗状況を共有し合う週1回のカルテミーティングの情報もナレッジとして蓄積する。情報量が多ければ、それだけアドバイスの幅も広がるし、ゲストからの質問にもすぐ的確に答えられるので信頼につながるためだ。

「カルテミーティングでは、私が担当しているゲストに対して全トレーナーからアドバイスを得られるのもメリットですね。一人のゲストに対する最善の策を皆で考えている状態なので、『結果にコミット』が実現できるのだと思います」(星野さん)

 その結果、目標が達成できたゲストの笑顔を見るのが、何よりの喜びだ。

「『星野さんがトレーナーだったから、最後まで頑張れた』と言われたときは、この仕事に就いてよかった!と心から思いました。目標達成後も健康維持のために継続利用して下さる方も多く、信頼をいただけているからこそだと嬉しく感じましたね」(星野さん)

■CMでゲストが着ている衣装はすべて、本人が「痩せたら着たい」と思っていたもの

 RIZAPといえば、TVCMのイメージが強いが、RIZAP事業のスタート時はマス展開はせず、Web広告や折り込みチラシでの販促が中心だった。

「当初は自己管理の意欲が高く、そのための費用も惜しまないアッパー層をターゲットと考えていました。そのため、所得が高い人が住んでいそうなエリアにチラシを投函したり、購読していそうな媒体に広告を出稿したりしていたのですが、1年経ったころにゲスト分析をしてみたところ、アッパー層よりも一般のビジネスパーソンの方々が圧倒的に多かった。20代女性など想定していなかった層も多く、RIZAPのコンセプトが幅広い層に受け入れられていることがわかりました。そこから方針を切り替え、マス広告を積極的に展開するようになったのです」(迎さん)

 かの「ビフォー・アフター」のTVCMは、2014年6月より展開。お茶の間にインパクトを与えた。

「ボディメイクを通じて、心も体も元気でイキイキさせ人生を輝かせよう!というメッセージを盛り込んでいます。出演いただいているゲストが、痩せた姿で着ている衣装は、すべて『目指す体形になれたら着たい服』として事前に挙げていただいたもの。だから、あれだけキラキラに輝く笑顔になれるんですね」(迎さん)

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■RIZAPの基本戦略は「最悪に備えた、攻めの戦略」

 このTVCMの印象が強いせいか、「派手な広告戦略で一気に店舗数を増やして成長して来た」という印象を持たれるが、決してそうではない。RIZAPの基本戦略は「最悪に備えた、攻めの戦略」。リスクやコストを常に考えながら、拡大を推し進めてきた。

 地方など、新しいエリアに進出する際には、まずはマンションの1室などにトレーナー1~2人で回せる規模の「サテライト店舗」を出店する。そこでニーズがあると判断してから、大型店舗化するという方針を取っている。

「もちろん事前にマーケティング調査は行いますが、ゲストからの反響を見てみないと実際のところはわからない。サテライト店舗で知名度を上げ、手応えをつかめてから初めて大型店舗化を検討します。このように着実に店舗を増やして『受け皿』をしっかり確保してから、マス広告も展開しました」(迎さん)

 そもそも、RIZAPのようなマンツーマンによる完全予約制のパーソナルジムは、一般のフィットネスジムのような「大きなハコとマシンを何台も用意し、利用者が来るのを待つ」というスタイルに比べ、利用者の数さえ確保できれば稼働のムラが少なく、投資効率も高い。

■「痩せる」の次に目指すのは、「医療」「シニア」「海外」

 この3年間で、「RIZAPは痩せる」との認知はある程度得られた、と考えている。次に目指すのは、「医療」「シニア」「海外」という3つの分野での事業展開と認知向上だ。

 このほど、医療機関と提携して、クリニック内店舗を出店した。診察の結果、健康に問題が見つかった人に、トレーニングと食事管理の側面から健康数値の改善をサポートするためだ。

「RIZAPへの入会動機で多く聞かれるのが、『健康診断で悪い数値が出たから』というもの。RIZAPでトレーニングを頑張った結果、劇的に数値が改善した!という喜びの声をいただくことも多いんです。ただ、こういう『健康に不安を抱えた方』すべてにリーチできているとは言えません。こういう医療機関との提携を増やすことで、より多くの人に健康状態を改善してほしいと願っています」(迎さん)

「シニア」をターゲットに置いたのは、日本の超高齢化を考慮したものだ。

「歳を取るごとに筋量の低下は進みます。例えば、足の筋量が低下すると小さな段差でもつまずきやすくなり、その結果、骨折、寝たきり…となるケースは少なくありません。そうならないために、シニア向けの筋量増強のトレーニングを積極的に提案していきたい。シニアが生涯、健康でい続けるためのサポートを続けたいと考えています」(迎さん)

 そして「海外」では、すでに上海、シンガポール、台北に店舗を構えているが、この3月にアメリカと香港に現地法人を設立し、海外展開を加速。今期中には海外10拠点での展開を計画している。

「生活水準が上がるにつれ、肥満問題に直面している国はたくさんあります、RIZAPのサービスは、日本以外でも効果を発揮できるし、必ずや受け入れていただけるもの。世界の人を健康にする、が新たな目標です」(迎さん)

 この戦略が実行され、軌道に乗れば、「RIZAP」の認知は世代間ではもちろん、国境をもまたいで広がっていきそうだ。もしかしたら早晩、「あのCM」のシニアバージョンが流れたり、英語バージョンや中国語バージョンが作られたりする日が来るかもしれない。

 EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

 

東京スカイツリーが落とした巨大な影と「シャッター通り」復活への指針

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 2015年5月22日で開業3周年を迎える「東京スカイツリー」と「東京スカイツリータウン」。今も多くの人が訪れ、大変な賑わいを見せている。

 

 しかし、その地元でもある墨田区にはスカイツリー効果の恩恵をあまり受けてはいないそうだ。一体どういうことなんだろうか。

 

■東京スカイツリー建設は墨田区、待望のイベント!

 東京スカイツリーの建設は、地元墨田区だけでなく、日本中が元気になるようなイベントとして大いに注目された。

 

 スカイツリーの足元には、押上(スカイツリー前)駅からとうきょうスカイツリー駅を結ぶ約400mのエリア「東京スカイツリータウン」が広がり、ウエストヤード、タワーヤード、イーストヤードの3つの区画を持つ大きな街として構成されている。

 スカイツリータウンの中心をなすのは、タワーヤードに位置する、世界一高い自立式電波塔。これが高さ634mを誇る「東京スカイツリー」だ。観光スポットとしての最大の魅力は、なんと言っても2つの展望台だろう。360度の大パノラマが楽しめる、地上350mに位置する「東京スカイツリー天望デッキ」と、さらにその上の450mに位置する「東京スカイツリー天望回廊」だ。

 

 一方、ウエストヤード、イーストヤードには、地上31階部分に商業施設である「東京ソラマチ」がある。ここは“新・下町流”をコンセプトにした複合商業施設だ。新しい下町の魅力を発信するショップをはじめ、約300店を超える店舗が揃った、都内最大級のショッピングゾーンでもある。店舗の種類も、飲食、ファッション、食品、雑貨、ライフスタイルと幅広い。また、イーストヤード5階には、東京スカイツリーができるまでを映像アトラクションとして体験できるメイキングツアー、7階にはプラネタリウム(コニカミノルタプラネタリウム“天空”)、ウエストヤード6~7階には水族館(すみだ水族館)など、充実した体験的な観光施設も特徴だ。

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■開業から3年、スカイツリー人気に陰り…!?

 開業から3年を迎える、「東京スカイツリー」の人気はどうだろう。開業前からマスコミにより、鳴り物入りで取り上げられていた東京スカイツリー。2012年5月22日の開業から849日目の2014年9月17日には、「東京スカイツリータウン」の来場者の累計が1億人を突破するという絶大な人気を博した。そして、2014年の1年間は、のべ3,500万人以上の来場者数が記録されている。また、観光という側面から地上350mにある東京スカイツリー天望デッキへの来場者数をみると、2014年6月30日で約1,313万人が訪れている。

 

 このようなデータからみるとスカイツリー人気は上々といえるのだが、実はその人気にやや陰りが見えているという話もある。それは2014年4月~6月期の来場者数をみると分かる。天望デッキは、前年同期比で15万人減の141万人。スカイツリータウン全体では200万人減の845万人だった。

 

 スカイツリーの展望デッキへの来場者数減少に関しては、入場料の高さ(展望デッキ・大人<事前日時指定券>2,570円、展望回廊・大人<事前日時指定券>1,540円)によるリピーター率の低さ、悪天候などによる中止の影響などがあげられている。

(※価格は2015年5月現在)

 

 

■東京スカイツリーのお膝元・墨田区が抱える問題点とは?

 「東京スカイツリー」の周囲を歩いてみると気づくことがある。それは、スカイツリーとスカイツリータウンの巨大な建物が、周りの風景に溶け込まずに突出して見えることだ。

 

 スカイツリーのある墨田区は、様々な問題を抱えている区でもある。中でも、最大の問題は高齢化だ。65歳以上の高齢者の割合が墨田区人口(平成26年1月現在)の約23%を占め、これに比例するように所得の低さもあげられる。墨田区は東京23区の平均年齢ランキングで20位、所得ランキングでは17位と23区内では決して恵まれているとはいえない結果になっている。

 

 このような状況を踏まえて、スカイツリーの周囲をみてみると、昔から営んでいたものの倒産してしまった零細企業や、シャッターを閉めたままの商店などがちらほらと目につく。こうした状況はもちろんスカイツリー開業前からも起きていたことだが、まだまだ改善されていないようだ。

 

 そんな墨田区に、世界的な観光名所となりえる「東京スカイツリー」が開業したのである。

 

 マスコミは連日その経済効果は推定880億円などと報じた。これには地元も大いに期待したであろう。周辺の商店街など地元の繁栄に期待が寄せられたのは、至極当然のことである。

 しかし、実際にスカイツリーが開業してみるとどうだろうか。地元には観光客が思ったよりも流れず、その観光客の流れは、ソラマチなどのスカイツリータウンのみにとどまってしまった。つまりスカイツリー効果は、当時予想されていたほど地元に反映しなかったのだ。地元商店経営者などの失望が大きかったのはいうまでもない。しかも昨今、「東京スカイツリー」自体の人気にも陰りが…との声も生まれている。今後、「東京スカイツリー」と墨田区は、どんな方向へ進むのだろうか?

 

■共存共栄するために。東京スカイツリーと墨田区の今後は?

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 最近になってスカイツリーの周辺地域では、依存するのではなく、自分達の手で活性化を図る様々な動きが見られるようになってきた。とはいえ、スカイツリーは大きな観光資源であることは間違いない。事実、先日のゴールデンウイークはスカイツリータウン内の飲食施設が連日満員となり、そこで溢れてしまったお客さんが周辺の飲食店に流れて、大いに賑わっていたと聞く。

 

 では、スカイツリーを訪れた人の流れを地元に還元するにはどうすればよいのか?

 

 当たり前のことだが、人々をスカイツリータウンから、スカイツリー周辺に呼び出すことが必要だ。そこで解決策として注目したいのが“街歩き”というキーワード。

 

 墨田区には江戸時代から続く花街向島、相撲の聖地両国、江戸東京博物館などの観光スポットが点在する。スカイツリー直下に目を向ければ牛嶋神社や三囲神社、弘福寺などの歴史上名高い社寺も多い。現状では隅田川対岸に位置する浅草ほど大きなポテンシャルは持っていないが、こうした観光スポットはもっとフィーチャーすれば人気が高まる魅力を秘めているのだ。

 

 墨田区観光協会のホームページ上には“街歩きコース”として、両国コース、菊川~森下コース、錦糸町コース、向島コースが掲載され、いずれもスカイツリーを見ながら回れる街歩きコースとなっている。さらにガイド付きまち歩きツアーとして、専属のガイドが案内しながらスカイツリー周辺の街歩きを楽しむという企画も実施している。

 

 中でも、池波正太郎の時代小説「鬼平犯科帳」の舞台をめぐるツアーはあっという間に定員に達してしまうほどの人気ぶりで、20代〜30代の時代劇好きな若者の参加も多いという。このようにして、スカイツリー周辺の街を実際に見て歩くことにより、地元の現状も認知されて、活性化への道が開かれるのではないのかと考える。今後の官民一体となったアクションが大いに望まれるはずだ。

 監修:リクナビネクストジャーナル編集部

 

5月の京を彩る「葵祭」の見どころ徹底解剖&魅力度2位の京都・観光の最新事情に迫る!

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 観光資源が豊富な京都は、行ってみたい観光地ランキングでは常に上位に支持される人気エリア。そんな京都の5月を彩る葵祭の歴史と見どころを解説。さらに最新の京都観光事情をビジネスの視点で紹介する。

 

■起源は1400年以上前!『源氏物語』にも描写がある「葵祭」

「葵祭」は、祇園祭や時代祭とともに京都三大祭に数えられる古都を代表するお祭り。例年5月15日、新緑まばゆい京都の街は平安時代さながらの王朝絵巻に彩られ、地元京都だけでなく日本全国から集まった約8万人もの観光客を魅了する。

 

「葵祭」は、正式名称を「賀茂祭」という。その歴史は古く、起源は今から約1400年以上前の欽明天皇の時代に遡る。この頃、風水害による凶作が続いたそうだ。その理由が、「賀茂社に祀られている神の祟り」ではないのかと考えたすると風雨はおさまり、五穀は豊かに実って国民の生活が安泰になった。

 

それ以降、歴代の朝廷により国家的な祭事として執り行われ、平安中期には祭りといえば「葵祭」を指すほどになった。『源氏物語』では、葵の巻でこの祭りが描かれている。光源氏が勅使を務めるために、参列する姿を見物しようと訪れた正妻・葵上と愛人・六条御息所の車争いのシーンがそれである。当時の貴族達にとって「葵祭」がどれほど重要であり、かつ身近なものであったかがうかがい知れる。

 

そんな国家的な人気祭事でもある、「葵祭」にとっても受難の時代はあった。それは室町時代の応仁の乱から江戸元禄時代までの約200年間、さらには明治の一時期や太平洋戦争の戦前戦後など。こうした動乱の時代には祭りの中断が余儀なくされたこともあった。しかし、王朝の伝統行事は途絶えることなく、人々の手によって忠実に守り伝えられてきたのである。

 

■総勢500名、1kmにも及ぶ風雅な王朝行列は圧巻の一言!

平安時代以来、国家的行事として脈々と行われてきた「葵祭」は、数多ある日本の祭りのなかでも、王朝風俗の伝統が色濃く残されているのが最大の特徴。

 

中でも最大の見どころは、風雅な王朝行列の路頭の儀である。この儀式は「葵祭」の主役である勅使をはじめなど、総勢500名、長さ約1kmもの行列が平安貴族そのままの姿で、京都御所を出発し、上賀茂神社を経て下鴨神社への約8kmの道のりを歩む。

 

「葵祭」というと注目の的がヒロイン・斎王代だ。斎王とは、賀茂社に巫女として使えた女性皇族のことである。この斎王を演じるのが斎王代で、女官や文官などの従者達に囲まれて、華やかで可憐な行列、女人列に参列する。

 

斎王代は京都にゆかりのある未婚女性から選ばれる。祇園祭のお稚児さん同様、京都人にとって選ばれることは大変な名誉とされている。本来は元華族(貴族や大名家)など家柄の高い家系から選ばれていたが、

 

雅な衣装をまとった斎王代の美しい立ち振る舞いを見ていると、時間の流れがゆったりと感じられるから不思議だ。

 

■日本に訪れた外国人の10人に1人が京都に宿泊という事実!

京都は国内の都道府県魅力度ランキング(ブランド総合研究所調べ)でほぼ毎年、北海道に続いて第2位にランクされるほどの人気観光地である。市内中心部はもとより郊外にいたるまで名所旧跡などの観光資源や美しい自然が豊富にあるので、リピーター率も非常に高い。

 

京都市産業観光局が行った「京都観光総合調査」(2015年)によると、平成25年には京都市を訪れた観光客数が過去最高の5,126万人に達した。さらに滞在型の観光地の基準となる年間宿泊者数は1,308万人で前年比7%の増加を記録した。それに伴い観光消費額は7,002億円(過去最高の平成20年度より441億円の増加)とこれも過去最高を計上、京都の観光地としてのポテンシャルがさらに上昇しているのは事実だろう。

 

注目すべきことは、外国人宿泊者の数が113万人に達したことだ。これは対前年比35%アップという驚くべき大幅増加である。これは、日本を訪れた外国人の10人に1人が京都を宿泊地として選んでいるということ表している。中でも、古い京町家をリニューアルしたゲストハウスは、古都を肌身で感じられる宿泊施設として「ニューヨークタイムズ」でも絶賛されているほど。このように、外国人旅行客にとっては自分の旅のスタイルに応じて宿泊設備を選べるという利点もあるのだ。

 

日本人の国内旅行先として盤石な基盤を築いている京都。観光地としてさらになる飛躍を遂げるには、外国人観光客をさらに取り込んでいくことが鍵になるのは間違いなさそうだ。

 

■日本における観光地、その京都ならではの魅力

京都には情緒溢れる雰囲気や受け継がれる慣習などに合わせ、1,200年の歴史に培われた芸術や伝統工芸、食文化があり、日本人の心の中にしっかりと根付いている。多くの日本人がそんな京都のもつ遺伝子に惹かれて訪れていることは確かだろう。これは観光地として京都のライバルにも挙げられている北海道や沖縄にはあまりなく、京都独特の魅力といえる。

 

そうした京都の魅力は、外国人にとってもしっかりと感じ取れるものである。世界で最も影響力があるとされるアメリカの旅行雑誌「トラベル+レジャー」が2014年に行った読者による世界の観光都市人気投票で京都が1位に選ばれたのだ。この投票では京都のもつ食・文化・芸術への評価が高かったとされている。

 

この結果を京都市観光MICE推進室では「和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことも影響したのでは」と分析している。事実、和食はいま世界的なブームを迎えている。京都は周知の通り、日本料理発祥の地。日本人はもちろんのこと外国人の舌をも唸らせる飲食店が数多く存在する。

 

このように、日本人が惹かれてやまない京都の文化や芸術は、多くの外国人の心も虜にしている。では、こうした動向をより強固なものにするためにはどうしたらよいのだろうか?それは日本が誇る「文化」を、外国人含む多くの人々に実際に体験してもらうことではないだろうか。京都には茶道、華道、香道、陶芸、和装、染色などの伝統文化が色濃く残っており、それらの体験施設がどの都市よりもしっかりと整っている。そこで、京都という情緒あふれるロケーションの中、「触れる」「体験する」という能動的な一面からも観光をアピールできるのではないだろうか。

監修:リクナビネクストジャーナル 

【予約殺到!「ななつ星in九州」】客が熱狂するクルーズトレインの魅力とその経済効果に迫る!

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大人気のクルーズトレイン「ななつ星in九州」。高額な料金にもかかわらず、定員にたいして約20倍もの申し込みが殺到している。そんな「ななつ星in九州」の魅力とは、いったい何なのか。JR東日本・JR西日本で予定されているクルーズトレインとともに、その経済効果についても考えてみたい。

■“短時間・利便性”とは真逆に位置する「ななつ星in九州」

2013年10月15日、日本初のクルーズトレイン「ななつ星in九州」(JR九州)が運行を開始。

この時期を前後して、日本の鉄道は大きな局面を迎えていた。2011年には九州新幹線が全線開業、そして続くようにして2015年には北陸新幹線も開業となった。この新しい2線によって、東京駅〜鹿児島中央駅間は最速で「6時間半」、東京駅〜金沢駅間は最速で「2時間半」を切るなど、鉄道のスピード化にさらに拍車がかかることとなった。

しかし、「ななつ星in九州」はこのようにスピード化された鉄道の対極に位置している。その運行路線は以下の二つ(※2015年5月現在)。

  • 1泊2日コース 博多~有田〜長崎~(列車泊)~阿蘇~由布院~博多
  • 3泊4日コース 博多~由布院~(列車泊)~宮崎~都城~隼人(旅館泊)~鹿児島中央~鹿児島~(列車泊)~阿蘇~博多

料金は1泊2日で210,000円~、3泊4日で480,000円~(2名1室利用時1人あたりの旅行代金※2015年5月現在)と、豪華客船のクルーズ同様に高額である。

先を急ぐことなく、観光地をのんびりと周遊することができ、車窓の景色を眺めながらその土地ならではの食事を楽しむ。まさに、「ななつ星in九州」は起点から目的地までの速やかな移動を目的とした、現代の鉄道が持つ常識を根本から覆す乗り物として登場したといえる。

  

■「ななつ星in九州」は究極のリゾート列車だ!

新幹線網の拡張により、短時間で日本各地が結ばれるという利便性はやはり捨てがたいものがある。しかし、鉄道のスピード化はその代償として、旅の醍醐味でもある“道中での情緒”を減少させてしまった。かつての列車の旅には、過ぎ去りゆく車窓の景色を眺め、食堂車で食事をするなど、旅の過程を楽しむ「ゆとり」があった。しかし現在において、新幹線の車内でどれだけの乗客が車窓に目を向けているだろう。スピードを最優先にした鉄道は、少しでも速く、遠くに乗客を運ぶという移動手段と化してしまった。

 

こうした状況の中、なぜ「ななつ星in九州」には予約が殺到しているのだろうか。

九州は人気観光列車の宝庫ともいうべきエリアである。九州新幹線の開業にともなって、観光を目的とするリゾート列車を積極的に導入し、沿線各地と協力して、観光客の誘致・もてなしをしようと努めてきた。こうした努力は着実に実を結び、「ななつ星in九州」の成功にも繋がることとなった。

 

■最高のサービスに美しい風景…まさにそこは非日常の世界

これだけの人気となった「ななつ星in九州」の魅力を探ってみよう。

まずはその希少性だ。1回の運行で乗車可能なのは最大で14組30人、2015年3月~9月の平均競争力が22倍という狭き門がさらにプレミア感を演出している。最後尾のDXスイートAは、最高倍率が268倍という数字を記録したほどの人気ぶりだ。

しかし、希少性だけでこの列車の人気を解き明かすことはできない。その秘密は、クルーズトレインというコンセプトの中にこそある。

「ななつ星in九州」の存在そのものが、非日常の世界にあるのだ。

 

高い倍率の末に手に入れたプラチナチケット。

乗車前にはドレスコードの案内等が封入されたご案内が届くとともに、クルーズトレインツアーデスクの担当者から旅の目的やアレルギーの有無、旅の間に聴きたい曲のリクエストなどのお伺いやご案内の連絡が入る。この時点でゲスト達は優雅なクルーズトレインの旅に思いを馳せて、胸を高まらせることだろう。

そして待ちに待った出発日。博多駅の専用入口からレッドカーペットを経て「ななつ星in九州」に乗り込んだ瞬間から、目の前には今までの列車の概念を超越した空間が広がる。

数日間を過ごす列車内の部屋は「懐かしくて新しい」をコンセプトとした和洋折衷で、きらびやか過ぎず、品があるウッド調の落ち着いた雰囲気に包まれている。壁や床には木が使われていて、車窓を見なければそこが列車であることを忘れてしまう。この旅における楽しみの一つでもある食事は、皆が集うラウンジカーやダイニングカーで味わう。提供される料理は地元九州を中心に厳選された食材を用いており、さらには九州を代表する料理店のシェフが自慢の腕をふるう。

クルーによる「家族のように寄り添う」おもてなしにプラスして、車窓からは九州ならではの美しい風景が広がり、その勇壮な景色も眺め楽しむことができる。ただ旅をするだけではこの二つを同時に味わうことは難しい。「ななつ星in九州」は、ゲストを日常から隔離された世界へ誘い、鉄道で旅する喜びを心ゆくまで堪能させてくれるのだ。

 

■「ななつ星in九州」に続くクルーズトレイン続々登場!

「ななつ星九州in九州」の成功はクルーズトレインという新たな市場を創出し、同じJRグループ各社にも大いに刺激を与える結果となったようだ。JR東日本では17組限定の豪華寝台列車「トランスイート四季島」、JR西日本も30人程度限定の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞鳳」の運行をともに2017年春から予定している。

どちらもまだその詳細に関してはイメージ画像の発表程度にとどまり、運行ルートも明らかにはしていない。しかし、路線沿いの地域との連携を密にし、観光スポットに立ち寄っての観光を含む、「クルーズトレイン」として計画されているようだ。

 

 

■クルーズトレインがもたらす経済的効果は計り知れない

「ななつ星in九州」がもたらす経済効果については様々な意見がある。

1回の定員が30名のため、年間100回運行しても売上は5億円程度にとどまる。約3,400億円の売上高を持つJR九州(2013年3月連結決算)としては経営の核になりえない。それどころか、30億円という総工費や人件費などを考えると赤字も覚悟の上だ。それはこれからクルーズトレインを運行しようとする他のJRグループにしても同様だろう。

 

では、なぜJR各社はクルーズトレインに力を入れるのか。それは、「ななつ星in九州」そのものを観光資源として、観光客を九州へ誘致する広告塔のような働きを持たせることができるからだ。この列車を通じて九州の文化や伝統工芸などを多くの人に知ってもらい、九州へ訪れる機会をつくること。そうすることであらゆる観光産業に与える波及効果を狙っているのである。これらがしっかりと実践できればその経済効果は計り知れないものになるだろう。そしてクルーズトレインの確固たるスタンスが築かれるのではないだろうか。

 

さらにクルーズトレインには、外国人観光客を取り込む狙いもあるようだ。欧米の富裕層は日ごろから船舶や鉄道のクルーズ文化に慣れ親しんでおり、クルーズトレインの客層としては最適ともいえる。彼らの口から伝わる「観光地」としてだけでなく「文化」としての日本の素晴らしさは、それだけで大きな宣伝効果を生むことだろう。

 

日本初のクルーズとしてだけでなく、鉄道にも観光にも様々な影響を与えている「ななつ星 in 九州」。クルーズトレインとしてだけでなく、日本における観光そのものにも風穴を開けるかもしれない。今後も変わり続けるであろう、日本におけるクルーズトレインの動向に注目していきたい。

 

画像提供:JR九州

監修:リクナビネクストジャーナル編集部