リクナビNEXTジャーナル

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ワーママを救う、地元に「通勤」する会社とは?

子育てしながらの通勤がきつく退職、サテライトオフィスをつくろうと思ったのは2014年。しかし人脈も資金もなく一度は断念。そして、働き方改革が大きく問われ始めた2016年、いよいよ波が来たと、あらためて実行に移したのがTrist代表・尾崎えり子。ひとりの想いは大きなうねりとなり、地域も企業も多くのひとを巻き込んでいきました。

※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。

子どもが育つのも介護者が生きるのも地域だから、地域のひととのつながりが重要

f:id:mihomiho4892:20180109124630j:plain▲Trist代表・尾崎えり子

「縁もゆかりもない土地で、誰も頼れる人がいなくて、こりゃキツイなと思った」——。

これはTristの代表を務める尾崎の2013年頃のエピソード。
「きついな」と思った尾崎自身も働くママです。当時、風邪をひいた小さなふたりの子どもを抱え、自分も風邪になり、家族に助けてもらいたくても、夫婦の実家は香川と岡山で、夫も海外出張中。もちろんママ友はいるけれど、風邪の子どもを預けて万一うつったら、相手も大変になることは目に見えています。誰にも助けてもらえない。万事休す。

尾崎 「どうしようもなくて……近所の60代のご夫婦に子どもをみてもらえませんか、病院まで車を出してもらえませんかとお願いをしたんです。すると、なんでもっと早くに頼りにこなかったんだといわれました」

ご夫婦とは普段から、実家から届いたおいしいものをおすそわけする仲。すぐにテキパキと対応してくれました。病院から帰宅すると、夕食をたくさん買ってきてくれていて……。

尾崎 「ホッとして嬉しかったです。私たち世代は、“ちゃんと自分でしなきゃ”という意識がすごく強いし、人に頼るのは『迷惑』だと思い込んでしまっています。でも頼るとラクだし、相手も喜んで手伝ってくれる。それがわかりました」

この体験で尾崎は「母親だけが集まっていても非常に弱い」と実感します。年齢や性別などを超えた色々な人たちに頼らない限り、地域のなかで子どもを育てることは難しい。どんなに職場が子育てや介護と仕事を両立できる環境を支援しても、子どもが育つのも介護者が生きていくのも地域なのだからーー。

自分の経験を活かして働きましょうーーその言葉が一人ひとりの自信を蘇らせる

f:id:mihomiho4892:20180109125021j:plain▲ライフイズテック株式会社にテレワークで務める小林さん。6年以上のブランクを乗り越え、人事として活躍している(2017年9月の応募時点)

Tristは、長時間通勤が難しく、子どもの近くで働きたいと考えている方(特に母親)へ「都内の企業に所属しながら、自分のキャリアを活かして地元のシェアサテライトオフィスで働く」というスタイルを提供しています。つまり、その人にとってのオフィスが、“地元に通勤してきてくれる”ということです。

 特に、Tristが注力するのは無償の教育プログラムです。「マインドセット」「ITセット」「テレワークセット」と3つの基本講座がありますが、なにより大事なのはマインドセットだと尾崎は考えています。なぜならブランクのある母親たちは、驚くほど自己肯定感を失っているからです。

尾崎 「家庭に入って経済的自立がなく誰かに依存して生きるということで自信を失うひとは多いです。自己肯定感が低いと、どんなにスキルを磨いても、それを活用できる、会社に貢献できるという自信が育たない。自分がなぜ働くのかという軸がぶれてしまって、結果的に企業から辞めさせられてしまうなと思ったんです」

大事なのは、スキルやキャリアを最大限に活かすためには、まず自分に自信をもつーー。

そのために尾崎がもうひとつ“必ず”伝えているのは「自分たちがブランクだと思っている期間にこそ、相当な学びがあるはずだ」ということ。そしてプログラムの内容もかなりハードです。それでも働きたいと教育プログラムに挑んできた母親たち。尾崎はつねに「自分の過去のキャリアはもちろんのこと、子育ての経験も活かして働きましょう」という姿勢で接しています。

「お世話になっています」ではなく「おつかれさま」といわれる関係に

f:id:mihomiho4892:20180109125345j:plain▲2017年11月現在、Tristには27名のテレワーカーがいる

立ち上げから1年経った現在(2017年11月)、Tristは、7社27名の働くママのテレワーク、直接雇用をサポートしています。そのなかで、スタートする前は思ってもみなかったひとつの課題がみえてきました。

 テレワークの場合、都内の本社に出社するのは週1〜3回。それぞれの企業や個人の契約で異なります。出社する場は変われども、企業側としては同じ社員として会社の情報もすべて開示しています。ところが「会社の方向性が見えない」と感じるひとが意外に多いのです。

尾崎 「会社のいろんな情報は、実は会議や明文化されたものだけでなく、日々の雑談や隣の部署から聞こえてくる声、会議室から誰と誰が出てきたとか、そんな無意識の情報から軌道修正されているんですね。離れているとそれが感じられない。そのためにある時、いきなり方向性が変わったと感じてしまうこともある」

働いている本人にすれば、これまで自分のやったことは無駄ではないかという不安や不信にもつながります。だから尾崎は、出社時はできるだけ多くのひとたちと話すことを勧めたり、チャットツールや雑談もできる掲示板ツールの導入を企業にも提案しています。

「業務委託先」ではなく同じ会社のメンバーだと認識されることがテレワークを成功させるうえでも重要なポイントなのです。

もちろん教育プログラムのなかでも、チームビルディングについては徹底して伝えています。なぜこのような働き方をしてまで、自分が働きたいのか。また自分の強みを知って他者の強みを知ることや、離れた場所でも組織として働くことの意味まで……。

尾崎 「業務委託先ではなくチームとして一体となって働くとき、重要なのはスキルではなく、スタンスだったりコミュニケーション能力だったり、交渉力だと思っているので、そこについてはけっこう強調しています」

こうした組織のなかでテレワークという新しい働き方を盤石なものにしていく、そのサポートをTristはおこなっています。

ママだけでなく、企業、地域、シニア、子どもたちもみんなが自分を実現できる

f:id:mihomiho4892:20180109125525j:plain▲Tristのイベントやスクールの風景

この企画を考えはじめた頃、尾崎がよくいわれた言葉。

 「二番煎じ感が強い」
「大手がもうやっている」
「クラウドファンディング程度では、うまくいかないよ」
「ママってパートで2〜3時間働けたら満足なんじゃないの?」

どれも厳しい言葉ばかり……。でも「だからこそ闘志が湧いた(笑)」と尾崎はプラスにとらえています。

尾崎 「子どものいる男性を“パパ”という属性で一括りにできないように“ママ”もみんな同じではない。いろんなキャリアや価値観を持っています。だから、誰もが自分のやりたいことを実現できるように……そんな想いを企業の方に共感してもらって、一緒にそういう世界をつくっていこうといっていただいたときは嬉しかったですね。
日本マイクロソフトの執行役員 スサンナ・マケラさんは、『あなたの娘さんが大きくなった時、あなたが何を成し遂げたのか、想像さえできないような社会にしましょう』と言ってくれました。
ブランクのあるお母さんたちにとってマイクロソフトのExcelやPowerPointが再就職の障壁になっているのであれば、それをマイクロソフトが後押しすることが、どれだけ勇気づけられることかーー。マイクロソフトと一緒にやることに価値がある、私自身、それを強く感じましたね」

“ママ”というだけで、その可能性をすべて切り捨ててしまうのは企業にとっても日本にとっても惜しいことーー。その可能性をもっと活用しないともったいない。この想いはTristの根幹でもあります。

地道な活動が実り、多くの企業が新しい働き方に賛同し、Tristを通じて活躍する方が増えています。そのうえ“ママの活躍”以外にも大きな成果を生み出しました。それは、「待機児童の解消」と「地域活性化」です。

長時間の通勤があると、家の近くの保育園にしか預けられないですが、自転車で通勤できる距離であれば、家から遠くの保育園に預けることも時間的に可能になり、駅近の保育園の待機児童にならなくても済みます。

また地域の方も、おばあちゃんが子どもを預かってくれたり、高校生たちがカフェをひらいて子どもたちの面倒を見てくれたりなど、お母さんたちが自分の時間を過ごせるよう、さまざまな形で地域に関わってくれています。

2017年現在、テレワーク施設を検討中の自治体や政治家、地元団体など全国からTristへ問合せが後を立ちません。私たちは、視察も多く受け入れています。

尾崎 「二番煎じといわれたときに感じたのは、確かに全国にたくさんハコはあるけれど、ハコに命を吹き込むのは人(ソフト)、と確信していました。そのハコで、どんなひとが、どんなふうに働くのか。その領域はまだ答えが出ていないと思っていたので、すごく面白いと感じて、なんとか制覇したいなと(笑)」

 今後について、尾崎はとんでもない野望をもっています。

尾崎 「シェアサテライトオフィスを小・中学校の空き教室でできないかと。もしシェアサテライトオフィスが教室の横にあれば、子どもたちも自然とこういう働き方が当然なんだと思いはじめる。隣の教室にエンジニアがいたり、Skypeで海外とやりとりしていたり、働くことが身近にあれば、何のために勉強するのかも理解しやすいと思うんです」

 社会と学校の価値観の乖離を変えていきたいーー。これが、尾崎のさらなる野望なのです。

 

会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table

「明治大学」はなぜ女子高生に人気の大学になれたのか?――高校生が志願したい大学“8年連続1位”を実現した戦略

今の10代から20代前半の世代と、30代以降の世代とで、これほど情報ギャップのあるケースも珍しいかもしれない。創立100年を超える歴史を持つ日本を代表する大学、明治大学をめぐって、だ。

東京6大学の一角を占める人気大学だが、この10年ほどで大きな異変が起きている。ブランドイメージが一変してしまっているのだ。ひと昔前の男臭い大学のイメージはそこにはまったくない。今や女子高生からの人気で1、2を争う大学になっているのである。

明治大学にいったい何が起きたのか。明治大学は何をしたのか。関係者への取材でそれを明らかにしたのが、上阪徹氏の著書『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか? 奇跡を起こすブランドポジションのつくり方』(東洋経済新報社)。今回は、明治大学の変貌ぶりと、それを実現させた秘密の戦略に全4回で迫る。

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ブックライター 上阪徹さん

1966年生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。ワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリー。これまでの取材人数は3000人超。著書に『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか?』『社長の「まわり」の仕事術』『10倍速く書ける 超スピード文章術』『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか』『成功者3000人の言葉』『リブセンス』『職業、ブックライター。』など。 

 「明治が男っぽい?意味わかんない」

 最近、女子高生の娘から呆れられるお父さんが後を絶たないという。きっかけは、大学受験。お父さんは昔のイメージそのままに、余計なことを言って、娘を呆れさせてしまっているというのである。

「私、明治大学に行きたいと思っているんだけど」

「明治大学って、あの明治か? 何もわざわざ、あんな男っぽい大学に行かなくてもいいんじゃないか」

「お父さん、何を言ってんの? ぜんぜん意味わかんない……」

 今の高校生の親といえば、40代半ば以上だろう。となれば、無理もないともいえる。昔の明治大学は、たしかに男っぽい大学というイメージがあったからだ。かつての駿河台キャンパスはうっそうと樹木が生い茂って森のような薄暗さだった。学生運動の立て看があちこちにあって、歩いているのは、ほとんどが男子学生、という印象。

 この文章を書いている私もちょうど親世代に当たるが、強く覚えているのは、ラグビー部の強さである。前へ前へと突進している猛者たちの姿は、そのまま明治大学のイメージに重なっていた。当時、明治もそうだったが、早稲田や法政など男っぽい大学の学生たちは、「バンカラ」と呼ばれた。しかし、今や「バンカラ」という言葉自体を知らない学生も増えてきているという。

 会社でも、30代以上の先輩たちと明治大学のイメージのギャップが起き始めている。トンチンカンなことを若い明治大学卒業生に言ってしまい、戸惑わせてしまう……ということが起こっているのだという。

 

「オシャレでモテる」明大男子

 京王線で新宿駅から特急で5分。「明大前」駅には、明治大学の文系学部の1年生、2年生が中心に学んでいる和泉キャンパスがある。ちょうど取材に訪れたときは、講義と講義の間の休憩時間だったが、驚いてしまった。

 私と同年代の人間がここを訪れたら、きっとこんなふうに感じると思った。

「これが本当にあの明治大学なのか?」

 何より、女性がとても多いのだ。しかも、華やかなファッションに身を包んだ女性があちこちに見える。昔の明治大学で、こんな光景を見たことはなかった。新入生の女子学生に話を聞くと、こう語っていた。

「入学してびっくりしたのは、みんな本当におしゃれだということでした。ちゃんとしていないと浮いちゃうので、毎日、大変なんです(笑)」

 しかし、もっと驚いたのは、男子学生がなんとも垢抜けていたことだ。清潔感があり、ファッショナブルないでなちの、こざっぱりとした男子学生が多い。実際、若者に人気のファッション誌『FINEBOYS』の読者モデルにも、明治大学の男子学生はたくさんいるという。先の女子学生はこう語っていた。

「明大男子は、みんなおしゃれだし、モテるって聞きます」

 男子の新入生にも話を聞いてみた。

「すごい髪の色の学生とかもいますが、実際にはちゃんと授業に出ていたりする。チャラそうなイメージがあるけど、そんなことはないよ、と後輩には教えてあげたいですね」

 チャラそうなイメージ? 明治が? だが、女子にしても男子にしても、これが明治の今のイメージなのだ。実際、青山学院や立教に近く、併願も多いという。ひと昔前とは、ブランドイメージが一変してしまっているのである。

 そして何より、今や明治大学は、圧倒的な人気を誇っているのだ。

 

8年連続で「高校生が志願したい大学」1位に 

 リクルートマーケティングパートナーズが調査している「高校生が志願したい大学」ランキングでは、関東エリアにおいて、明治大学はなんと8年連続で1位を獲得している。2017年こそ早稲田大学にトップの座を譲ることになったが、2009年以降ずっとトップを守り続けていたのだ。

高校生が志願したい大学(関東エリア)
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(出所)リクルートマーケティングパートナーズ「進学ブランド力調査」。

 しかも、8年連続で1位を獲得していた間、文系、理系ともに1位。男子、女子も1位という年がほとんどだった。ちなみにその前年の理系1位は東京理科大学、女子1位は立教大学だった。そこから明治が追い抜いて、それこそ「女子高生が最も行きたい大学」になっていたのだ。

 実は明治大学人気の躍進が、いちやく注目を浴びたのは、2010年、大学受験の志願者数が早稲田大学を抜いたというニュースだった。学部数も多く、“記念受験”も多いと言われる早稲田。1990年代は、マンモス校である日本大学と志願者数1位を争っていたが、その後12年間、不動の1位を誇っていた。

 90年代から2000年代にかけて5位前後にいた明治は、2007年に早稲田に次ぐ2位につけると、わずか3年で一気に抜き去ってしまった。人気が急上昇していったのだ。以後4年間、1位を続けた。

 今、明治の志願者数は4位に沈んでいるが、明治大学は意に介していない。志願者数ランキングがニュースになったことで、大学によっては、ただ志願者を集めるためではないか、と思える取り組みを推し進めたところもあるからだ。

 同じ受験料で何学部も受けられたり、受験科目を減らしたり。ここと同じ土俵で勝負する気はまるでない。代わりに重視しているのが、少しずつ公表され始めた「実志願者数」である。

 同一大学内でいくつも併願できるようになって、実際の受験者数がわかりにくくなっている。実数を公表していない大学では、「のべ志願者数」が志願者実数の約3倍もあるのだという。

 そこで、2005年に慶應が志願者実数を公表。早稲田、明治も公表を始めた。それによると、明治は立教はもちろん、早稲田をも上回っているのである。実志願者数のランキングになったら、果たしてどうなるか。

延べ志願者数と志願者実数(2017年)
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 (出所)『毎日新聞』2017年6月13日付、大学通信調べおよび明治大学資料を基に作成。

 

「MARCH」から「ARCH」へ変わった? 

 明治の人気の高まりは、長く“大学業界”で言われてきた定説をもくつがえそうとしている。首都圏の私立大学では、早慶上智に次ぐポジションとして、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)という呼び名があるが、ここから脱していこうとしているのだ。MARCHではなく、もはや“ARCH”になっているのではないか、と。

 東大合格者数トップ50高校の重複校数を調べたデータがある。東大の受験者が、どの私立大学を併願しているか、というデータだ。のべ53校の合格者のうち、32校が慶應を、31校が早稲田を重複合格しているが、次にランクされる14校で上智と並んでいるのが、明治なのだ。明治は今や、早慶上智と並んで、東大の併願校にもなっている、ということだ。

 同じデータを慶應を基準としてみると、延べ51校の合格者のうち、早稲田の合格校が43校、東大が32校、上智が29校、明治が26校重複している。

 私立大学では、早稲田と慶應で一つのグループができている。次は、上智と明治で次のグループができている、という可能性があるのだ。実際、受験生はそういう選択をしているのである。

 しかも注目したいのは、ずっと昔からそうだったわけではない、ということだ。明治大学教育支援部入学センターへの取材で聞いたのは、河合塾のデータによる明治と立教の比較だった。

 2005年度では、明治と立教、両方受かっていた学生は136人。うち、どちらかの大学に進んだのが58人。明治を選んだのは12人で、立教を選んだのが46人だった。立教に大きく水を空けられていたのだ。ところが、2015年度では、両方合格350人のいうち、どちらかの大学に進んだのは102人。明治を選んだのは62人、立教を選んだのは40人だったのである。この10年で、逆転現象が起きたのだ。

 実際、新入生の取材では、法学部の女子学生は中央と立教にも合格していた。法学部の男子学生は中央、法政にも合格していた。今は、これが高校生の選択なのだ。

 

戦略的に今のポジションを取りに行った明治大学

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 明治大学の変貌ぶりを取材して感じたのは、この20年ほどで他大学にはない特異なポジションを築いていったのではないか、ということだ。実際、単に女子が増えた、「おしゃれ」になっただけではないのである。サークルなどで女性リーダーがたくさん活躍していることもそうだが、伝統的な力、さらには実力をしっかりと維持しつつ、「おしゃれ」なイメージをも加味していったのだ。戦略的に今のポジションを取りに行ったのである。

 ポジショニングマップをつくるとすれば、図のようになるだろう。ただ、既存のイメージを強くしていくのではなく、自分たちがつくりたいポジションへと移動させていったのだ。

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 そんなことが可能なのか、しかも大学で、と思うかもしれないが、実際にこれが実現できているのである。結果的に、「おしゃれ」な大学でありつつも、軽い感じにはなっていない。しっかり実力を兼ね備えた安定感がある。そういう学校に行きたい高校生、とりわけ女子高生に高い支持を得るに至ったのだ。

 明治人気の高まりがささやかれるようになった頃、「あれはキャンパスにタワービルをたてたからだ」と語る人も少なくなかった。しかし、そんなことで人気が高まるなら、どこでも真似ができる。独自の特異なポジショニングを手にいれるために、明治大学はさまざまな努力を推し進めてきたのだ。次回、それをご紹介する。

【参考図書】

『あの明治大学が、なぜ女子高生が選ぶNo.1大学になったのか? 奇跡を起こすブランドポジションのつくり方』

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著者:上阪徹

出版社:東洋経済新報社

「東京とはまだ差がある」からこそ「関西ならでは」を追求するヤフー大阪オフィス

2017年10月に大阪オフィスを増床し、コラボレーションスペースやイベント・セミナー開催が可能なスペースまである新オフィスを開設したヤフー株式会社(以下、ヤフー)。エンジニアの田邉昭博はここを、関西のエンジニアやプログラマー、デザイナーが集まり、アイデアや情報を交流するハブにするべく活動しています。

※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。

 

大阪オフィスを、関西のエンジニアが集い、交流するハブに!

f:id:kashiemi:20171128160815j:plain▲エンジニア兼採用担当・田邉昭博

2017年10月、大阪にできた新オフィスで「関西のエンジニアやプログラマー、デザイナーがいつでも交流できるハブにしたい」と活動しているのが、エンジニア兼採用担当の田邉昭博です。

彼の肩書は「エンジニア」ですが、「関西でエンジニアの仲間を増やすにはこうするしかない」と採用活動を中心に動いています。といっても、ひたすら採用面接を行うわけではありません。技術に関心を持ち、新しいことにチャレンジしたいと考えるエンジニアが集う「場」を作ることを自らのミッションにしています。

その第1歩となるのがこの新オフィス。大阪周辺のIT企業で働く社会人はもちろん、広く関西エリアの大学生らが集い、それぞれのアイデアや情報を交換できる場にしていくつもりです。ともに大阪で働くヤフーの仲間もこの取り組みを応援。「ぜひこのテーマで話してみたい」と何人かが手を上げ、週1回のペースで勉強会を開催することになっています(https://yahoo-osaka.connpass.com/)。

ヤフーでは、学生を対象としたハッカソン「Hack U」を全国各地で開催しており、今後も外部の人々を対象に、門戸を広げていきます。

田邉 「開発が得意な人、企画が得意な人、いろんな人が集まり、ここに来れば大学などの枠を超えた仲間ができる、そんな場にできればいいなと。それが大阪や関西地域の活性化の一助になり、ひいては日本全体が元気になるーーつまり、『UPDATE JAPAN』になると考えています」

バックアップと開発、重要な役割を担う大阪オフィス

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田邉は関西出身。進学先も関西で、大学院では機械学習などの研究に携わりました。卒業後は「関西にはIT企業が相対的に少ない」という理由から、東京のソフトウェア会社に就職しましたが、「いつか関西に戻りたい」と思っていました。そしてヤフーに転職することに。

田邉 「ヤフー大阪オフィスでは、台風や地震などの災害や不測の事態に備えたバックアップとしても機能しています。ヤフーのサービスは、ほんとに困ったときに皆が見にくるサービスです。実際、何か災害があるとアクセス数は跳ね上がります。そんなサービスを止めるわけにはいきません。東京以外に拠点があることには、とても大きな意義があるんです」

もうひとつの役割は、新たなサービス開発の場です。東京側の指示に従って何かを作るというわけではなく、大阪のエンジニアが意見を出し合って企画を立て、実装し、サービス展開まで行っています。「Yahoo!天気・災害」はその一例で、これからも大阪や関西ならではの良さを生かしたサービス作りに取り組んでいきます。

2012年からそんな職場に加わった田邉。当初、思った以上に「真面目」な職場に戸惑ったこともありました。

しかし、転職を機に視野が広がり、これまで自分自身の中で「できない」と思い込んでいたことにもさまざまな可能性があると気付けたことが大きな収穫でした。また、住環境にも首都圏とは大きな「ギャップ」があります。

田邉 「家賃は安いし、通勤ラッシュもそれほどひどくありません。同じ給与なら、東京と比較して、はるかにいい生活ができると思いますよ(笑)」

募集しても人が来ないなら、人が集まる場所を作ろう

ただ、転職直後に痛感したのが、東京と比べIT企業が少ないということでした。ヤフーが大阪オフィスで働く仲間を募集しても、なかなか人が来ません。それ以前に、そもそもヤフーが大阪にオフィスを構えていることすら知らない、という人も少なくありませんでした。
そこで田邉は、組織の枠組みを超えた産官学にまたがるコネクション作りと、エンジニアが集える場の整備に草の根的に、けれど腰を据えて取り組みはじめました。

エンジニアでありながら採用活動に力を注ぐ、という大胆な働き方を可能にしたのは、ヤフーの文化です。ヤフーでは常に「じゃあ、あなたはどうしたいの?」と問われます。その答えが明確ならば、実現のためのリソースや機会、アドバイスの提供を惜しむことはありません。

田邉 「大阪に来てすぐのころ、上司に『やりたいことと、やるべきことは別だと思います』という話をしたことがありましたが、上司からは必ず『で、あなたは何をやりたいの?』と聞かれました。結果として、今自分はエンジニアなのに採用活動に注力する、というチャレンジに取り組ませてもらえているし、会社にも評価してもらっています」

「自分はこれをやりたい」と手を上げればどんどん協力し、後押ししてくれる職場ですが、逆に、受け身の人には向かないかもしれないと田邉は考えています。

田邉 「キャリアパスを自分で考え、それに会社のリソースをどう合わせるかを考えるのが苦手な人には向いていないでしょう。もちろん、訓練やアドバイスはあります。けれど最終的にどうしたいかを決めるのは自分です」

東京との差があるからこそ、大阪で仲間とともに場作りを

f:id:kashiemi:20171128160852j:plain▲社内での打ち合わせ風景

田邉は、大学訪問時の縁や研究室時代のつながり経由で、大学でプログラミングに関する講義も行っています。
興味や知識はあっても「場」に飢えていた学生に、「大学や学会だけでなく、こんなコミュニティーもある」と世界を広げる役割——。受講生の中には女子学生もおり、とかく女性の少ないエンジニア業界でダイバーシティを広げる一端を担っています。

講義を通じて、プログラミング自体の楽しさに加え、「激務」と見られがちなIT業界だけれどヤフーでは実はそんなことはない、という事実も伝えています。

実際、ヤフーの勤務環境はかなり柔軟です。在宅に限らずオフィス以外での勤務が可能な「どこでもオフィス」(月5日まで利用可)のほか、介護や育児などの事情がある社員は週休3日など、さまざまな制度があります。加えて「何かあったときには助け合えばよい」と思える文化も根付いています。

田邉自身、「どこでもオフィス」をフル活用し、通勤が不要になって浮いた時間で新たな技術について調査したり、論文を読み込んだりしています。

田邉 「自宅などで仕事をするときには、集中する必要のある調べ物や資料作成などを、オフィスに来たら他のメンバーとコミュニケーションしながら企画を立てたりしています」

現時点(2017年)ではまだ、東京と比べると、エンジニアとしてスキルアップする機会には差があります。でもだからこそ、仲間たちとともに場を作り、その差を埋め、楽しく開発できる場所にしていきたい。田邉はそう考えています。

田邉 「自分らしくキャリアを積み上げていけるのは、IT業界ならではのいいところです。これは決して東京じゃないとできないわけではない。それを証明したいですね」


まだまだ成長途上のヤフー大阪。この場所で、田邉やヤフーのメンバーとともに、「現地ならでは」のウェブサービスが生まれる瞬間に立ち会ってみませんか?

 

会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table

 

「週3日会社員、週4日ダンサー」という働き方~“踊る広報”が今の働き方を手にいれたワケとは?

「私、ダンスをしたいので会社を辞めます」。

柴田菜々子さんは、今から約3年前、勤務先企業の社長にそう告げました。
社長から返ってきた答えは、「ダンスと仕事、『or』ではなく『&』で実現する方法を考えてみないか」。
ここから、週3日は社員として広報を担当、週4日はセミプロダンサーとして活動…という「パラレルキャリア」がスタートしました。

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この働き方は、どんな工夫によって実現し、運用する中でどんな課題が生まれ、どう乗り越えてきたのでしょうか。
株式会社ビースタイル 広報ブランディングユニット しゅふJOB総研研究員 柴田菜々子さんと、しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長 川上敬太郎さんにお話をうかがいました。

※お2人は、この秋に開催された『NPO法人キャリア権推進ネットワーク ワールドカフェ2017』に登壇。そこで語られたお話をご紹介します。

「得意な業務」に特化し、パフォーマンスの最大化を目指す

柴田さんは8歳から新体操を始め、中学時代は全国大会に出場。大学では演劇学科でコンテンポラリーダンスを専攻しました。
大学卒業時には、プロのダンサーを目指すか就職するかで悩み、「世間知らずの大人になってはいけない」と、とりあえず就職活動を開始。「面白そう」と感じて入社を決めたのが株式会社ビースタイルでした。

ビースタイルは、主に「主婦」の就業を支援する人材サービス会社。家庭と仕事の両立を図りたい主婦に派遣の仕事を紹介する『しゅふJOBスタッフィング』をはじめ、主婦に特化した求人媒体『しゅふJOBパート』、高度なキャリアを持つ主婦が専門性を活かして働ける『時短エグゼ』などのサービスを展開しています。
柴田さんは広報部門に配属され、フルタイムで勤務。一方、大学在学中に結成したダンスチーム『TABATHA(タバサ)』にも所属し、週末にはダンス活動を続けていました。

しかし2年が経つころ、もっとダンスに集中したいと考え、社長に退職の意思を告げたところ「両立できる方法を探ろう」と提案を受けたのです。

f:id:kashiemi:20171130101949j:plain▲広報ブランディングユニット しゅふJOB総研研究員 柴田菜々子さん

柴田さん「まずは、ダンスの定期公演やコンテストのスケジュールから、ダンスの練習や出演準備に必要な時間を算出しました。そこで『週3日勤務ならできる』と申請したんです。『週3日でもこれまでと同水準の成果目標を追う』という決意を伝え、会社から応援してもらえることになりました。次に、自分が普段行っているすべての業務を洗い出し、各業務にどれくらいの時間がかかっているかを整理。中小ベンチャーなので、幅広い業務を担っていましたが、広報の仕事のみにしぼらせてもらうことにしたんです。そして、広報業務の中でも得意な業務・不得意な業務を切り出しました。例えば、リリースの文章を書くより、人に会って伝える方が私は得意。週3日で最大限のパフォーマンスを挙げられるように、得意な業務を中心的に担うことになったんです

上司のサポートを受け、手が足りない部分はアウトソーシングを活用。最初は苦戦したものの、リズムをつかむにつれて成果を挙げられるようになったそうです。

業務の幅が広がらない…。上司が講じた打開策とは?

そして1年が経つころ、川上さんが柴田さんの直属の上司となりました。川上さんはもともと柴田さんの上司でしたが、週3勤務を始めるタイミングでは別の部門に異動しており、1年を経て再び直属となったのです。

f:id:kashiemi:20171130102004j:plain▲しゅふJOB総研所長 兼 ヒトラボ編集長 川上敬太郎さん

川上さん「うまくやれているし、成長もしていて、たくましく感じました。でも一方で、『業務の幅が広がっていない』というところに不安を抱いたんです。このままいくと柴田は、5年後10年後も同じことをやっているんじゃないか、と。もっと将来の可能性を拡げられる役割を与えるべきではないかと思いました。でも、そこで葛藤が生じました。新しい役割に無理にチャレンジさせて、成果が挙がらなければ、社内での評価が落ちてしまうかもしれない。彼女は新しい働き方のパイオニアでありロールモデル。彼女が失敗すれば、これから同じような働き方を望む人の可能性をも奪ってしまうことになりますから」

悩んだ結果、川上さんは「やはりチャレンジさせるべき。負荷をかけていこう」と決断しました。

川上さん「新しい業務を任せ、ピンチのときもギリギリまで助けない。自分で答えを出させるようにしました。すると工夫して何とかやっていっている。その様子を見ながら、潰れるかな、乗り越えられるかな、というラインを見極め、少しずつ可能性を拡げていくようにしたんです」

川上さんからのそんな処遇に対し、柴田さんは「嬉しかった」と言います。

柴田さん 「自分でも危機感を抱いていたんです。5年後10年後に、同期と大きな差がついてしまうんじゃないか、って。1年経ってペースにも慣れ、足踏み状態が続いていた時期だったので、新しいことにチャレンジしたい気持ちがありました。でも、週3日勤務で会社に置いていただいている身で、成果が出せるかどうかもわからないことに手を出していいものか迷っていて。だから、チャンスを与えてもらえるのはありがたかったですね。私は根が怠惰なんです(笑)。『ここまででいいよ』と言われると、『これでいいか』になっちゃうタイプ。でも、目標を上に置かれると追いかけたくなる。体育会系ですからね(笑)」

週3日勤務、どう評価する?

「週3日勤務だけど、フルタイム同等の目標を追う」と約束した柴田さん。しかし、広報職は営業のように数字で成果が出るわけではありません。川上さんはどのように評価しているのでしょうか。

川上さん 「目標をどこに置くか、最初に共有します。ただ、成果とは何かの拍子で簡単に出ることもあれば、どんなに努力しても出ないこともあります。だから、プロセスはしっかり見ますね。例えば、日報はちゃんと出してもらう。そこは、できてなければ厳しく言います。『すべき報告をちゃんとしなければ、僕は正しい評価ができないよ』と。プロセスが見えていればそれに対して評価するし、努力していても成果につながらないのはマネジメントに問題があるその場合、自分が代わってあげて成果を出すのではなく、彼女が成果出せるような道筋をつけます

柴田さん 「成果に対するコミットは、週3日勤務になってより強くなったと感じています。自分が好きなことをするためにこの働き方を認めてもらって、それで成果が挙がらないのでは居づらくなるし、周囲の皆さんにも申し訳ないので。週3日勤務でフルタイムの成果を出せば、仲間たちにも認めてもらえるだろう、と思うんです」

川上さん 「周囲の目も、柴田が特別に優遇されている…ということではなく、誰でも『成果を挙げている人は、自分の好きなことと両立もできる』という意識に切り替わってくれるといいですね」

広報職とダンサー。両立させることで相乗効果も生まれているといいます。

 柴田さん 「『踊る広報』というキャッチフレーズを川上がつけてくれて(笑)。それによってメディアの方々に覚えてもらいやすくなりましたし、『ビースタイルって柔軟な働き方ができる会社だよね』と認知してもらえていると思います。ビースタイルは、世の中の女性たちが自分らしく働けるよう支援することを事業としている会社。まず自社で実践していることの証明にもなります。そして、私自身のメリットとしては、オンオフのメリハリがついていること。ダンスは私の精神安定剤なんです。ダンスにのめり込める時間を確保できることで、仕事に対して切り替えやすくなります。『ちゃんと仕事しなければ、大好きなこの時間はもらえない』と、仕事へのコミットができるんです

川上さん 「ダンスじゃなくても、人それぞれに大事にしたいことがある。趣味の時間もそうだし、家族との生活もそうです。仕事以外の好きなことに打ち込めてこそ仕事も頑張れるし、仕事で成果を挙げているから、それ以外の時間も充実したものになる。上司として会社として、そんな循環をつくっていくことが大切だと思います」

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EDIT&WRITING:青木典子 PHOTO(インタビュー):平山 諭

 

ビール好きに愛される球場はこうして生まれた--埼玉西武ライオンズがアメリカの“球場体験”を取り入れたワケ

2016シーズンから西武プリンスドームに導入された海外クラフトビール。日本初となるこの試みには「ワールドビアエンターテイメント」という当社の理念が込められています。参入障壁が高いとされる球場への海外クラフトビール導入は、いかにして実現されたのか。その裏側には、当社(モルソン・クアーズ社)、そして埼玉西武ライオンズの熱い想いがありました。

※本記事は、「PR Table」より転載・改編したものです。

「ビールの新しい楽しみ方を提案したい」 共通の想いが引き起こした化学反応

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「ワールドビアエンターテイメント」という理念を掲げ、日本に海外ビールなどを輸入・販売しているモルソン・クアーズ・ジャパン(以下、MCJ)。日本ではZIMAやCoors Lightが知られていますが、モルソン・クアーズ社を語るにあたって、“野球”の2文字を外すことはできません。

なぜなら、コロラド・ロッキーズの本拠地として知られるクアーズ・フィールドの球場名は、モルソン・クアーズによるもの。昔からモルソン・クアーズにはベースボールとの深い関わりがあったのです。同社でクラフトビール「Blue Moon」のブランドマネージャーを勤める小林弘樹は、以前よりこの関係性を大切にしていました。

小林「“野球”はアメリカ本社との共通言語。ベースボールスタジアムで新しいことがやりたいと提案すると、グローバル全体でバックアップしてくれますし、MCJらしいエンターテイメントを提供できると思っていました」

小林が埼玉西武ライオンズと初めて出会ったのは2015年10月のこと。同社が青山にオープンしたポップアップバルにライオンズのSV(スーパーバイザー)と共に加藤大作さん、荒木浩基さんが訪れ、Blue Moonを体験します。

ちょうどその頃、荒木さんは観客のサービス向上のためにできることはないかと施策を考えていたそうです。

荒木「球場で販売しているビールは国内メーカーのものが主流です。しかし、観客の満足度を考えると、もっといろいろな種類のビールが楽しめる環境があってもいいんじゃないでしょうか

日本の野球場にビールの新しい楽しみ方を提案したいーー。そんな共通の想いによってつながったMCJと埼玉西武ライオンズ。その出会いが契機となり、MCJの小林と佐々木英俊、埼玉西武ライオンズの加藤さん、荒木さん主導のもと、日本初となる球場への海外クラフトビール導入プロジェクトが始動します。

観客の満足度向上のために何ができる? アメリカの球場視察で見えたコト

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そもそもクラフトビールとは、その名の通り、小規模な醸造所でビール職人が精魂込めて造っているビールのこと。職人が造り出す高品質なビールを「手工芸品」にたとえて、クラフトビールと呼びます。

味わいは素晴らしいが、とても繊細なクラフトビール。それを国内球場にレギュラー導入した事例は過去にありません。さらにすでに参入しているメーカーとの密接な関係も配慮する必要があり、一見して非常に参入障壁が高いように思われました。

しかし、プロ野球全体のビジネスモデルの変遷により、そうとも言っていられない状況になっていました。球団自体できちんと収益を上げられるよう、顧客の満足度向上のためにさまざまな施策を考え、実践する必要性が出てきていたのです。

加藤さんは2010年から営業企画を担当するマネージャーとして、シーズンシートオーナー向けのサービス向上や球場の改修に着手してきました。しかし2015シーズン終了時に考えていたのは、いかに「ボールパークエクスペリエンス(試合以外の楽しみ、思い出)」を向上させることができるか、ということ。

これまでと違った野球の楽しみ方を見つけるために、加藤さんは実際にアメリカを調査訪問。4~5つの球場を回り、現地に行かなければわからない、国内球場との違いを痛感することになります。

加藤「球場内でのビールの楽しみ方が、アメリカと日本では大きく違うことがわかりました。アメリカの人たちは試合をスタンドにずっと座って観戦しているわけではなく、ときには外周通路のビアバーでビール片手に仲間と談笑しながらもっと気楽にベースボールを楽しんでいる。その光景を日本にも持って帰りたいと思ったんです」

そんな思いを抱えて、帰国したときに出会ったのがMCJの小林と佐々木。2人から提案されたのは「“液体”ではなく“体験”を提供しよう」という想いがこもった企画でした。

佐々木「『こういったものを売らせていただきます』ではなく、『僕たちが提供できるエンターテイメントはこれです』という提案にしました。ビールという“液体”を売るためにどうするかではなくて、お客様を喜ばすエンターテイメントとして、こんな“体験”が必要なはずだと」

小林と佐々木が提案したのが、「海外クラフトビールを楽しめるバー、そして本場MLBの球場の周りにある名物スポーツバーを西武プリンスドームに!」というコンセプトでた。

この提案を埼玉西武ライオンズ側が快諾。最高のエンターテイメントを提供するために、世界観をどうするか……など緻密な打ち合わせを重ね、2016年3月末の開幕に向けて猛スピードでボールパークエクスベリエンスを体験できる店舗の立ち上げに動いていきます。

ついに迎えたプロ野球開幕!想定以上の行列に「感無量」

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半年間という限られた時間の中、ビールの提供方法、メニュー、空間のすべてを究極までこだわり抜いた両社。たとえば、Blue Moonが導入されている新店舗「L's CRAFT」には芝生エリアが設置されるなど、実現したい世界観への徹底的なこだわりがあります。

また、「L's CRAFT」「L's SPORTS BAR BRICKS」のカップだけ、球場内で使用されているビール用カップとは異なります。特にBlue Moonの最大の特徴は、その色。一般的なビールとは違い、オレンジがかった色合いを最大限楽しんでもらうために、L's CRAFTで提供されるBlue Moonは透明のカップに注がれます。

このように、観客に最高の“体験”を提供するために、両社とも妥協することなく細かい部分にまで強いこだわりを見せました。

そしてもう1社、これら新店舗の空間づくりの裏には欠かせなかった、株式会社ヒーロー。
国内でBBQといったら右に出る者はいないオペレーション・ノウハウを持っている彼らも、私たちと同様に「エンターテイメント性」を何よりも大事に、コストではなく、お客様を楽しませることを第一に考えてくれました。

荒木「普通であれば、ピザは焼いたものを置いておくだけで終わりですけど、彼らは見せることの楽しさがお客さまへのアピールになると知っていました。だから『焼いているシーンが見えるように、ピザ釜をいれましょう』と提案してくれたんです」

エンターテイメント性を何よりも重んじる3社が手をとって、立ち上げた日本初の海外クラフトビールを導入した新店舗。2016年3月25日のパ・リーグ開幕と同時に、ついにお披露目されることになります。

佐々木「「開幕前日はドキドキでしたね。本当にお客さんは来てくれるのだろうか、そんな思いばかりが頭の中にあったのですが、蓋を開けてみれば初日は超満員。観客がお店の前に行列を作っている光景を見て、まさに感無量でした」

しかし、喜びも束の間。想像を超える行列ができた一方で、すぐに課題点も見つかります。

小林「窯焼きピザということで、提供にどうしても時間がかかってしまう。だからお客様を待たせないように、フードコートなどにある料理が出来あがったらピピっと鳴るセンサーを導入してもらいました。今では行列を作らず、料理が出来るまで試合を観ながら待ってもらえています」

こうした改善案に対し、埼玉西武ライオンズ側も柔軟に、かつ早急に対応してくれています。だからこそ、より良い「ボールパークエクスペリエンス」の提供を実現できているのです。

クラフトビールをもっと身近にする「スポーツ×ビール」の可能性

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こうした努力が身を結び、新たにオープンした両店舗は昨年比170%以上の売り上げを実現しています(2016年6月現在)。

日本にはなかった「ボールパークエクスペリエンス」を本場アメリカから持ち込もうと考えた埼玉西武ライオンズ 加藤さん。その最初の試みは、ライオンズのファンに受け入れられました。

そして、まだ表面化はしていなくても、観客が求めている“体験”はまだまだ存在します。MCJの小林は、西武プリンスドームに実際に足を運ぶことで、それを確信しています。

小林「スタートは成功していますが、実際に現場に出ることで気づく発見もあります。これまで使われていなかったテーブルの高さを20cm変えてみたら使われるようになったり、試合が5~6イニングに進むとビールを飲む観客が少なくなっているように見える。そこに対して、何か新しい“体験”を提供できると思うんです」

半年という限られた準備期間ではじまったプロジェクト、改善点はあって当然です。より優れたお店づくりに向けて埼玉西武ライオンズ、そしてヒーローと協議し、日々新しいアイデアが生まれています。

これまで日本の球場にはなかった、Blue Moonなどクラフトビールを球場内に導入した今回の試み。まさにモルソン・クアーズ・ジャパンが掲げる「ワールドビアエンターテイメント」 という理念を体現したものです。

しかし、このプロジェクトのゴールはまだまだ先。「スポーツ×ビール」のように、アメリカ、そして海外にはもっと多様なビールの楽しみ方があり、多様なエンターテイメントがあります。それを発信していくことで、クラフトビールという選択肢を、日本の大人に届けるのが私たちのミッションです

“液体”ではなく、“エンターテイメント”を提供するーーその想いはブラさず、西武プリンスドームからはじまったこの動きが、日本全体に浸透していく未来を創っていきます。

会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table

 

 

15時~24時勤務…飲食業で「女性」が長く働き続けるためには?2人の社員が立ち上がり、解決に挑む

「竹取御殿」「柚柚~yuyu」などの居酒屋や、江戸割烹、イタリアンなど多彩な業態の店舗展開で、国内トップを走るアンドモワ株式会社。「お客さまも従業員も、ワクワクできる場を作る」ことをモットーに掲げる同社で、女性従業員を中心にした新たな取り組みが始まった。そのスタートが10月23日に開催された『女子店長会』だ。

全国各地から集まったのは、店長や営業事務など、女性ばかり総勢20名。ときには女性ならではの本音も飛び出しつつ、日ごろの店舗運営の悩から、理想のサービス・働き方まで、幅広い内容でディスカッションが繰り広げられた。

同社でなぜこのような女性店長だけの会が企画されたのか。 プロジェクトリーダーである杉谷さんと鎌田さんに立ち上げに至るまでの苦労や想い、アンドモワとして今後目指していく方向性をうかがった。

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▲右:アンドモワ株式会社 社長秘書室 秘書 鎌田さん、左:アンドモワ株式会社 西日本統括本部 人事担当主任 杉谷さん

キッカケは社員の情熱。女性が「ワクワク」できる会社を目指して

最初にこのプロジェクトを発案したのは、大阪勤務で人事担当主任でもある杉谷さん。きっかけは平成27年に成立した「女性活躍推進法」だったという。

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杉谷 私自身、2度の育休を取得し、子育てしながら働いていることもあり、この法律には興味を持っていました。また人事担当としての必要性もあって勉強していくうちに、女性が輝いている会社ほど成績も伸びているというデータがあることを知り、弊社でも女性が働きやすい環境を整備する必要性を感じました。さらに女性が集まって一緒に動いたときの影響力を活かすことで、お店のサービスの面でも向上が期待できるのではないか。そんな発想から、女性店長が集まる場を作りたいと思ったのです。

 

ちょうど同じ頃、社内で女性店長の交流の場を作ろうという動きもあった。そこでふたつの企画を一体化。さらに社長室秘書という、会社の中枢にもっとも近い場にいる鎌田さんを巻き込み、それぞれが東京と大阪のリーダーという形でプロジェクトがスタートした。

就業時間が15時~24時…飲食業が好きでも、「女性が働き続けるのは難しい」という現実

そもそもなぜ“女性だけ”なのか。実はアンドモワが展開する全国320店舗のうち、女性が店長を務めるのはわずか20店舗。もちろん女性の登用を避けているわけではないし、女性に飲食業が向かないわけでもない。むしろ女性ならではの気配りやサービスが接客に役立つ場面も少なくない。しかし実際はほとんどの女性が、結婚や出産を機に退職したり、現場から退いてしまう。そこには飲食業ならではの特殊な事情があると鎌田さんは言う。

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鎌田 弊社にも産休や育休の制度はあるのですが、店舗勤務の場合、就業時間が15時~24時ということもあり、結婚・出産後もお店で働くという夢を描きにくいのが実情です。私も以前お店でアルバイトをしていたのでわかるのですが、接客業って本当に楽しい。でも、そんな意欲も能力もある女性が、結婚や出産で現場を離れざるを得ない現状はなんとかしたい。そのためには新しい制度の構築が必要です。幸い、社長からも「どんどんやれ」と応援していただけたので、私たちふたりを中心に、3名のサポートメンバーも加わってプロジェクトチームが発足。月1回のミーティングを重ねながら企画を詰め、今回の実現に至りました。

 

もちろん、これまでも店長同士の交流の場は定期的に設けられていた。しかし圧倒的に少数派の女性店長にとって、そこで発言するのはかなりハードルが高い。今回の集まりでも、冒頭はなかなか発言が出ず、司会を務めた鎌田さんもひやりとしたそう。しかし、ひとりの店長が本音を漏らしたのをきっかけに議論が白熱。特に議論が盛り上がったテーマの一つが「理想の店舗」について。女性ならではの視点から理想の店舗とは何なのか、より深い議論に繋がっていった。

女性だからこそ、お客様の気持ちがよくわかる…ということは実際にあるように思う。例えばお店が汚いなと感じたら、お客様は二度と来ない。特にトイレ。きちんときれいに保たれているかは女性の方がやっぱり気づく場面が多い気がする」

 

「それは確かにある!汚いお店にならないよう、いい状態を保つためにクルーにどう気持ちよく働いてもらうか…それが今私の課題です。なかなか通じないこともあって困ってます」

 

「それ、わかります!特に若い男性クルーに対してどう伝えればいいのか、いつも苦労したりします」

理想の店舗を作るために、どう働く人を巻き込んでいけるのか…女性だけで忌憚ない意見が交わされた今回の女性店長会は本当に参加者にとって貴重な場となったようだった。

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鎌田 最初のぎこちなさを見ていて、女性の中にも「声を上げてもどうせ届かない」という思い込みがあるのかもしれないと感じました。

杉谷 ふだん現場の人たちがどんなことを感じながら仕事をしているか、本音に近い声を聞くことができ、本部にいる私たちにとっても貴重な体験でした。

 

最後に、九州から参加していた大川エリアマネージャーが「飲食店のサービスには男女は関係ない。会社としてまだまだ形が定まってないからこそ女性ならではの目配りと接客で、より良いサービスを提供したり、クルーを育てたり新しいことができる。きっと今が一番楽しいとき!みんな悩まないでポジティブに!」と挨拶し、締めくくりとなった。

「飲食業でも、アンドモワなら仕事と家庭を両立できる」が理想

今回の議論の成果を社に持ち帰り、今後の施策につなげると同時に、この会を定例化していきたいと意気込むふたり。その先にはどんな目標があるのだろうか。

 

杉谷 女性目線での気づきや気配りを、お店のサービス面でも活かしていくのが最終的な目標です。男性はもちろん、女性も生き生きと働ける環境になることで、お客さまにもより良いサービスが提供できるようになり、満足度にもつながる。そういういい影響が生まれていけばうれしいですね。

鎌田 実は今、女性店長で初めて産休を取っている人がいて、彼女は産休後も現場に復帰したいと言ってくれていています。その女性店長が復帰したら私たちもバックアップしていきたいし、彼女の体験を活かしながら、他の若い女性たちが後に続くことができる環境を作りたい。すべての女性が、「アンドモワなら、子育ても現場の仕事も両立できる」と思ってもらえる会社にするのが理想です。

 

厚生労働省の調査によれば、女性の育休後の復職率は83%(平成25年度雇用均等基本調査)。しかしこれには退職後に出産した女性は含まれないため、実際に出産後も同じ会社で継続して仕事を続けている女性は4割程度ともいわれている(国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」)。まして深夜勤務が当たり前の飲食業界で、女性の働き方をどのように支えていくのか。女性による、女性のためのプロジェクトの今後に注目したい。

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取材・文/小野千賀子 撮影/石山慎治

3人の“イクメン”エンジニアが体感した、男性社員が育休を取得しやすいカルチャーの正体

3.16%——これが、2016年度雇用均等基本調査で明らかになった、日本の男性の育休取得率。お世辞にも「多い」とはいえない数字です。そのような中、モバイルファクトリー代表の宮嶌裕二は2017年10月、二度目の育休を取得しました。当社には、育休や育児時短を取得しやすいカルチャーがあるのです。

※本記事は、PR Tableより転載・改編したものです。

社長の幸せそうな姿に背中押されて——。育休取得を決断した3人のエンジニア

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▲左から、小林謙太・木村岳文・青柳智也

私たちモバイルファクトリーの育休取得男性1号、それはほかでもない代表取締役の宮嶌裕二でした。

宮嶌は2013年11月から2週間の間、育児に専念。そのときの体験を嬉しそうに語る代表の姿を見て、モバイルファクトリーの数人の男性社員たちは、あることに気づきます。

「男性が育休取っても大丈夫なんだ……!」

その機会がいち早く訪れたのは、インフラチームのマネージャーを務める木村岳文。子どもが保育園に入るタイミングの2014年3月から5月末まで3ヶ月間、育休を取得しました。

木村 「宮嶌が先に育休を取っていたので、育休への抵抗はありませんでしたね。妻の職場の復帰をスムーズにするため妻が育休を明けるタイミングで、入れ替わりで育休をもらいました」


一般的に、宮嶌や木村のようにマネジメント職が長期の休暇を取得する場合、裁量権の所在が悩みのタネとなります。果たして自分が今離れて、チームは機能するのだろうか……? 2016年1月から1ヶ月間、マネージャーになった直後に育休を取った小林謙太にも、葛藤がありました。

小林 「育休取得のタイミングは非常に迷いましたね……。プレイヤーからマネージャーになったばかりで自分自身も手探りでしたので。ただ、子どもが育つ時間は二度と取り戻せない時間だと思い立ち、決断しました」


このように先輩社員が続々と育休を取得していく中、「時短勤務」という道を選んだ男性社員もいます。青柳智也は2016年7月から9月にかけて、9時半〜16時半の出社時間を続けました。

青柳 「サービスを作りはじめのタイミングだったので、完全に休む決断もできなかったです。プレイヤーとして遅れを取るのでは、という懸念もありましたね。上長にはむしろ育休を推奨されましたが(笑)」


社員それぞれが悩みや葛藤を持ちながらも、先輩“イクメン”の姿に背中を押され、仕事と家庭のバランスを調節することに。しかし、このとき彼らはまだ“育児”を甘く見ていたのでした……。

仕事のほうがよっぽど楽だった……イクメン3人の育児奮闘記

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▲それぞれの育休中の様子

掃除・洗濯・炊事・授乳・便の処理……。育休を取得して奥さんが職場に復帰してから、木村は“専業主夫”として日々奮闘します。

木村 「こんなに大変だったのかと驚きました。育休前は、読みたい本や開発したいアプリなど“育休中にやることリスト”を作っていたのですが、細切れな時間しか確保できず、何ひとつ手をつけられませんでした。『休』とつくけど休みじゃないなと(笑)」


悩みながら育休を取得した小林にとっても、育児は仕事よりもずっと大変なものとなりました。位置ゲーム『駅奪取』をV字回復させたPMは、幼い我が子に翻弄されます。

小林 「仕事の情報もキャッチアップしていたのですが、まったく仕事はできませんでしたね。泣き声という『アラート』が3時間ごとに来るんです。エンジニアをしているときの深夜対応より大変でしたよ(笑)。夫婦というチームで動く大切さを実感しました」


育児以外のことにはまったく手がつけられなかったという2人でしたが、時短勤務の青柳はそういうわけにもいきません。職場と家庭、両方でパフォーマンスを発揮する必要があったのです。

青柳 「時間が限られているぶん、タスクをだらだらやらなくなり、集中できる環境を整えることを意識するようになりましたね。チャットを開かずに目の前の作業だけに専念する時間を設けたりして。また、オフィスにあるスタンディングテーブルは周りの景色も変わって集中できるので、今でもよく利用しています」


子どもの面倒を見るためには残業できない。青柳は3ヶ月間、これまでにない時間的プレッシャーの中で業務を続けました——。

育児休暇は、一般的なイメージの「休暇」とは異なります。業務時間が決められている「仕事」と違い、自分の持っているすべての時間は家族のために使うこととなるのです。怒涛の日々を思い出し、3人は振り返ります。「仕事のほうがよっぽど楽だった……」と。

仕組み化と効率化、そして育児への責任感——育休を通して身につけたもの

そんな日々が明けて職場に戻った木村ですが、久々に戻るチームには何の不安もありませんでした。なぜなら彼は、リーダーである自分がいなくても、ある程度自走できることを確認したうえで育休を取得したからです。

木村「育休に入る前、私個人の判断に紐づいていたプロセスを仕組み化していましたからね。育休が『仕組み化』のきっかけになったんだと思います」


モバイルファクトリーは会社では、属人的な仕事よりも、仕組み化されている仕事が奨励されます。代表である宮嶌が2週間の育休を取得できたのも、この仕組み化が徹底化されていたためです。

このような「社長がいなくても回る会社」「マネージャーがいなくても回るチーム」が、男性の育休取得を実現するカギになったことは間違いないでしょう。

他方、育児によって可処分時間の不足を感じることも。小林はこれまでは当たり前のようにあった、「インプット」の時間確保に苦慮しました。

小林「子どもが生まれてまとまった時間を取れなくなりました。平日深夜や休日もすべて子どものための時間に変わったわけですから。でも今は、それでいいかなとも思っています。マネジメントする立場になって、自分がすべてを学ぶ必要はない、メンバーが学習したことを教えてもらおう、と」


そんな小林は社外でおこなわれた技術カンファレンスに登壇した際、育休取得についてスピーチをしています。その内容は、「育児の責任者は“夫”と“妻”の両方」だということ。小林にとっては、技術を磨くこと以上に、このような人間力を磨いていくことが大事なのでしょう。

時短勤務を取得していた青柳は、通常勤務になってからも子どものために会社に遅くまで残らないように努力しています。そのため小林同様、自己学習にあてられる時間は短くなりましたが、代わりに得たものもあります。

青柳「育児に対する強い没入感です。育児時短を取っていなかったら、妻に任せきりになっていたと思います。だから育児時短中に、一緒に子どもの話をしたり、妻に休んでもらったり、家事をやったりという経験はしといてよかったなと」


育休・育児時短を取得して仕事と家庭両方において、3名の男性社員の意識に変化が現れました。そして2017年10月、そんな彼らに続くように、宮嶌は約4年ぶりに再び育休を取得します。

育休取得によって生産性アップへ——宮嶌が二度目の育休を取得する理由

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▲代表取締役 宮嶌裕二

モバイルファクトリーは従業員数100名規模(2017年現在)でありながら、すでに宮嶌含む5名の男性社員が育休・育児時短を取得、それも宮嶌と木村はそれぞれ2回の育休経験となります。

冒頭に述べたように、男性の育休取得に対する社会の理解がまだまだ乏しい中では、比較的育休を推奨しているといえます。その空気を作ったのは、やはり代表である宮嶌です。

宮嶌 「経営のトップが育休を取ると、やっぱりみんな育休を取りやすくなりますよね。周りの男性が取っていれば、自分も、となるでしょう? そういう雰囲気を作ることが重要。だから私はむしろ率先して育休を取るのです」


また、宮嶌は育休取得に大きなメリットを感じています。それは、すでに3名の男性社員が語ったメリットと同じことです。

宮嶌 「私自身、育休を取ったことで、以前よりも生産性が向上しました。これから育休を取得する社員にも、そのような効果を期待しています。もちろん、奥さんの負担減や家庭円満のためにも取ってほしいですけれどね」


今回紹介した長期育休の取得により、育児休業をしている男性社員は、66.7%(2016年)となっております。そして、モバイルファクトリーの2016年の有給休暇取得率は91.9%(平均有給取得日数12.8日)と、前年(2015年)の78.1%を大きく上回ることができました。

このような働き方改革が進む中で、今後私たちが目指していくのは「就業時間の短縮」。そのために、育休による業務効率化はきっと大きな鍵となるでしょう。

 

会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table」

定食屋のスタートアップ「未来食堂」が、飲食業界の定説を覆す!?

未来食堂の創業者である小林せかいは東工大数学科卒。かつては日本IBM、クックパッドのエンジニアでした。そんな彼女がお店に込めた想いと、飲食業界の定説を覆す、逆転の発想の数々をご覧ください。

※本記事は、PR Tableより転載・改編したものです。

飲食業界への疑問から生まれた未来食堂

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東京・神保町にひっそりとオープンした一軒の定食屋さん。ここのコンセプトは「あなたの“ふつう”をあつらえます」というもの。2015年9月に開業したのですが、創業者の小林せかいが「お店をやるんだ」と決めたのは15歳の時。なんと16年も前から、未来食堂の開店準備ははじまっていました。

小林は1984年生まれ。東工大理学部数学科卒業後は日本IBMにエンジニアとして入社した後、クックパッドへエンジニアとして転職。計6年間エンジニアとしてのキャリアを積み重ねました。退職後にチェーン飲食店や老舗仕出屋などで修行を積み、「未来食堂」を創業。というのも、小林には飲食業界で挑戦したいことあったのです。

小林 「飲食業界では同じものをいつでも提供できることが一般的なモデル。でも同じものじゃなくても、要はおいしいものが出せればいいと思うんです。たとえば、『クックパッドのユーザー投稿レシピの1位を看板メニューにするお店』とか『店舗メニューのレシピを配ってお客さんが真似し放題のお店』なんて面白い。一旦常識の枠を超えると、どんどん新しいカタチが見えてきました」

未来食堂のオープン前から小林は、「なぜレシピを隠すのか」「なぜ毎回同じものを提供すべきなのか」「そもそも、なんでメニューってあるんだろう?」という独特な視点から、いまの飲食業界に疑問を持っていました。そして2015年9月、未来食堂が誕生。お察しの通り、このお店には従来の飲食店とはちょっと違う特徴があるのです。

特別感と効率性を両立する「あつらえ」

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まずは未来食堂のコアメッセージである「あなたの“ふつう”をあつらえる」ということについて。「あつらえ」とは、注文して作ってもらう、いわばオーダーメイドのこと。未来食堂には「おすすめ」がありません。

お店が提案する”美味しさ”ではなく、お客さんが食べたい・おいしいと思うものを一緒に作るのがここのシステム。壁紙に記載している食材からお客さんが選び、気分や体調に合わせたリクエストができます。

小林 「『あつらえ』 は 『おまかせ』よりもユーザー目線に立った在り方です。従来の飲食店では常連にならないと叶わなかったオーダーメイドを、わかりやすい価格(+400円)で誰でも頼むことができます」

「個人の要望に応えて作るなんて非効率だ」と思うかもしれませんが、実際は非常にロスの少ない、飲食業界の定説を覆す、画期的なビジネスモデルになっています。

小林 「固定されたメニューにすると、1個食材が足りないだけで買い出しに行く必要があったり、どこかで必ず破棄が出ます。でも『あつらえ』は、今日の冷蔵庫の中身を紙に書けばメニュー完成です。あるもので作るので売り切れのメニューもなく、在庫もゼロ。残った食材は次の日のおかずにも使えます」

つまり、その日のお店の冷蔵庫に入っているものから食材を選んでもらい、それを使って調理するだけ。未来食堂のロス率はほぼゼロです。

また、ロス率を下げ効率を上げる発想は他にも見ることができます。たとえばランチのメインおかずは一種類だけ。

小林 「メニューを一種類に絞ることでオーダーを聞く手間もなく、食器や調理器具もそのメニューを回すためだけに徹底的に効率よく配置できます。仕込みも楽になり、ロスもなくなる。未来食堂のランチは現在ニ回転はしますが、これをひとりで回しています。既存の飲食店ではありえない数字です。

ランチは肉と魚の交互の日替わりにしています。夜はその日のランチと、次の日のランチの二択ができる。そうすると夜は肉or魚のチョイスとなるわけです。この辺りの発想は『さすが理系』とお客様によく笑っていただけますね」

「あつらえ」を軸とした新たなビジネスモデルの創造へ

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一般的な飲食店の成功例としては、多店舗展開、フランチャイズ化といったものが挙げられます。でも未来食堂にとって、これは“本筋”ではありません。なぜなら未来食堂は「あつらえ(おかずのオーダーメイド)」をコンセプトとする、非常に属人性の高いお店だからです。

ここで作る「あつらえ」と、たとえば2号店目が作る「あつらえ」は全く別のものとなるわけです。なので飲食店経営にこだわらず、「あつらえ」を軸とした展開を小林は思い浮かべています。たとえば「あつらえのある宿泊施設」「あつらえのあるアパレルショップ」など、業界にこだわりはありません。

小林 「自分の頭では未来食堂のように小さな飲食店が限界。でも、未来食堂に共感してくれる私よりも優れた人間が、未来食堂を別の概念に転化してくれるはず。私はその人にバトンを渡すいちプレーヤーに過ぎません」

『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』を実現するシステム

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もうひとつ。未来食堂の人気システムに「まかない」というものがあります。これは50分のお手伝いで1食無料になるシステム。基本は小林がひとりでお店を回していますが、ピーク時や閉店作業をお手伝いいただいた方には、「まかない」を提供しています。未来食堂では初回の会計時に割引券を配っており、それを持っている人という条件はありますが、基本的にどなたでも利用可能です。

小林 「未来食堂は『誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所』でありたいと思っています。そのとき、『お金がない人にはどうするのか?』という疑問が生まれました。

ビジネスを考える上でそんなセグメントを考える意味はないと揶揄されましたが、未来食堂ではとことん考える必要があった。『誰もを受け入れる』について向き合う必要があった。そこで生まれたのが、まかないシステムです。

少なくとも一度は来てくれた人との縁は切りたくない。たとえもし、その人が一文無しになったとしても、どうにか繋がる方法を残しておきたかった。未来食堂は、誰かのセーフティーネットでありたいんです」

そして実は、ここにもビジネスモデルのポイントが。「まかない」は50分働くことで、900円の定食が食べられる。つまり、その人は900円の価値を手に入れていると考えます。

しかし実際は、未来食堂は人件費として900円を払っているわけではなく、そこにかかっているコストは食材の原価のみ。さらに、まかないを体験した人は、お店のファンになってくれるという仕組みになっているのです。

小林 「飲食店をやりたい人や、新たなビジネスを考える人など、いろんな人が「まかない」を利用してくれています。多くの人が加わることによって『もっとこうした方がいい』という意見も聞けることで、すごいスピードでより良い店になっています。

初回はお金を払う必要がありますが、まかないをすることによって2回目以降まったくお金を払わない関わり方も可能です。『お金を払う人、貰う人』という飲食店の従来の概念を超えた新しい在り方を、今後も探し続けます」

まかないシステムを行うことは、いわばお客様に店の裏側まで見せるということ。この徹底的な透明性は、なんと事業計画書の全文公開にまで及んでいます。

小林 「IT業界ではオープンソース(OSS)という概念があり、この概念こそがIT業界を迅速により良く発展させた根幹だと私は考えています。飲食業界に足を踏み入れたとき、一番何とかしないといけないと思ったのは、この不透明でクローズドな飲食業という業態でした。『自分の知識を隠しておくことで勝者となる』のではなく知識のシェアによって業界を変えていきたいと思ったんです

事業計画書を見せるというのは、いわば手の内を全部明かすということ。なぜそんな“ハンデ”になってしまうことをするのでしょうか……。

小林 「どんなに情報を公開しても、未来食堂の真似をすることは不可能だからです。常に考え続けることによって、新しいもの、未来食堂らしいものを生み出すことは可能なはず。そしてそれこそが価値であり、コピーできるものは表層に過ぎません」

小林は、不透明で閉鎖的な飲食業界を、エンジニアとして培った発想力で変えていけると信じています。小林と未来食堂が切り拓く未来に興味がある方は、一度お店に遊びに来てみてください。

▼未来食堂
http://miraishokudo.com/
千代田区一ツ橋2-6-2 日本教育会館B1(神保町駅徒歩3分)
月火  11〜15時位
水〜土 11〜22時

▼未来食堂事業計画書
http://miraishokudo.hatenablog.com/entry/plan

会社説明会では語られない“ストーリー“が集まる場所「PR Table

【働き方に対する意識を変えるきっかけに】アビームコンサルティングが取り組む「Smart Work 推進」とは?

アジアを基点とするグローバルコンサルティングファームである、アビームコンサルティング株式会社。同社では現在、CWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)の指揮のもと、働き方改革を推進する社内ワーキングチーム「Smart Work Initiatives」(SWI)による活動が始まった。社員の働き方に関してどんな課題感を持ち、どのような取り組みを行う計画なのか?そして、同社が目指す将来像とは?SWIの推進責任者である執行役員の矢野智一氏に、詳しく伺った。

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アビームコンサルティング株式会社 

執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジービジネスユニット FMCセクター長 

矢野智一氏

「仕事に没頭するあまり」の長時間労働。意識変革から取り組む必要性

アビームコンサルティングの経営理念は「Real Partner」。クライアントの変革を実現する“真のパートナー”として、クライアントとともに歩み、課題解決を実現する――という姿勢を示したものだ。

 

「この理念のもと、当社のコンサルタントは皆プライドを持って、お客様の期待値の“さらに上”を目指すべく日々努力しています。お客様からの期待も大きく、コンサルタントは皆、熱意とやりがいを持って働いています。ただ、ともすればその熱意が、『より良いものを提供するためならば、いくら時間を使っても構わない』という考え方を生みだし、長時間労働につながる傾向がありました。この傾向が続くと、本来評価を行うべきアイディアや成果ではなく『長く働いた者が評価される』という認識につながりかねません。当社では以前からダイバーシティ推進に取り組んでいますが、長時間労働をよしとする考え方の中では、多様な人たちがイキイキ働くことはできません。そこで、早急に働き方に対する考えを変革し、働く環境を整備する必要があると考え、『Smart Work Initiatives』(以下、SWI)の推進を決断したのです」

 

SWIへの取り組みが本格的にスタートしたのはこの4月だが、これに先駆けて昨年11月より、「毎週水曜日のノー残業デー設置」「深夜時間帯と休日に上司から部下への業務連絡は原則禁止」「18時以降は社内会議室を利用しないことを推奨」など、いくつかの施策を進めている。この結果、昨年に比べて時間外労働時間が月平均で2時間短縮するなど、すでに成果が出始めているが、初めは現場からの反発もあったそうだ。

同社では常に、1000~2000ものプロジェクトが動いており、現場ごとに契約内容や勤務条件、クライアントが置かれている状況などが異なるため、「全社一律でルールを決められても対応できない」との声が多く聞かれたという。

 

「我々が意図しているのは“水曜日に残業をしない”ことではなく、こういう制約を設定することで働き方を見直すきっかけにしてほしい、ということ。そのため、反発は然るべきだと思っています。ただ、『無理だ』とならず、その後、自分たちのプロジェクトでの最適な形は何か、という前向きな検討を活発にして欲しいと思います。例えば『水曜日の夕方はお客様との定例ミーティングがあるから定時に帰れない』のであれば、金曜日をノー残業デーにしてもいいし、当社の働き方改革についてお客様にご説明し、理解いただいたうえで、定例ミーティングを水曜日の午前中に変更することを提案してみるなど、プロジェクトごとに、自分たちに合った、よりよい働き方に変えるきっかけになればと考えています」

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▲「smart work」推進のための3つの取組みについて、社内にポスターを貼っているほか、社内のデジタルサイネージでも放映、ノー残業デーである水曜日にはメールで全社員に送付し社員へ積極的に呼び掛けている。

  

今までも、プロジェクトごとの働き方は各プロジェクトに一任されてきた。ただ、それらのルールは、例えば「このプロジェクトのお客様は生産拠点だから、始業時間を8時にする」など、クライアント起点によるものだったという。「これからは、我々起点でも積極的に働き方のルールを提案し、条件交渉にも組み入れることを推奨したい」と矢野氏は話す。

 

「実際、ノー残業デーの設置を提案に組み込み、『この勤務条件下で最大の成果を挙げる』ということでお客様の了承を得たプロジェクトも出始めています。このような取り組みをピックアップし、皆に共有することで横展開を促したいと考えています」

 

テレワークの推進で「働く場所・時間」を自由に選択

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一方で、どのクライアントも、自社の課題解決のため、より高い成果を挙げてほしいと願うもの。自社のために長時間働いてくれるコンサルタントを高く評価する傾向も強かった。

 

ただ、長時間労働を是正する動きは、あらゆる企業において強まっており、クライアント側の認識も徐々に変わりつつある。ノー残業デーや勤務時間の短縮などへの提案も、比較的理解してもらいやすく、「うちもまさに今、取り組んでいる最中なのでよくわかる」と共感されることも多いのだとか。

 

「私にも経験がありますが、コンサルタントはどこまでも仕事を突き詰めたくなるもの。例えば、最終報告書をまとめているときなど、『あと1時間頑張れば、こんなことも調べられる。あと2時間かければ、これも盛り込める…』などとどこまでも上を目指してしまい、いつの間にか時間が経ってしまうのです。ただ、この行動自体は仕事への熱意やお客様への誠意によるものであり、ここを変えるつもりは毛頭ありません。実際、当社のコンサルタントは皆、その高い働きぶりから、お客様との強い信頼関係を築いています。この姿勢を大切にしながらも、例えば、常駐時間を短縮して、クオリティーを担保しつつコストを低減する策を提案したり、地方のお客様に対して出張コストを減らすためにリモートの比率を高める提案をしたりするなど、契約条件交渉の中に“時間”の概念を加え、今までとは異なる価値を提供してほしいですね。お客様にもメリットがあると示しながら、一緒に働き方を変えていく気概で臨んでもらいたいと願っています」

 

「異なる価値」を発想するきっかけにすべく、現在導入に向けての準備に注力しているのが「テレワーク」の推進。

 

「“場所の自由”と“時間の使い方の自由”の2軸で考え、24時間のうち、どの部分を仕事に割り当てるのか、そしてその仕事をどこで行うのか、より柔軟に考えることを推奨しています。例えば、子どものお迎えのために午後早めにオフィスを出て、後は自宅で業務を続けるとか、集中して仕事をするため別の場所に移動して環境を変えてみる、など。より効率的な働き方の実現と、新しい発想の創出につながると期待しています」

 

社員一人ひとりが働き方を自由にコントロールし、最大の成果を実現できる未来へ

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同社では、2020年をSWIのゴールの目安に置いている。「そのときに、アビームコンサルティングとしてどんな姿になっていたいか」との問いに対し、矢野氏は「自由であること」を挙げた。

 

「我々は知的生産を行うプロフェッショナル集団。個々がプロフェッショナルである以上、個々が時間も含めて自身の働き方を自由にコントロールしたうえで、最大の成果を上げることが理想の姿。その結果、今まで以上にお客様が、当社のコンサルタントを信頼してくださる状態を作り上げたいですね。我々とお客様が、互いに尊敬し合い、尊重し合える状態を作ることが、本当の意味での『Real Partner』の実現。コンサルタント一人ひとりが自由にイキイキ働き、成果を最大化することで、お客様の満足度が上がり、さらに信頼をいただけるようになることで、コンサルタントの自由度がさらに増し、お客様がより多くの価値を享受できるようになる――こういうサイクルを目指しています」

 

同社のコンサルタントは皆、新しいアイディアや、新しい仕組みを考えたりすることが得意だ。SWIでは今後、管理職の意識改革、テレワークなど柔軟な働き方や、評価項目の見直し、複線型キャリアパスの導入などといった、さまざまな取り組みや制度の実行を検討していくが、制度で「縛る」のではなく、考え方を切り替え発想を促す「サポート役」として捉え、一人ひとりの自発的な行動を促す考えだ。

 

なお、矢野氏はSWI推進責任者として、率先して働き方改革に臨み、プライベートタイムの有効活用に取り組んでいる。

 

「意識しているのは、社外の方との交流を増やし、刺激を得ることです。私自身、現場にいるときには一つひとつの仕事にのめり込む傾向が強く、時間を気にせず働いた経験もあるし、勤務時間後もメンバーと過ごすことが多かった。それが純粋に楽しかったというのもあるのですが、意識して社外に出て自社にはない視点や考え方に触れることは、新たな価値創出にもつながるはず。働き方を見直して創出した時間を使って積極的に外に出ることで、社内にいい影響を与えられるようになりたいと考えています

 EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:刑部友康

グーグル社員の「働く満足度」は、なぜこれほど高いのか?――「元気な外資系企業」シリーズ〜第6回 グーグル

大きな変革の時代。企業でも、さまざまな取り組みが進む。では、海外に本社を持つ外資系企業では、どんな取り組みが推し進められているのか、探ってみる外資系特集企画。第6回は、グーグルの「ワークスタイル」だ。

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創業者たちが毎週、ライブで直接、社員にメッセージ

 事業としての魅力はもちろん、その働きやすさについても常に注目され、「働きたい会社」としても、世界的な人気企業になっているグーグル。

 どうしてグーグルが働く場所として高い評価を得ているのか。ビリヤード台や卓球台、防音の音楽ルームやお洒落なライブラリー、「竹ガーデン」などがある独創的なオフィス環境や、1日3食社員食堂で無料で食べられるなど、福利厚生はよく語られる。

 では、持っている力を存分に発揮できる「ワークスタイル」としては、どんな特徴があるのだろうか。人事部長のギャリー・チャンドラー氏は、2つのキーワードを挙げてくれた。一つ目のキーワードが、「エンパワーメント」だ。

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▲人事部長 ギャリ―・チャンドラー氏

「グーグルの大きな特徴として、社員はたくさんの情報リソースにアクセスできるようになっている、という点が挙げられます。グーグルのミッションは『世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること』というもの。これを、グーグル内でも意識しているんです。たくさんの情報を、透明性を持って共有する。会社についての決定事項についても、今後どういったことが起こっていくのか、何か変更点があるのか、さらに製品の状況についても相当な情報に触れることができます」

 エンパワーメント、つまり権限委譲。情報を積極的にオープンにし、社員にどんどん権限を委ね、仕事をしていってほしい、というスタンスだ。

 その機会のひとつとして世界的にも知られているのが、グーグル社内で「TGIF」と呼ばれている「全社員ミーティング」。日本時間では金曜の朝、アメリカは木曜の夕方だが、社員を映像でつないでライブでミーティングが行われるのだ。驚くべきは、全世界の全社員6万人が対象になっており、社員なら誰でも参加できること。そして、創業者や本社の経営トップ自らが直接、社員に語りかけることだ。

「ラリー、セルゲイ、スンダーといったシニアと呼ばれるトップの経営層が、今週何をしていたのか、どんなことを今考えているのか、新しいサービスについてどんな進展があったか、どんなインパクトを社会に与えているのかなど毎週、直接メッセージしています」

 会社の草創期から行われてきた全社員ミーティングが、この企業スケールになっても今なお行われているというのだ。リアルタイムで行われるため、社員が受け取る“今、明かされる”感は強烈だという。しかも、“伝説的な創業者”たちが直接メッセージするのだ。

 さらに堅苦しいものではなく、笑いに溢れた雰囲気で、和気藹々として盛り上がる場だという。だから毎週、社員はみんな楽しみにやってくる。時には、新しいプロダクトを開発したエンジニアを、創業者2人が直接“イジったり”することもよくあるらしい。経営層と社員の間が極めて近いのだ。そしてTGIFは、後にビデオでも見られる。

 経営層から社員にダイレクトに何かを伝える、という会社はあるが、グーグルの場合は“カスケード”(上から下に流れていく)的な感覚ではなく、“フラットにシェア”されていく感覚なのだという。情報は、上から伝達されるのではなく、みんなで共有されていくのだ。

「TGIFでは毎週20分間、質疑応答の時間も設けられています。経営層に対して、聞きたいことを直接、聞くことができる。どんな質問でもOKです。経営層と違う意見も歓迎されます。実際、ストレートに自分の意見をぶつける社員もいます。意見の違いがあるということは、社内に多様な見解ができるということ。それはみんなの学びになるからです」

 

全社員のスケジュールが社内で公開されている

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 質問は事前に提出することも可能で、いろいろな質問について世界の社員がランキング投票もできる。ランキング上位の質問は優先的に質問されたりする。いずれにしても、経営層に直接、その場で質問ができてしまうのだ。しかも、どんな質問でも構わない。そして、その場で経営層が全世界の社員を前にライブで答えてくれる。考えてみれば、これはなんとも大胆な取り組みなのだ。

情報を人に提供することで、偉大な何かが生まれる、素晴らしいものが生まれる、というのがグーグルの信念なんです。だから、できるだけ情報をオープンにする。結果的にそれは、社員の仕事のアウトプットを高めてくれるものになると考えています」

 入社したばかりの社員の驚きは、「経営層はこんなに社員を信頼してくれているのか」というものだという。ローンチ情報など、“この情報を今、開示するのか”とびっくりする情報もあるというが、社員から外部に漏れたりはしない。経営層は自分たちを信じてくれている、という信頼関係があるからだ。

 そして、すばやくオープンにされ、共有された情報は当然、自分の仕事に活きてくる。何かを教えてもらえないストレス、“もっと早く言ってくれよ”といった事態は起きない。会社や事業の方向性をしっかり把握しながら、仕事をしていくことができるのだ。

 こうしたオープンマインドは、驚くべきところでも貫かれている。例えば、全社員のスケジュール。これがすべて公開されているのだ。社内のグーグルカレンダーで、プライベートを除く個人の仕事スケジュールが、誰でも見られるようになっているという。

 例えば、役員とのアポイントを取りたい。多くの会社はまず秘書にメールを入れて用件を伝え、空いている時間を聞いて確保してもらって……といった手順を踏むだろう。だが、グーグルでは、そんな面倒で時間がかかることは不要だ。

 役員のスケジュールを見て、空いているところに仮予約を入れてしまえばいいのである。そしてカレンダー上に用件を書いておく。役員がOKすればアポイント成立である。複数の社員によるミーティングも同様だ。全員にカレンダーを見て、共通して空いているところをブッキングしてしまえばいい。

 一般的には、こうしたアポイントや会議のブッキングが、いかに時間をロスしているか、多くの人が認識しているに違いない。グーグルでは、これがあっという間にできてしまうのだ。仕事効率が良いばかりでなく、こういうところでストレスがないのである。

「私たちは、いろいろなものをデジタル化して共有しています。ペーパーレスで、世界のどこにいても必要な情報にアクセスすることができる。しかも、すばやく、です」

 さまざまな情報がオープンになり、どんどん仕事が委ねられていく。これが一つ目のキーワード「エンパワーメント」がもたらしているものだ。

 そしてもう一つのキーワードが「インディペンデンス」。独立、自立性とでも訳することができるが、もとよりグーグルは社員を縛り付けることを好まないのだ。

「ミッションやポリシーはありますが、それ以外は最低限のルールや制度しかありません。そうしたストラクチャーを事前に決めることをしない。それ以外は、社員個人の自由裁量です。もし、何かわからないことがあれば、一緒に考えればいいんですから」

 グーグルでは“セルフ・スターター”という言い方をするそうだが、基本的に自分のことは自分でやっていく。マニュアルのようなものはない。前例も参考にならない。自分で考えていかないといけないのだ。

 だが、自分で考えて動きたい人には、これが心地良いものとなる。縛るものもなく、自分でやりたいことをやっていくことができるからだ。そして、だからこそ周囲の人たちが協力してくれる。

 転職してきたばかりの社員は、当初、戸惑うことも多いという。仕事の引き継ぎなど基本的にない。上司からの命令もない。やるべきことは自分で考えるのだ。だが、もちろん最初はわからないことだらけ。だから、聞けば周囲の社員が積極的に教えてくれる。なぜなら、かつての自分もそうだったからだ。多くが中途入社の社員。同じ道を通ってきているのである。こうして基本を理解すれば、次第に自立して考えられるようになっていく。

「社員が社員に教える、というカルチャーは強いですね。社員同士で教え合うティーチングプログラムもあります。誰でも教えることができるし、学び合うことができる。それが、グーグルの考え方です」

 

失敗をどんどんしなさい、というカルチャー

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 世界的に有名な「20%ルール」も自立性と関わっている仕組みだ。

「仕事時間の中で、20%を社員が個人的にやりたい仕事やプロジェクトに割り当てることができるプログラムです」

 グーグルの独創的なサービスを生み出した働き方として知られているが、実はエンジニアにだけ委ねられているわけではない。営業でも広報でも経理でも、自分が手を挙げればできるのだ。

 例えば、営業の仕事をしている社員が、広報の仕事に興味を持っているとする。そうすれば、仕事の20%を広報の仕事に使うことができる。「20%ルール」とは他の職種を経験できる仕組みなのだ。

 もっといえば、職種に限らない。やってみたかった、知りたかった、試してみたかった、というものに取り組むのもOK。例えば、グーグル広報部長の河野あや子氏は、「talks@google」という社内イベントを日本で主催している。インパクトのある話をしてくれる講演者を招き、社内に話をしてもらったり、場合によってはYouTubeにアップして外向けにも発信する。

 もともとアメリカ本社で行われていたものを、日本でもやってみたいと考えたのだという。そこで、クロスファンクショナルチームを社内で立ち上げ、ミーティングをセットし、プログラムを作り、本社に掛け合って予算をもらって、この社内イベントを実現させた。だが、本業の広報とはまったく関わりがない。

 20%の範囲内であれば、本業とは異なっても、興味があるなら何をやってもいい、というのは、こういうことなのだ。ただし、もちろん自発的な意志あってこそ。指示が来ないと仕事ができないような人には、できることではない。だから、自立性が問われるのだ。

 そしてもうひとつ、自立性といえば、仕事の目標も自分で設定しなければいけない。そして、グーグルが社員に求めるものが、極めて興味深い。

野心的な目標を設定することです。インパクトがあるもの、社員本人が成長できるもの、新しいもの。こういうものにトライすることを奨励していますし、期待しています。ただ、野心的な目標が100%うまくいくことはなかなかない。だから、失敗することも見越しています」

 自分で目標を立てるだけに、自ら低い目標を作ってしまうこともできる。そうすれば、簡単にクリアすることができるが、グーグルでは誰もそんなことはしない。また、前例を踏襲したような目標も作らない。会社が求めているのは、新しいこと、野心的なことだからだ。

「だから、失敗を許容します。失敗してうまくいかなかったということは、それまでになかったことをやろうとしたからです。失敗していないということは、無難にこれまでを踏襲しただけかもしれない。これでは何も前進しません」

 実際、「最近、何を失敗したのか」が社員間ではよく問われるという。もちろんうまくいこうと頑張るが、「やってみたけどダメだった」がネガティブな返答にはならない、というのだ。むしろ、「学びがあって良かったね」と周囲からは言われたりする。上司も、むしろ積極的に「失敗しろ」と声をかける。失敗に寛容どころか、失敗を求めているのである。それはチャレンジした証だからだ。

 ちなみに評価は360度。上司、同僚、部下・後輩すべてが評価する。もちろん結果も問われるが、ただ結果だけ出せばいい、というわけではない。その結果にどう到達したか、も問われる。360度評価だから、そこはしっかり見てもらえているという印象が社員にはあるという。上司も自分から評価できるし、同僚から日頃の仕事ぶりも見てもらえる。社員には、評価の納得度は高いそうだ。

 

長時間労働は、そもそも社内で尊敬されない

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 今、日本では「働き方改革」が話題になっており、長時間労働対策が問題になっているが、グーグルではどうしているのか、聞いてみた。

「まず、グーグルがメッセージしているのは、野心的で面白く興味深いゴールや目標に取り組んでほしい、ということです。ただし、それをどこでどのようにやるのか、はまったく問いません。ただし、長時間労働を勧めたりするメッセージはまったくしていません。そういう様子が見られたら、サポートが必要という信号ですから、本人と話をしてリソースが必要か、バランスを変えたほうがいいのではないか、などコミュニケーションします」

 実際の現場でも、長時間働くことはまったくリスペクトされないのだという。長く働くことがカッコイイことだと誰も思っていないし、周囲からの評価もされない。営業時間外のメールすら、好まれない。受け取ると返信をしてしまうから、仕事スイッチが連鎖してしまうからだ。営業時間内に仕事ができるよう、タイムマネジメントすることが求められる。

 しかし、野心的な目標を掲げているほどだ。無理をしてしまう社員は出てこないのか。

「これも自立性と関わってきますが、自分の人生や生活に対して、仕事をどうコントロールしていくか、という意識は極めて重要です。健康的な形で、どう仕事を推し進めていくか。そこは自分で考える必要がある。実際、どうやろうといいんです。自分の調子のいいときに長く働いて、翌日は早く帰る、というのもいい。自宅で仕事をしたほうが良ければそうすればいい。仕事ツールはたくさんありますので、まったくの自由裁量です」

 実際には、グーグルに転職した社員に聞くと、仕事の密度は相当なものだという。もちろんオープンで仕事がしやすく、ツールが充実していることもあるが、1週間分の仕事を1日でやっている感覚すらある、らしい。だが、これもブッキングのしやすさのように、密度高く仕事ができる環境が揃っているから、ともいえる。

 一方で、エンパワーメント&インディペンデンスだけに、働き方は極めてフレキシブルだ。例えば、エアコンが壊れて修理業者が来るので明日は自宅で仕事をする、などというのは、普通にできること。仕事がどこでもできるなら、だ。

 また、それぞれの仕事はそれぞれが管理しているので、「朝、急に子どもが熱を出したので家で仕事をすることになりました」となったとき、周囲で「えーっ!」などと声が上がることもないという。共同責任ではないので、誰かが困ったり割を食うようなことはないからだ。だから、職場もギスギスした雰囲気はまるでない。

「定期的に在宅で仕事をしている人もいますが、やはりグループで物事を動かしていくほうが仕事はスムーズですから、基本は職場に来て仕事をします。ただし、それは自分で決めること。会社が考えているのは、男女問わず、いい結果を出していくためにコンフリクトを起こしたり、障害になっているさまざまなことや日常的に困っていることを、どんどん取り除いていこう、ということです。もっと仕事がしやすくなるには、どうすればいいか、まだまだいろんなことができると考えています」

 それこそ人事も野心的な目標に取り組んでいる、ということ。はっきりとしたミッションがあり、オープンに情報にアクセスでき、自分で組み立てていける仕事環境が作られている。こういうところに魅力を感じる人には、心地いいということになるのだろう。

WRITING:上阪徹 PHOTO:小出和弘