『鬼滅の刃』の「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」を英語で言えますか?

アニメ化され、英語版とスペイン語版も出ている大人気のマンガ『鬼滅の刃(きめつのやいば)』(英語版のタイトルは「Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba」)。
『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)など、数々の英語学習に関する著書を出されている英語学習の“お医者さん”西澤ロイさんと、『鬼滅の刃』の名言や人気のあるセリフを題材に、英語を学んでいきましょう。


(C)吾峠呼世晴/集英社

「幸せが壊れる時には いつも血の匂いがする」

『鬼滅の刃』()の舞台は大正時代であり、主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)は、炭を売って生活する家族の、6人兄弟の長男であり、非常に鼻が利きます。しかし、ある時、炭治郎が炭を売りに家を空けている間に、事件が起こります。家族のことを心配しながら帰宅する炭治郎の頭に浮かぶ言葉が以下です。

竈門炭治郎「幸せが壊れる時には いつも血の匂いがする」(第1話「残酷」より)


(C)吾峠呼世晴/集英社

匂いを表す時に使う単語はsmellです。これは名詞(匂い)としても、動詞(~の匂いがする)としても使えます。炭治郎のセリフは、直訳的には例えば以下のように表現することができるでしょう。

When happiness crumbles, there is always the smell of blood.
(幸せが壊れる時、いつも血の匂いがある)

動詞のcrumbleは、形あるものが「(粉々に)崩れる」動作を意味しますが、知らなかった人も多いでしょう。直訳にとらわれずに、知っている範囲の簡単な単語で表現するのも大切なことです。

I smell blood every time danger falls on us.
(危険がふりかかる時はいつも、血の匂いがする)

every timeは、その後ろに文を伴って「~する時はいつでも」という意味になります。fallは「落下する」ことを表しますが、「fall on ~」で「~にふりかかる」ことを表せます。

「絶対助ける 兄ちゃんが助けてやる」

炭治郎の家族は、鬼によって殺されてしまいます。しかし唯一、妹の禰豆子(ねずこ)だけ、体にぬくもりが残っていました。炭治郎は医者に見せるため、禰豆子を背負って山を下りようと急ぎます。

炭治郎「絶対助ける 兄ちゃんが助けてやる」(第1話「残酷」より)


(C)吾峠呼世晴/集英社

日本語の「助ける」に対応する動詞は、英語ではhelpとsaveがあります。helpは「手助けする」ことや「手伝うこと」に使うので、この場合の「(命を)助ける」という意味には合いません。「救う」ことを表すsaveを使うことで、例えば以下のように言えるでしょう。

I will save your life.
(お前の命を救ってやる)

また、「死なせない」という表現をするのも良いですね。「let you die」で「死なせる」ことを意味しますから、それを否定形にして、以下のようにも言えます。

I’m not going to let you die.
(お前のことは死なせない)
I’m not letting you die.
(お前をこのまま死なせない)

時制については、未来を表すために「be going to」を使うのも良いですし、「いまこのまま死なせない」という意味で現在進行形を使うのもありです。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」

禰豆子は途中で鬼に変貌し、炭治郎に襲いかかるものの、人としての心を思い出したのか、涙を流しはじめます。その時に、襲われる炭治郎を助けに来たのが、鬼を退治する「鬼殺隊(きさつたい)」の中で最高位の剣士である「柱(はしら)」の一人、冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)です。

禰豆子を退治しようとする冨岡義勇に対し、炭治郎は最終的に土下座をし、殺さないでくれと懇願します。その時に彼が言った名言が以下です。

冨岡義勇「生殺与奪(せいさつよだつ)の権を他人に握らせるな!!」(第1話「残酷」より)


(C)吾峠呼世晴/集英社

生殺与奪とは、他人を生かすか殺すかを思いのままにできることです。ここでは、妹である禰豆子の生死を相手に委ねてしまったことを指していますね。例えば、以下のような英語で表現できるのではないでしょうか。

Don’t ever give others a chance to kill your sister!
(他人に妹を殺せる機会を決して与えるな)

「(~する)権利」を直訳すると「the right to (do)」になりますが、欧米における権利とは「付与されるもの、資格」というニュアンスがあるため、ちょっと意味的に合わないと言えるでしょう。

Don’t ever allow anyone to murder your family!
(お前の家族を殺す許可を絶対に与えるな)

allowは「(行動を)許す」という意味であり、「allow+人+to (do)」で「(人が)~するのを許可する」ことを表します。

You must never throw away your life and your family’s.
(お前は自分と家族の命を決して放棄してはいけない)

もっとシンプルに、命を「捨てる(throw away)」という言い方もできるでしょう。また、「~しなければならない」を表す助動詞のmustを否定形で使うことで「絶対禁止」という強い否定を表せます。

なお、英語版「Demon Slayer」では以下のように英訳されていました。

Never leave yourself so defenseless in front of an enemy!
(決して敵の前では、そんな無防備な状態になるな!)

「神様どうか この人が今度生まれてくる時は 鬼になんてなりませんように」

鬼殺隊に入るための試験である「最終選別」を受けるために、炭治郎は師匠の元につき、約2年間の修行を行ないます。そして、最終選別中に遭遇した異形の鬼を退治しますが、その鬼の体が崩れていく直前、伸ばされた手から、悲しい匂いがします。心優しい炭治郎はその手を握り、こう祈ってあげます。

炭治郎「神様どうか この人が今度生まれてくる時は 鬼になんてなりませんように」(第8話「兄ちゃん」より)


(C)吾峠呼世晴/集英社

私だったら例えば以下のような英語にするでしょうか。

God, I pray (that) this person won’t become a demon in his next life.
(神よ、この人が次の人生において鬼にならないよう祈ります)

prayは「祈る」という意味の動詞です。動詞の後に文を続けることで(thatはあってもなくてもOK)、祈りの内容を表します。

Oh, God. Next time he were born, please don’t make him a demon.
(ああ神様、次に彼が生まれた時には、彼を鬼にしないでください)

next timeは、後ろに文を伴って「~する次の時には」という意味です。be動詞がwereという形になっているのを不思議に思うかもしれませんが、これは仮定法。「もし彼が次に生まれることがあれば」という仮定の気持ちを表現しています。

I hope (that) he won’t be born as a demon next time.
(彼が次は鬼として生まれませんように……)

これは「神」という表現を避けた例です。「望む」ことを表す動詞hopeを使っています。

「俺が挫けることは絶対に無い!!」

家族を襲った鬼、鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)から送り込まれた二匹の鬼を、肋骨を折りながら退治した炭治郎は、次の任務地へと向かいます。そこには、体に埋め込まれた鼓を打つことで、部屋を回転させたり、鋭い爪で攻撃してきたりするという特殊能力(血鬼(けっき)術)を持つ鬼、響凱(きょうがい)がいます。

怪我と疲労の中、響凱による激しい攻撃に心が折れそうになる炭治郎は、以下のように言って自分を奮い立たせます。

竈門炭治郎「俺は今までよくやってきた!! 俺はできる奴!!
そして今日も!! これからも!! 折れていても!!
俺が挫けることは絶対に無い!!」
(第24話「元十二鬼月」より)


(C)吾峠呼世晴/集英社

心優しくて、心が折れそうになることが何度もあっても、こうやって自分を励まして頑張っている炭治郎の姿に共感を覚える人が多いのではないでしょうか。

この「俺が挫けることは絶対に無い」の箇所を英語にしてみましょう。多くの方が頭に思い浮かぶのは「give up(あきらめる)」という表現かもしれません。

I will never give up.
(俺は絶対にあきらめない)

これは定番の表現だと言えます。

I will never succumb.
(俺は絶対に屈しない)

succumbという動詞は「屈する」という意味です。発音は[səkʌm](敢えてカナカナで書くと「サカム」の「カ」が強い感じ)ですので、この表現を使ってみたいと思った人はぜひしっかりと発音を調べてみてください。

I will never be discouraged.
(俺が挫けることは絶対にない)

元々、courageが「勇気」を意味する単語であり、discourageで「やる気を奪う、落胆させる」ことを表します。「I will never be discouraged.」は受け身になっていますから、「俺が勇気/やる気を奪われることは決してない」と文字通りには言っています。

「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ」

炭治郎と同時期に鬼殺隊に入ったのは他に3名おり、そのうちの1人が栗花落カナヲ(つゆり・かなを)という女性です。カナヲは、虐待を繰り返す両親の元に生まれ、人買いに売られたところを保護された過去を持っています。心を閉ざしているため、全てがどうでもよく、自分の意志で何かを決めることができません。

炭治郎は、たくさん稽古をつけてもらい、お世話になったお礼を言いに行きますが、カナヲは返事(会話)するかどうかを決めるためにコインを投げます。結果は「話す」ことを意味する「裏」。

そこで炭治郎と次のような会話をします。

炭治郎「なんで自分で決めないの?」
カナヲ「……」
炭治郎「カナヲはどうしたかった?」
カナヲ「どうでもいいの
全部どうでもいいから 自分で決められないの」

炭治郎「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ
きっとカナヲは心の声が小さいんだろうな」
(第53話「君は」より)


(C)吾峠呼世晴/集英社

「どうでもいい」という箇所は

I don’t care.
(気にしない=どうでもいい)

という英語を思いついた人もいるかもしれません。それでもバッチリ通じますが、ちょっと乱暴な感じのする表現だと言えます。

私だったら「重要である」ことを意味する動詞matterを使って以下のように表現するでしょう。

It doesn’t matter. Nothing matters. That’s why I can’t decide.
(どうでもいいの。全部どうでもいい。だから決められないの)

そして、炭治郎の「どうでもいいことなんて無い」というセリフも、このmatterを受けて例えば以下のように言うことができます。

In my opinion, everything matters.
(僕の考えでは、全てが大事だ(=どうでもいいことなんてない)よ)

また、「心の声が小さい」という発言についても、2通りほど英語表現をご紹介しておきます。

Your heart probably speaks in whispers and it’s hard to hear.
(あなたの心はたぶん囁くだけで、なかなか聞こえないんだろう)

in whispersで「ひそひそ声で」を表します。

Maybe your inner voice is only murmuring.
(きっとあなたの心の声はささやいているだけなのだろう)

murmurという動詞は「(かすかな声で)つぶやく、ささやく」ことを意味します。

最後に:お気に入りのセリフを英語で表現してみよう

文字数の関係でご紹介できませんでしたが、『鬼滅の刃』には他にも個性豊かなキャラがたくさん登場します。炭治郎をはじめとする、彼らの人間性に惹かれたり、共感したりするところも人気の一因なのではないでしょうか。

ぜひ、あなたが気に入っているセリフも英語でどのように表現したらよいか、考えてみたり、英語版を探して読んでみてください。英語版のアニメなどを検索してみるのも面白いと思いますよ。

今回の記事でご紹介したいくつかの表現も、少しでもヒントや学びになれば幸いです。

★連載:「英語学習のコツ」をお届けする記事一覧はこちら

著者プロフィール

西澤ロイ(にしざわ・ろい) イングリッシュ・ドクター

英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。英語が上達しない原因である「英語病」を治療する専門家。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)や『TOEIC最強の根本対策』シリーズ(実務教育出版)他、著書多数()。さらに、ラジオで3本のレギュラーがオンエア中。特に「木8」(木曜20時)には英語バラエティラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ」が好評を博している。★「イングリッシュ・ドクター」公式HP(

Pagetop