『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)など数々の英語学習に関する著書を出されている西澤ロイさん。英語の“お医者さん”として、英語学習の改善指導なども行っている西澤さんに「正しい英語学習の方法」についてお話しいただくこのコーナー。第1回目の今回は「英語学習において、まず押さえておきたいコツ」についてです。
今回は、英語を「読む」「書く」「話す」時に、一体何にフォーカスをすれば効率的に「理解力」や「運用力」を高められるかについて解説します。
英語にも「80:20の法則」が当てはまる
「80:20の法則(パレートの法則)」をご存知でしょうか?
様々な物事において、約80%(大部分)の数値や成果は、重要な約20%(一部)の要素によってが構成されている、という法則です。ビジネスでよく言われるのは、「一部の顧客が大部分の売上に貢献している」ということでしょう。
実はこの法則は、英語学習にも当てはまります。英語を読んで理解する力。英語を話す、書くなどして使う力。そういった「使える英語力」を身につける時に、フォーカスすべき「ある要素」が存在します。
このたった1つの要素に注力して学習をすれば、非常に効率的に英語の理解力や運用力を高めることが可能です。その要素とは「動詞(verbs)」です。
なぜ「動詞」が重要なのか?
英語では動詞が大事…と言われてもピンと来づらいかもしれません。日本語には当てはまりませんから、それも仕方のないことです。
英語において動詞が重要であることには、言語学的にもきちんとした根拠があります。日本語と英語とをちょっと見比べてみましょう。
ジョンは高校時代の友達と渋谷に“行った”。
John “went” to Shibuya with friends from high school.
まず日本語においては、動詞は一番最後に出てきます。極端な言い方をするなら、別に動詞を言わなくても通じてしまうことが多いです。
「ジョンは高校時代の友達と渋谷に…」だけで、言いたいことは大体分かりますよね。
それに対して英語では、主語のすぐ後ろに動詞が来ます。もし動詞を言わなかったとしたら、「John…」だけになってしまい、何も伝わりません。英語では、日本語とは比べ物にならないほど、動詞の役割が重要なのです。
動詞がなければ片言
そもそも言語というものは、ほとんどが名詞(物事を指す言葉)で構成されています。しかし、ただ名詞を並べるだけでは、片言にしかなりません。
ジョン、友達、渋谷
これだけだと「ジョンが友達と渋谷にいるのかな…? それとも、ジョンの友達が渋谷に住んでいるのかな…?」などといろんな解釈が生まれてしまいますよね。意味を明確にするために、日本語では助詞を使って「ジョンは友達と渋谷に」のように名詞をつなげていくのです。
それに対して英語では、名詞をつなぎ、イキイキとした意味を与える役割は動詞が担っています。ですから、英語を読んで理解する上でも、自分で英語を使いこなす上でも、動詞がカギとなるのです。
英語を読むのが楽になるテクニック
英語が苦手なのに、英文を読まなければいけないこともあるでしょう。そんな時には、主語と動詞だけを意識するだけでも、理解度が大きく違ってきます。
例えば先ほどのような英文を「全て」理解しなければいけない…と考えると、気分が重くなってしまう人もいるでしょう。
John went to Shibuya with friends from high school.
しかし、主語と動詞だけ、つまり
John went…
だけをまず理解すれば良いと言われたならどうでしょうか。これならば「ジョンは行った」という意味だとすぐに分かりますし、ずっと気が楽なはずです。
それと同時に「どこに行ったのだろう」などと疑問が出てくることでしょう。つまり、全てを分かろうとするのではなく、動詞を中心に理解しようと努めるだけで、その英文の中で重要な箇所が浮かび上がってくるのです。
仕事上で海外からメールがよく来るという、私が以前指導した生徒さんは、「動詞に色をつけるようにしたら、英文を読むのがずっと楽になりました」という感想をくださっています。
英語を話す時こそ動詞にフォーカス
英語を話したり書いたりする上でも、動詞が非常に重要です。なぜなら、日本人が英語をうまく使えない大きな原因の1つが「語順の違い」だからです。
先ほどもお伝えしましたが、日本語では動詞(述語)は文の最後に来ます。ですから、日本語の感覚のまま英語をしゃべろうとすると、なかなかスムーズに話すことができません。
英語を使う時には、いきなり
「私、食べました」
「俺、買ったんだ」
などと言うつもりで話すことが大切なのです。
日本語的な感覚からすると、突然「俺、買ったんだよ!」なんて言われたら、一体何を買ったのか非常に気になることでしょう。かなり大袈裟な言い方ですよね。
しかし英語では、その語順で伝えるのが普通であり、「I bought…」のように話し始めないといけないのです。
日本語ネイティブとしてはつい、買った店や場所、買ったものを先に言いたくなることでしょう。
「駅前のデパートで、美味しそうなケーキを…」
しかし、英語を話す時には、まず最初に「誰が、何をした」のかを考えてください。
I bought…
このように「私は買った」と伝えたら、次に「何を」買ったのかを言いたくなることでしょう。
I bought some cake…
そうしたら、次に「どこで」買ったのかを伝えたくなりませんか。
I bought some cake at a department store.
このように、まず「主語」と「動詞」を考え、そこから伝えてみてください。それだけで、英語を話すことがずっと楽になりますよ。
まとめ:動詞が一番大事な入り口
動詞の重要性がお分かりいただけたことと思いますが、これが英語の理解力や運用力を高める上での大事な「入り口」に当たります。
ご参考までに、その先には「様々な動詞の意味を理解すること」、「文型(動詞の使い方)」や「句動詞(動詞+前置詞)」を押さえることなども大切です。
しかしまずは、今回お伝えした、「動詞にフォーカスする」ことをぜひ試してみてください。かなり即効性がありますので、すぐにその効果を実感していただけること間違いなしです。
コラム:英語が楽に読めるお助けツール
もちろん、実際の英文はもう少し複雑なケースもあるでしょう。難しい単語がたくさんあって、調べるのが大変だと思う人も多いはずです。
そんな場合に、非常に役立つお助けツールをご紹介しておきます。「英読(えいどく)」という無料のスマホアプリです。
このアプリに英文を読み込ませると、難しい単語にだけ日本語訳を表示してくれます(難しい漢字にルビを振るような感じです)。なお、訳を表示する単語のレベル指定が可能(例えばレベル1なら中学1年生レベルを除く単語に訳を表示)。
英語のメールならば、コピーして貼り付ければOK。読みたい英文記事などのURLを指定することもできます。
私自身も英読のユーザーであり、レベル4(高校レベル以上の単語に訳を表示)に設定していますが、英語ニュースなどを読む際に重宝しています。知らない単語や、理解があやふやな単語などが出てきた時に、いちいち辞書を引く必要性がかなり減りますので。
西澤ロイ(にしざわ・ろい)
イングリッシュ・ドクター
英語の“お医者さん”として、英語に対する誤った思い込みや英語嫌いを治療し、心理面のケアや、学習体質の改善指導を行なっている。
TOEIC満点(990点)、英検4級。
獨協大学英語学科で学んだ言語学に、脳科学や心理学も取り入れ、英語流の「発想」や「考え方」を研究、実践することで、大人だからこそ上達する独自のメソッドを確立する。
暗記の要らない英会話教材「Just In Case」、正しいリスニング方法が身につくトレーニング教材「リアル・リスニング」も好評を博している。ベストセラーとなっている『頑張らない英語』シリーズ(あさ出版)他、著書多数。
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