人に聞きづらい和室のマナー3選

すっかり洋室が定着したとはいえ、日本人ならやはり和室に落ち着きを感じるもの。けれども意外と知らないのが、和室に入る時のマナー。いざ和室へ通されたとき、どうしていいかわからず、右往左往した経験が誰しも一度はあるのではないでしょうか。ドアを3回ノックして、「失礼します」と言ってから洋室に入るのと同じように、和室にも入室のマナーがあるのです。裏千家茶道を習う筆者が、「これさえ覚えておけば大丈夫!」な和室のマナーを3つお教えしましょう。

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挨拶は座ってしよう

洋室に慣れた生活を送っていると、つい挨拶も立ったまましてしまいがち。習慣とは恐ろしいものですが、これは和室ではNGです。食事でも立ち食いはマナー違反ですよね。「頭が高い」という言葉があるように、頭の位置は相手への敬意を示すうえで重要です。すでに上司や先輩など役職が上のひとが座っているにもかかわらず、目下の者が立ったままで挨拶したら大変な無礼になります。和室では座った状態で挨拶を行いましょう。

ここでもうひとつ大事なポイント。お辞儀には「真」「行」「草」という3つの格があることをご存知でしょうか。この3つは相手とどのような間柄かで使い分けます。「真」とは目上の人に対して行うお辞儀のこと。正座の状態から手を前につき、上体を45度くらい前に傾けます。「行」は真ほど堅苦しくない場合に使います。上体を傾ける角度は30度を目安にしましょう。「草」とは親しい間柄でのお辞儀のこと。軽く会釈をするイメージです。こちらも覚えておきましょう。

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襖は複数回に分けて開け閉めしよう

意外と戸惑うことが多いのが襖の開け閉め。お辞儀と同様、襖の開け閉めも座って行います。襖には引き手があるので、そこに指をかけて一気に開けてしまいがちですが、これもマナー違反です。引き手は最初に少しだけ開けるために使うもの。襖は複数回にわけて開け閉めするのがマナーです。日本の作法では、一度に何かをすることを避ける傾向があります。一度で開け閉めするほうが楽に思えますが、周りから見て美しくないだけでなく、物や人に対する敬意に欠けるとみなされてしまいます。

正しい襖の開け方をご説明しましょう。(※引き手が左側の場合)

1:襖の前に正座をし、「失礼します」と声をかけて、引き手に左手の指をかける。

2:5cmほど開けたら、敷居から高さが30cmくらいの場所を持ち、ゆっくりと開けていきます。襖が自分の右膝あたりに来たら右手に持ち変えて、再び閉めます。この際、全部閉めずに5cmほど残しておきましょう。少し残すのは、閉めるときに掴みやすくするため。全部閉めてしまうと、持つところがなくて閉めにくくなります。閉めるときは開けるときと逆の動作をすればOK。5cm残した部分を右手で持ち、あとは開けるときと同じ動作をすれば大丈夫です。

襖を開ける動作を言葉で説明すると、こんなにもたくさんの手順があることに驚きますね。けれどもこれだけ時間をかければ、部屋の中にいるひとも心の準備が整うのです。会議室のドアが突然ノックされて、いきなり部屋に入ってこられてびっくりした経験はありませんか? ゆっくりとした動作は自分の心だけでなく、相手の心にもゆとりを生むのです。

余談ですが襖を開けて部屋に入る前に、正式には扇子を体の前に置くのが礼儀とされています。相手と自分の間に扇子を置くことで結界を作り、「あなたに敬意を払っていますよ」という気持ちを示しているのです。現在ではあまり見られない風習ですが、こうした作法を知っておいて損はないですよ。

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畳のへりは踏まないように歩こう

小さい頃、祖父母に「畳のへりは踏んではいけない」と怒られたことはありませんか? へりは畳の他の場所に比べて段差になっているので、「転ばないように」という意味もあるのですが、単にそれだけではないのです。

へりをよく見ると、模様が描かれていることをご存知でしょうか。へりにはかつて、その家の家紋が書かれていました。時代劇などで、もしかしたら目にしたことがあるかもしれませんね。

畳のへりを踏んではいけない本来の理由は、家紋を踏むことがご先祖様に対して失礼になるからです。何かを足で踏みつけることは、「踏みにじる」という言葉もあるように、敬意を払わない無礼な行為とみなされます。昔の日本では「家」というものが重要視されていました。そんな大切な「家」の象徴でもある家紋を踏む行為は、とても許されるものではなかったのです。

また、へりの材質に気を使ったという理由もあります。へりは絹の藍染などで仕立てているのですが、色染めはデリケートで、摩擦をすると色飛びをおこす原因となります。へりの上を歩くことで色が飛んでしまわないように、へりを歩いてはいけないというマナーが生まれたわけです。和室に入ったら、うっかり畳のへりを踏まないように気をつけましょう。

少なくともこれさえ押さえておけば、あなたも日本人にふさわしい所作を身につけたといえるでしょう。ビジネスパーソンとして、どんな場でもスマートな振る舞いを心がけたいものですね。

(文/薗部雄一+プレスラボ)

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