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株式会社ピコナ

「クリエイターだからこそ、リア充でいてほしい」。残業時間を80パーセント削減した社長の熱い思いは、アニメ業界全体に向けられていた

どんな取り組み?
残業チケット制という社長決裁の申請チケットを作るなど、時間外労働を削減する制度
取り組みを始めたきっかけは?
時間管理が明確な海外アニメーターの仕事を見て、余暇に行うインプットがクリエイターには必要だと痛感
取り組みを運用する秘訣は?
案件ごとに進行スケジュールを共有。残業は社長決裁制として安易にできない仕組みに
よかったことは?
時間外労働80パーセント削減に成功。社員にオリジナル作品を制作する時間が生まれ、そこから新しい仕事につながった

▲社員旅行の様子

社員「今日は残業させてください」 社長「ダメ」

 アニメーターという仕事には、どこか職人的なイメージが付いて回る。根気強く細部にまで念を入れる作業プロセス。納得がいくまで時間をかけ良質なアニメを発信しようとするクリエイターのこだわり。こうした制作風景に加え、クライアントとの折衝にも時間を割かれる。3DCGアニメをメインに制作する株式会社ピコナではかつて、社員の月あたり時間外労働時間が平均で100時間を超えてしまう状況になっていた。

「時間にうるさい」海外の常識を目の当たりにした

 代表取締役社長の吉田健さんは、以前アメリカで視察したアニメーション制作の現場の風景が頭から離れなかった。「世界中にコンテンツを発信する超有名スタジオを見学する機会がありました。意外だったのは、時間管理がとても厳しいこと。クリエイターは自身の余暇の時間を大切にしていました。そこで得られたインプットが、新しいアイデアを生み出すと考えていたのです」。先進的なヒット作を生み出すクリエイター陣のワークスタイルを、自社でも実現したい。社員たちの残業が月100時間を超えているという状況を、何とか変えたいと思っていた。

 2012年、経営陣に新しく加わったクリエイティブディレクターの水澤慎さんとともに、抜本的な改革に乗り出す。それは会社全体の制度改革であり、社員一人ひとりの意識改革でもあった。

社長決裁が必要な「残業チケット制」。差し戻されることも

 最初に取り組んだのは、グループウェアの導入だった。それまで口頭で行われていたもろもろの社内コミュニケーションを、効率化しようと考えたのだ。制作案件ごとの情報共有をリアルタイムに行えるようにし、紙ベースで進められていた事務手続きをデジタル化した。「これらの打ち手によって、コミュニケーションの食い違いや不必要な打ち合わせなど、社内に存在する無駄が明確になりました」と水澤さんは話す。これを元に、クライアント案件が開始する際の最初の目線合わせをしたり、個々のメンバーが日々の報告書を提出し作業上の無駄を点検したりといった、ワークフローの見直しを行った。

 最も大きな変革となったのは「残業チケット制」の導入。これは各社員の残業を許可するための申請用チケットが毎月配布されるというもの。どうしても残業が必要となった際は、グループウェア上でこのチケットの使用を申請する。枚数は、月間で7枚だけだ。決裁は社長が行うのだが、「本当にその残業が必要なのか、コミュニケーションします。作業状況を見て申請を却下することも多いですよ」と吉田さんは語る。この取り組みによって、社員は容易に残業という選択肢を選べなくなってしまったのだ。


▲社内のロードバイク部

業界の慣習を変えていくイノベーター。それがピコナの目指す姿

社員の戸惑いを乗り越え、残業の80パーセント削減を実現

 これらの取り組みが実を結び、2014年9月には社員の月あたり時間外労働時間が平均20時間となった。2年弱で、実に80パーセントの残業削減を実現したのだ。当然、社員の日常は大きく変わった。

 「最近は、残業を申請することすら避けるようになりましたね」。CGデザイナーの松浦聖大さんは苦笑する。「1ケ月に残業できるのが7回だけ、しかも社長決済が必要と聞いて、最初は戸惑いました。それで仕事を進められるイメージが湧かなかったんです。それは周りのメンバーも同じだったと思います」。

 だが、吉田さんや水澤さんとの会話で、会社が何を実現したいのかはよく分かった。自分自身も、勉強する時間を増やして創作意欲に磨きをかけたいと思っていた。トータルの作業ボリュームを振り返ると、時間をかけてもかけなくても成果は変わらない。短い時間で同じレベルのアウトプットができるよう、時間管理の意識が格段に高まったという。「それでも多少の残業が必要になる場合はあります。チケットを使わざるを得ないときは、どう社長にプレゼンするかを必死で考えています」と打ち明ける。この過程が、制作プロセスの見直しにもつながっている。

ピコナの成功例を、業界全体に発信していく

 社員の総労働時間が大幅に減った一方で、2014年度の売上高予測は前年度を大きく上回る見込みだ。プライベート時間に社員が創作したアニメーション作品が商品化されるなど、日常業務に縛られない働き方は会社にとってもプラスに働き始めている。また、社内にロードバイクをする部活ができるなど、仕事以外でのコミュニケーションの場も広がった。時間管理が形になり、定着化した今、吉田さんの思いは業界全体に向かっている。

 「クライアントはもちろん、多くの関係会社と協働しているので、自社だけが変わればよいというわけにはいきません。ウチの社員が早く帰って、関係先に遅くまで働かせているというのもおかしい。今後は、ピコナで起きた変化をポジティブに発信して、業界の慣習を変えるような取り組みをしていきたいと考えています」と吉田さんは力強く語る。

 たくさんの人々に夢を与え続けるアニメーター集団。彼ら自身が夢を描き、笑顔で働く姿が広がっている未来には、さらに多くのヒット作が日本から生み出されていることだろう。

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