• TOP
  • アーカイブ
  • 社内コミュニケーション活性化の秘訣は「大人たちが楽しむ」こと! 急成長&多拠点化で変わる職場を社内ラジオがつなぐ

社内コミュニケーション活性化の秘訣は「大人たちが楽しむ」こと! 急成長&多拠点化で変わる職場を社内ラジオがつなぐ

株式会社パネイル
取り組みの概要
急激な事業拡大局面で社内コミュニケーションを活性化させるための施策として社内ラジオ「パネラジ」を開始。社長の名越さんがメインパーソナリティを務め、毎週金曜日に配信している。会社のビジョンを語る場とは切り分け、ラジオではフランクに、プライベートのことも語る。社員からラジオネームで投稿される鋭い質問に答えたり、社員をゲストに招いたりと、双方向のコミュニケーションツールとして活用され、社内放送とは思えないクオリティの高さが特徴。過去放送分もアーカイブされており、新たに入社したメンバーもさかのぼって聞くことができる。 東京本社だけでなく名古屋・大阪・福岡の各拠点メンバーからも積極的に投稿があり、3カ月に一度全社員が集まる総会の場では、ラジオをきっかけに初対面メンバーが打ち解けられるようになった。
取り組みへの思い
投稿を募集して毎週配信する音声コンテンツだからこそ、社長や社員同士の双方向のコミュニケーションにつながっていると感じている。社長をはじめ、広報や人事のメンバーが「適度にふざけながら」楽しく運営することが大切だと思う。
受賞のポイント
1.社内ラジオという手法で社内コミュニケーションを変えた
2.音声コンテンツのトレンドをうまく社内に取り入れている
3.「自分も出演したい」という社員の思いにも応えられる

社長に質問をぶつけ、ゲストとしても参加できる社内ラジオ

株式会社パネイルでは、毎週金曜日に多くの社員が心待ちにしている「更新」がある。それは一斉メールやグループウェアに記載される連絡などではなく、自社オリジナルのラジオ番組。そしてメインパーソナリティは社長。広報や人事を担う人たちが主要メンバーとなって社員の耳に届けるラジオが、急成長する組織のコミュニケーションを支えているという。

コーポレート本部 管理部 広報IRG マネージャー/村岡侑紀さん

堅いイメージだった「社員弁護士」の意外な素顔

パネイルのオリジナルラジオ番組「パネラジ」がスタートしたのは2019年8月だった。以来、毎週金曜日の更新を重ね、11月時点では第14回まで配信済み。社内で使用するチャットワーク上で最新回のURLを告知し、過去放送分もすべてアーカイブされている。

社内ラジオといっても、固い業務連絡はほとんどない。メインパーソナリティを務める代表取締役社長の名越達彦さんとともに広報や人事メンバーがトークを繰り広げ、社長のプライベートに迫ったり、社員からの質問に答えたりと、笑いに包まれたにぎやかな放送が続けられている。さらに運営メンバー以外の社員がゲストとして登場することもある。

「社内からの反響が高く、個人的にもいちばん面白かったのは『歌う弁護士』の会です」

運営メンバーの中心的存在である村岡侑紀さん(コーポレート本部 管理部 広報IRG マネージャー)はそう振り返る。

「法務部門に男性の社員弁護士が入社したんです。多くの部署では法務との関わりが薄く、日常的にコミュニケーションを取る機会も少ないので、パネラジに出演してもらって人となりを伝えることにしました。その社員弁護士は趣味でボイストレーニングに通っていると聞いていたので、本人の同意のもとに番組内でアカペラを披露してもらったのですが、なんと選曲はアニメソング。低音パートがシュールに響きわたり、弁護士という堅いイメージとのギャップが新鮮で、大反響でした」

別の放送回では、社長宛に寄せられた「社長業と家庭を両立する秘訣は?」という質問に真っ向から答えた。子育て中の社員がゲストとして参加し、日頃の子どもとのやり取りや、子育ての愚痴などをざっくばらんに話す。「社長と社員」という立場では日頃なかなか話せないことも、ラジオ番組という環境だから打ち明けられるのだという。

一方では、「社長は事業についてどう考えているんですか?」といった真面目な質問について回答する会もある。「みんなが聞きたいことを聞く、視聴者ファーストの番組」が村岡さんをはじめ運営メンバー全員の共通スタンスだ。匿名のラジオネームで投稿できることもあり、東京の本社だけでなく、名古屋・大阪・福岡の各拠点からも多数の質問が集まっている。

聴きながら、ついニヤけてしまうラジオ

パネラジを欠かさず聴いているという「リスナーの声」もご紹介したい。

「私は福岡のカスタマーサポート拠点で働いています。お客さまと直に接する部署なので、他拠点の営業さんとの関わりは多いのですが、東京本社のエンジニアやバックオフィスの人たちとはチャットワーク上での業務連絡のみでしかやり取りをしていませんでした。そんなこともあって、法務の弁護士さんが登場した回は驚きました。放送がとても面白くて、法務という部署を身近に感じられるようになったので、本社での総会や懇親会の機会には弁護士さんに話しかけにいきたいと思っています」

(安藤杏子さん/営業推進部 福岡)

「資料をまとめる仕事など、淡々と作業するときに聴いています。パネラジでは『唐揚げのレモンについて語る』など、業務とは関係のないテーマについて大の大人が本気で話していて、聴きながらついニヤけてしまいます。社長と1対1で話すとなると立場上どうしても緊張してしまいますが、ラジオを聞くだけなら社長が話している様子も気楽に受け止められます」

(重田智幸さん/コーポレートデザイン室 アシスタントマネージャー 人事)

一方では、パネラジに出演することで恩恵を受けている社員もいる。

「僕は41歳で、社内ではすっかりおじさんキャラになってしまいました。おじさんはただ長く生きているだけなのに、若い人からは『面倒くさい存在』に見られがち。振り返れば自分も20代の頃は、40代のおじさんにどう絡んでいけばいいか分かりませんでした。だから、パネラジで自分のことを発信する機会をもらえるのはうれしいですね。『カラオケでよく歌う曲』などを語り、僕の趣味について若手から気軽に声をかけてもらえるようになりました」

(加藤和幸さん/営業本部 営業部 名古屋営業G 部長代理)

「私がゲスト参加したのは恋愛相談の会でした。この会社は真面目な人が多いから、このネタなら取り上げられると思って渾身の思いを込めて投稿したんです。それくらい、パネラジに出たかった。中学生のときからラジオが大好きで、一度はラジオに出演するのが夢でした。放送では同じくラジオが大好きな社長とラジオ愛について語り合いました」

(渋谷奈美さん/開発部 ディレクター)

こうして、回を重ねるごとにファンを増やしていったパネラジだが、当初は試行錯誤を繰り返していたという。会議室に関係者が集まり、マイクなど社内にある身近な機材だけで収録を始めた。運営メンバーは人気ラジオ番組を聴いて勉強しながら、はじめの頃は脚本も準備していた。

この本気度は、どこからやって来たのか。

「いい大人たち」が、適度にふざけながら

事業拡大と多拠点化で、社内コミュニケーションが希薄になってしまう。どんなにツールが発達しても避けられない成長企業の課題に、パネイルもさらされていた。東京・名古屋・大阪・福岡に拠点が分散し、「社員の約半分が直近1年以内に入社している」という環境の中で、広報と人事のメンバーはコミュニケーションの活性化を課題としていたという。

社内報の「質問コーナー」で得た意外な発見

「パネイルでは基本的に新卒採用は行っておらず、中途採用が中心です。そのため社会人歴10年くらいの社員が多く、社内では自分たちのことを『大人ベンチャー』と言っています」

人事を管掌する山下嘉彦さん(コーポレートデザイン室 室長)はそう話す。風土の共有が進みやすいと考えられる新卒採用に対し、中途採用が中心の場合は、一人ひとり個の立ったメンバーが集まることとなり、時として「まとまりづらい組織」になってしまうこともある。今後、200人や300人といった規模になっていくことを見越して、社内コミュニケーションを活性化させることを潜在的な課題として感じていた。

そこで広報と人事が取り組んだのは社内報の発行だった。この取り組みで、広報の村岡さんは意外な発見を得ることとなった。

「社内報の企画として社長宛の質問を匿名で募集したところ、人となりやキャラクターに関する内容が多かったんです。『普段は何をしているんですか?』『ガジェット好きの社長がおすすめするパソコンは?』『なぜサラリーマンを辞めて独立したの?』といった形で、さまざまな質問が寄せられました」

(村岡さん)

特に気づきがあったのは「会社に短パンで来てもいいの?」という質問だったという。これに対して社長の名越さんは「NGというルールはないから、いいんじゃないか」と答えている。日頃の業務の現場では尋ねにくいことも匿名であれば質問でき、想像以上の数が集まった。そんな気づきを共有しながら、一つひとつの質問への回答をまとめる作業の中で社長がふと口にしたのが、「これ、なんだかラジオっぽいね」という言葉だった。

「そもそも、名越は中学生の頃からハガキ職人(ラジオ番組に積極的にハガキで投稿する人)だったというくらい、大のラジオファン。そこから『自分たちで社内のラジオ番組を作ろう』というアイデアにつながっていきました」

(村岡さん)

継続的に質問を受け付けて社長が答えていくだけなら、社内報を発行し続ける方法でもいいのかもしれない。しかし、運営メンバーの1人である鈴木夏里さん(コーポレートデザイン室 マネージャー)は「社員に質問を書いてもらうのも大変だし、回答までの間にどうしてもタイムラグが生まれてしまう」と語る。

「グループウェアなどを活用してリアルタイムにコミュニケーションを取る方法もありますが、それだと『生っぽさ』『面白さ』が失われる気がしていました。ラジオは一方向の発信のように見えるかもしれませんが、社員の声を踏まえて毎週番組を作ることで双方向感を生み出せています。また、ラジオを聴く行為そのものが作業フレンドリーでもあります。仕事をしながら聴くだけで社内のトレンドや他部署の人のことが分かるのは、ラジオならではの価値だと思います」

(鈴木さん)

代表取締役社長/名越達彦さん

反対する人はあえてゲストに呼び、巻き込んでいく

こうして動き始めたパネラジ。社長が前面に立って動かしているとはいえ、突飛にも思える社内ラジオという企画に対して、当初は戸惑いの声や反対意見もあったという。

鈴木さんは「反対している人はそもそもラジオが始まっても聴かないだろうと思ったので、あえて番組ゲストに呼んで巻き込んでいきました」と打ち明ける。社員をゲストに呼ぶ際には、なるべく忙しくないタイミングを見計らったり、該当社員の直属の上司に根回ししたりといった工夫も忘れなかった。

山下さんは人事の立場として、「考えすぎて何もやらないのはよくないと思っていました」と振り返る。

「社員と面談をする中で、拠点間や部署間の距離が開きつつあると感じていました。『何かやるべきだ』とは思っていたんです。規定やルールについては簡単に動くべきではないかもしれないけど、コミュニケーションについては、面白そうなところから身軽に始めてもいいのでは。そう考えて踏み出しました」

(山下さん)

村岡さんは「大人が楽しんでいるから続けられるのだと思います」と手応えを教えてくれた。

「一定の社会人経験があるメンバーが多いパネイルで、パネラジは社長自身が先頭に立ち、広報や人事のメンバーが運営しています。もしパネイルに新卒メンバーなどの若手がいて、その人たちに運営させていたら、『もっと本業に集中させるべきじゃないか』という批判を浴びていたかもしれません。でもパネラジは社長をはじめとした『いい大人たち』が本業をしっかりこなした上で、適度にふざけながら続けています。仮に批判めいた思いを持つ人がいても、『もう勝手にやってよ』で済むんじゃないでしょうか」

(村岡さん)

どんな会社でも抱える可能性があり、時として想像以上に根深いこともある社内コミュニケーションの課題。パネラジの意義は、大人たちがちゃんと楽しみながら解決に向けて動いていることにこそあるのかもしれない。

(WRITING:多田慎介)

※ 本ページの情報は全て表彰式当時の情報となります。

第6回(2019年度)の受賞取り組み