いよいよ景気回復か!?

不透明な時代を乗り切る!「強い企業」の条件は?

100年に一度と言われる大不況。未曾有の不景気の波が日本企業を襲ったが、ここにきて、いよいよ景気が回復すると考える企業も増えてきたようだ。新たな局面を迎えつつある日本経済。今後、企業に必要な力とは一体何だろうか。

2010年4月28日

<ADVISER>(五十音順)

【事業戦略コンサルタント】
百年コンサルティング株式会社 代表取締役 
鈴木貴博氏
東京大学工学部物理工学科卒業後、ボストンコンサルティンググループに入社。分析力と洞察力を武器に企業間の複雑な競争原理を研究し、伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループの起業に参画後、2003年に独立、百年コンサルティングを創業。以来、大企業を中心にアドバイザーとして活躍。著書に『がつん!力』『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(ともに講談社)『会社のデスノート トヨタ、JAL、ヨーカ堂が、なぜ?』(朝日新聞出版)ほか。

【人材・組織コンサルタント】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部 東京本部 組織人事戦略部 プリンシパル
吉田 寿氏
早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。富士通人事部門を経て、1990年に三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。 「人」を基軸とした企業変革の視点から、人材マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などトータル的な組織・人事戦略コンサルティングに携わる。主な著書に『人事制度改革の戦略と実際』、『人を活かす組織が勝つ』(以上、日本経済新聞社)『リーダーの器は「人間力」で決まる』(ダイヤモンド社)など。

リストラ、経費削減・・・企業が取るべき次の展開は?

2008年秋のリーマンショックをきっかけに日本に押し寄せた大不況の波。苦戦を強いられた企業は、リストラ、経費削減、赤字事業からの撤退など、さまざまな戦略で生き延びてきた。しかし、このところ「今年の夏から秋にかけて景気が回復するのではないか」と予測する経済評論家が急増。混とんとする日本経済で、さらなる成長を続けるために、企業が持っておくべき「力」とはどんなものなのだろうか。「マーケット戦略」「人材育成」という2つの視点から、気鋭のコンサルタントに話を聞いた。

[鈴木氏]市場をコントロールできる企業が、時代を制す

巧みなブランド戦略による「価格コントロール力」

市場をコントロールするためには、まずは「価格をコントロールする力」を持っているといいでしょう。商品の価格をコントロールできるということは、「デフレだから値段を下げざるを得ない」という状況に陥らないですむということです。つまり、景気に全く左右されずに、マーケットに影響力を持ち続けられるのです。代表的なのがユニクロ(ファーストリテイリング)でしょう。イメージ戦略により、安くていいものを提供すると思われていますが、実は数年前から考えると、多くの商品が値上がりしているのです。その背景には、巧みなブランディングにより、価格コントロールが働いていて、モノの価値や品質を上げつつ、価格を上げることに成功している。理想的な市場への影響力といえるでしょう。

値崩れから身を守る「供給量コントロール力」

在庫に泣く人「価格コントロール」ができない理由の一つに、「供給量コントロール」ができないという現実があります。日本のメーカーの多くが、「市場で必要とされる以上の量を供給→余る→デフレになり価格が下がる」というスパイラルに陥っています。これでは、景気が悪いときほどその影響をダイレクトに受けてしまいます。その打開策の一つが、徹底したマーケティングによる供給量のコントロールです。これにより値崩れが避けられ、価格コントロールも実現しやすくなる。
掃除機で有名なダイソンの他、アップルやフィリップスといった海外メーカーの多くは、この方法で世界中の市場に影響力を持っているんです。日本企業ではパナソニック。国内メーカーには珍しく世界同時サプライチェーンを実現し、「作りすぎないこと」で適正価格を維持させています。例えば「ラムダッシュ」というひげ剃りは、新商品が投入されても、値崩れするどころか旧製品の希少価値が上がり、より高い値段で販売されることもある。理想的な市場作りといえるでしょう。

買い替える理由を広めて活性化させる「市場メイク力」

80年代、日本のメーカーは、商品を買い替えてもらうための「口実」を作ることで、新たな市場をつくってきました。しかし最近は、技術力がどんどん高まり、商品が長持ちすること。「エコ」や「清貧」という考え方が主流になってきたことなどから、「なるべく商品を買い替えないほうがいい」という風潮にあります。しかし、そこに配慮し過ぎて新しい商品が売れないのでは困りもの。その辺のバランスを考えながら「買い替える口実を作ってあげる力」を持ち、市場を牽引することが企業に求められるでしょう。

[鈴木氏]不景気でも「投資」を惜しまなかった企業が生き残る

面接に行く人

不景気に左右されなかった「人材力」

景気が悪くなると、企業は人件費を減らすことでコスト削減を考えます。今回の不況でも、多くの企業がリストラをしましたよね。しかし、人材は企業の要。急激なダイエットが身体によくないのと同じように、急激なリストラは企業にとっても悪影響を及ぼします。やせ細った挙げ句に体力がなくなり、景気が回復したときに持ち直すだけのパワーが残っていないという悪循環に陥ってしまうのです。今後は、なんとか体力を温存させて不景気を生き抜いた企業が伸びていくでしょう。
また、不景気なときほど、低い競争力で優秀な人材が採れるはずですから、そういうときに採用を行う企業は賢いとも言えます。不景気に人に投資した企業というのは、体力が強化され、今度さらに市場に影響力を発揮できるという好循環を引き寄せることになります。

技術を発揮できる「設備投資力」

核となる技術を持っていることは当然必要ですが、その技術を発揮できる環境があるかどうかも重要なポイントになるでしょう。例えば、先に挙げた価格や供給などをコントロールしてマーケットに影響力を持っている企業は、高性能の製品を研究室で開発できるだけではなく、その性能のまま量産できる設備投資や、ブランディングの裏づけとしての高度な市場調査力などができている。それでこそ技術に対しての投資をきちんと行っている企業だと言えるでしょう。

進出先で「信用される力」

85年の円高をきっかけに、製造業を中心に日本企業の海外進出は盛んになりました。今後は内需が期待できない分、グローバルビジネスを展開していかねばなりませんが、そのために一番ネックとなるのが、「海外で信用をどのように得るか」なんです。商品の性能や価格、日本での販売実績ももちろん大切ですが、その土地でどれだけ信用を得ることができるかがポイントになる。海外でブランドを根付かせ、取引先や消費者と信頼関係を築いていくのには、とても時間がかかること。どれだけ商品に対し哲学を持てるか、投資できるかが、わかれ目でしょう。

[吉田氏]今後、「採用する力」がますます必要となる

少子化に向けた「採用ダイバシティ力」

どんな企業も、結局は「人」。いい人材がいない企業は、自然に淘汰されます。
リーマンショック以降、多くの企業は大量に人材を放出しました。景気が戻りつつあるからといって、いなくなった人員を補充するために大量に採用するかといったら、そんなことはなく、「先の読めない不透明な時代だから、しばらくは様子見をしよう」という企業がほとんどです。つまりは、「このまま少数精鋭で、優秀な人材だけ確保したい」というのが企業の本音なんです。
ただし、今後は少子化による人口不足が進みますから、有能な人材を確保するためには、これまで以上にさまざまな方面に目を向けなくてはならなくなるでしょう。女性の積極採用はもちろんのこと、高齢者や外国人、さらには障害を抱えた人々…というように、多様化する労働者に合わせた柔軟な採用計画を迅速に打ち立てられる企業でないと、まず生き残れなくなります。

経営ビジョンの「共有力」

人材が多様化するということは、企業にとって人材の採用がますます難しいものになるということ。そのため、企業の強みや弱みを客観的に見て現状を分析し、「なぜ、こういう人物が欲しいのか」という明確なビジョンを描ける力を持つことが重要になってきます。その上で経営方針をしっかり浸透させ、「企業に足りないこういう部分をこんな人材で補いたい」「この部分をさらに強化するために、こんな人材がほしい」といったビジョンに沿った明確な採用ができる体制作りが求められています。

本質を見抜く「人選力」

海外に行きたくない若者最近の若者を言い表す表現の一つに、「パラダイス鎖国」という言葉があるのをご存知でしょうか。「わざわざ大変な思いをして海外に出るのはおっくう、国内に留まりたい」という志向を持つ人が多いことからそのような言葉が生まれました。内需の拡大が見込めない時代に、アジアなど海外戦略を打ち立てていくのは企業の生命線であることも多い。にも関わらず、「パラダイス鎖国」志向の若者を採用してしまっては、成果を出すのにかなりの時間を要してしまいます。若者世代の価値観は多様化しています。そうした若者の本質を見抜くためには、企業にはより深い「人選力」が求められるというわけです。

[吉田氏]採用した人材をどう配置し、育成していくかがカギ

マネージャー

人材を巧みに動かす「プロ・マネジメント力」

今後は大量採用はせず、少数精鋭で勝ち残っていこうと考える企業が多いわけですから、限られた人材を有効活用できるかどうかが、企業の命運を左右することになるでしょう。そのためには、社員一人ひとりの適正をきちんと見抜いたうえで、最も力が発揮できる場所に配置できるかどうかが、企業の成長のカギを握ります。
また、個人の価値観など、あらゆるものが多様化している現在において、ますますマネジメントは難しくなってくる。つまり、より一人ひとりと向き合った、専門職としてのマネジメントスキルが求められるということです。そうした「マネジメントのプロフェッショナル化」について考えない企業は、多様化する社会から取り残されるでしょう。

仕事の基礎となる「ソフトスキル教育力」

「コミュニケーション力」「ファシリテーション能力」「マネジメント能力」「コーチング」といった基礎となるスキルのことを「ソフトスキル」といいます。これまで多くの日本企業では、ソフトスキルは教育するものではなく「身体で覚えるもの」という風潮がありました。しかし、グローバル化が進み、異文化コミュニケーションの重要性がうたわれる昨今、それでは世界に通用する人材の育成は無理でしょう。欧米や中国のように、企業の教育によってソフトスキルを身につけられるような環境整備をどれだけしているかが問われます。

時代に応じた「成果主義見直し力」

業績を上げるのが難しい時代こそ、成果主義の見直しが必要です。成果主義そのものは決して悪いものではないのですが、時代に合う制度に変えていく必要があります。例えば、「個人だけではなくチーム単位での評価をも重視する」「短期ばかりでなく中長期での結果を求める」「成果とともにプロセスを重視する」というように評価軸を見直すわけです。そうすることで、従業員はさまざまな形で確実に成果を出すことができ、成功体験が重ねられることでモチベーションがアップする。結果として企業力を上げることにつながります。

どんな景気でも「基礎体力」を築くことが大事

不景気が底をついたといわれて久しい。今後企業に求められるのは、不景気を乗り越えるための力ではない。どんな景気の波が来ても左右されない「基礎体力」を、普段から作っておくことが大事なのだ。その核となるのは「人材」の力。どんな時代でも、人材の採用・育成に力を注いでいた企業こそが、次の時代を担っていくのではないだろうか。

今後伸びる企業が、積極的に動くことも!
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EDIT
高嶋ちほ子
WRITING
志村江
PHOTO
平山諭 
ILLUST
山田吉彦

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