見かけの給与や条件だけでは見えない“心理的報酬“

職場と仕事の満足度を決める「働きごこち」徹底比較

仕事を選ぶ時に、忘れてはいけない指標がある。それが「働きごこち」というものだ。「自分がどんな環境で、何を大切にしながら働きたいのか」を明確にしておけば、転職時の仕事選びはもちろん、日々の仕事においても、より自分らしく、満足度高く働けるはずだ。そこで今回は、3職種の合計9人に、それぞれが大切にしたい「働きごこち」について聞いてみた。あなたの場合はどうなのか、考えるきっかけにしてみてほしい。

2012年10月31日

「目に見える情報」だけで、会社を選んではいけない

会社選びの大事な指標「働きごこち」は個人差が大きく、多様性もある

仕事探しをする際、求人広告から読み取りやすい「報酬」「応募条件」「スキル」などに目が行きがちだ。確かに、それらは仕事選びにおいて欠かすことのできない大事な指標だ。
しかし、もう一つ大事な指標がある。それが、「働きごこち」だ。自分自身がどのような志向・価値観を持ち、何を大切に働きたいと考えるのか。心の中で抱いている「こうありたい」と願う気持ちが満たされる職場かどうか見極めることが、実は仕事の満足度を大きく左右する。こうした4つの指標は、どれも欠かしてはいけない大切なものだ。大事なのは、どのようなバランスを求めているのか考えておくこと。そのうえで、自分自身はどんな「働きごこち」を大切にしたいのかを考えてみてほしい。さらに、大切なものについて優先順位をつけておくことも忘れないように。「人や社会から喜ばれる仕事をしたい」「人と人をつなぐ場をプロデュースしたい」「評価基準が明確な組織で働きたい」…。さっそく、以下の診断も参考にして、あなたの希望を整理してみよう。

参考)迷える会社選びスッキリ解決チェック

ビジネスパーソン9人の「働きごこち」を比較

ここからは、実際のビジネスパーソンが「4つの指標のバランス」をどのように考えているのかを紹介。職種ごとに3人ずつに話を聞き、比較しながら見ていこう。あわせて、彼らが大切にしたい「働きごこち」についても、前記の診断で使用した項目をもとに選んでもらい、優先順位をつけてもらった。

営業職3人の「働きごこち」分析

まずは営業職。話を聞いた3人は、ともに保険会社の営業職として5000人規模の上場企業に勤務中。個人向けの商品の販売がメインで、メンバーのマネジメントを行いながら、既存顧客のフォローや、時には新規顧客獲得のために飛び込み営業も行う。 

【営業職】Case1:Aさん(30歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●周囲の人と競い合える組織           50%
●なるべく多くの人や企業と関わりたい      20%
●仕事を通じて、明確な足跡を残したい      15%
●昇進、昇格しやすく、若くして権限を持てる組織 10%
●複雑で困難な課題を扱いたい           5%


2度の転職経験があるAさん。その経験から、「報酬だけは譲れない」という。「自分自身の努力が報酬にきちんと反映されるかどうかで、仕事に対するモチベーションや満足度が全然違うことに気づきました。営業の醍醐味は成果が数字でわかりやすく表れることだと考えています。だから、常に明確な目標を持てることが大事です。もちろん、ほかの指標を軽視しているわけではありませんが、モチベーションが高くいられることで、多少の働きにくさも自分としては目をつぶれると思っています」
働きごこちについては、「周囲との関係性」を重視している。「ライバルと呼べるような、張り合える仲間が近くにいることで、困難な仕事でもくじけずに踏ん張れると思います。個人向けの営業は、『急に気が変わった』など、なかなか思うように進まないことも多々ある。そんな時に、刺激を与えてくれる仲間がいれば、気持ちが折れずに頑張れると思います」 

【営業職】Case2:Bさん(31歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●教育制度の充実した組織          30%
●成果だけでなく、プロセスが評価される組織 30%
●理念やビジョンが明確な組織        20%
●好きな業界や商品に関わりたい       10%
●専門分野を極めたい            10%


最初は「自分には向いていない」と思いながら、営業職として働き始めたBさん。「保険という商材には興味があったのですが、引っ込み思案な性格の僕に営業は向いていないと消極的でした。しかし、先輩方の話を聞いたり、場数を踏んでいくうちに、『努力しただけ自分にきちんと返ってくる、やりがいの持てる仕事』だと思うようになりました。それは報酬面でも、自分のスキルや経験という意味でもです。今の職場の雰囲気がよく、『自分は育ててもらった』という気持ちが強いので、働きごこちはとても大事だと痛感しています」
働きごこちについては、「報酬だけでなく,プロセスも見てほしい」と語る。「営業の面白さは、成果が目に見えやすいところ。一方で、成果を出すためには、人それぞれいろんな工夫をしています。そうしたプロセスこそが営業の個性。だから、そこに目を向けられる会社で働ければ、よりモチベーション高く頑張れるのでは。わからないことはそのままにしたくない性格なので、放任主義よりは、細かく面倒を見てくれる環境のほうが、イキイキと働けると思います」

【営業職】Case3:Cさん(31歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●データや状況などを細かく分析、探求したい 35%
●人や組織、社会に影響を与えたい      25%
●好きな業界や商品に関わりたい       20%
●成果だけでなく、プロセスが評価される組織 10%
●仕事だけでなく、個人の生活も重視する組織 10%


Cさんのモットーは「バランス感覚を大切にする」。「営業先でも、自分のキャリアアップを考える時でも、何かとバランスを重視する性格なんです。ただ単に優柔不断なのかもしれませんが(笑)、広く全体に目を通しておかない気が済まないんです。だから、仕事選びにおいても、4つとも均等に評価して決めたいと思ってしまいます」
働きごこちについては、本人も意外な結果が。「よく考えると、何事に対しても、足りないものを分析したり、どうすれば一段底上げできるのかをいつも考えている気がします。データ分析は得意だし、やっていて面白いですので、何かしらそういうスキルが活かせる仕事に携わりたいと思っています。今の仕事は、クライアントごとに性格や特徴も違えば、生活環境や将来への不安要因も異なります。マニュアル通りの、正解のやり方なんてないからこそ、今の仕事に面白味を感じているんだとあらためて気づくことができました。また、自分の介在価値を常に意識しているので、仕事を通じて何かしらの影響力が発揮できれば、より満足度が上がると思います」

ITエンジニア3人の「働きごこち」分析

続いては、社員数1000人規模のSI企業で業務システムの開発に携わる3人。製造業・サービス業のクライアント先に常駐しながら、会計処理や購買の在庫管理システムの開発・導入に携わっている。関わる案件の規模はそのときどきで異なるものの、現在はプログラマーとして100人規模のプロジェクトの一翼を担っている。

【ITエンジニア】Case 1:Dさん(29歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●事業や組織戦略などを広く考えたい        30%
●新しい事業や商品、サービスを提案し、創出したい 29%
●専門分野を極めたい               25%
●データや状況などを細かく分析、探求したい    15%
●人や組織、社会に影響を与えたい          1%


エンジニアの道を選んだのは、「勉強が好きだから」というDさん。「小学生のころから、コツコツと自分のペースで物事に取り組んだり、新たな発見に出会うことが楽しいと感じていました。もともとは研究者を志望していたくらい。今でも、プログラミング言語はもちろん、システムについての知識や資格を取得するのが好きです。『自分はこれができます』というのが比較的自分でわかっているほうだと思うので、求められるスキルを活かせる環境で働きたいという気持ちが強いですね」
働きごこちについては、「事業や組織戦略」に関わりたい希望がうかがえる結果に。「6年間エンジニアをやってきて、エンジニアが関われる領域は実は相当に広いということを感じ始めています。自分が何を学び、何ができるかで、可能性は大きく広がる。だから、努力が報われる仕事だと思います。もっと経営に近いところに興味を持つことで、仕事の幅が広がるのでは。30代は、いろいろな選択肢の中から自分の専門分野をちゃんと見つけて、『この道のプロだ』といえるような仕事をしていきたいです」

【ITエンジニア】Case 2:Eさん(30歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●周囲の人と競い合える組織        30%
●なるべく多くの人や企業と関わりたい   30%
●尊敬できる経営者や先輩、仲間のいる組織 20%
●教育制度の充実した組織         10%
●専門分野を極めたい           10%


プログラミング作業よりも、チームで働くところが気に入っているというEさん。「文系出身で、ゲームが好きだったので選んだ仕事でした。最初はもっと孤独で、機械のように“作業” する仕事だと思っていました。しかし実際は大人数でチームを組み、協力しながら何かを作りあげていく側面が強い。そこが面白い。与えられた役割の中で何ができるかをより考えるようになりました。今はまだC言語しか使えないため、仕事選びでは、それだけの知識・技術でできる仕事かどうかは大事です。ただし、教われる環境があれば、ほかの言語についても積極的に学んでいきたいと思います」
働きごこちについては、「人」を重視したいという。「コーディングを行う仕事そのものは面白いのですが、それは職場の雰囲気や尊敬できる上司など『環境』が整ってこそ楽しめるものだと思います。『自分を高めないと』と思わせてくれる同僚や、厳しく接してくれる上司・先輩・クライアントなど、自分の未熟さをわからせてくれる人に囲まれながら働きたいです」

【ITエンジニア】Case 3:Fさん(31歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●仕事だけでなく、個人の生活も重視する環境 40%
●人や組織、社会に影響を与えたい      30%
●物事を論理的に考えたい          20%
●仕事を通じて、明確な足跡を残したい     6%
●注目され、脚光を浴びている組織       4%


給与だけで会社を選んで失敗した経験を持つFさん。「1社目の給与があまりにも低かった反動で、勤務条件をあまり重視せず、給与面だけで選んだのが今の会社です。学生時代からプログラミングが好きで勉強していたので、スキル面での不安はありませんでした。しかし、担当するプロジェクトは小人数のチーム制で、納期もタイトなものばかり。会社の体質的にも休日出勤が当たり前。激務が続いて体調を崩すこともありました。最近は社全体の仕事量が減ってそうでもなくなりましたが、応募条件はきちんと考慮する必要があるなと思いました」
働きごこちについては、「世の中に影響を与えられるような仕事をしたい」と語る。「もの作りに関われる仕事ですから、形に残せることが何よりの醍醐味。将来、子どもに『あれはお父さんが作ったんだ』と話せるような仕事をするのが、一番の目標です」

Web系企画職3人の「働きごこち」分析

最後は、インターネットサービスを手掛ける社員数500人規模の企業で、新サービス・新商品の企画やマーケティングなどを担当している3人。

【Web系企画職】Case 1:Gさん(30歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●一体感やチームワーク、団結力のある組織     30%
●新しい事業や商品、サービスを提案し、創出したい 30%
●人や社会から喜ばれる仕事をしたい        30%
●仕事だけでなく、個人の生活も重視する組織     5%
●昇進、昇格しやすく、若くして権限を持てる組織   5%


「今の職場には一体感が少ない」と語るのはGさん。「もともと体育会だったこともあり、『一致団結』『当たって砕けろ』といったチームワーク、チャレンジ精神が僕の大事な価値観の一つとなっています。そういう気持ちは、社員一人だけ頑張ってもどうにもならない。それが今の職場で感じている不満です。もちろん、それなりに成果も出ているし、楽しいと感じる仕事は多い。しかし、もっと価値観の合う仲間と、全力でぶつかりあえるような仕事の仕方ができるといいな、というのが根っこにあります。だから、働きごこちは大切にしたいです」
最近はSNSへの関心が高まるなど、「チャレンジしたいことはたくさんある」と語る。「積極的に発言したいタイプなので、『またか』と思われながらも自由に意見できたり、はなから否定せずに何でも面白がってくれるような社風だと伸び伸び働ける気がします。一方で、メリハリも大事。残業は厭わないのですが、休日出勤はしたくないですね。あと、休日にあったことを仕事中に無駄話できるような、気さくな雰囲気があるといいですね」

【Web系企画職】Case 2:Hさん(30歳・女性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●なるべく多くの人や企業と関わりたい       40%
●評価基準の明確な組織              25%
●新しい事業や商品、サービスを提案し、創出したい 15%
●理念やビジョンが明確な組織           11%
●尊敬できる経営者や先輩、仲間のいる組織      9%


「違う価値観に触れることが仕事の楽しみ」と語るHさん。「企画の仕事をしていると、たくさんの部署や社外のスタッフ、関係者の人たちと接する機会が多いです。異なる価値観を持つ人と、議論を重ねながら一つのものにまとめていく作業がとても楽しいと感じています。だから、多くの人と触れ合える職場で働きたい。また、報酬面できちんと評価されることは絶対に必要だと考えています。私は『与えられた役割の中ではいくらでも努力するので、ちゃんと評価してほしい!』というタイプだと思います」
働きごこちについては、一緒に働く人や評価面はもちろんだが、「理念やビジョンを特に大切にしたい」と語る。「組織人として会社の中で働く以上、会社の方針や理念・ビジョンが合うのと合わないのではモチベーションに大きな違いがあると思います。特に商品やサービスの企画を行う仕事に携わる以上、理念に納得できなければ、納得のいく仕事はできませんから」

【Web系企画職】Case 3:Iさん(29歳・男性)の場合

<「働きごこち」の何を重視するか>
●尊敬できる経営者や先輩、仲間のいる組織     50%
●成果だけではなく、プロセスが評価される組織   20%
●仕事を通じて、人を育てたい           15%
●新しい事業や商品、サービスを提案し、創出したい 10%
●好きな業界や商品に関わりたい           5%


人からは「バランス重視な性格」と言われるIさん。「自分でもそう思います。できるだけ広く視野を持ち、『このポジションがいないと思えば、自分がその役割を担う』という感じ。だから、いろいろな価値観の人にもまれる組織だと、わくわくしながら働けるのではと思っているんです。報酬面は生活できればいい程度。転職するなら、商品企画やSNSを使ったマーケティングの仕事を続けていきたいです」
働きごこちについては、「上司」のウェートが高く占めている。「今の上司は、細かく干渉してくるタイプなのですが、とても苦手。人づきあいが仕事に与える影響は大きいと思うので、尊敬できる上司や先輩の下で働きたいという気持ちが強いですね。マネジメントにも興味があり、もっと勉強したいので、『こんな風になりたい』と思える上司と出会える職場で働きたいです」

自分が大切にしたい「働きごこち」は何だろうか?

今回は、9人のビジネスパーソンにそれぞれ仕事選びで大切にしたい指標について聞いてみた。特筆すべきは、同じ職種、似たような環境・属性で働く人であっても、決して同じ結果にはならないということ。つまり、「働きごこち」というものは個人差が大きく、多様性がある。求人広告のデータ欄を見るだけではわかりにくいものだからこそ、自分なりの指標をきちんと持っておき、仕事選びの際の一つの視点として意識しておくことが大切なのだ。「条件はぴったりなのに、仕事が楽しくない」「好きな仕事なのに、やりがいが感じられない」などと後悔しないためにも、「これだけは譲れない」という基準を明確化しておこう。

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EDIT&WRITING
志村 江

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