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2012年版「グローバル採用の実態」徹底分析
「グローバル人材の採用が活発化」といわれるが、その採用の中身について細かく語られることは意外と少ないのではないだろうか。どのようなポジションで、どんな仕事ができるのか?求められる語学力はどの程度?…今や当たり前のようにいわれる「グローバル採用」について、いま一度、徹底分析する。
2012年9月19日
<ADVISER>
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株式会社リクルートエージェント |
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ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社 |
グローバル採用の概要
求職者の語学力の問題で採用が進んでいない求人も多い
ひと言で「グローバル人材」といっても、仕事内容はもちろん、勤務地や使用言語などによって動向は大きく異なるもの。そこで、まずはセグメントに分け、求人が増えているところについてリクルートエージェントに話を聞いた。上記の表で○がついている部分の求人が比較的多くなっているようだ。
日本語の使用だけで働ける仕事には求職者も多く、海外に興味のある若手ポテンシャル層を中心に採用に至るケースも多くなっている。一方で英語が必須の仕事については、求人数が多く企業の採用意欲も高いものの、転職希望者に求められる語学力の問題もあってなかなか採用が進んでいないという。
グローバル採用が進んでいる業界
幅広い業界で求人増。若手を積極採用する動きも
これまでは大手商社やメーカー、一部のネット企業が積極的にグローバル採用を行ってきたが、ここにきて小売りや流通、食品、医薬品、不動産などあらゆる分野で求人が増え始めている。それも、いわゆる大企業ばかりではなく、社員十数人くらいの規模の企業まで、積極的に採用意欲を高めているのだ。
「特に小売りや流通、飲食などは、これまでは新卒採用がメイン。ノウハウをしっかり伝え、自社のDNAを持った幹部候補人材を育成するスタイルでした。そのため、15年ほど前からグローバル人材を意識して採用してこなかった企業が多いのです。ここ数年でいざグローバル展開となったときに、中途採用に頼らざるを得ないという背景があります」(河本氏)
また、業界に関係なく25歳から35歳くらいの若手の採用が目立つという。
「確かに、業務経験豊富で語学力もあるベテラン人材を豊富に抱える企業は多くあります。しかし、大手になるほど次世代人材の育成も同時に視野に入れています。若手社員を2、3年間は国内で育成し、海外駐在を経験した後にマネージャーに任用というビジョンを描いているのです」(河本氏)
日系企業のグローバル採用について
海外進出のフェーズによって募集内容が異なる
続いて、企業の資本別に見ていく。まずは日系企業の海外進出に伴うグローバル採用から。
企業の進出先を地域別で見ると、アジアを中心に、タイやインドネシアなどの東南アジアが急激に増えている。
「いわゆる生産拠点だったアジア諸国が、『消費の期待できるマーケット』として捉えられるようになり、あらゆる企業が積極的に進出を始めたことが大きいですね。中国がマーケットになり得るとわかったことで、タイやインドネシア、そしてブラジル・ロシア・インドなどのBRICs諸国が、次の期待できるマーケットとして注目を集めています」(河本氏)
各企業が募集する人材については、海外進出の段階ごとに異なる。以下の5段階に分けて整理しておこう。
(1)海外進出計画が立ち上がったばかりの企業
まだ海外拠点もなく、どこの国にどのようなニーズがあるのかを探る段階。海外に出向き、商品やサービスの営業活動をしながら情報収集し、“ビジネスの種”を見つけるための海外営業の募集が多い。
(2)海外進出が具体化している企業
具体的な商品・サービスの知識を持つ人材は豊富にいるが、現地のマーケティングはまだまだ不十分。リサーチ内容をもとに、商品開発など企画に落とし込める人材が必要となる。
(3)海外進出したばかりの企業
まだまだ現地法人の大半が日本人の場合、現地スタッフの採用を増やし、地域に根ざした組織として整えていく必要がある。体制作りのための人材採用ができる人事や、経理、法務といった管理系のポスト、または現地駐在できる若手営業職の募集が増える。
(4)現地法人を整えた企業
現地の人だけで完結させられる仕組みをいかに作っていけるかが、次なる課題。現地の習慣がわかっていることを前提に広く人材育成ができるマネジメント職や、具体的な技術について現地で教えられるエンジニアなどが求められる。
(5)海外進出がほぼ完了した企業
製造・販売・マーケティング・開発といったほぼすべての拠点が揃えば、現地法人のトップをどう育てていくかが課題となる。また、日本から現地をどうコントロールしていくかも重要に。海外事業管理を担うマネジメント層のポジションを募集する場合が多い。
(1)(2)(3)では海外営業の求人ニーズが最も多いが、段階を経て(2)はマーケティング、(3)は人事や経理などのニーズが強まってくる。一方でこんな話も。
「円高の影響もあり、あらゆる業種において海外でのM&Aが盛んです。そうすると、純日系な企業が、ある日突然にグローバル企業になってしまうこともあるのです」(大山氏)
その場合は、現地法人、本社機能ともに早急な体制構築の必要に迫られる。(2)から(5)を短いスパンで進める場合も多いという。
外資系企業のグローバル採用について
募集はほぼ全職種。本国仕様の進め方が求められる
今や多くの外資系企業が日本に進出している。欧米はもちろん、オランダ、スウェーデン、ドイツといった国々の企業は、会社名や商品・サービスがすぐに浮かぶものも多いのではないだろうか。
「外資系企業にとっての日本とは、あくまで出先機関の一つです。よって、日本というローカルをマネジメントすること、そして本国にその内容をレポートすることが重要な仕事となります。日本を拠点にアジア・パシフィック地域を統括するといった場合もありますが、基本的には勤務地は日本です」(大山氏)
最近は韓国や台湾など、アジアからの進出企業も増えている。「世界中の国々がグローバル展開する中で、今後は欧米やアジアだけとはいわず、ほぼ世界中の国々からの進出が増えるだろう」と大山氏。あらゆる業種の進出が活発になっているが、特に金融や保険、IT、メーカーなどが目立っているようだ。
募集内容としては、日本支社のマネジメントを行うエグゼクティブ層の人材から、日系企業と同じように組織運営のために必要な職種はほぼすべて、求人が発生していると考えてよい。ただし、本国の進め方に合わせた仕事の仕方が求められる。
「提出する資料のフォーマットや計算の仕方など、本国の仕様に従うのは絶対です。よって、例えば会計基準など、必要な専門知識や資格を有していなければ担当できない業務があります」(大山氏)
グローバル人材として活躍するために必要なスキル
TOEICなら700点が目安。異文化を受け入れる許容性が必要
語学力があることは大前提。特に英語が使えないことには、交渉のテーブルにも乗せてもらえない場合がほとんどのようだ。
「TOEICなら700点くらいを最低ラインとする企業が多いです。TOEICを受けたことがない人は、海外に対する興味がないと見なされることもあります」(河本氏)
「外資系企業で国内勤務の場合も、本国とのやりとりはもちろん英語です。社内にあらゆる国々のスタッフがいる場合が多く、英語を使ったコミュニケーションが当たり前に行われます。最低でもビジネスレベルの英語が使えないことには仕事になりません」(大山氏)
もちろん、海外勤務の経験者や、実際に英語を使った仕事の経験がある場合は高く評価される。では、それ以外に求められる条件とは?
「語学力があるうえで、コアとなる専門分野について深い知識を持っていること。さらに、異文化を尊重し、違う価値観や考え方、習慣を受け入れられるかどうかも重要ですね。自らの意志で道を切り開き、あらゆる環境で揉まれながら自分で考えて答えを導き出してきたような経験は、必ず評価されるはずです」(河本氏)
「特定分野における専門性に加え、論理的に物事を考えられること。マルチカルチャーなマーケットを相手にするわけですから、感情論ではなく論理的に物事を理解しようとしなければ、自分の意見を相手に正しく伝えることができないでしょう。そして、意見を押しつけようとせず、まずは相手を受け入れる謙虚さも必要です」(大山氏)
広がるチャンス。前向きにスキルを磨くきっかけにしよう
ひと言でグローバル採用と言っても、企業の段階や戦略の中身によって募集するポジションや仕事内容も大きく異なる。しかし、経済や文化交流などのグローバル化が急速に進む中で、あえて「グローバル人材」とカテゴライズする必要は今後ますますなくなっていくのではないだろうか。それはつまり、働くチャンスが国境を越えて広がっているという意味でもある。企業の採用意欲は今後いっそう高まっていくはず。自分がこれから世界中で活躍する姿をイメージし、必要なスキルや経験を見極め、前向きにスキルを磨いてみてはどうだろうか。
スカウトに登録して、積極的にアピールしよう
スカウトに登録することで、思わぬ企業や転職エージェントからオファーが届くことがある。グローバル展開を視野に入れる中で、海外で働く意欲が高い人や、語学習得に意欲的に取り組む人に関心を持つ企業も増えている。積極的に自分自身をアピールし、チャンスをつかみとってほしい。まだ登録していないという人は、この機会にぜひ登録しておこう。
- EDIT&WRITING
- 志村 江
- PHOTO
- 桑原克典(TFK)、樋木雅美