タレント、僧侶、起業家、学生…4人の決断

私が海外を目指した理由

日本企業の海外展開が進む中、「海外勤務」という選択肢を検討する人も増えているだろう。ただ、海外で何を得たいか、何を成し遂げたいかという「思い」がないと、軸がぶれ、思うような成果が得られないとも聞く。そこで、さまざまな思いを胸に海外を目指した4人の方に、その理由やきっかけ、得られたことを聞いた。立場の違う4人の「決断」から、われわれが海外を目指す意味を、今一度考えてみたい。

2013年2月27日

高校時代に描いた「海外でアクターになりたい」という夢。
海外に行けば、夢を叶えるための「何か」が見えてくると思ったんです

タレント ルー大柴さん

タレント
ルー大柴さん

高校卒業後すぐに渡英したルー大柴さん。自作のアクセサリーを露天販売しながら、欧州をヒッチハイクで旅した。1年ほどの海外経験だったが、「この経験が、その後の人生に大きな影響を与えた」と振り返る。

中学時代に映画「サウンド・オブ・ミュージック」を見て、海外に憧れてね。さまざまな洋画を見まくり、英語にも興味を持ち、「海外でアクターになりたい」と思うようになったのです。そして、高校卒業後、すぐに渡英しました。
今ほど海外旅行が身近な時代ではありません。でも、何の迷いもありませんでした。具体的なプランがあったわけではないのですが、「夢を実現するには一刻も早く海外に行かなければ」という焦りがあったんです。行けば何かが見えてくる、そう思ったんですね。若かったですね。
イングランドで、ロンドンの英語学校に3カ月間通った後、「せっかく海外に来たんだから、ほかの国も見てみよう」と思い、まずはオランダへ。さらに隣のドイツ、デンマーク…と渡り、計8カ国ほどを旅しました。途中から資金が底をつきましたが、自作のアクセサリーを露天販売しながら、ヒッチハイクをして回りました。
わずか1年ほどの海外経験でしたが、このときの経験がその後の人生に大きな影響を与えましたね。国ごとに、文化、国民性、ものの考え方は異なりますが、どんなブロークンイングリッシュでも「伝えたい」という強い気持ちがあれば、思いは伝わるということを学びました。つたない英語のアジア人の若者を、信頼して車に乗せてくれたり、ご飯を食べさせてくれたり、家に泊めてくれたりするんです。…今はあまりお勧めしにくい旅の仕方ですが、「強い思いさえあれば、何事も成し遂げられる」という自信につながりました。
ロンドンの下宿屋のおじさんに、「君はYes、Noが言えないことが多いけれど、しっかり言えるようにならないと世界ではバカにされるぞ」と教わったことも私の基礎になっています。帰国後、この世界に入った後は、「こんな仕事がしたい」とどんどん主張し、自分にとってメリットにならないと思われる仕事は「嫌だ」とハッキリ断ってきました。こうすれば、いつかはビッグでフェイマスになれると。…だから下積み時代が長くなっちゃったのかな(笑)。来年還暦を迎えますが、「海外でアクター」という夢はまだあきらめていません。これからもやりたいと言い続け、夢を追い続けますよ。

海外は十人テンカラー(十色)。でも「伝えたい」という強い気持ちさえあれば、伝わる

今はグローバル化が進み、ビジネスパーソンが仕事で海外に行く機会も増えていると聞きますが、若い人はそういうチャンスに積極的に乗っかるべきじゃないかな。「井の中のフロッグ(蛙)、オーシャン(大海)を知らず」という言葉がありますが、海外で、日本よりさらに十人テンカラー(十色)なものの考え方に触れるだけでも、自分の視界がぐんと広がるはず。どんなエクスペリエンス(経験)でも自分のブラッドとミート(血と肉)になりますよ。

Facebookページで当社ブランドを最も支持してくれたのが東南アジア。
そこに本社機能を移すのは、ごく自然の行動でした

SATISFACTION GUARANTEED PTE LTED CEO 佐藤俊介さん(34歳)

SATISFACTION GUARANTEED PTE LTED
CEO
佐藤俊介さん(34歳)

ストリート系のアパレルブランド「SATISFACTION GUARANTEED」は、Facebookページで367万人ものファンを持つ。ファンの9割以上は、日本以外のアジア人。2011年11月には、本社を日本からシンガポールに移した。

当社が日本でアパレルブランド「SATISFACTION GUARANTEED」を立ち上げたのは、2007年のこと。当初から「ルイ・ヴィトンを超えるブランドを作りたい」という目標を持っていたので、日本ブランドを活かして何とか世界に出たいという思いを持っていたんです。
「メイド・イン・ジャパン」という響きを最も活かせるのはアジアだと考え、グローバルなツールであるFacebookページでPR活動。「いいね」を押してくれたファンの属性を分析すると、東南アジアに集中していたんです。アジアでの本格展開を目論むに当たり、東南アジアのハブであるシンガポールに本社機能を移すことは、ごく自然の行動でした。
東南アジアはこれからのマーケットであり、非常に魅力的です。アパレルでいえば、ラグジュアリーブランドとファストファッションブランドしか存在せず、その間のミドルクラスはほぼありません。その空洞を埋める展開ができる当社にとって、大きなチャンスがあると考えています。これからはアパレルに限らず、美容分野やITガジェットなど、さまざまな「伸びしろのあるビジネス」を東南アジアで展開したいと計画しています。

海外に出たことで、「日本市場の特殊性」を改めて認識

このたび、海外に軸足を移したことで、「日本市場の特殊性」を再認識しました。日本市場は、世界的に見ても非常に大きなもので、かつ日本語がネイティブでなければビジネスはおろか生活すら困難なドメスティックな国。外国人から見れば非常に進出が難しい国であり、日本市場は日本語に守られてきた側面があります。
逆に言えば、そんなドメスティックな国に育った日本人が海外に出て行かねばならなくなったときは、より大きな壁を感じることになるでしょう。英語が話せないということはマイナスでしかなく、話せるからといってアドバンテージがあるわけではない。すなわち、英語をネイティブレベルで話せる人以外は、海外ではマイナススタートになってしまう。海外進出は、日本人にとっては非常に難易度が高いことなのだと改めて感じます。
だから、「日本市場はシュリンク傾向にあるから、世界に出てみよう」という単純な気持ちで海外に臨んでは、あっさり打ちのめされて帰国することになってしまいます。「この仕事を何としても世界で成功させたい」「日本のこの商品、サービスを世界で伸ばしたい」などの明確な目標を持つことが何より大切だと感じています。そして、私にはその目標がある。これからも「日本のブランドを世界へ」をテーマに、新しいマーケットを開拓し続けたいと思っています。

インドから伝わった仏教を、さらに海外へ伝える。この潮流の中に
身を置きたいと思い、海外開教使としてアメリカに渡りました

浄土真宗本願寺派 善行寺 住職 吉井誠光さん(39歳)

浄土真宗本願寺派 善行寺 住職
吉井誠光さん(39歳)

1999年〜2004年の5年間、浄土真宗本願寺派の海外開教使としてアメリカに渡った吉井さん。カリフォルニア州フレズノの寺院で、現地の人に対して布教活動を行った。

仏教は、インドでお釈迦様が開かれ、その後にネパール・ヒマラヤを超え、シルクロードを経て中国、そして朝鮮半島から日本へと伝えられました。しかし、ゴールは日本ではなく、明治時代には浄土真宗が海外開教を行い、ハワイや北米、カナダ、南米、ヨーロッパへと伝えられています。
私の実家はお寺。小さなころから仏教伝来の話に触れて育ち、「この壮大な流れの中に、いつか身を置いてみたい」という思いをずっと抱き続けてきました。「私が生まれる前にハワイで布教活動を行った」という父の経験談も聞き、「海外で仏教を教えるなんてカッコよさそう」なんてミーハーな思いもありましたが(笑)。
しかし、海外開教使は非常に狭き門。約3カ月の研修を受け、優秀な成績で修了した者が選抜されるのですが、海外伝道に対する熱意だけでなく、英語で法話を説けるほどの英語力が必要で、年間数名しか選ばれません。英語には自信がないし、自分にはハードルが高すぎると思うようになり、夢はいったんあきらめました。
仏教系の大学に進み、大学卒業後は「もう一つの憧れだった」旅行会社に就職。営業企画と添乗の仕事に携わり、海外もパスポート1冊がスタンプで埋まるほど経験する中で、徐々に英語に対する自信が付いてきました。海外で突発的なトラブルが起こっても、自分以外に頼れる人はいません。初めはカタコト英語でしたが、トラブルを切り抜けるために一生懸命英語で伝えるうちに、「思いを込めて真剣に話せば、心は伝わるものだ」と学びました。そしてふと、「想いをこめて伝えれば、自分にも海外布教ができるのではないか」と、以前の夢を思い出したんです。仕事をしながら英語を一から猛勉強し、海外開教使に選ばれたときは、本当に嬉しかったですね。

アメリカに渡ったことで、「日本のお寺のあり方」を改めて考えるように

アメリカでの5年間では、本当にいろいろなことを学びました。お寺のあり方、僧侶としての生き方、働き方を、一から考えさせられました。
日本では、お寺といえば伝統と格式を重んじ、お葬式や法事のイメージが強いですが、アメリカでは、お寺が人々にとって非常に身近な存在。お寺で子どもが遊んだり、皆が集まっておしゃべりを楽しんだり、悩みがあれば気軽にお坊さんに相談したり。お寺が人々の生活の中に根付き、心の拠り所になっているんです。「こんなお寺の姿もあるのか」と驚くとともに、自分がいかに「お寺とはこういうもの」という固定概念にとらわれていたか気づかされました。日本においても、お寺は本来このような存在であったはず。海外を経験しなければ、お寺がそもそも持っていた「可能性の大きさ」に気づかずに過ごしていただろうと思います。
帰国後は、アメリカで経験した「人々に身近であり、開かれたお寺」を実現するべく、努力を続けています。日本に住む外国人の方に向けてイベントを行ったり、赴任先の現地の子どもをホームステイで受け入れるなど、海外との交流も積極的に行っています。
今の世、お寺もグローバル化を考えなければ生き残れません。日本の風土と土壌の中で育まれた仏教の慈しみや慈悲の心を、日本はもちろん、いかに海外の方々にも伝えていくか。これが私の目標であり、使命だと思っています。

大学時代に海外で感じた、アジアの新興国が抱える問題の数々。
そこにビジネスチャンスがあると感じ、就職先をアジアに選びました

Terra Motors Vietnam Co.,LTD. General Director 林 信吾さん(25歳)

Terra Motors Vietnam Co.,LTD.
General Director
林 信吾さん(25歳)

電動バイクのベンチャー企業であるTerra Motorsのベトナム現地法人。その代表を務めるのが、林さんだ。現在社会人2年目、25歳という若さ。大学時代よりアジアで仕事がしたいと考え、海外赴任を見据えて就職活動を行ったという。

大学時代に何度か、アジアに行く経験がありました。バングラデシュのグラミン銀行と協力して社会問題を解決するというプログラムに3週間参加したり、カンボジアへ一人旅をしたりというものでしたが、その都度アジアには多くの課題があると痛感させられました。
日本では当たり前のようにあるモノ、サービス、機会が、アジアの新興国にはまるでなく、インフラの未整備、貧富の格差、低賃金などの問題が根深く残っている。ただ一方で、「これからのアジアには多くのビジネス機会があり、かつ仕事で得られるやりがいも大きい」と感じ、アジアでビジネスをする力をつける企業に入社しようと決意しました。
現在勤務しているTerra Motorsには、大学時代からスタートアップメンバーとして関わりました。卒業後に単独でベトナムに駐在し、マーケット調査から法人・工場設立すべてに携わり、瞬く間に約2年が過ぎました。

25歳の若さで、企業のトップとやり取り。向上心が常に刺激される環境

ベトナムに来て一番驚いたのは、勤務先やキャリアに対する考え方が日本と全く異なる点。僕は現在25歳ですが、同じ年齢のベトナム人であれば、すでに2〜3回は転職している人が普通。日本のように同じ会社にいれば自動的に給料が増えるというシステムはなく、「さまざまな会社で経験を積んでキャリアアップすることで、給料を増やしたい」と考える人が多いからです。また、これは製造ラインのスタッフに顕著ですが、100円でも多く月給がもらえる企業があればすぐにそちらに転職するというぐらい、目の前の給料だけですぐに転職します。この価値観の違いをふまえた人事制度や採用活動、教育システムの提供などを考えねばならず、難しさを感じますね。
とはいえ、このような出来事をいちいち苦労だと思っていると、身が持ちません(笑)。それに、日本にいる時よりもエキサイティングなことが多く、やりがいを感じる場面もそれだけ多いですね。特に日本と異なるのは、仕事でやり取りする方が、大企業の幹部クラスや中小企業のオーナーばかりだという点。日本にいたら私は「社会人2年目の若手」で、このような方々と会える機会はほとんどないはずですが、ベトナムでは現地法人の代表。年齢や経験年数に関係なく、トップ同士が話し合うことが通例なのです。また、ベトナムの経済成長に注目する日本企業が増えていることから、誰もが知っている有名日本企業の出張者や現地代表者から、「ベトナム市場について教えてほしい」と言われることもあります。そういう方々とやりとりするためには、私自身もレベルアップすることが重要であり、向上心が常に刺激されますね。
日本は島国のためか、日本にいると海外に対して非常に距離を感じますが、東南アジアは陸続きなので海外に対する距離感覚があまりありません。実際、東京〜大阪よりも、ホーチミン〜シンガポールのほうが近かったりします。今後、東南アジアを中心にどんどん国を超えて活躍する人が増えると予想される中で、日本人ももっと海外に出て戦う必要があると感じています。
私の年齢で、アジアで活躍している人はそう多くはありません。だからこそ、このキャリアには希少価値があるとも感じます。一度アクションを起こしてみると、新しい出会いがあり、新たなインスピレーションが湧いたりするもの。チャンスがあれば海外に行って、見て、感じて、その後の自身のキャリアを見つめ直してほしいですね。

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EDIT&WRITING
伊藤理子
PHOTO
刑部友康

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