日系企業の拠点増加で、上海、深セン、インドで採用拡大

アジアで熱望される「製造現場経験者」採用の実態

アジアに製造拠点を設け、アジア各国への事業拡大を目論む日系企業が増えている。それに伴い、製造現場を束ね、指揮するベテランの「製造現場職」の採用が拡大しているという。どんな国が、どんな経験・スキルを持った製造現場経験者を求めているのだろうか? 現在の転職市場の動向を探るとともに、アジアで働くメリット、デメリットを現地で働く日本人に聞いた。

2012年2月29日

【製造現場職の求人動向】どの国で、どんな人が求められているのか?

日系企業の製造拠点拡大により、現場で技術指導や製造ラインの取りまとめを担う、ベテラン層の製造現場職の採用ニーズが増加している。アジアに進出している日系企業向けに人材紹介を手掛けるRGF HR Agentによると、中でも中国の広州・深セン、上海、そしてインドにおいて採用が活発化しているという。
各国での採用拡大の背景と求められる人材像、必要な語学レベルなどをRGF HR Agentの各国担当者に聞いた。

■中国(広州・深セン)
現地スタッフへの技術指導ができる40〜50代のベテラン技術者を求める

広州をはじめとする華南地区(中国南部)には、日本の製造業が多く進出しており、それに伴い製造現場職の採用ニーズが高まっています。中でも、現場のスタッフに技術指導ができる、経験豊富な人材が求められていますね。そのため、若手よりも40代、50代のベテラン層が評価されます。
特にニーズが旺盛なのは、電子・精密機器関連の企業で、次いで自動車部品、アパレル関係の企業です。役割としては、製造技術、品質管理、生産管理などが中心。その他、商社の技術顧問といった職種のニーズも出始めています。
管理者としての役割よりも、現地スタッフへの技術指導者であることが求められるため、どの役割でも、ピンポイントの経験が求められる傾向にありますね。業界や企業によって求める経験はバラバラですが、例えば基盤系であれば、経験してき基盤が硬いリジットか、柔らかいフレックス基盤か、それとも両方の性質を持っている基盤なのかによって書類選考段階での合否が分かれますし、成形樹脂であればどれぐらいの大きさのものを扱っていたか(自社の製品に近しいかどうか)が問われます。ただ、経験の応用が利きやすい生産管理職は、経験してきたジャンルが多少ずれていても採用されるケースはあります。
求められる語学力は、企業によってまちまち。技術専門職については語学不問という求人が多いですが、それ以外の場合は英語力よりも中国語(北京語)を求められるケースがほとんど。特に生産管理や工場管理者の求人の場合は、中国語で業務上のコミュニケーションができる人のほうが有利。HSK(中国語の国家試験)であれば、5級レベルが目安になります。ただし、技術上の会話は専門用語が多く、「図面」という共通言語もあるので、HSKでそのレベルに達していなくても、業務上のコミュニケーションができれば採用されるケースも多いです。

■中国(上海)
現地スタッフへの技術指導、工場品質の改善が主な責務に

上海には自動車、電子部品、アパレルなどさまざまな業種が進出しています。上海の中心地は東京の山手線エリアぐらいのスペースに高層ビルが立ち並ぶビジネス街ですが、車で40分も郊外に向けて走ると日系の工場が多数見えてきます。大手だけでなく、中小企業も多数進出しているのが特徴です。
ただ、上海に製造拠点を新設する企業は、現在はほとんどありません。上海は巨大な消費市場に変化しつつあり、地価、人件費が高騰しているためです。そのため、隣の江蘇省に新規進出、工場移転する企業が増えていますね。
上海で増えている求人案件は、「中国人への技術指導、工場品質の改善」を担える製造現場職。労働力はあるものの技術面ではまだまだなので、何百、何千という中国人スタッフに対する技術指導を担ってほしいというニーズは多いですね。工場全体のオペレーションや品質自体をも、底上げしてくれる人が求められています。
そのため、「技術面で秀でている」ことは必須。現地での就業経験があり、中国語(北京語)もある程度できる人がベストですが、日本で技術者として長く経験を積んできた人でしたら歓迎されます。マネジメントは日本本社からすでに出向しているケースが多いので、技術責任者として技術指導できるスペシャリストが求められます。
中国語に関しては、求める企業と求めない企業が半々。求める企業は、ビジネスレベルを必要としますし、「業務においては通訳をつけるので、日常生活に問題がない程度話せればOK」とする企業もあります。求人案件次第ですね。なお、英語力を求める求人案件はほとんどありません。

■インド
自動車関連の求人がメイン。ゼロから生産拠点の立ち上げを担える人が求められる

インドは、進出日系企業の8割以上が自動車関連であり、求人も自動車関連がメイン。完成車メーカーがインドでの現地生産を加速させており、それに付随して部品サプライヤーも現地で生産できる体制構築を急いでいるため、工場ラインの立ち上げを担える人材のニーズが拡大しています。職種としては、製造技術、生産管理、品質管理といったエンジニアニーズがほとんど。エリアとしては、もともと日系企業の多いデリー近郊のグルガオン地区のほか、最近では南部のチェナイ地域でのニーズも高まっています。
インドの場合、ほかのアジア地区に比べると日本から遠く(直行便で約10〜11時間)、宗教間対立や多民族といった複雑な国内事情から治安も安定しているとは言えません。日本食を食べられるレストランも少なく、日本人が生活するにはタフな環境です。また、進出初期の企業が多いので、すべてゼロから立ち上げなければなりません。そのため、製造技術、品質管理といった技術的なバックグラウンドや自動車業界経験、マネジメント経験などはもちろん求められるのですが、海外での就業経験の有無、「未開の地でも頑張り抜く」という強い気概が何より重視されますね。
現地でのコミュニケーションは英語です。インドは日本人の志望者が少ないので、採用の際にTOEIC点数の基準を設ける企業は少ないですが、部下はほぼ全員がインド人なので、相手と意思疎通できる程度の英語力はほしいところですね。

【現地で働く製造現場職の声】アジアで働くメリット、楽しさ、大変さ

■中国(広州)勤務 Guangzhou Meadville Electronics 牧野豊さん
ケタはずれの量産ボリューム。製造現場で巨大市場の勢いを肌で感じています

Guangzhou Meadville Electronics, シニアマネージャー 牧野 豊さん(54歳)

Guangzhou Meadville Electronics, シニアマネージャー
牧野 豊さん(54歳)

Guangzhou Meadville Electronicsは、北米の電子機器メーカーTTM Technologiesの最新生産拠点。私は6年前に入社し、工場の立ち上げから携わりました。それまでは、日本のプリント基板専業メーカーにて、技術、製造、生産管理、営業などを26年間担当。海外にある生産工場に出向し、生産ラインの立ち上げも経験しています。現在の仕事は、現地スタッフへの技術ノウハウ指導のほか、トヨタ生産方式・作業改善の活動経験を活かして、工場の生産活動の改善、指導を担当しています。
お金さえあれば最新設備を揃えることができますが、「経験」は簡単には揃えられません。その「経験」部分を担っているのが私です。どのような工程設計を行い、どのように設備を活用するのかを十分吟味して生産ラインを構築することで、会社の特色は作り出されます。どのように技術指導を行うのかも、会社の特色を大きく左右します。すなわちこれは、「自分の行動次第で、企業カラーが変わる」ということ。雇われ人ではなく、自ら企業風土を生み出せる立場にいることに、大きなやりがいを感じますね。
一方で、現地スタッフの仕事に対する意識の違いに悩むこともありますね。会社に対する帰属意識が低く、せっかく技術を教えても、5年程度で辞めてしまう人がほとんど。現場の作業者はもっと回転が速く、1年程度で辞めてしまいます。この環境下で、どのようにして安定した品質を保つかに、常に考えを巡らせています。
中国をはじめとするアジアは巨大な市場であり、しかも成長を続けています。従って、各メーカーの量産ボリュームの規模は、日本などの成熟市場とはケタが違います。大量に生産し、早く市場に出して、利益を出す。足りなければ設備投資をして増産する。このダイナミックさを日々肌で感じられるのが何より楽しいですね。

■中国(上海)勤務 日系電子部品メーカー工場長 M・Mさん
高品質とスピードを両立して競争に打ち勝つ。日々エネルギッシュに働けます

私は現在、63歳。現在は電子部品メーカーの製造現場で、工場長として勤務しています。工場管理がメイン業務ですが、製品の品質保持や、中国人スタッフへの技術指導も重要な仕事となっています。
以前は、日本の大手電器メーカーに55歳まで勤務し、エンジニア、R&Dセンターの技術開発部長などを務め、上海拠点の責任者も兼任しました。定年を迎え、一度はリタイアしましたが、中国という成長著しい国の製造現場に再び身を置きたいと思い、再就職しました。
現場で中国の若いスタッフとともに仕事ができるのは非常に楽しいのですが、苦労も多いですね。現場スタッフ同士の情報ネットワークが非常に活発で、近隣の工場のほうが少しでも待遇がいいとわかれば、簡単に転職をしてしまいます。人員の入れ替わりが激しく、いい人材を確保して一人前に育てる難しさは日本以上です。
また、中国市場のスピード感と競争の激しさは、日本と比べ物になりません。近年では中国のローカル企業も技術力をつけ始めているため、単に品質がいいというだけでは競合に勝てません。そのため、意思決定のスピードが格段に速いのがこちらの特徴。日本の感覚では若干見切り発車と思える場面もありますが、そのスピードが激しい市場競争に打ち勝つ源泉になっていますね。激しい競争にもまれつつも、成長著しい市場を取りに行く…このように毎日エネルギッシュに働けることが一番の醍醐味だと思います。

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中国をはじめとするアジア各国で、「ベテラン層ならではの高度な製造技術ノウハウ」を求める求人が増えています。海外赴任経験がなくても、技術力と豊富な現場経験があれば、活躍できる世界はどんどん広がっています。
リクナビNEXTスカウトで、製造現場での経験・スキル、語学力、そして「アジアで働きたい」という思いを盛り込んだレジュメを登録すれば、アジアでの事業展開を本格化している企業から声がかかる可能性もあります。自信の可能性を広げるためにも、ぜひ登録しておきましょう。

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EDIT&WRITING
伊藤理子

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