ソーシャルランチ、農場シェア、スペイン語会話サービス、コワーキング…

想いを形にした起業家に聞く、会社に属さない働き方とは?

世の中にない価値を生み出したい!自分のアイディアを形にしたい!こんな「想い」を実現するために、会社を飛び出し、起業する若手ビジネスパーソンが増えている。彼らを突き動かした原動力とは、何だったのだろうか?そして、今いる環境を飛び出すことに躊躇はなかったのだろうか?実際に想いを自ら形にした4人の若手起業家に聞いた。

2012年2月15日

「ランチで人を結びつける。今までにないサービスだしユーザーの反応もいい。
今やらない理由はない、と思った」〜シンクランチ・上村さん

シンクランチ株式会社 上村康太さん

シンクランチ株式会社
代表取締役副社長
上村康太さん(25歳)

Facebookの実名制を利用して、ランチタイムの社外交流を促進するランチマッチングサービス「ソーシャルランチ」。2011年10月にサービスをスタートし、会員数はすでに2万5000人。ランチ成立は延べ1000組を突破している。ソーシャルランチを運営するシンクランチを立ち上げたのは、Google出身の20代2人。同社エンジニアだった福山誠さんがサービスを開発し、営業出身の上村さんが開発以外のすべてを担当している。

同期の福山から「ソーシャルランチ」のアイディアを聞いたのは、去年の3月ごろ。「こんなサービスを作るんだ」と説明されても、初めはピンときませんでした。でも、5月にテスト版が立ち上がり、その翌日に16人のランチが成立したことを知ったとき、「これはすごいサービスになるかもしれない」と思ったんです。そのころから、Googleで働きながら、TwitterやFacebookのアカウント運用やPR告知など、開発以外の業務を手伝うように。テストローンチの1カ月間で会員数は2000人、ランチ成約数は100件、メディアにも取り上げられるようになり、「このまま副業として続けるのは難しい。起業しよう」という話になりました。
福山はすぐに腹を決め、7月にGoogleを退職しました。僕もすぐに後を追いましたが、会社を辞めるかどうか本当に迷いましたね。Googleはブランドとしての認知度は高いし、これからまだまだ成長が見込める企業。これからも営業として大きな仕事ができそうだし、働く環境もいい。でも、目の前にこんなに面白く、可能性のあるサービスがある。やらない理由は何もない、と思ったんです。まあ、万が一失敗しても路頭に迷うことはないかなとも思って(笑)。

設立して半年が経った今も、社員は2人のまま。福山が開発を担当し、私が残りの部分、すなわち事業計画の策定から広報PR、マーケティング、財務面も担当しています。会社を辞めて感じるのは、当たり前ですが「自分がやらなければ、誰もやってくれない」ということ。会社勤め時代にたまにあった「気づいたら誰かがフォローしてくれていた」なんていう奇跡は存在しません(笑)。でも、役割の違う2人でサービスの方向性や改良点を話し合い、思いをすり合わせているときがとても楽しく、ワクワクできるんです。
先日、ソーシャルランチ大学版をローンチし、この春にはほかの企業やWebサービスとのコラボもスタートさせる予定。Webサービスはスピード感が大事。知名度が上がり、周囲の期待も増しています。ソーシャルランチを今後どういう方向にレベルアップさせていくのか、常に先を見据えて戦略をいくつも考え、もし一つの打ち手が期待通りのものでなければすぐに戦略を切り替えるフットワークの良さが、私に求められています。ソーシャルランチの行く末を左右する立場にあり、プレッシャーはとても大きいのですが、このサービスの可能性の大きさも強く感じています。

Webで新しいランチ文化を作ることで、人と人とをつなげ対流させる。これが「ソーシャルランチ」の使命です。別の業界、別の仕事の人と関わり合うことで得られる「学び」や「ヒラメキ」の価値はとても大きい。仕事観がガラリと変わるきっかけになるかもしれません。われわれのサービスで、ユーザーの皆さんの人生をもっと楽しいものにできれば…と願っています。

「耕作放棄地の増加、後継者不足…日本の農業問題を解決する方法はないのか?
その想いが農場シェアという発想につながった」〜アグリメディア・諸藤さん

株式会社アグリメディア 諸藤貴志さん

株式会社アグリメディア
代表取締役社長
諸藤貴志さん(32歳)

消費者が農家を訪れ、農業体験をシェアするイベント「ノウジョウシェア」、首都圏に残る耕作放棄地を市民農園にする「シェア畑」を展開するアグリメディア。会社設立は2011年4月とまだ1年も経っていないが、クチコミで評判が広がり、イベントは満員御礼状態。川越に開いた第1号の市民農園への問い合わせも相次いでいる。社長の諸藤さんは昨年3月まで9年間、住友不動産に勤務。新規事業の立ち上げや都心の再開発物件の企画などを担当していた。

起業にあたり、会社を辞めることには何の迷いもありませんでしたね。実は入社3年目のとき、不動産関連ビジネスのアイディアを思い付き、真剣に起業を考えたことがあるのです。しかし、そのときは会社を飛び出す勇気と、事業を軌道に乗せる自信が持てず、あきらめました。でも、なぜ挑戦しなかったんだろうとずっと後悔していて…。「いつか絶対に起業しよう」という思いを抱き続けてきたんです。
そんなとき、「農業問題」というテーマに、たまたま行き当たりました。私が自宅を構える世田谷区や近隣の川崎市、横浜市などにはたくさんの農地があるのですが、その中には荒れ果てている農地や、栗の木が数本植えられているだけの農地がある。調べてみると、高齢化など何らかの事情で農業が営めなくなっても、相続税納税猶予制度の適用農地は他人に貸すと猶予が打ち切りになるため、そうするしか方法がない、人に貸そうにも借り手がいない。そういったケースなのです。こんな「農地が適切に運用されないシステム」に疑問を覚えたのがそもそもの発端です。
耕作放棄地の増加以外にも、農家の後継者不足、収益性の低下など、「農業」は問題が山積している分野。この問題を自分の手で解消できる方法として、ノウジョウシェア、シェア畑を思いつきました。都心では市民農園が人気で、供給が追い付いていないこと、家庭菜園など園芸人口が増加していることなどを統計でつかみ、「事業化できる」と確信しました。

昨年5、6月の2カ月間で、関東近郊の農家200軒以上を回り「ノウジョウシェア」の考えに賛同してくれる農家を探し、10軒と事業提携することに成功しました。最初のイベントは昨年8月、秦野市の野菜農園での収穫。PR用のうちわを作って秦野駅で配ったり、友人に口コミで情報を広めてもらったりしましたが、知名度が上がらず苦労しましたね。しかし、ホームページやFacebookで地道に告知して、徐々にマスコミにも取り上げられるようになり、じわじわと予約が増加。特に、子どもの食育目的の若いファミリーや、食に対する意識の高い女性グループの参加が増え、10月以降のイベントはすべて完売状態です。
今後は、都心の遊休農地を市民農園にする「シェア農園」にも注力したいですね。今月、川越に第1号をオープンしたばかりですが、来年度中に20カ所に増やす計画。農家側からの「うちの空き農地を使ってほしい」というアプローチも多く、農地活用に困っている農家の多さを実感しています。

起業後は、週末は農家回りかイベントに費やされ、ほとんど休みがなくなりましたが、「自分のアイディアを自分の手で実行できる」喜びは何物にも代えがたいです。農家の反応、消費者の声、もちろん売り上げや利益…すべての反響をダイレクトに感じることができるのがとにかく楽しいですね。
「農家と、食に対する意識の高い消費者とを結びつけることで、日本の農業を活性化したい」との想いはぶれることがありません。これからもさまざまな角度から農地活用サービスを考え、農業活性化に力を注いでいきたいですね。

「世界一周の途中で、グアテマラの雇用問題に直面。旅を続けるよりも、
今、困っている人の力になりたいと思った」〜スパニッシモ・有村さん

「スパニッシモ」 有村拓朗さん

「スパニッシモ」
開発・運営
有村拓朗さん(26歳)

今年1月21日にサービス開始したばかりのオンラインスペイン語サービス「スパニッシモ」。中米グアテマラのスペイン語講師が、スカイプを通じて格安でスペイン語を教えるというもので、わずか3週間で200人以上の会員を集めている。このサービスを立ち上げたのは、世界一周旅行中の2人。外資系メーカーで人事を務めていた吉川恭平さんと、リクルートで法人営業を担当していた有村さんだった。

2011年1月から、世界一周の旅をしています。目的は、「世界一周の旅のレポートを通して、日本の若者を新しい価値観との出会いに駆り立てる」こと。レノボ・ジャパンのCSR活動の一環として、またJICAとエバニューの支援を受けながら中南米を中心にJICAの各プロジェクトを取材しながら旅を続けています。
リクルートには、「より多くの人に影響を与える経験がしたい」と思い入社しました。3年間リクルートで求人系の営業を経験し、実績を上げることもでき、一つの目標を達成。今度は、世界の人に必要とされるモノを自ら生み出したいと思うようになり、「退職して世界一周の旅に出る」道を選びました。幼少期と大学での1年間をアメリカで過ごし、いろいろな国籍の人と関わってきた経験から、「世界の人と関わる仕事がしたい」という潜在欲求があったんです。

南米にわたる前に、中米のグアテマラに1カ月半滞在し、語学学校でスペイン語を勉強しました。そのときに、先生方の教え方のうまさに感激したんです。そもそもグアテマラ人はスペイン語の発音が非常にクリアで、ゆっくりと話す特性があるため、初心者でも聞き取りやすく、「スペイン語を学ぶならグアテマラで」と言われるほど。夏には、バカンスと語学習得を兼ねて訪れる観光客がとても多く、語学学校が重要な産業になりつつあります。そのため、グアテマラの都市アンディグアには90校を超す語学学校が乱立し、価格競争は激化する一方。冬場の観光閑散期は、先生の多くが副業を余儀なくされていました。そんな現状に触れ、「自分たちに何かできないか」と思いながらも、そのときは旅を続けました。
中南米へと南下を始めてすぐ、もう一度スペイン語を勉強したくなったのですが、どの国も授業料が高くて払えない。そのときふと、「日本でも、スペイン語を学びたいのに費用がネックになってあきらめている人が多いのでは?」と思ったんです。同時に、グアテマラの、格安でレベルの高い授業が思い出され、「スペイン語を気軽に学べるサービスを作ることで、グアテマラの先生方が安心して働ける環境を作れるのではないか。オンラインを使った語学サービスならば、自分たちにも挑戦できるのでは。この思いを見逃したら自分に嘘をつくことになる。やるなら今だ」と決意しました。
知り合いを通じてWebサービスのシステム開発ができる人を探し出した後、昨年10月にグアテマラに戻って語学学校2校と提携を結び、全講師を面接してPCスキルと英語力を併せ持つ先生を探しました。

そして、1月にサービスオープン。わずか3カ月の準備期間でしたが、大きなトラブルもなく、想定以上の会員数を集めています。先生方の職を確保でき始めていることが、何より嬉しいですね。閑散期には1カ月以上授業がないこともザラなのですが、先生によっては毎日5時間以上も授業が入る状態になりました。でも、グアテマラには仕事がなくて困っている人がほかにもたくさんいます。サービスが定着し、語学産業がもっと盛り上がれば、ビジネスのすそ野が広がり、周辺の雇用も創出できるはずです。
スペイン語ニーズがもっとも高いのは、アメリカ。西海岸を中心にヒスパニック系の移住者が増えているためです。その市場を狙って、3〜4カ月以内にアメリカ版をローンチ予定。日米でのサービス拡大で、グアテマラ経済自体に貢献したいと夢を膨らませています。

「日本人の働き方を知的創造型にシフトすることで、一人ひとりが幸せを感じる
経済が作れる。コワーキングの場でその一助を担いたい」〜レスもあ・赤木さん

株式会社レスもあ 赤木優理さん

株式会社レスもあ
代表取締役社長
赤木優理さん(33歳)

事務所スペースを共有しつつ、各自が独立した仕事を行う協働ワークスタイル「コワーキング」。渋谷のコワーキングスペース「44田寮(よしだりょう)」は、不動産ベンチャー出身の赤木さんが、出身大学である京都大の学生宿舎「吉田寮」になぞらえて作った。昨年11月にプレオープン、約30席あるフリースペースで皆が思い思いに働き、自由に意見交換している。赤木さんは「起業を目指す若者や志を持った会社員などが集い、交流することで、事業のブラッシュアップのスピードが飛躍的に上がったり、同じ志を持つ仲間とともに働くことでのモチベーション維持が可能になる」と語る。

大学卒業後、不動産ベンチャーに入社したのは、営業力を鍛えたかったから。営業力で厳しい時期を乗り越えることも経験し、その後会社も上場直前という状況にまで成長しましたが、リーマンショックで経営環境が急変し、民事再生を申し立てることに。私は会社再生計画が可決されるまでの2年半、会社に残り会社再生を手伝いました。
もともといつかは起業するつもりでいたので、会社再生の途中、2010年3月には自ら会社を設立。業務の合間にどんな事業を手掛けるべきか、ずっと考え続けていました。その当時、ニュースでは、海外の安価な労働力に日本国内の一部の仕事がシフトし、国内空洞化が問題になっている最中でした。今後、日本経済のグローバル化が進む中でこの流れはさらに加速し、多くの日本人の給与は海外の安価な給与レベルにまで下がることが予想されました。日本人が幸せに暮らすには、今まで主流だった労働集約型の働き方から知的創造型にシフトする必要があるのではないか?「日本人の働き方を変える」をキーワードに、自分に何ができるのかを考えよう…との結論にたどり着いたのです。
周囲から意見をもらう中で、フリーランスや起業を目指す人が働ける場が整備されていないことに気付き、「まるで学生寮のように、入居する人が主体的に自分たちのスペースを作れる場所が作れないか」というアイディアが生まれました。そこで誕生したのが、「44田寮」でした。
現在の入居者は、起業家、ビジネスアイディアを持つ会社員、Webベンチャー。そのうち、起業家は日本経済を活性化させる「日本の宝」とも言えますが、非常に数が少ない。日本の労働人口の約8割を占める会社員に知的創造型の働き方を浸透させないと日本は変わりません。彼らが起業家と交わり、刺激し合うことで、勤務先の中で知的創造型ビジネスを発案、実行したり、勤務先の仕事とは別に、社会問題を解決するための新事業を創造するなんてことも考えられます。だからどんどん会社員を巻き込み、「会社員をしながらソーシャルアントレプレナー(社会的起業家)志向を持つ」人を増やしたいと思っています。

起業してみてわかったのは、仕事で得られる喜びが会社員時代とは全く違う、ということ。ほぼ毎日、夜中まで働いていますが全く苦にはならないし、ひたすら楽しいんです。これこそが、知的創造型の働き方。同じ仕事でも、やらされている感があると面白くないけれど、自発的にできれば俄然楽しくなります。
「44田寮」の存在が、仕事に対する視点を切り替えるきっかけになれば、こんなに嬉しいことはない。そのために、これからもこのスペースに関わる人皆が刺激し合い、新しい価値を生み出せるような仕掛けを考え、提供して行きたいと考えています。

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伊藤理子
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設楽政浩/平山諭

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