人事は、経営戦略と人材戦略を結ぶ戦略セクション

破壊と創造。これからの人事に求められる絶対条件

人は会社の要。その「人」に関わる業務を担う人事職は、会社経営において大きな役割を担う重要な仕事だ。折しも、日本市場の縮小、グローバル展開の加速など、日本企業の経営環境は激動の最中にある。しかし、目先の業務のみに翻弄され、これからのキャリアが見えないことに悩んでいる若手人事担当者は少なくない。激動の時代、人事に求められる役割はどのように変化していくのだろうか。専門家に話を聞いた。

2011年11月2日

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中央大学大学院 戦略経営研究科 客員教授<br>
戦略的人事マネジメント研究所代表/楠田 祐氏

中央大学大学院 戦略経営研究科 客員教授
戦略的人事マネジメント研究所代表/楠田 祐氏

1998年に人材開発・育成企業サイバックスを創業、2007年より会長。08年に企業への人事戦略アドバイスを行う戦略的人事マネジメント研究所を設立。年間300社以上の企業の人事、人材開発部門への訪問を行っている。近著に『破壊と創造の人事』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

株式会社リクルートエージェント
事務系グループ キャリアアドバイザー/杉谷氏

メーカーやネット系求人広告会社の営業を経て、2007年にリクルートエージェント入社。第二新卒者層の担当キャリアアドバイザーを経て、2010年4月より人事を含めた管理部門全般の求職者に対するキャリアアドバイス、求人の紹介など転職活動サポートを担当する。

企業を取り巻く環境と、人事に求められる役割とは?

労働人口の減少と、グローバル化推進の流れを受け、
戦略的な人材フォーメーションを組める「戦略人事」が求められる

国内市場の縮小を受けて、どの企業も「グローバル化を進め、海外市場で戦わなければ生き残れない」という強い危機感を持っている。それを受け、企業を支える「人」に関わる業務を担う人事職の役割もまた、大きく変化している。
楠田氏は、「今の人事の業務には、前向きなものと後ろ向きなものが混在している」と話す。
「前向きなものとは、グローバル展開など経営の次の一手につながる業務。後ろ向きなものとは、グローバル化による選択と集中の結果、不採算事業からの撤退に伴う人員整理・配置換えなどが挙げられます。ここ10年以上、人事の仕事は、景気低迷によるリストラなど、後ろ向きな業務の比重が高かったのですが、前向きな業務が増え始めていることを受けて、人事担当者がチャンスとばかりに動き始めています。特に、1999年前後の就職氷河期に厳選採用された優秀層が多いですね。入社してすぐ人事に配属されたものの、いきなりリストラという後ろ向きな業務ばかりやらされた30代前半の人が、『グローバル化推進に伴う戦略人事に携わりたい』と、転職に踏み切る動きが出ています」(楠田氏)

実際、企業の人事職へのニーズも、高まりつつある。リクルートエージェントでは、昨年末から徐々に人事職に対する求人件数が増えている。「人事部門を強化・改革したい」というニーズが増えているのだという。
「少子高齢化、団塊世代の退職などによる労働人口の減少が深刻化する中、今までの人事のやり方では既存事業が回せなくなる恐れがあります。一方で、国内市場の縮小を受け、利益を確保するためにグローバル化にも早急に対応しなければなりません。企業を取り巻く環境が激変する中、自社の事業をどう展開していくべきか、頭を悩ませている経営者は少なくありません。そこで、一刻も早く自社の組織体制自体を見直し、変化の時代に対応する人事戦略を練られるよう、人事部門を強化したいという動きが出始めています」(杉谷氏)

具体的には、どんな働きが求められるのだろうか?
楠田氏によると、日本企業には「すでに売り上げの3分の1以上が海外売上高で、グローバル化が進んでいる」企業と、「国内市場が縮小しているから、今後グローバル化に注力しようとしている」企業の2タイプがあり、人事に求められる役割も大きく変わるという。
「すでにグローバル化が進んでいる日本企業の場合、現地法人で働くスタッフは現地の人ですが、それをまとめるトップの多くは日本人。本社の幹部も日本人ばかりです。このままでは、『いくら頑張っても上にはいけない』と、有能な現地社員のモチベーションを下げてしまうことになります。今後、世界でビジネスを展開して行きたいと考えるならば、現法の優秀な人材を、現地でも、日本の本社でも、どんどん抜擢していくという人材戦略を取る必要があります。実際、日本でも海外でも成功している外資系企業は、皆そういう体制を取っています」(楠田氏)

一方の、「これからグローバル化に注力する企業」の差し当たっての人的課題は、グローバル化を担う人材の確保はもちろんだが、「語学力不足かつグローバルビジネスに関わった経験がないため、グローバル化にすぐには対応できない多くの人材を、どのように活用していくか」のほうが重責。そのために有益な方法とされているのが、「内なるグローバル化」だという。
「例えば、海外現法で取締役クラスにいる現地人に、本社のドメスティック事業の副本部長クラスを兼務させる。そうすれば、ドメスティック部門の役職者以下はすべてその人に英語でレポーティングしなければなりません。一方の現法の役員も、日本市場に関する知識が増えますし、将来的に本社の役員になる素地もできます。このほかにも、新卒採用の中で外国人枠を作り、同期の国内社員と彼らを管理するマネージャー層に刺激を与えるという方法や、新入社員をいきなり海外に1〜2年派遣して現場を学ばせるという方法などが挙げられます」(楠田氏)
このような思い切った策を自ら考え、実行できる才覚と実行力が、これからの人事には求められるという。

これからの人事職に必要とされる能力とは?

PDCAの「検証と修正・再実行」部分を経験している人が強い。
「経営視点」と「現場視点」、両方を磨く努力を

人事担当者の役割が大きく変わろうとする中で、これからの人事に必要不可欠となる能力とは何なのだろうか?
この質問に、楠田氏、杉谷氏とも、「PDCAサイクルをうまく回せることが重要になる」と口を揃える。

「PDCAの考え方は、ビジネスパーソンの中でかなり定着していますが、人事の現場では、計画(P)と実行(D)は活発に行われているのに、その後の検証(C)とそれに基づく修正・再実行(A)がほとんど行われていないのが実情です。例えば、教育研修を行い、出席者が「勉強になった」と満足して帰っても、現場で活用されていないと意味はありませんが、そこまで検証している人事はほとんどいません。計画を立てて実行し、その運用が軌道に乗るのは、あくまでプロセスの途中経過に過ぎません。その後のCとAを回すことができて初めて、戦略的人事の活動と言えるのです」(楠田氏)
「実際、PDCAサイクルをうまく回して結果を挙げてきた人は、転職市場で非常に評価が高いですね。そうした経験者であれば、人事未経験者でも採用する企業が少なくありません。異職種出身者ならではの新しい発想で人事改革に取り組めるという期待感があるようです」(杉谷氏)

また、楠田氏は、「経営戦略を練られる環境に移って、経営視点を磨くことも大切」と挙げる。
戦略人事のプロとして企業経営の中枢に関わりたいならば、採用・育成だけでなく、人事制度や労務管理など人事関連のファンクションを、30代前半までに最低3つは経験した方がいい。そうすることで、高い視点から人事全体を考えられるようになるうえ、人事機能自体の質の向上にもつながるからです。そしてその後は、一度人事から離れ、経営企画や事業企画など、経営戦略そのものを練ることができる役割を経験すべき。異動がかなわないのであれば、人事として働きながらビジネススクールに通って2年間勉強し、MBAを取る、経営企画や事業企画を求めている企業に転職する、などの方法も検討すべきでしょう」

経営を知る一方で、「現場を知る」ことも戦略的な人事には大切だと楠田氏、杉谷氏ともに言う。
「人事の仕事は、社内のあらゆる部署とつながりがあります。自ら積極的に他部署と関わり、現場の生の声を拾いに行き、それを採用や研修、制度構築などといった人事業務に活かす…と言う努力が大切。現場の声に直接触れることは、どういう制度を設け、どういう風土を造成すれば自社の業績が伸ばせるのかというアイディアの源泉になります。たとえ今、自分のミッションの中に入っていなくとも、自ら新しいアイディアを考え、提案書としてまとめて上に提出するぐらいの気概が、これからの人事には必要とされます」(杉谷氏)
「自社の社員に加えて、他社の社員、特に異業種の人事担当者と積極的に交流を持つことをお勧めします。もともと、日本企業は同業他社の動きをキャッチアップして事業を伸ばしてきた実績がありますが、利益重視の今の時代においては、異業種との協働によるイノベーションが重要。人事も然りで、同業他社の似たような人事のやり方ではなく、全く別の業界のやり方を知れば刺激になり、新たな発想につながる可能性があります。例えば、この10年間でリテールを中心とした外資系企業がたくさん進出してきましたが、これらの企業は、グローバル展開に成功している“大先輩”。グローバル化に関するノウハウや成功事例をもらえる可能性は大です。それらの情報を自社でアウトプットしていく能動的な姿勢が、これからの人事には求められます」(楠田氏)

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伊藤理子
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