「当たり前」の破壊が、真の事業再構築を生み出す!

事業を変える!コスト構造改革者の「着眼点」とは?

日本経済の停滞を受けて、多くの企業が事業全体の見直しや再構築を迫られている。成長を続けるためには、既存事業のどこを見直すべきか…という視点は、どんな立場のビジネスパーソンにも求められるスキルと言えるだろう。そこで、既存事業を一から見直すことによってコスト削減・事業効率化を実現した「コスト構造改革の立役者」2人にインタビュー。コスト構造改革を推し進めるために必要な、独特の「着眼点」を聞いた。

2011年5月11日

【集客コスト】を最大限抑えながら、
同業他社が「やりたくないこと」と「できないこと」を徹底して実施

ライフネット生命保険(株) 松岡洋平さん

ライフネット生命保険株式会社
マーケティング部長
松岡洋平さん(30歳)

当社は、2008年5月に開業したインターネット専門の生命保険会社。私は2007年6月、創業前の「準備会社」の段階で入社しました。
インターネットで生命保険を販売するため、店舗や営業人員が不要。コストを抑えることで、保険料自体も低く抑えています。しかし一方で、店舗がないからこそ、電話での問い合わせ対応は強化する必要があるし、システム投資も十分に行う必要があります。つまり、「営業効率を圧倒的に高めないと、成立し得ないビジネスモデル」であり、従来の生保のビジネスモデルとはケタ違いのCPA(顧客獲得単価)を実現することが、私に与えられた最大のミッションでした。

まだ知名度がなく、投下できる資本も限られている当社が、同業他社と同じことをやっても勝ち目はありません。そこで、差異化するために行ったのが、同業他社が「やりたくないこと」と「できないこと」。
「他社がやりたくないこと」とは例えば、業界ではタブー視されていた「保険料原価の全面開示」です。
保険料は、将来の保険金支払いの原資である「純保険料」と、保険会社の運営経費や会社の利益などが含まれる「付加保険料」に分けられます。純保険料は各社ともにあまり差がありませんが、全国に店舗を持ち、多くの営業人員を抱える大手生保はサービス維持のため「付加保険料」が大きくなります。一方、当社の付加保険料は、定期死亡保険であれば大手生保の約5分の1程度。「なぜ安いのか」が一目瞭然なので、この構造を示せれば、当社にとって大きなメリットです。この全面開示はメディアに大々的に取り上げられ、知名度向上にも大いに貢献しました。

次に「同業他社ができないこと」。当社の最大の売りは、「創業者が活躍している」ことです。同業他社はいずれも歴史が長く、当然ながら現役の創業者が今も活躍している例はありません。一方でほかの業界を見ると、創業者がユニークで露出が多い企業はPRがうまくいっている例が多い。創業社長の話は内容が濃く、受け手側の興味が俄然高まるからです。「持っているカードはフルに使う」べく、社長の出口を経済番組や経済誌だけでなく、情報番組やバラエティなど、さまざまなジャンルのメディアに引っ張り出しました。ある人気サイトでは、「真夏の多摩川河川敷でハトに加入保険を選んでもらう」というとんでもない企画に社長を借り出したりもしました(笑)。
一方で、テレビCMや新聞・雑誌広告などによる「継続的な広告宣伝」も、知名度向上には必要不可欠です。広告宣伝を打つ場合にも、できるだけ低コストで多くのターゲット層にアプローチできるよう、効率を第一に考えました。まずはトライアルとしてさまざまな媒体に出稿し、その都度サイトへの反響や加入状況を分析。より効率のよかった媒体へシフトし、テレビCMへの取り組みも開始しました。
いきなり全国CMを打つ予算はないので、人口構成比が日本全国のものと近しい福岡県、静岡県、北海道でテレビCMをテスト展開。「東京から遠いほど通販に反応しやすい」という行動特性もあるのか、反響を得ています。いま力を入れているのは、地方局のご当地番組でのコーナー出演。あえて自社の宣伝は一切行わず、生命保険に関するあらゆる質問に私自身が答えるという内容に仕立てました。社員が保険全般について解説することで、親近感や信頼性が高まるとの分析からです。2年ほど前から始め、さまざまな地方局で100回以上は行いましたが、いずれも反響は上々ですね。
次の一手として考えているのは、「自社サイトをメディア化する」こと。自社サイトで集客できるようになれば、一番コストがかかりませんからね。いま地方局に積極的に出向いているのは、番組制作のノウハウを学び取りたいという目的もあるんです。マスに向けて日々改善を繰り返す制作現場からは、コンテンツ作りのために学べるものがたくさんあります。今後は社長をはじめ社員も総動員して、自社の露出をさらに高めつつ魅力的なコンテンツを生み出し、ゆくゆくは消費者の方からどんどん訪れてもらえるようなサイトにしたいと考えています。


■「コスト構造改革者」に必要なことは?
「普通に生活すること、つまり一般消費者としてできるだけ多くのインプットを得ること」を心がけています。われわれが目指すのは、子育て世代の若いご夫婦が負担なく入れる保険。ターゲットとなる20〜30代の方が普段どういうものから情報を収集し、何を考えて日々を過ごしているのか理解するために、マンガ雑誌やスポーツ新聞を読んだり、話題のテレビ番組やサイトを観たりしています。街ゆく若者に「今何が流行っているのか」聞いたりもしますよ。情報のインプットを増やせば、彼らがどういう気持ちで日々生活しているのかをよりリアルに思い浮かべることができるため、「この媒体に出稿すればこんな気持ちで観てくれるのでは」と予測でき、効率的な出稿につなげることができます。

【人件費コスト】に着目し、受発注システムの大幅変更を実施。
業務量の4割減を実現

オイシックス(株) 岸本 綾さん

オイシックス株式会社
SCM部部長
岸本 綾さん(33歳)

当社は「安心、安全」にこだわったネットスーパー「Oisix」を運営。オーガニック野菜などさまざまな食品の宅配を手掛けています。私は2005年にシステムエンジニアとして入社し、その後「モバイルOisix」事業の立ち上げを担当。そして、この3月にSCM部長に就任し、物流を始めあらゆるモノの流れ、コスト構造の見直しに着手しています。
着任早々、契約農家との受発注業務のムダに気付き、今まさに大規模なプロセスの見直しを行っている最中。これが実現すれば、受発注に係る業務が約4割は削減できる見通しです。

2000年の創業以来、契約農家との受発注のやり取りは、すべてFAXのみで行ってきました。お客様から受けた注文を、提携している全国1000件以上の農家1件1件に手作業でFAX送信し、それに対する農家からの確認FAXを受信。送信FAXと受信FAXを1枚1枚付き合わせて数量を確認したうえで、在庫システムに手入力していました。やりとりするFAXの枚数は月8千枚にも上り、この作業に1日数時間もかかっているため、すべてをインターネットに移管すればかなりの業務効率化が図れるのですが、PC操作に慣れていない農家が多いうえ、1からシステムを作るのは多大なコストと時間を要することから、今までシステム化を真剣に検討することはありませんでした。
しかし、エンジニア経験が長い私は、この受発注システムの全体像がすぐに頭に浮かび、「すぐにネットに全面移管できる」と確信しました。入社以来、ECサイト全体のサービス追加やリニューアルなどを手掛ける傍ら、業務のムダをなくすために売り上げ指標数値を誰でも簡単に出せるようにするなど、気が付いたそばから細かい業務改善を独自に行ってきました。ムダを見つけては改善することが習慣となっていたため、「既存のシステムを活用すれば、1カ月程度で受発注システムが構築でき、費用負担も軽微なはず」と具体的な工期やコストまでもイメージできたんです。PCに不慣れな農家も、携帯電話は皆持っていてフル活用している。モバイル事業のシステムを応用すれば、モバイルでの受発注システムも容易に組めるので、農家の方々も納得してくださるだろうと考えました。

すぐに社内システム責任者と話し合い、具体的なシステム設計の定義を固め、クリック一つで簡単に受発注できるシステムの開発に着手。折しも、東日本大震災を受けた大規模停電により、FAXでの受発注が滞り流通が混乱したことから、農家からの賛同も容易に得られました。6月中には新システムがカットオーバー予定で、3カ月以内に8割、年内に9割の移管を目指しています。すべてネットに移管できれば、受発注担当者の作業が約4割削減でき、残業代の大幅な削減が実現。さらに、空いた時間をほかの業務の見直し作業に充てることで、一段の業務効率化が狙えると期待しています。


■「コスト構造改革者」に必要なことは?
日々当たり前のようにこなしている業務の中にこそ、見直すべきものがある。どの業務に関しても、先入観を持たずに、「これはムダでは?」「ほかの方法は本当に取れないのか?」と考えてみる癖をつけています。エンジニア経験が長く、物流のプロではない私がSCM責任者になったのは、全体改革のためにゼロベースの視点が求められているからだと思っています。
当社は創業以来、急速に事業拡大を続け、その過程で発生した問題に関しては、その都度再発防止策を講じてきました。しかし、そろそろ受発注・在庫管理といった川上業務をいったんすべて見直す時期に来ていると思っています。川上業務の抜本的な改善により、SCM全体の流れが円滑になり、予期せぬトラブルも大幅に減少するはずです。現在検討しているのは、入力管理システムの見直しや在庫流通のバーコード化など。今まで人が介在していたところをデジタルに変えることで、可視化しにくい業務の流れが明確になり、コストの「見える化」も図れる見通しです。

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伊藤理子
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設楽政浩/平山 諭

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